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Not a fan

      2023/04/21

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 6 minutes

あまり好きではない


I’m not a fan of my wrinkles.


あるアメリカ人女優の発言である。

40歳代半ばの頃。

雑誌のインタビュー記事で目にして、
「 なに言ってるんだ 」 と思った。

「 私は自分のシワのファンではない 」

シワ好きな女性は、ほとんどいない。

そんなの当たり前。 わざわざ言うことか。

当時の私は、まったく分かっていなかった。

” I don’t like my wrinkles. ” とのニュアンスの差。

読者に与える印象の違い。

きちんと受け入れつつ、 やんわり否定するような、
” not a fan ”  の婉曲( えんきょく )作用。

なにも知らなかった。

「 シワは大っ嫌い 」などとわめきたくなる嫌悪感も
理解した上での、しっとり落ち着いた大人の言い振り
だったのである。

◆  常用する辞書の独立項目に、 ” not a fan ”  は存在
しなかった。

以上の9点すべてで、 項目立てされていなかった。

◆  有力辞書に載っていないため、 英語情報交換サイトで調べた。

参考になったのは、こちら2つの英文サイト。

専門家の手による解説ではないが、概ね的確だと考える。

https://ell.stackexchange.com/questions/74098
https://english.stackexchange.com/questions/419031

< 要約 >

(1) 相手を傷つけない目的で使う。
ーー→  ” the speaker uses in a non-derogatory fashion.”
※  ” derogatory ”  =  軽蔑的な ( 形容詞 )

(2) 嫌っていることを露骨に言いたくないために使う。
ーー→  ” you don’t want to explicitly state that you hate
ーー→ those people. ”

(3) 「 私は好きでない 」 の慣用語
ーー→  ” idiomatic way of saying  ‘ I do not like’ “

(4) ” fan ” の語義から、 無生物にも使う。
ーー→  後述の “OALD9” の語釈を参照

(5) 堅い文脈では使われない。
ーー→  ” this expression is not used in a formal context.”

(6) ” fan ” の代わりに、 次の可算名詞も使える。

ーーー・  admirer ( 崇拝者 )
ーーー・  follower ( 信奉者 )
ーーー・  devotee ( 信者 )
ーーー・  supporter ( 支持者 )

ーー→ ※   4語とも  ” fan ”  の同義語


◆  表題  ” not a fan ”  の直訳は、「 ファンでない 」。

” fan ” の語源は、 ” fanatic ” ( 熱狂的愛好者 ) の短縮形。

※  扇風機  ” fan ” は、 語源が異なる別物。  発音は同じ。

【発音】  fǽn
【音節】  fan  (1音節)

「 ファン 」 はカタカナでも定着している。

日常用途は完全一致。

ファン 【fan】
[フアンとも]
芸能・スポーツなどの熱心な愛好者。また、特定の俳優・
選手・人物・団体などをひいきにする人。
(大辞林 第三版)

“fan”
a person who admires somebody / something or enjoys
watching or listening to somebody / something very much.
(OALD9、オックスフォード)

※  人物に加えて、” something ” ( 何か、無生物 ) も可

【発音】 fǽn
【音節】 fan  (1音節)


【英英辞典の基本表記】  スラッシュ( / )=「 または (or)  」
→  ” somebody ”  または  ” something ”  のどちらでもよい


◆  意味を強調( 強意 )するため、 形容詞 ” big “( 大変な )
を加えることもある。

a big no-no “( ご法度 )と同じく、 強意の ” big “  なので、
趣旨は変わらない。

” a big fan ”  = 「 大ファン 」 のイメージ。

 

表題の ” not a fan ” は、「 大ファンではない 」 が直訳。

  < 本音 >は 「 嫌い 」 に近い。 

 

 

◆  ” not a fan ” は、 be動詞に続けて ” no fan
とも表現できる。

「 ファンではない 」 → 「 好きではない 」 のパターンは同じ。

冒頭の一文であれば、


I’m not a fan of my wrinkles.

→  I’m no fan of my wrinkles.

be動詞 は、「  ‘m 」。

” am ” の縮約形である。

趣旨は重なり「 私は自分のシワが好きでない 」。

しかし、 ” no fan ” の方がより強い否定。

表題の 副詞 “ not ” は、 be動詞  “ am ”  を否定するのに対し、
この 形容詞 “ no ” は、 名詞  “ fan ”  を否定。

この場合、

” no ”  の方が  “ not ”  より否定の度合いが強い。

no need ” で事細かに記述した。

少し分かりにくいので、主格とbe動詞を変えてみる。

下線が be動詞。

  • “She is not a fan of wrinkles.”
  • “She is no fan of wrinkles.”
    ( 彼女はシワがあまり好きでない )
  • “We are not fans of wrinkles.”
  • “We are no fans of wrinkles.”
    ( 私たちはシワがあまり好きでない。)

副詞  ” not ” は、  be動詞( is / are )を否定。
形容詞 ” no ” は、 名詞( fan / fans )を否定。
否定が強いのは、 ” no ” の方。

