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Household name

      2024/03/14

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 8 minutes

誰もがよく知る名称、  有名人


She became  a household name  in 2019.

( 彼女は2019年に有名人になった。)


良くも悪くも有名。

それが  ” a household name “。

  ゆうめい【有名】

世間に広くその名が知られていること。
名高いこと。 また、そのさま。 著名

( 精選版 日本国語大辞典 )


「 名高い 」も「 著名 」も、日頃は好意的な文脈で
出てくる形容詞である。

  なだかい【名高い】

広く世間に名が知れわたっているさま。
[ 使い方 ]多くよい意味で名が知られているときに使う。

( 明鏡国語辞典 第三版 )

  ちょめい【 著名 】

[ すぐれていて ]
よく名前が知られているようす。

( 三省堂国語辞典 第八版 )

※  ハイライトは引用者


” a household name ” も、 メディア報道で見聞きする
限り、 好意的な起用が多い印象。

しかし、悪名高い場面でも使う。

  あくめい【悪名】

悪い評判。 よくないうわさ。 あくみょう。

( 大辞林 第四版 )

※  ハイライトは引用者


大失態  をやらかした政治家や芸能人が好例。

彼らも  ” a household name ”  の当事者になりうる。

不面目を招いた結果としての不名誉な役目。

いわば、 晒し者( さらしもの )。

知名の根拠、 つまり評判の良し悪しは、わざわざ
調べなくても、 普通に生活していれば自ずと知れる。

それほどまでに、 一般社会に浸透した名前を指す。


セレブみたい


◆  学習英英辞典( EFL辞典 )では、

household name

a person, thing or name that has become very well known.
OALD10、オックスフォード )

a famous person that most people know of.
CALD4、ケンブリッジ )

【発音】   háushòuld  néim


3大学習英英辞典( EFL辞典 )のうち、唯一、LDOCE6
( ロングマン現代英英辞典 )には項目立てされていなかった。

もっとも、” household ” の例文には顔を出す。

” be a household name / word ”

to be very well known.
( LDOCE6 )

【 英英辞典の基本表記 】 スラッシュ( / ) = 「 または  (or) 」
→  ” be a household name ”  または  ” be a household word


これだけでは物足りないので、 兄弟辞典をご案内。

ロングマンのビジネス版である。


【 iOS版 】    ※  アプリ版 より転載
Longman Business English Dictionary

【 書籍版 】
https://amzn.to/2HEfeZ0


2007年刊。

例文がなんだか微妙。

  • Nintendo is now a household name.
    ( 任天堂は今では有名である。)
    ( 任天堂は今や有名である。)

130年の社歴を誇る、 我らが 任天堂

” now a household name ”  だと

21世紀に

なにをほざいているのだ。

1889年(明治22年)創業  の  老舗 企業ですぞ。

甚だ  ” out of date ”  な感があるのは、 私が日本人ゆえか。



◆  ともかく、 ここで 最も重要なことは、 例文が示すように、

  ” household name ” の対象は、 人間だけでない。

上掲 ” OALD10 ”  及び  ” Longman Business English Dictionary
の語釈通り、適用範囲は幅広い。

  •  a person, thing or name
    ( OALD10 )
  •   a product, company etc 
    Longman Business English Dictionary


◆  さらなる英英辞書で補足すると、

household name or household word

a person or thing that is very well known.
Collins English Dictionary, 12th Edition

a household name,  a household word

a famous person or organization.
Cambridge Academic Content Dictionary

※  ハイライトは引用者


人間以外にも適用できることは、黄ハイライトより明らか。

例えば、

  •  製品
  •  会社
  •  物品
  •  組織



◆  ” household name ” は < 2語ワンセット > で名詞扱い。

初出は 「 1862年 」 と  語源サイト に書かれている。

先の  ” Longman Business English Dictionary ”  が記すように、

  •  “n”  →  ” noun ”  = 「 名詞 」
  •  [C]  →  ” countable ”  = 「 可算 」

したがって、 ” household name ” は可算名詞。

本稿でご紹介した英英辞書でも、 異論は見られない。

可算名詞なので、 基礎英文法に従って、 冠詞は ” a ” が基本。

既記の ” LDOCE6 ”  及び  ” Cambridge Academic Content
Dictionary
” は、 冠詞付きで記載する。


◆  可算名詞  ” household name ”  の意味を把握した
ところで、 ” household ” について検討してみる。

語原は、 中期英語 「 所有すること 」 ( houshold )。

見た目から意味合いを推測できるかもしれない。

  •  名詞  ” house ” ( 家 )
  •  動詞  ” hold ” ( 所有する )

