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Household name

      2021/03/07

誰もがよく知る名称、有名人

She became a household name in 2019.
(彼女は2019年に有名人になった。)

良くも悪くも有名。

それが  “a household name”。

  ゆうめい【有名】

世間に広くその名が知られていること。
名高いこと。また、そのさま。著名

(精選版 日本国語大辞典)

「名高い」も「著名」も、普段は好意的な文脈で
出てくる形容詞である。

  なだかい【名高い】

広く世間に名が知れわたっているさま。
多くよい意味で名が知られているときに使う。

(明鏡国語辞典 第二版)

  ちょめい【著名】

[すぐれていて]
よく名前が知られているようす。

(三省堂国語辞典 第七版)

“a household name” も、メディア報道で見聞きする
限り、好意的な起用が多い印象。

しかし、悪名高い場面でも使う。

  あくめい【悪名】

悪い評判。よくないうわさ。 あくみょう。

(大辞林 第三版)

大失態をやらかした政治家や芸能人が好例。

彼らも “a household name” の当事者になりうる。

不面目を招いた結果としての不名誉な役目。

いわば、晒し者(さらしもの)。

知名の根拠、つまり評判の良し悪しは、わざわざ
調べなくても、普通に生活していれば自ずと知れる。

それほどまでに、一般社会に浸透した名前を指す。


セレブみたい


◆  学習英英辞典(EFL辞典)では、こう説明する。

household name

a name that has become very well known.
OALD9、オックスフォード)

a famous person that most people know of.
CALD4、ケンブリッジ)

【発音】   háushòuld  néim

3大学習英英辞典(EFL辞典)のうち、唯一、LDOCE6
(ロングマン現代英英辞典)には項目立てされていなかった。

もっとも、”household” の例文には顔を出す。

“be a household name / word”

to be very well known.
(LDOCE6)

【英英辞典の基本表記】 スラッシュ( / ) = 「 または  (or) 」
→  ” be a household name ”  または  ” be a household word

だが、これだけでは物足りないので、兄弟辞典をご案内。

ロングマンのビジネス版である。

【iOS版】    ※  アプリ版 より転載
Longman Business English Dictionary

【書籍版】
https://amzn.to/2HEfeZ0

2007年刊。

例文がなんだか微妙。

  • “Nintendo is now a household name.”
    (任天堂は今では有名である。)
    (任天堂は今や有名である。)

130年の社歴を誇る、我らが任天堂

“now a household name” だと?

21世紀に?

何をほざいているのだ。

1889年(明治22年)創業老舗企業ですぞ。

甚だ “out of date” な感があるのは、私が日本人ゆえか。


◆  ともかく、ここで最も重要なことは、例文が示すように、

  “household name” の対象は、人間だけでない。

上掲 “Longman Business English Dictionary ” の語釈通り、
a product, company etc” と適用範囲は幅広い。

さらなる英英辞書で補足すると、

household name or household word

a person or thing that is very well known.
Collins English Dictionary, 12th Edition

a household name, a household word

a famous person or organization.
Cambridge Academic Content Dictionary

人間以外にも適用できることは、黄ハイライトより明らか。

例えば、

  •  製品
  •  会社
  •  物品
  •  組織



◆  “household name” は <2語ワンセット> で名詞扱い。

初出は、1862年と語原サイトには書かれている。

先の “Longman Business English Dictionary ” が記すように、

  •  “n”  →  “noun”  = 「名詞」
  •  [C]  →  “countable”  = 「可算」

したがって、 “household name” は可算名詞。

本稿でご紹介した英英辞書でも、異論は見られない。

可算名詞なので、基礎英文法に従って、冠詞は “a” が基本。

既記の “LDOCE6” 及び “Cambridge Academic Content
Dictionary
” は、冠詞付きで記載する。


◆  可算名詞 “household name” の意味を把握した
ところで、”household” について検討してみる。

語原は、中期英語「所有すること」(houshold)。

で、見た目から意味合いを推測できるかもしれない。

  • 名詞  “house”(家)
  • 動詞  “hold”(所有する)

household” には、名詞と形容詞がある。

両者の重要度と頻出度は同等。

すなわち、

◇  名詞・形容詞  “household” 

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

    【発音】  háushòuld
    【音節】  house-hold  (2音節)

英単語全体の立ち位置は、そこそこのポジション。

基本的意味は、

  •  名詞  “household”

    ・  家族、家庭
    ・  世帯、所帯「 世帯主
    ・  head of household
    ・  householder
    ・  head of a household
    ・  head of the household
  •  形容詞  “household”