「 どちらかと言えば 」の強弱で、 大差はない。

だから、 言わんとしていることは共通する。

 【参照】

◆  それよりも差が出るのは、 ” don’t like ”  との違い。

  •  ” I don’t like my wrinkles. “
  •  ” I’m not a fan of my wrinkles “
  •  ” I’m no fan of my wrinkles. “

対象( シワ )を否定する意思は変わらないが、
受け手の印象は違ってくる。

一言で言えば、 ” I don’t like ”  は意思表明で完結。

他者への配慮のない言い回し。

” don’t like – ” は、基本的な英語表現である。
英語学習者でなくても通じやすい英語のひとつ。

” do not like – ”  の縮約形であるが、 英語ネイティブ間でも
” don’t ”  の方が日常的な感。

伝達上の工夫は含まない

要は、 自分の「 嫌い 」な思いを 率直に 表しているだけ。

「 私は ~ が嫌いです 」。

文法も単純。

ところが、一般的なコミュニケーションでは、むき出しの
感情表現は好まれない。

特に、否定的な気持ちのあからさまな表出は避けられる。

露骨にならぬよう気遣うことは、 社会人ならば不可欠

受け手の印象や関係者に与える影響  を考慮すれば、
ぴしゃり「 嫌いです 」などと、やたら放言できるものではない。

社会人であれば、いささか幼稚すぎる。

“don’t like – ” は、 イヤイヤ期の3歳児でも使う。

清々しい素直さがあるが、周囲に対する視点はない。
大人の場合、場面次第では注意を要する。

 

◆  以下、 ” I don’t feel comfortable. ”  より再掲。

< 文否定 > は < 語否定 > より、
否定の度合いが強め

  • I don’t feel comfortable.( 文否定 )は、
  • I feel uncomfortable.( 語否定 )に比べ、

強い否定


よって、前者( don’t )は、「 適切と思わない 」旨を、
ぐっと強調して 相手に伝えることができる。

つまり、

Contents

” Don’t ” ( ドント )は、

 

相当きつい否定 なので、

対人用途では 要注意!

 

やめろ !嫌だ !

と 命令・峻拒 する に近い


【参照】

need ” と “ want ” は 「 差し迫った要求 」 →  対人用途では高リスク

▲▲  再掲終わり  ▲▲

 

◆  そこで、 重要なのが 「  婉曲表現 」。

Could you update me on – ?  ”  で詳らかにしている。

クッション言葉 」 に似通う効用。

遠回しに表すことによって、 角が立たないようにする。


受け手のため、関係者のため、つまり他者のためではあるが、
最終的には自分のため。

言葉遣いを含む気遣いに欠ける社会人は、コミュニケーション
能力に難ありとみなされがち。

結果的に、本領発揮せずに終わるキャリアも多いとのこと。
「 ソフトスキル 」 の研究は、昨今盛んに行われている。

hopefully ”  にて触れた話。

大切なので、 一部再掲する。

 

【参考】    ※  外部サイト、和文


◆ 「 嫌い 」 → 「 好きではない 」。

さらに推し進めて、

「 嫌い 」 → 「 好きではない 」 → 「 ファンではない 」

日本語の例えとしては、しっくりこない気がする。

それでも、 流れとして不自然さはないだろう。

” I don’t like –  “( 嫌い ) よりは、 ” I’m not a fan of – ”
( ファンではない ) と表現する方が露骨にならない。

この点さえ把握できれば、 決して難しくない。

◆  和訳は、 適宜状況に合わせて、 むき出しを回避する。

具体的な人物が対象の際は、 特に気を配る。

発言者が遠回しの表現を用いたのであれば、 それを勘案し、
和文にも反映させるべきである。

ネガティブ感情の翻訳は、なかなか厄介である。

<本音>の察しはつくものだが、勝手に訳出しないのが基本。

  • “I’m not a big fan of those people.”
    (あの人たちをそれほど好いていません。)
  • “He is not a fan of his teacher.”
    (彼は自分の先生がそれほど好きでない。)
  • “The director is not a fan of the economic recovery plan.”
    (長官はその経済回復計画が気に入らない。)
  • “I’m not a big fan of swimming.”
    (水泳があまり好きでない。)
  • “I’m not a fan of wrinkles, so I wear sunscreen everyday.”
    (シワが好きでないので、日焼け止めを毎日塗ります。)
  • “We are no fans of removing wrinkles by surgery.”
    (私たちは手術でシワ取りすることを好みません。)
  • “She is not a big fan of Botox.”
    (彼女はボトックスがあまり好きでないです。)

最後まで、 冒頭のシワ( 皺 ) を引きずってしまった。

wrinkle

【発音】  ríŋkl
【音節】  wrin-kle  (2音節)

化粧品 「 ドモホルンリンクル 」 の 「  リンクル 」。

語源は、 形容詞  ” wrinkled “( ねじれている ) からの逆成。

ここでは可算名詞で、 通常は複数語尾  ” s ”  つきの複数形。

人体については、 1本のシワを取り上げる機会はまれ。

加齢 により増える一方でもあり、 複数形が普通である。

 

 

 

 

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