Household name
2025/01/06
誰もがよく知る名称、 有名人
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She became a household name in 2019.( 彼女は2019年に有名人になった。)
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良くも悪くも有名。
それが ” a household name “。
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ゆうめい【有名】世間に広くその名が知られていること。
名高いこと。 また、そのさま。 著名。( 精選版 日本国語大辞典 )
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「 名高い 」も「 著名 」も、日頃は好意的な文脈で
出てくる形容詞である。
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なだかい【名高い】広く世間に名が知れわたっているさま。
[ 使い方 ]多くよい意味で名が知られているときに使う。( 明鏡国語辞典 第三版 )
–ちょめい【 著名 】
[ すぐれていて ]よく名前が知られているようす。( 三省堂国語辞典 第八版 )
※ ハイライトは引用者
–
” a household name ” も、 メディア報道で見聞きする
限り、 好意的な起用が多い印象。
しかし、悪名高い場面でも使う。
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あくめい【悪名】悪い評判。 よくないうわさ。 あくみょう。
( 大辞林 第四版 )
※ ハイライトは引用者
–
大失態 をやらかした政治家や芸能人が好例。
彼らも ” a household name ” の当事者になりうる。
不面目を招いた結果としての不名誉な役目。
いわば、 晒し者( さらしもの )。
知名の根拠、 つまり評判の良し悪しは、わざわざ
調べなくても、 普通に生活していれば自ずと知れる。
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それほどまでに、 一般社会に浸透した名前を指す。
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セレブみたい
ー
◆ 学習英英辞典( EFL辞典 )では、
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household namea person, thing or name that has become very well known.
( OALD10、オックスフォード )a famous person that most people know of.
( CALD4、ケンブリッジ )【発音】 háushòuld néim
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3大学習英英辞典( EFL辞典 )のうち、 唯一、 LDOCE6
( ロングマン現代英英辞典 )には項目立てされていなかった。
もっとも、” household ” の例文には顔を出す。
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be a household name / word
to be very well known.
( LDOCE6 )【 英英辞典の基本表記 】 スラッシュ( / ) = 「 または (or) 」
→ ” be a household name ” または ” be a household word “
–
これだけでは物足りないので、 兄弟辞典をご案内。
ロングマンのビジネス版である。
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–【 iOS版 】 ※ アプリ版 より転載
Longman Business English Dictionary【 書籍版 】
https://amzn.to/2HEfeZ0
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2007年刊。
例文がなんだか微妙。
- ” Nintendo is now a household name.”
( 任天堂は今では有名である。)
( 任天堂は今や有名である。)
130年の社歴を誇る、 我らが 任天堂。
” now a household name ” だと?
21世紀に?
なにをほざいているのだ。
1889年(明治22年)創業 の 老舗 企業ですぞ。
甚だ ” out of date ” な感があるのは、 私が日本人ゆえか。
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◆ ともかく、 ここで 最も重要なことは、 例文が示すように、
” household name ” の対象は、 人間だけでない。
上掲 ” OALD10 ” 及び ” Longman Business English Dictionary ”
の語釈通り、適用範囲は幅広い。
- a person, thing or name
( OALD10 )
– - a product, company etc
( Longman Business English Dictionary )
–
◆ さらなる英英辞書で補足すると、
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household name or household worda person or thing that is very well known.
( Collins English Dictionary, 12th Edition )
–a household name, a household word
a famous person or organization.
( Cambridge Academic Content Dictionary )※ ハイライトは引用者
–
人間以外にも適用できることは、黄ハイライトより明らか。
例えば、
- 製品
- 会社
- 物品
- 組織
ー
ー
◆ ” household name ” は < 2語ワンセット > で名詞扱い。
初出は 「 1862年 」 と 語源サイト に書かれている。
先の ” Longman Business English Dictionary ” が記すように、
したがって、 ” household name ” は可算名詞。
本稿でご紹介した英英辞書でも、 異論は見られない。
可算名詞なので、 基礎英文法に従って、 冠詞は ” a ” が基本。
既記の ” LDOCE6 ” 及び ” Cambridge Academic Content
Dictionary ” は、 冠詞付きで記載する。
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–
◆ 可算名詞 ” household name ” の意味を把握した
ところで、 ” household ” について検討してみる。
語原は、 中期英語 「 所有すること 」 ( houshold )。
見た目から意味合いを推測できるかもしれない。
- 名詞 ” house ” ( 家 )
- 動詞 ” hold ” ( 所有する )
平板で、均一なリズムの日本語では、” house ” は、
3音節の 「 ハ – ウ – ス 」 。
英語では 「 1音節 ( one syllable )」。
【発音】 háus
【音節】 house (1音節)
腹の底から ゲロする 迫力で、 一息に発声する。
「 音節 」( syllable、シラブル ) とは、 発音の最小単位。
「 1音節 」の場合、 この 「 発音の最小単位 」 に切れ目がないため、
ゲロ の凄みが出る。
日英の 「 音節 」 については、” integrity ” で深掘りしている
( 図入り )。
◆ ” household ” には、名詞と形容詞がある。
両者の重要度と頻出度は同等。
すなわち、
◇ 名詞・形容詞 ” household ”
- 重要度:<3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:3000語圏外
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
–
【発音】 háushòuld
【音節】 house-hold (2音節)
–
英単語全体の立ち位置は、そこそこのポジション。
基本的意味は、
–
-
名詞 ” household ”
–
・ 家族、 家庭・ 世帯、 所帯
「 世帯主 」
・ head of household
・ householder
・ head of a household
・ head of the household
–
–
We’d love to have you over.