平板で、均一なリズムの日本語では、” house ”  は、

3音節の 「 –  」 。

英語では 「 1音節 ( one syllable )」。

【発音】  háus
【音節】  house  (1音節)

腹の底から ゲロする 迫力で、 一息に発声する。

「 音節 」 ( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位。

「 1音節 」の場合、 「 発音の最小単位 」 に切れ目がないため、

ゲロ  の凄みが出る。

日英の 「 音節 」 については、” integrity ” で深掘りしている
( 図入り )。

 

◆  ” household ” には、名詞と形容詞がある。

両者の重要度と頻出度は同等。

すなわち、

◇  名詞・形容詞  ” household ” 

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

    【発音】  háushòuld
    【音節】  house-hold  (2音節)


英単語全体の立ち位置は、そこそこのポジション。

基本的意味は、

  •  名詞  ” household ”

    ・  家族、 家庭
    ・  世帯、 所帯


    We’d love to have you over.
    FYI :  We’re a no-shoe household.

    ( ぜひお越しください。
    申し添えますと、 我が家は土足禁止です。)


    世帯主
    ・  head of household
    ・  householder
    ・  head of a household
    ・  head of the household

    世帯合併
    ・  merger of housholds

    世帯分離 」
    ・  separation of housholds

    共同世帯 」
    ・  joint households

    世帯人口
    ・  household population

    一世帯あたりの人数
    ・  persons per household



一世帯につき 6アカウントまで

  •  形容詞  ” household ”

    ・  家族の、家庭の
    ・  一家の
    ・  ありふれた、おなじみの

※  ハイライト・赤字は引用者


「  家  」 中心の語義の中、 赤字の形容詞が異彩を放つ。

” a household name ” は、 これに該当する。

家庭とは < 日常 > そのもので、 慣れ親しんだ平凡な場。

  取り立てて特色がないから、「 ありふれた 」「 おなじみの 」。

こんな流れで展開した語義である。

さらに可算名詞の ” name “( 名前、 名称 ) を加えると、
” household name ” は 「 おなじみの名 」 の意味をなす。

  おなじみ【 御馴染み 】

■  「 なじみ 」を丁寧にいう語。
( 大辞林 第四版 )

  おなじみ【 御馴染(み) 】

1. 「 なじんでいること 」を言う敬語。
2.  その店をひいきにしてよく来るお客。
( 岩波 国語辞典 第八版 )

  おなじみ【 お馴染み 】

1. 「 なじんでいること 」「 よく知っていること 」
の尊敬語・美化語。
2. 「 いつも来る客 」の尊敬語。
( ⇔ 一見)
( 三省堂国語辞典 第八版 )

※  ハイライトは引用者


なぜか  3大学習英英辞典( EFL辞典 ) の 形容詞 ” household ”
には、 この語義が明記されていない。

3辞書とも 形容詞は 「 家族の 」「 家庭の 」 に焦点を当てている。

◆  以下、代表的用法。

  •  household goods
    ( 家財道具 )
  •  household products
  •  household items
    ( 家庭用品 )
  •  household appliances
    ( 家電製品 )
  •  household chores
  •  household duties
    ( 家事 )
  •  household use
    ( 家庭用 )
  •  household income
    ( 世帯収入 )
  •  household  /  personal effects
    ( 家財・身の回り品 )
    ※  米税関 の使用用語

 

家庭ごみ禁止


◆  ところが、表題の場合、「 家族の 」「 家庭の 」では埒が明かない。

ここは、英語ネイティブ向けの辞書にご登場願おう。

” household “

  1.   of a household or home; domestic 
  2.   a)  common;  ordinary
      b)  known to almost everyone; very familiar

    Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

※  ハイライトは引用者

【発音】  háushòuld
【音節】  house-hold  (2音節)