    ・  家族の、家庭の
    ・  一家の
    ・  ありふれた、おなじみの

「家」中心の語義の中、赤字の形容詞が異彩を放つ。

“a household name” は、これに該当する。

家庭とは<日常>そのもので、慣れ親しんだ平凡な場。

  取り立てて特色がないから、「 ありふれた 」「 おなじみの 」。

こんな流れで展開した語義である。

これに可算名詞の “name“(名前、名称) を加えると、
“household name” は「おなじみの名」の意味をなす。

  おなじみ【お馴染み】

  1. 「なじんでいること」「よく知っていること」
    の尊敬語・美化語。
  2. 「いつも来る客」の尊敬語。
    ( ⇔ 一見)

    (三省堂国語辞典 第七版)

なぜか 3大学習英英辞典(EFL辞典)の 形容詞 “household”
には、この語義が明記されていない。

3辞書とも、形容詞は「家族の」「家庭の」に焦点を当てている。

◆  以下、代表的用法。

  • household goods
    (家財道具)
  • household products
    (家庭用品)
  • household appliances
    (家電製品)
  • household chores
  • household duties
    (家事)
  • household use
    (家庭用)
  • household income
    (世帯収入)
  • household  /  personal effects
    (家財・身の回り品)
    ※  米税関 の使用用語

 

家庭ごみ禁止



◆  ところが、表題の場合、「家族の」「家庭の」では埒が明かない。

ここは、英語ネイティブ向けの辞書にご登場願おう。

“household”

  1.   of a household or home; domestic 
  2.   a)  common;  ordinary
      b)  known to almost everyone; very familiar

    Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

【発音】  háushòuld
【音節】  house-hold  (2音節)

形容詞のみ引用したが、簡潔明快の見事な語釈だと思う。

日本人学習者に対し、弊サイトがお勧めするネイティブ用
英英辞書の筆頭に挙げているのがこちら。

AP通信の公式辞書(”The official dictionary”)で、
最新の「第5版」は、2018年6月発売。

iOS版は、2018年7月発売。

tapped out” にて、この辞書の持ち味を写真入りで詳述した。

ご興味のある方にご覧いただければ幸い。


◆  以上、”household name” の大略を述べた。

良否不問で、有名人はもちろん、ありとあらゆる
名だたる
事物をカバーする可算名詞

であるのがポイント。

ところで、個人が “a household name” になることはよいことなのか。

この考察で、本稿を結びたい。

既に触れたように、恥さらしな場面でも使う表現である。

日本語の「有名」も、両用可能である点は、国語辞典で
確認してきた。

「有名人」になることの是非を問うことは、そう単純でない。

それでも、一般人がやたらと名をさらすのは、リスクが大きい
と私は考える。

「プライバシー」は、不可逆的な性質 を帯びる。

喪失後、初めて価値に気づく類の財産に他ならない。

プライバシーというのは、いったん失えば二度と取り戻す
ことはできないという際立った特徴を持つ貴重かつ希少な
資産だ。

(中略)

芸能人やスポーツ選手など、プライバシーの放棄が前提
となる職業が高額の報酬に値するのは、成功の代償として
失うものがあまりにも大きいからだ。


雨の降る日曜は幸福について考えよう
橘 玲(著)、幻冬舎、2004年刊

※  ハイライト・下線は引用者

平穏でマイペースな個人生活を維持したいのであれば、
相応の見返りなくして、自ら放棄するには代償が大きい。

下線の「成功の代償」は「有名税」と称される。

  ゆうめいぜい【有名税】

■  プライバシーの侵害など、有名であるがために
ある程度は我慢しなければならない不快な出来事。
(広辞苑 第七版)

■  有名であるがゆえに払わなければならない代償を、
税にたとえていう。
(精選版 日本国語大辞典)

■  有名人であるがゆえに、余計な経費がかかったり、
名前を利用されて迷惑を受けたりすることを、税金
に見立てていう語。
(大辞林 第三版)

英語では、” the price of fame ” が一般的な言い回し。

直訳は「名声の価格」。

「有名税を払う」なら、” pay the price of fame “。

橘玲氏の説く、

プライバシーというのは、
いったん失えば二度と取り戻すことはできない

のくだりで、匿名性の大切さが胸に染みる

有名になる反面、不自由も生じる。

もしそれが本当だとすれば、自他の個人情報の取り扱いには、
細心の注意を払おう、と意を強くしたくもなる。

SNS全盛の昨今、変に目立つ行動を控える( keep a low profile
ことで、不要な注目を回避する( avoid unwanted attention )。

こうした姿勢こそ、一般人が我が身と家族を守る上で不可欠である
と感じる。

【参照】   辞書の「自炊」と辞書アプリ

 

All fame is dangerous:
Good, bringeth Envy; Bad, Shame.

( 名声はどれも危険。 良いことでは妬まれ、悪いことでは汚名を被る。)

Thomas Fuller (1608-1661)
トーマス・フラー
英国の牧師・歴史家

※  “bringeth”  →  “bring” の古語 「 三人称単数現在形直説法 」
( archaic third-person singular simple present indicative form of “bring” )

 

 

 

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