プロ翻訳者の単語帳

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Hopefully

      2019/05/16

できることなら

自分の希望を人前で表現する際、
露骨すぎると印象がよくない。

子どもなら許されても、社会人の場合、
全体の兼ね合いを考慮する必要が出てくる。

さもないと、思わぬ反発を買ったり、自分勝手な
人だと思われたり、七面倒な問題が生じかねない。

口頭・文面問わず、<婉曲表現>を上手に
練り込んで
いく工夫は重要。

相手を下手に刺激しないようにしつつ、
  こちらの言い分をきちんと伝達する

日本語でも英語でも、
この考え方はそう変わらない。

何やかんやと言っても、
人間は感情で動く傾向が強い

これぞ、人間の本質である気がする。
馬齢を重ね、ますます確信するに至る。


◆ 長く働いていると、このような “soft skills
(ソフトスキル)こそ、キャリアの行方を左右
することが理解できるようになる。

すなわち、対人的な意思疎通を行なう能力。

“human skills”(ヒューマンスキル)とほぼ重なる。
測定・数値化が難しいためか、学校では教えにくい。

コミュニケーション上の気遣いができるかどうかで、
社会人として大差がつくなんて、学生時代は「気休め」
程度にしか考えていなかった。 世間知らずそのもの。

しかし、何十年も働いてきて思うに、本当にそうだった。

転職多きキャリアだったが、どこにいってもそうだった。
特に長期に渡る関係であれば、確実に影響すると断言したい。

【参照】※ 外部サイト

◆ 長らく “hard skills”(ハードスキル、知識・技術面)
しか磨いてこなかったため、無数の苦い失敗だらけ。

日本語でも英語でも、ずばずば意に介さず。
何でもかんでも、歯に衣着せぬ物言い。

ずけずけ言ったり、書いたりで、これまで散々な目にあってきた。

今も色鮮やかに蘇る、恥ずかしい場面の数々。
恥辱・屈辱の余り、瞬時に脳裏に焼き付いたものだ。

我が身をもって学ぶ結果となってしまった。

だからこそ、弊サイトでは、反発を買いにくい婉曲表現を
力説している。 反省を込めて。

【参照】 “It’s a long story.“(いろいろあって。)

とは申せ、相変わらず赤っ恥をかく日々が続いている。
かくして、学習は進み、弊サイトの題材が生まれる。

幸ひなり幸ひなり。 めでたしめでたし。


◆ さて、表題 “hopefully”。 副詞である。

「できることなら」「願わくば」が定訳に近い。
「願わくば」は意味合いとしての定訳である。

日頃、口にする機会はほとんどないだろう。

ねがわくは【願わくは】

  • (「ねがふ」のク語法に助詞「は」の付いたもの。
    江戸時代ごろからネガワクバともいうようになった)
    願うところは。望むところは。どうぞ(…してほし)。
    『広辞苑 第七版』
  • (下に「ことを」や命令形などを伴って)
    そうなることを望む意を表す。願うことは。どうか。
    『大辞林 第三版』

現在ではこの用法が “hopefully” の標準的な意味と
なっているが、本来の意味は「希望・期待をもって」。

3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は、

“hopefully”

  • showing hope.
    (OALD、オックスフォード)
  • in a hopeful way.
    (CALD4、ケンブリッジ)
  • in a way that shows that you are hopeful.
    (LDOCE6、ロングマン)

【発音】 hóupfəli

成り立ちは次の通り。

名詞 “hope“(希望・期待) + 接尾辞 “ful“(満ちた)
で、形容詞 “hopeful”(希望・期待に満ちた)。

形容詞につけると副詞になる接尾辞 “ly” を加え、
副詞 “hopefully”(希望・期待に満ちて)。

「希望・期待に満ちて」 とは「希望・期待をもって」
ということ。

「満ちて」だと、日常使いには大げさなきらいがある。
よって、少々手を加えて和訳されることが多い。

  • “I was waiting hopefully to see her face.”
    (彼女の顔を見れるかと期待して待っていた。)
  • “He asked hopefully for a cigarette.”
    (たばこ1本譲ってもらえることを期待して尋ねた。)
  • “He looked at her hopefully.”
    (彼は期待をもって彼女を見つめた。)
  • “‘Is there any leftover cake ? ”
    she hopefully asked.
    (「ケーキ残っている?」
    彼女は期待一杯で聞いた。)-“

この用法が正式とされる。

◆ ところが、実際の使われ方として一般的なのは、
できることなら」「願わくば」。

日常口語で “hopefully” と言えば、ほとんどこっち。
it is hoped” または “it is to be hoped” の換言である。

“hopefully”

  • used to express what you hope will happen.
    (OALD9、オックスフォード)
  • used, often at the start of a sentence,
    to express what you would like to happen.
    (CALD4、ケンブリッジ)