形容詞のみ引用したが、 簡潔明快の見事な語釈だと思う。

日本人学習者に対し、 弊サイトがお勧めするネイティブ用
英英辞書の筆頭に挙げているのがこちら。

AP通信  の公式辞書( ” The official dictionary ” )で、
最新の 「 第5版 」 は、 2018年6月発売。

iOS版 は、 2018年7月発売。

tapped out ” にて、 この辞書の持ち味を写真入りで詳述した。

ご興味のある方にご覧いただければ幸い。


◆  以上、 ” household name ”  の大略を述べた。

良否不問で、 有名人はもちろん、 ありとあらゆる
名だたる
事物をカバーする可算名詞


これがポイント。

果たして、 個人が  ” a household name ”  になることはよいことなのか。

有名になりたがる ( seek publicity ; seek attention ) 言動はどうか。

本稿の結びに、 考察してみたい。

既に触れたように、 恥さらしな場面でも使う表現である。

日本語の「 有名 」も、両用可能である点は、国語辞典で
確認してきた。

「 有名人 」 になることの是非を問うことは、 そう単純でない。

それでも、 一般人がやたらと名をさらすのは、 リスクが大きい
と私は考える。

「 プライバシー 」 は、 不可逆的な性質  を帯びる。

喪失後、 初めて価値に気づく類の財産に他ならない。


プライバシーというのは、いったん失えば二度と取り戻す
ことはできないという際立った特徴を持つ貴重かつ希少な
資産だ。

( 中略 )

芸能人やスポーツ選手など、プライバシーの放棄が前提
となる職業が高額の報酬に値するのは、成功の代償 として
失うものがあまりにも大きいからだ。


雨の降る日曜は幸福について考えよう
橘 玲(著)、 幻冬舎、 2004年刊

※  ハイライト・太字・下線は引用者


平穏で、 マイペースな個人生活を維持したいのであれば、
相応の見返りなくして、 自ら放棄するには代償が大きい。

下線の 「 成功の代償 」 は 「 有名税 」 と称される。

  ゆうめいぜい【有名税】

■  プライバシーの侵害など、有名であるがために
ある程度は我慢しなければならない不快な出来事。

( 広辞苑 第七版 )

■  有名であるがゆえに払わなければならない代償を、
税にたとえていう。

( 精選版 日本国語大辞典 )

■  有名人であるがゆえに、余計な経費がかかったり、
名前を利用されて迷惑を受けたりすることを、税金
に見立てていう語。

( 大辞林 第四版 )


英語では、” the price of fame ” が一般的な言い回し。

直訳は「 名声の価格 」。

「 有名税を 払う 」なら、” pay the price of fame “。

橘玲氏の説く、


プライバシーというのは、

いったん失えば二度と取り戻すことはできない


上記のくだりで、 匿名性の大切さが 胸に染みる

有名になる反面、 不自由も生じる。

もし本当だとすれば、 自他の個人情報の取り扱いには、
細心の注意を払おう、 と意を強くしたくもなる。

SNS全盛の昨今、 変に目立つ行動を控え、 他人の関心を引かないようにする。

派手な振る舞いを慎み、 不要な注目を回避する気構えが大事。

こうした姿勢こそ、 一般人が我が身と家族を守る上で 不可欠である
と感じる。

I stay out of the spotlight and limit my social media presence
to the bare minimum.

この世には、 いろんな人がいますから …

There are some disturbing people out there.

私自身、 従業員と自営業、 どちらも欠かせない職なので、
とにかく 有名にならぬよう、 普段から気をつけている。

下手に目立ってしまうと、 思わぬ厄難を引き寄せるのが、 世の理。

それなりに自己実現できていれば、 過剰な承認要求に苦しまない。

I don’t feel the  need for  constant attention from everybody.

見知らぬ大勢の目を気にする人生はしんどくて、 まっぴらごめん。

地味で地道にやる方が、 プレッシャーから解放されて続けやすい。

語学は、 慎ましくしたたかな根気で、 へこたれずに粘り抜く営為。

本質的に華やかではないため、 継続を優先する方がよい気がする。

【参照】   辞書の「自炊」と辞書アプリ

 


All fame is dangerous:
Good,  bringeth Envy;  Bad,  Shame.

( 名声はどれも危険。
良いことでは妬まれ、悪いことでは汚名を被る。)

Thomas Fuller  ( 1608-1661 )
トーマス・フラー
英国の牧師・歴史家


※  ” bringeth ”

→  ” bring ”  の古語 「 三人称単数現在形直説法 」
archaic third-person singular simple present
indicative form of  ” bring ” )

  • Fame and fortune are both a blessing and a curse.”
    ( 名声と富は、恵みであると同時に呪いでもある。)
  • Beauty is both a blessing and a curse.”
    ( 美貌は、恵みであると同時に呪いでもある。)

 

【参照】   ” Comfortable in one’s own skin

【参考】    ※  外部サイト

 

 

 

 

 

 

 

 

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