FYI : We’re a no-shoe household.( ぜひお越しください。
申し添えますと、 我が家は土足禁止です。)
–
「 世帯合併 」
・ merger of households
–
「 世帯分離 」
・ separation of households
–
「 共同世帯 」
・ joint households
–
「 世帯人口 」
・ household population
–
「 一世帯あたりの人数 」
・ persons per household–
–
–
–
一世帯につき 6アカウントまで
–
◆ 名詞の ” household ” に形容詞を添えた例は、
「 アルコール依存症の家族がいる世帯 」
・ an alcoholic household
通称 「 アル中世帯 」 で、 主に親がアルコール依存症。
–
-
形容詞 ” household “
–
・ 家族の、家庭の
・ 一家の
・ ありふれた、おなじみの
※ ハイライト・赤字は引用者
–
「 家 」 中心の語義の中、 赤字の形容詞が異彩を放つ。
” a household name ” は、 これに該当する。
家庭とは < 日常 > そのもので、 慣れ親しんだ平凡な場。
取り立てて特色がないから、「 ありふれた 」「 おなじみの 」。
こんな流れで展開した語義である。
さらに可算名詞の ” name “( 名前、 名称 ) を加えると、
” household name ” は 「 おなじみの名 」 の意味をなす。
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おなじみ【 御馴染み 】■ 「 なじみ 」を丁寧にいう語。
( 大辞林 第四版 )
–おなじみ【 御馴染(み) 】
1. 「 なじんでいること 」を言う敬語。
2. その店をひいきにしてよく来るお客。–
( 岩波 国語辞典 第八版 )
–おなじみ【 お馴染み 】
1. 「 なじんでいること 」「 よく知っていること 」
の尊敬語・美化語。
2. 「 いつも来る客 」の尊敬語。
( ⇔ 一見)–
( 三省堂国語辞典 第八版 )※ ハイライトは引用者
–
なぜか 3大学習英英辞典( EFL辞典 ) の 形容詞 ” household ”
には、 この語義が明記されていない。
3辞書とも、 形容詞は 「 家族の 」「 家庭の 」 に焦点を当てる。
ー
◆ 以下、代表的用法。
- household goods
( 家財道具 )
– - household products
- household items
( 家庭用品 )
– - household appliances
( 家電製品 )
– - household chores
- household duties
( 家事 )
– - household use
( 家庭用 )
– - household income
( 世帯収入 )
– - household / personal effects
( 家財・身の回り品 ) –
※ 米税関 の使用用語
家庭ごみ禁止
–
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◆ ところが、 表題の場合、「 家族の 」「 家庭の 」 では埒が明かない。
–
ここは、 英語ネイティブ向けの辞書にご登場願おう。
–
household
- of a household or home; domestic
- a) common; ordinary
b) known to almost everyone; very familiar
( Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition )※ ハイライトは引用者–
【発音】 háushòuld
【音節】 house-hold (2音節)
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形容詞のみ引用したが、 簡潔明快の見事な語釈だと思う。–
日本人学習者に対し、 弊サイトがお勧めするネイティブ用
英英辞書の筆頭に挙げているのがこちら。
AP通信 の公式辞書 ( ” The official dictionary ” ) で、
最新の 「 第5版 」 は、 2018年6月発売。
iOS版 は、 2018年7月発売。
” tapped out ” にて、 この辞書の持ち味を写真入りで詳述した。
ご興味のある方にご覧いただければ幸い。
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◆ 以上、 ” household name ” の大略を述べた。
良否不問で、 有名人はもちろん、 ありとあらゆる
名だたる事物をカバーする可算名詞
–
これがポイント。
–
果たして、 個人が ” a household name ” になることはよいことなのか。
有名になりたがる ( seek publicity ; seek attention ) 言動はどうか。
本稿の結びに、 考察してみたい。
既に触れたように、 恥さらしな場面でも使う表現である。
日本語の「 有名 」も、両用可能である点は、国語辞典で
確認してきた。
「 有名人 」 になることの是非を問うことは、 そう単純でない。
それでも、 一般人がやたらと名をさらすのは、 リスクが大きい
と私は考える。
「 プライバシー 」 は、 不可逆的な性質 を帯びる。
喪失後、 初めて価値に気づく類の財産に他ならない。
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プライバシーというのは、いったん失えば二度と取り戻す
ことはできないという際立った特徴を持つ貴重かつ希少な
資産だ。( 中略 )
芸能人やスポーツ選手など、プライバシーの放棄が前提
となる職業が高額の報酬に値するのは、成功の代償 として
失うものがあまりにも大きいからだ。
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『 雨の降る日曜は幸福について考えよう 』
橘 玲(著)、 幻冬舎、 2004年刊※ ハイライト・太字・下線は引用者