【発音】 hóupfəli

一方、この用法は文法的に、
“not correct”、”incorrect”(正しくない)
と主張する専門家や作家がいる。

その旨注記(以下青字)する英英、英和辞典は数多い。

“hopefully”

  • a way of saying what you hope will happen,
    which some people think is incorrect.
    (LDOCE6、ロングマン)
  • Although this is the most common use of
    hopefully, it is a fairly new use and some 
    people think it is not correct.
    (OALD9、オックスフォード)
  • The used of hopefully to mean it is hoped
    used to be considered incorrect by some 
    people but has now become acceptable 
    in informal contexts.
    (Collins English Dictionary)
  • 標準語法として確立しているが
    この用法に批判的な人もいる
    (ジーニアス英和大辞典)

    ※ 色、下線は引用者

【発音】 hóupfəli

の辞書も歯切れが悪い。

下線部 “some people” 及び「人もいる」が示すように、
揃いに揃って、他人事のように書いている。

経緯不詳で、断言する自信がないに違いない。
こういう場合、”some people” などと書いて逃げる
のが、辞書の常套手段。

◆ そこで、さらに調べてみた。

  Can HOPEFULLY mean “I hope” ? 

In the 1960s the second sense of hopefully
(“it is hoped”), which dates to the early 18th
century and had been in fairy widespread use
since at least the 1930s, underwent a surge in
popularity. A surge of criticism followed in reaction,
but the criticism took no account of the grammar
of adverbs. (…) The “it is hoped” sense of hopefully
is entirely standard.

メリアム ウェブスター

英語ネイティブ向けの英英辞典(アメリカ系)なので、
難解である。

要約すると、1930年代から広く使われるようになった
“I hope”(≒できることなら、願わくば) の用法は、
1960年代に主流になった。

人気に伴い批判も生じたが、今では標準語法となっている。

次の語源サイトでも、”it is to be hoped that”
が不自然な言い回しと認めている(太字)。

“hopefully” は、その代わりとなる語と位置づけている。

“hopefully”

As a replacement for the admittedly awkward
‘it is to be hoped that’, attested from 1932
but avoided by careful writers.

Online Etumology Dictionary)

※ 太字、下線は引用者

「希望・期待をもって」との本義よりも、
標準的な用法となっている実態を認めつつ
(上掲オレンジ字)、注を入れている。

これが、ご紹介した辞書の有様である。

◆ この問題に関しては、一般ユーザーである私たちが
神経質になる必要はない。

名だたる辞書の曖昧模糊とした説明から推察できる
ように、学者レベルの論点だと考えられる。

英語ネイティブの使う “hopefully” も、少なくとも口頭では、
「できることなら」「願わくば」を意味するのが普通である。

“hopefully” が「希望・期待をもって」の意味で、
口頭使用された
場面に居合わせた覚えは、私にはない。
※ 文面では、まれに見かける

◆ したがって、
“hopefully” =「できることなら」「願わくば」
で覚えてよい。

「できることなら」「願わくば」が婉曲表現に
に近い点は、日本語から考えると分かるであろう。
「クッション言葉」に似た効果がある。

クッション言葉とは、相手に何かをお願いをしたり、
お断りをしたり、異論を唱える場合などに、
言葉の前に添えて使用する言葉です。

上手く活用する事で直接的な表現を避けられ、
丁寧で優しい印象を相手に与える効果があります。

否定的な言葉など言いにくい内容でも、
相手に失礼にならずに伝える事が出来る
ので知っておくと大変役に立ちます。

… ビジネス会話の基本「クッション言葉

※ 「できましたら」も一覧に挙げられている

先述のCALD4に説明されているように(緑字)、
この用法では、文頭に使われることが多い。
だが、文中・文末にも使う。

以下の例文で、”hopefully” の与えるソフトな語感
を感じ取っていただきたい。

【参照】“hope” の特色は、ほんわかとした語感

“Hopefully, this should give you a
good career opportunity.”
(これがあなたのキャリアにとって、
よい機会になればいいのですが。)

“Hopefully, it works now.”
(これで、今、直っていればいいのですが。)

“Hopefully, she will come back here.”
(できれば、彼女がここに戻ってくると
いいのですが。)

“By the time he returns here, this will hopefully
have been solved.”
(彼が戻るまでに、これが解決できていれば
よいのですが。)

“Hopefully, I’ve answered your question.”
(ご質問への答えになっていればよいのですが。)

“I’m hopefully going to pass the test this time.”
(できることなら、今度こそは試験に合格したい。)

“Hopefully, this won’t drag out too long.”
(これが異常に長引かなければよいのですが。)

“Hopefully, it won’t rain today.”
(今日、雨が降らなければよいのだが。)

“You would find this useful, hopefully.”
(これが一助になればよいのですが。)

 

【関連表現】
“high hopes”
https://mickeyweb.info/archives/5827
(大きな期待)

“Hope this helps.”
https://mickeyweb.info/archives/6691
(ご参考になれば幸いです。)

 

 

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