1. ご参考までに
2. 一応、言っておきますが
ビジネスでも、プライベートでも、
よく見聞きする < 3語ワンセット >。
口頭でも文面でも用いる。
「 略語 」 ( abbreviation ) では、 頭文字の ” FYI “。
頭文字語 で、 「 エフ ワイ アイ 」 と読む。
【発音】 FYI
–
「 頭文字語 」 と 「 頭字語 」 は混同されやすい。
- 頭文字語 ( initialism ) かしらもじご
→ 省略した語を、 1つ1つの 「 文字 」 で発音
–
例 )
FYI、 IT、 DVD、 CD、 PDF、 NHK、 BBC、 CIA、 FBI、 CNN
– - 頭字語 ( acronym ) とうじご
→ 省略した語を、1つの 「 単語 」 で発音
–
例 )
UNICEF、 UNESCO、 NASA、 NATO、 JPEG、 GIF
1.原則、参考情報の提供 が趣旨
–
2.時に、きつめの忠告 を意図
–
” FYI ” の意味は 2つ
両者の意味合い と 使用場面 は大きく異なる。
この違いは、 日本語から考えても理解できる。
本質的に、 言語よりはコミュニケーションの問題。
すなわち、人間の心理作用が問われる。
状況と言い草次第では、いちゃもんをつける
一幕となり(2)、 失礼に当たるので注意を要する。
–
なかなか危ない。
–
–
教えてやるよ
–
◆ ” for your information ” は、今回調べた8点の
英英辞典のうちの4点で項目立てされている。
–
1と2の両方を説明する辞書は、” OALD9 ” のみ。
それ以外は、いずれかを解説していた( 後述 )。
使用単語と文法は、基礎レベルである。
3語とも、最頻出かつ最重要の英単語。
そろって最高ランクの位置を占める。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
( ロングマン、LDOCE6 の表記より )
中心となる語は ” information “。
【発音】 ìnfərméiʃən
【音節】 in-for-ma-tion (4音節)
” information ” の語源は、 ラテン語「 教授 」「 情報 」( informatio )。
” inform “( 知らせる )と同源で、「 情報 」の概念は一貫している。
略式の表記 ” info ” は、筆舌不問で年中出てくる。
【発音】 ínfou
【音節】 in-fo (2音節)
意味も用法も、それぞれ最も基本的なもの。
- 目的の前置詞 ” for “(~ために)
- 人称代名詞の所有格 ” your “(あなたの)
- 不可算名詞 ” information “(情報)
カタカナで定着済みの「 インフォメーション 」そのもの。–
直訳は、「 あなたの情報のために 」。
分かりやすく換言すると、
1. ご参考までに
2.一応、言っておきますが
◆ 次の流れを ご理解できるだろうか。
「 あなたの情報のために 」
1. ご参考までに ( 参考情報の提供 )
2. 一応、言っておきますが ( きつめの忠告 )
–
日本語からしても、不自然はない展開だろう。
既に言語の問題から離れている感がある。
それぞれ見ていこう。
–
1. ご参考までに
【 使い手の意図 】
あなたのお役に立てばと願い、
情報提供させていただきます。
–
参考情報の提供
< あなたの情報のために > これが本来の使い方である。
他意はなく、 もっぱら情報提供が目的。
「 本題から外れていますが、 ご参考程度にどうぞ 」
よかれと考えた末の追加情報・説明付与・補説である。
使い手が想像する 「 ご参考 」 なので、 実際には
役立たないケースもありうる。
–
–
” for your information ”
–
also FYI
–
used to say that you are telling or giving
someone something because they might
not know or have it and it could be useful
for them.
–
( CALD4、ケンブリッジ )
–
” OALD9 ” では、 ” For information only ”
と「 = 」で結び、 同義扱い する。
–
–
” for information only ”
–
written on documents that are sent to
somebody who needs to know the information
in them but does not need to deal with them.
–
( OALD9、オックスフォード )
–
※ 下線は引用者
–
下線にある通り、 あくまでも
参考程度なので、 受け手は必ずしも対処しなくてもよい。
放置してもよく、 気楽であろう。
性質的に、 あってもなくてもよい情報だが、
もしかしたら有益かも、 と考えて追加した感じ。
日本語の 「 ご参考まで 」 と趣旨は同じ。
使用場面も重なる。
公私不問で使える。
同じく頭文字語 ( initialism )の ” FYI ” と略記される。
読みも 「 エフ ワイ アイ 」 で一致する。
【発音】 FYI
–
やはり情報提供の用途中心。
さらに、 控えめな注意喚起や穏やかな要請にも応用できる。
- ” We’d love to have you over. FYI : We’re a no-shoe household.”
( ぜひお越しください。 申し添えますと、 我が家は土足禁止です。)
事務連絡のメール件名にも使われる。
- ” FYI : We’re moving servers next week ”
( ご参考:来週サーバーを移転します )
–
上の2文は、 割かし大切な伝達であり、 実は参考程度ではない。
「 放置してもよい 」 内容と判断しにくいものの、 強引さが少
ないから、 こうしたお願いやお知らせにも ” FYI ” は使われる。
–
2. 一応、言っておきますが
【 使い手の意図 】
あなたの間違った認識を、
この私が訂正してあげます。
–
きつめの忠告
こちらは使用上、 要注意の ” for your information “。
口頭の起用が目立つ印象。
項目立てする4点の英英辞書のうち、 3点が解説する
意味合いである。( ” CALD4 ” は1のみ )
–
” For your information ”
–
spoken
used when you are telling someone that
they are wrong about a particular fact.–
–
( LDOCE6、 ロングマン )
–
–
” for your information ”
–
2. ( informal )
used to tell somebody that they are wrong
about something.