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平穏で、 マイペースな個人生活を維持したいのであれば、
相応の見返りなくして、 自ら放棄するには代償が大きい。
下線の 「 成功の代償 」 は 「 有名税 」 と称される。
–
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ゆうめいぜい【有名税】
■ プライバシーの侵害など、有名であるがために
ある程度は我慢しなければならない不快な出来事。( 広辞苑 第七版 )
–■ 有名であるがゆえに払わなければならない代償を、
税にたとえていう。( 精選版 日本国語大辞典 )
–■ 有名人であるがゆえに、余計な経費がかかったり、
名前を利用されて迷惑を受けたりすることを、税金
に見立てていう語。( 大辞林 第四版 )
–
英語では、” the price of fame ” が一般的な言い回し。
直訳は「 名声の価格 」。
「 有名税を 払う 」なら、” pay the price of fame “。
橘玲氏の説く、
–
プライバシーというのは、いったん失えば二度と取り戻すことはできない
有名になる反面、 不自由も生じる。
「 報道の自由 」 やら 「 持ちつ持たれつ 」 やらの論理に基づき、
有名人のプライバシーに対する配慮は希薄化する傾向は根強い。
大衆の注目を集めることは、 理に適っているという見方である。
けれども、 メディアの過剰な干渉を視聴者が身近に感じ取ることが
できるようになり、 いにしえの取材手法が批判対象になってきた。
世間の目にさらされることの危うさと悲惨な余波を学び取ると、 自他の
個人情報の取り扱いには細心の注意を払おう、 と意を強くしたくもなる。
SNS全盛の昨今、 変に目立つ行動を控え、 他人の関心を引かないようにする。
- keep a low profile
- keep / stay out of the limelight
- keep / stay out of the spotlight
- keep / stay out of the public eye
- live low-key
- lay low
派手な振る舞いを慎み、 不要な注目を回避する気構えが大事。
こうした姿勢こそ、 一般人が我が身と家族を守る上で 不可欠である
と感じる。
I stay out of the spotlight and limit my social media presence
to the bare minimum.
この世には、 いろんな人がいますから …
There are some disturbing people out there.
私自身、 従業員と自営業、 どちらも欠かせない職なので、
とにかく 有名にならぬよう、 普段から気をつけている。
下手に目立ってしまうと、 思わぬ厄難を引き寄せるのが、 世の理。
それなりに自己実現できていれば、 過剰な承認要求に苦しまない。
I don’t feel the need for constant attention from everybody.
見知らぬ大勢の目を気にする人生はしんどくて、 まっぴらごめん。
地味で地道にやる方が、 プレッシャーから解放されて続けやすい。
語学は、 慎ましくしたたかな根気で、 へこたれずに粘り抜く営為。
本質的に華やかではないため、 継続を優先する方がよい気がする。
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【参照】 辞書の「自炊」と辞書アプリ
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All fame is dangerous:
Good, bringeth Envy; Bad, Shame.( 名声はどれも危険。
良いことでは妬まれ、悪いことでは汚名を被る。) Thomas Fuller ( 1608-1661 )
トーマス・フラー
英国の牧師・歴史家
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※ ” bringeth ”
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→ ” bring ” の古語 「 三人称単数現在形直説法 」
( archaic third-person singular simple present
indicative form of ” bring ” )
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- ” Fame and fortune are both a blessing and a curse.”
( 名声と富は、恵みであると同時に呪いでもある。)
– - ” Beauty is both a blessing and a curse.”
( 美貌は、恵みであると同時に呪いでもある。)
【参照】 ” Comfortable in one’s own skin ”
【参考】 ※ 外部サイト
- the tragic objectification of a boy: björn andrésen
( 食い物にされた悲劇の少年 : ビョルン・アンドレセン )
https://www.youtube.com/watch?v=LIJLlgZKrOA
2023年11月01日付 ※ 動画全長 15分40秒
– - 大人たちに性的に食い物にされた “ 世界一美しい少年 ”
~ 『 ベニスに死す 』 ビョルン・アンドレセン
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/g35475943/born-into-a-whutering-family-bjorn-andresen-210216/
2021年2月16日付
– - Brooke Shields – The Price of Pretty
( ブルック・シールズ – 美貌の代償 )
https://www.youtube.com/watch?v=49CWffNu9bw
2023年1月19日付 ※ 動画全長 10分18秒 ( リンク切れ )
–
→ 別稿 ” no need ” で詳しくつづった ( 写真入り )