プロ翻訳者の単語帳

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Hopefully

      2023/04/21

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 6 minutes

できることなら

自分の希望を人前で表現する際、
露骨すぎると印象がよくない。

子どもなら許されても、社会人の場合、
全体の兼ね合いを考慮する必要が出てくる。

さもないと、思わぬ反発を買ったり、自分勝手な
人だと思われたり、七面倒な問題が生じかねない。

  口頭・文面問わず、婉曲表現
上手に練り込んで
いく工夫 は重要。

  相手を下手に刺激しないようにしつつ、
  こちらの 言い分をきちんと伝達する


婉曲( えんきょく )とは、 直接的で無作法な露骨さを避け、
感情をむき出しにせず、 穏やかに柔らかく遠回しに表現すること。

日本語でも英語でも、この考え方はさほど変わらない。

◇  なんやかんやと言っても、
人間は感情で動く傾向が強い


これぞ、人間の本質である気がする。

馬齢を重ね、ますます確信するに至る。


民衆
の圧倒的多数は、
冷静な熟慮よりも

むしろ感情的な感じで考え方や行動を決める

アドルフ・ヒトラー (1889 – 1945)
『 わが闘争 』( 1925 – 1926年刊 )
角川文庫   平野一郎、 将積茂(訳) 


◆  長く働いていると、このような ” soft skills
( ソフトスキル )こそ、 キャリアの行方を左右 
することが理解できるようになる。

すなわち、対人的な意思疎通を行なう能力。

human skills “( ヒューマンスキル )とほぼ重なる。

測定・数値化が難しいためか、学校では教えにくい。

コミュニケーション上の「 気遣い 」ができるかどうかで、
社会人として大差 がつくなんて、学生時代は「 気休め 」
程度にしか考えていなかった。

世間知らずそのもの。

しかし、 何十年も働いてきて思うに、本当にそうだった。

転職 多きキャリアだったが、 どこにいってもそうだった。

◇  長期渡る関係であれば、 確実影響する


と断言したくなる。

春秋に富む若き俊英の皆様は、念頭に置くとよいかもしれない。

いずれ、 分かる日がきっとやってくる。

 

【参考】    ※  外部サイト、和文


◆  長らく ” hard skills “ ( ハードスキル、 知識・技術面 )
しか磨いてこなかったため、 無数の苦い失敗だらけ。

日本語でも英語でも、 あけすけに言って、意に介さず。

なんでもかんでも、 歯に衣着せぬ物言い。

ずけずけ言ったり、書いたり  で、 これまで散々な目にあってきた。

汗顔の至り。

今も色鮮やかに蘇る、 恥ずかしい場面の数々。

恥辱・屈辱のあまり、 瞬時に脳裏に焼き付いたものだ。

派手にやらかし、 我が身をもって学ぶ 結果となってしまった。

だからこそ、弊サイトでは、反発を買いにくい婉曲表現を
力説している。

反省を込めて。

【参照】  ” It’s a long story.


とは申せ、 相変わらず、 赤っ恥をかく日々が続いている。

叱られまくって半世紀、 日毎夜毎、 語彙力を強化中。

かくして、 学習は進み、 弊サイトの題材が生まれる。

幸ひなり幸ひなり。 めでたしめでたし。


◆  さて、 表題  ” hopefully”。

副詞である。

【発音】   hóupfəli
【音節】   hope-ful-ly (3音節)


きることなら 」 「 願わくば 」 が定訳に近い。

願わくば 」 は意味合いとしての定訳である。

日頃、口にする機会は、ほぼほぼない日本語。

ねがわくは【 願わくは 】

  • ( 「ねがふ」のク語法に助詞「は」の付いたもの。
    江戸時代ごろからネガワクバともいうようになった )
    願うところは。 望むところは。 どうぞ( … してほし)。
    ( 広辞苑 第七版 )
  • ( 下に「ことを」や命令形などを伴って )
    そうなることを望む意を表す。 願うことは。 どうか。
    ( 大辞林 第四版 )


