プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Household name

      2022/04/06

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

誰もがよく知る名称、  有名人

She became  a household name  in 2019.

( 彼女は2019年に有名人になった。)


良くも悪くも有名。

それが  ” a household name “。

  ゆうめい【有名】

世間に広くその名が知られていること。
名高いこと。 また、そのさま。 著名
( 精選版 日本国語大辞典 )


「 名高い 」も「 著名 」も、日頃は好意的な文脈で
出てくる形容詞である。

  なだかい【名高い】

広く世間に名が知れわたっているさま。
[ 使い方 ]多くよい意味で名が知られているときに使う。
( 明鏡国語辞典 第三版 )

  ちょめい【 著名 】

[ すぐれていて ]
よく名前が知られているようす。
( 三省堂国語辞典 第八版 )

※  ハイライトは引用者


” a household name ” も、 メディア報道で見聞きする
限り、 好意的な起用が多い印象。

しかし、悪名高い場面でも使う。

  あくめい【悪名】

悪い評判。 よくないうわさ。 あくみょう。

( 大辞林 第四版 )

※  ハイライトは引用者


大失態 をやらかした政治家や芸能人が好例。

彼らも  ” a household name ”  の当事者になりうる。

不面目を招いた結果としての不名誉な役目。

いわば、晒し者( さらしもの )。

知名の根拠、つまり評判の良し悪しは、わざわざ
調べなくても、普通に生活していれば自ずと知れる。

それほどまでに、一般社会に浸透した名前を指す。


セレブみたい


◆  学習英英辞典(EFL辞典)では、こう説明する。

household name

a person, thing or name that has become very well known.
OALD10、オックスフォード )

a famous person that most people know of.
CALD4、ケンブリッジ )

【発音】   háushòuld  néim


3大学習英英辞典( EFL辞典 )のうち、唯一、LDOCE6
( ロングマン現代英英辞典 )には項目立てされていなかった。

もっとも、” household ” の例文には顔を出す。

” be a household name / word ”

to be very well known.
( LDOCE6 )

【 英英辞典の基本表記 】 スラッシュ( / ) = 「 または  (or) 」
→  ” be a household name ”  または  ” be a household word


これだけでは物足りないので、兄弟辞典をご案内。

ロングマンのビジネス版である。


【 iOS版 】    ※  アプリ版 より転載
Longman Business English Dictionary

【 書籍版 】
https://amzn.to/2HEfeZ0


2007年刊。

例文がなんだか微妙。

  • ” Nintendo is now a household name.”
    ( 任天堂は今では有名である。)
    ( 任天堂は今や有名である。)

130年の社歴を誇る、我らが 任天堂

” now a household name ” だと

21世紀に

何をほざいているのだ。

1889年(明治22年)創業老舗企業ですぞ。

甚だ  ” out of date ”  な感があるのは、私が日本人ゆえか。



◆  ともかく、 ここで 最も重要なことは、 例文が示すように、

  ” household name ” の対象は、 人間だけでない。

上掲 ” OALD10 ”  及び  ” Longman Business English Dictionary
の語釈通り、適用範囲は幅広い。

  •  a person, thing or name ing or name
    ( OALD10 )
  •   a product, company etc 
    Longman Business English Dictionary


◆  さらなる英英辞書で補足すると、

household name or household word

a person or thing that is very well known.
Collins English Dictionary, 12th Edition

a household name,  a household word

a famous person or organization.
Cambridge Academic Content Dictionary

※  ハイライトは引用者


人間以外にも適用できることは、黄ハイライトより明らか。

例えば、

  •  製品
  •  会社
  •  物品
  •  組織



◆  ” household name ” は < 2語ワンセット > で名詞扱い。

初出は「 1862年 」と 語原サイト には書かれている。

先の  ” Longman Business English Dictionary ”  が記すように、

  •  “n”  →  ” noun ”  = 「 名詞 」
  •  [C]  →  ” countable ”  = 「 可算 」

したがって、 ” household name ” は可算名詞。

本稿でご紹介した英英辞書でも、異論は見られない。

可算名詞なので、基礎英文法に従って、冠詞は “a” が基本。

既記の ” LDOCE6 ”  及び  ” Cambridge Academic Content
Dictionary
” は、 冠詞付きで記載する。


◆  可算名詞  ” household name ”  の意味を把握した
ところで、 ” household ” について検討してみる。

語原は、中期英語「 所有すること 」( houshold )。

見た目から意味合いを推測できるかもしれない。

  • 名詞  ” house ” ( 家 )
  • 動詞  ” hold ” ( 所有する )

household ” には、名詞と形容詞がある。

両者の重要度と頻出度は同等。

すなわち、

◇  名詞・形容詞  ” household ” 

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

    【発音】  háushòuld
    【音節】  house-hold  (2音節)


英単語全体の立ち位置は、そこそこのポジション。

基本的意味は、

  •  名詞  ” household ”

    ・  家族、家庭
    ・  世帯、所帯「 世帯主
    ・  head of household
    ・  householder
    ・  head of a household
    ・  head of the household
  •  形容詞  ” household ”

    ・  家族の、家庭の
    ・  一家の
    ・  ありふれた、おなじみの

※  ハイライト・赤字は引用者


「 家 」中心の語義の中、赤字の形容詞が異彩を放つ。

” a household name ” は、これに該当する。

家庭とは < 日常 > そのもので、慣れ親しんだ平凡な場。

  取り立てて特色がないから、「 ありふれた 」「 おなじみの 」。

こんな流れで展開した語義である。

これに可算名詞の ” name ( 名前、 名称 ) を加えると、
” household name ” は 「 おなじみの名 」の意味をなす。

  おなじみ【 御馴染み 】

■  「 なじみ 」を丁寧にいう語。
( 大辞林 第四版 )