–
( OALD9、 オックスフォード )
–
–
” for your information ”
–
used for telling someone angrily that
they are wrong about something.
–
( Macmillan Dictionary、マクミラン )
–
※ 下線は引用者
–
英英3点の共通文言が、 ” they are wrong ” ( 下線部 )。
「 彼らは間違っている 」 と告げている ( ” tell ” )。
” spoken “( LDOCE6 )、 ” informal “( OALD9 )で、
「 口頭( 話し言葉 )」 「 くだけた表現 」。
–
◆ 誤りの指摘の際に伴う感情は様々だろう。
この3点のうち、 マクミラン は ” angrily “( 上記赤字 )
と明記する。
「 怒って 」を意味する副詞。
【発音】 ǽŋgrəli
【音節】 an-gri-ly (3音節)
真顔でたしなめたり、 皮肉めいたり、 はたまた、
苦笑いしつつ述べることもあるだろう。
「 怒って 」 は一例に過ぎないと考える。
それでも、 辞書が記載するということは、「 怒って 」
が代表例であるからに違いない。
これまた、 人間心理の問題。
相手が間違っている時、 どう指摘するか。
相手のプライドを傷つけないよう、 やんわり示したい。
社会人であれば、 こう考えるのが普通。
図に乗ってやり込めたら、 自分の苦境を招くかもしれない。
人生は多分に 因果応報 だから。
そう考える人は、 むやみに ” for your information ” を使わない。
誤解される危険性があるからである。
先の副詞 ” angrily ” の通り、 怒気を含むと解釈されても不思議はない。
「 一応、言っておきますが 」 と和訳してみたが、 どうだろう。
–
–
◆ もっと 率直な 口調なら、
- 言っとくけど
- ひとこと言わせてもらうけど
- 注意しておくけど
いずれも忠告だが、 相当いらだちを感じる。
直接言われてみると分かるが、 もう 脅迫 めいている。
” In case you haven’t noticed, – ” や “ Just so you know, – ”
に似通う、 いらついた言い様。
繰り返すが、 言語よりは人心掌握のスキルが焦点。
1 で検証したように、 そもそも ” for your information ” は、
「 あなたの情報のために 」 を意味している。
きちんと使えば、 間違いの指摘にも有効なはずだが、
誤解されがちな表現である。
マクミランの語釈 ( ” angrily ” ) を思い返そう。
◆ 逆に、 相手のミスに対し、 ここぞとばかり、
しかし品よく食らいつきたい時に、 大変便利。
なぜなら、 ” for your information ” の本分は、
「 1. ご参考までに 」 にあり、
これを隠れ蓑にする ことができるからである。
もとよりビジネスに多用される表現であり、 下品さは少ない。
むかつく相手を、 チクチクとっちめるには、 確かに使い勝手がよい。
嫌味に拍車をかけることができ、 嫌がらせに効果的。
もっとも、 私たちノンネイティブ( 非英語母語話者 )の場合、
さじ加減を誤り、 とんでもない結果を招く可能性もある。
< 要注意 > の表現である点は、しっかり押さえておくべし。
◆ 警告じみた「2」 の用法と区別するため、
「1」を以下の如く表すことがある。
頭に ” just ” を付け加えて、
Just for your information
–
” just ” には、 形容詞と副詞がある。
【発音】 dʒʌ́st (1音節)
語源は、 ラテン語「 公正な 」( jūstus )。
ここでは、 比較・程度の副詞 で、
「 ただ~だけ 」 「 ちょっとだけ 」 「 念のため 」。
–
露骨さを軽減する 婉曲 用法で重宝
される。
「 邪( よこしま )な動機はありませんから 」 とアピール。
” just checking in ” の ” just ” と似ている。
副詞 ” just ” を付け足すことで、「 情報提供 」 こそ目当てである
ことを強調。
いうなれば、 予防線を張っている。
副詞 “ only “、 ” simply “、 ” merely ” とあらかた同等。
言い振りを柔らかくしておき、 相手の誤解と反発を防ぐ。
日本語にも見られる、トラブル回避の婉曲表現。
「 クッション言葉 」 が典型である。
【類似表現】
■ ” for your reference ”
( ご参考までに )
→ 意味も欠点も、” for your information ”
とやんわり重なるが、さほどきつくはない
–
■ ” for future reference “
( 今後のために、 後学のために )
–
■ ” for your awareness “
( ご参考までに )
→ ” for your information ” に比べると、
誤解されづらい印象
–
【関連表現】
” In case you haven’t noticed, – ”
https://mickeyweb.info/archives/2948
( 一応、言っておくけれど )
“ Just so you know, – ”
https://mickeyweb.info/archives/2160
( 念のため、 あなたに言っておきますけど )
“ Just to be safe ”
https://mickeyweb.info/archives/2895
( 念のため )
“ Reminder ”
https://mickeyweb.info/archives/3312
( 思い出させるための表現 )
“ That’s all I’ve got to say. ”
https://mickeyweb.info/archives/2227
( 自分には、それしか言いようがない。)
” Nothing personal. ”
https://mickeyweb.info/archives/1402
( 個人的な意味はない。 悪気はない。 )
“ With all due respect ”
https://mickeyweb.info/archives/3944
( お言葉を返すようですが、失礼ながら )
“ Correct me if I’m wrong. ”
https://mickeyweb.info/archives/4685
( 私が間違っていたら訂正してください。 )
“ No offense, but – ”
https://mickeyweb.info/archives/11414
( 悪気はないのですが )