現在ではこの用法が  ” hopefully ”  の標準的な意味と
なっているが、 本来の意味は「 希望 ・ 期待をもって 」。

3大学習英英辞典( EFL辞典 )の語釈は、

” hopefully “

  • showing hope.
    ( OALD、オックスフォード )
  • in a hopeful way.
    ( CALD4、ケンブリッジ )
  • in a way that shows that you are hopeful.
    ( LDOCE6、ロングマン )

【発音】   hóupfəli
【音節】   hope-ful-ly (3音節)


◆  成り立ちは次の通り。

名詞 ” hope “( 希望・期待 ) +  接尾辞 ” ful “( 満ちた )
で、 形容詞  ” hopeful “( 希望・期待に満ちた )。

形容詞を副詞にする接尾辞 ” ly ” を付け足し、
副詞 ” hopefully “( 希望・期待に満ちて )。

「 希望・期待に満ちて 」 とは「 希望・期待をもって 」
ということ。

「 満ちて 」だと、 日常使いには大げさなきらいがある。

よって、 少々手を加えて和訳されることが多い。

  • “I was waiting hopefully to see her face.”
    (彼女の顔を見れるかと期待して待っていた。)
  • “He asked hopefully for a cigarette.”
    (たばこ1本譲ってもらえることを期待して尋ねた。)
  • “He looked at her hopefully.”
    (彼は期待をもって彼女を見つめた。)
  • “‘Is there any leftover cake ?
    she hopefully asked.
    (「 ケーキ残っている」 彼女は期待して聞いた。)-“

以上の用法が正式とされる。

◆  ところが、実際の使われ方として一般的なのは、
できることなら 」 「 願わくば 」。

日常口語で ” hopefully ” と言えば、 ほとんどこっち。

it is hoped ”  または  ” it is to be hoped ” の換言である。

” hopefully “

  • used to express what you hope will happen.
    ( OALD9、オックスフォード )
  • used, often at the start of a sentence,
    to express what you would like to happen.
    ( CALD4、ケンブリッジ )

【発音】   hóupfəli
【音節】   hope-ful-ly (3音節)


◆  一方、この用法は、
文法的に  ” not correct “、” incorrect “(正しくない)
と主張する専門家や作家がいる。

その旨、注記( 以下青字 )する英英、英和辞典が目立つ。

” hopefully “

  • a way of saying what you hope will happen,
    which some people think is incorrect.
    ( LDOCE6、ロングマン )
  • Although this is the most common use of
    hopefully, it is a fairly new use and some 
    people think it is not correct.
    ( OALD9、オックスフォード )
  • The used of hopefully to mean it is hoped
    used to be considered incorrect by some 
    people but has now become acceptable 
    in informal contexts.
    ( Collins English Dictionary )
  • 標準語法として確立しているが
    この用法に批判的な人もいる
    ( ジーニアス英和大辞典 )

    ※  色、下線は引用者

【発音】   hóupfəli
【音節】   hope-ful-ly (3音節)


の辞書も歯切れが
悪い。

下線部 ” some people ” 及び「 人もいる 」が示すように、
揃いに揃って、他人事のように書いている。

経緯不詳で、言い切る自信がないに違いない。

こういう場合、” some people ” などと書いて逃げる
のが、辞書の常套手段。

◆  そこで、さらに調べてみた。

  Can HOPEFULLY mean ” I hope ? ”

In the 1960s the second sense of hopefully
( ” it is hoped ” ), which dates to the early 18th
century and had been in fairy widespread use
since at least the 1930s, underwent a surge in
popularity. A surge of criticism followed in reaction,
but the criticism took no account of the grammar
of adverbs. (…) The ” it is hoped ” sense of hopefully
is entirely standard.



メリアム ウェブスター

https://www.merriam-webster.com/dictionary/hopefully

※  色字は引用者


英語ネイティブ向けの英英辞典( アメリカ系 )なので、
やや難解である。

要約すると、1930年代から広く使われるようになった
” I hope “( ≒ できることなら、願わくば ) の用法は、
1960年代に主流になった。

人気に伴い批判も生じたが、今では標準語法 となっている。

次の有力語源サイトでも、” it is to be hoped that ”
が不自然な言い回しと認めている( 太字 )。

” hopefully ” は、その代わりとなる語と位置づけている。

” hopefully “

As a replacement for the admittedly awkward
‘ it is to be hoped that ‘,  attested from 1932
but avoided by careful writers.