  おなじみ【 御馴染(み) 】

1. 「 なじんでいること 」を言う敬語。
2.  その店をひいきにしてよく来るお客。
( 岩波 国語辞典 第八版 )

  おなじみ【 お馴染み 】

1. 「 なじんでいること 」「 よく知っていること 」
の尊敬語・美化語。
2. 「 いつも来る客 」の尊敬語。
( ⇔ 一見)
( 三省堂国語辞典 第八版 )

※  ハイライトは引用者


なぜか 3大学習英英辞典( EFL辞典 )の 形容詞 ” household ”
には、 この語義が明記されていない。

3辞書とも、形容詞は「 家族の 」「 家庭の 」に焦点を当てている。

◆  以下、代表的用法。

  •  household goods
    ( 家財道具 )
  •  household products
    ( 家庭用品 )
  •  household appliances
    ( 家電製品 )
  •  household chores
  •  household duties
    ( 家事 )
  •  household use
    ( 家庭用 )
  •  household income
    ( 世帯収入 )
  •  household  /  personal effects
    ( 家財・身の回り品 )
    ※  米税関 の使用用語

 

家庭ごみ禁止



◆  ところが、表題の場合、「 家族の 」「 家庭の 」では埒が明かない。

ここは、英語ネイティブ向けの辞書にご登場願おう。

” household “

  1.   of a household or home; domestic 
  2.   a)  common;  ordinary
      b)  known to almost everyone; very familiar

    Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

※  ハイライトは引用者

【発音】  háushòuld
【音節】  house-hold  (2音節)


形容詞のみ引用したが、 簡潔明快の見事な語釈だと思う。

日本人学習者に対し、 弊サイトがお勧めするネイティブ用
英英辞書の筆頭に挙げているのがこちら。

AP通信 の公式辞書( ” The official dictionary ” )で、
最新の「 第5版 」は、 2018年6月発売。

iOS版 は、2018年7月発売。

tapped out ” にて、 この辞書の持ち味を写真入りで詳述した。

ご興味のある方にご覧いただければ幸い。


◆  以上、” household name ” の大略を述べた。

良否不問で、有名人はもちろん、ありとあらゆる
名だたる
事物をカバーする可算名詞

であるのがポイント。

果たして、個人が  ” a household name ”  になることはよいことなのか。

この考察で、本稿を結びたい。

既に触れたように、恥さらしな場面でも使う表現である。

日本語の「 有名 」も、両用可能である点は、国語辞典で
確認してきた。

「 有名人 」になることの是非を問うことは、そう単純でない。

それでも、一般人がやたらと名をさらすのは、リスクが大きい
と私は考える。

「 プライバシー 」は、 不可逆的な性質  を帯びる。

喪失後、初めて価値に気づく類の財産に他ならない。

プライバシーというのは、いったん失えば二度と取り戻す
ことはできないという際立った特徴を持つ貴重かつ希少な
資産だ。

( 中略 )

芸能人やスポーツ選手など、プライバシーの放棄が前提
となる職業が高額の報酬に値するのは、成功の代償として
失うものがあまりにも大きいからだ。


雨の降る日曜は幸福について考えよう
橘 玲(著)、 幻冬舎、 2004年刊

※  ハイライト・下線は引用者


平穏で、マイペースな個人生活を維持したいのであれば、
相応の見返りなくして、自ら放棄するには代償が大きい。

下線の 「 成功の代償 」 は 「 有名税 」 と称される。

  ゆうめいぜい【有名税】

■  プライバシーの侵害など、有名であるがために
ある程度は我慢しなければならない不快な出来事。
( 広辞苑 第七版 )

■  有名であるがゆえに払わなければならない代償を、
税にたとえていう。
( 精選版 日本国語大辞典 )

■  有名人であるがゆえに、余計な経費がかかったり、
名前を利用されて迷惑を受けたりすることを、税金
に見立てていう語。
( 大辞林 第四版 )


英語では、” the price of fame ” が一般的な言い回し。

直訳は「 名声の価格 」。

「 有名税を 払う 」なら、” pay the price of fame “。

橘玲氏の説く、

プライバシーというのは、

いったん失えば二度と取り戻すことはできない


上記のくだりで、 匿名性の大切さが 胸に染みる

有名になる反面、 不自由も生じる。

もし本当だとすれば、 自他の個人情報の取り扱いには、
細心の注意を払おう、 と意を強くしたくもなる。

SNS全盛の昨今、 変に目立つ行動を控える ( keep a low profile
ことで、 不要な注目を回避する ( avoid unwanted attention )。

こうした姿勢こそ、 一般人が我が身と家族を守る上で 不可欠である
と感じる。

私自身、 従業員と自営業、 両方とも欠かせない職なので、
とにかく 有名にならぬよう、 普段から気をつけている。

下手に目立ってしまうと、 思わぬ厄難を引き寄せるのが、 世の常。

それなりに自己実現できていれば、 過剰な承認要求に苦しまない。

I don’t feel the  need for  constant attention from everybody.

【参照】   辞書の「自炊」と辞書アプリ

 

 

All fame is dangerous:
Good, bringeth Envy;  Bad,  Shame.

( 名声はどれも危険。 良いことでは妬まれ、悪いことでは汚名を被る。)

Thomas Fuller  (1608-1661)
トーマス・フラー
英国の牧師・歴史家

※  ” bringeth ”  →  ” bring ” の古語 「 三人称単数現在形直説法 」
( archaic third-person singular simple present indicative form of  ” bring ” )

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英語, 英語フレーズ