Online Etumology Dictionary
https://www.etymonline.com/word/hopefully

※  太字、下線は引用者


「 希望・期待をもって 」との本義よりも、
標準的な用法となっている実態を認めつつ
( 上掲オレンジ字 )、注を入れている。

これが、ご紹介した辞書の有様である。

◆  この問題に関しては、一般ユーザーである私たちが
ことさら神経質になる必要はない。

名だたる辞書の曖昧模糊とした説明から推察できる
ように、 学者レベルの論点だと考えられる。

英語ネイティブの使う ” hopefully ” も、 少なくとも口頭では、
「 できることなら」「 願わくば 」を意味するのが普通である。

” hopefully ”  が 「 希望・期待 をもって 」の意味で、
口頭使用された
場面に居合わせた覚えは、私にはない。

もっとも、 文面ではまれに見かける。

◆  したがって、

  ” hopefully ”  = 「 できることなら 」「 願わくば 」

で覚えてよいだろう。

「 できることなら 」 「 願わくば 」  が婉曲表現に
に近い点は、  日本語から考えると分かるであろう。

「 クッション言葉 」 に似通う効用。

いうなれば、予防線を張っている。


クッション言葉
とは、相手に何かをお願いをしたり、
お断りをしたり、異論を唱える場合などに、
言葉の前に添えて使用する言葉です。

上手く活用する事で直接的な表現を避けられ、
丁寧で優しい印象を相手に与える効果があります。

否定的な言葉など言いにくい内容でも、
相手に失礼にならずに伝える事が出来る
ので知っておくと大変役に立ちます。

…  ビジネス会話の基本 「 クッション言葉

◇  「 できましたら 」 も一覧に挙げられている

※  太字、赤字は引用者


先述のCALD4に説明されているように(緑字)、
この用法では、文頭に使われることが多い。

それでも、 文中・文末に置かれることは珍しくない。

以下の例文で、” hopefully ”  の与えるソフトな語感
を感じ取っていただきたい。

【参照】  “ hope ” の特色は、 ほんわかとした語感

 

 

できれば

 

  • Hopefully, this should give you a
    good career opportunity.”
    (これがあなたのキャリアにとって、
    よい機会になればいいのですが。)
  • Hopefully, this blog will help you improve your English skills.”
    (このブログが英語力の向上に役立てばよいのですが。)
  • Hopefully, it works now.”
    (これで、今、直っていればいいのですが。)
  • Hopefully, she will come back here.”
    (できれば、彼女がここに戻ってくるといいのですが。)
  • Hopefully, we are back to full capabilities by next week.”
    (来週までに、元通りになっていればよいのですが。)
  • Hopefully, you will come back one day.”
  • Hopefully, we will see you back one day.”
    (いつか戻ってきていただけることを願っています。)
  • “By the time he returns here, this will hopefully
    have been solved.”
    (彼が戻るまでに、これが解決できていれば
    よいのですが。)
  • “A vaccine will be available, hopefully by year’s end.”
    (うまくいけば、今年の年末までに、ワクチンが利用可能
    になるだろう。)
  • Hopefully, I’ve answered your question.”
    (ご質問への答えになっていればよいのですが。)
  • “I’m hopefully going to pass the test this time.”
    (できることなら、今度こそは試験に合格したい。)
  • Hopefully, this won’t drag out too long.”
    (これが異常に長引かなければよいのですが。)
  • Hopefully, it won’t rain today.”
    (今日、雨が降らなければよいのだが。)
  • “You would find this useful, hopefully.”
    (これが一助になればよいのですが。)
  • Hopefully, enjoy the video.”
    (この動画を楽しんでいただければ幸いです。)
  • “My son wants to be a doctor.
    Hopefully, he will follow through.”
    (息子は医者になりたがっている。
    達成できればいいのですが。)
  • “I wrote an article that will hopefully
    answer some of your questions.”
    (記事を1本書きましたが、これで皆様の
    疑問がいくつか解消されれば幸いです。)

 

 

【関連表現】

 

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