Unsightly
2020/01/05
醜い、見苦しい
容姿の話題は、慎重さを要する。
“a sensitive topic”(取り扱いが微妙な話題)の典型だから。
不用意に発言すると、思わぬ結果を招いたりする。
無思慮で触れてしまい、地位を危うくした公人は少なくない。
人の美醜は、とかく扱いがたい。
「美」への称賛は珍しくないものの、「醜」への言及は
避けるのが一般的。
その反面、視覚情報が最大級の情報源であることは、
ほとんどの人が経験上理解している。
メラビアンの法則
感情や態度の伝達時に、矛盾した情報を発信
した場合、受け手の判断に影響する割合
- 視覚(Visual)55%
- 聴覚(Vocal) 38%
- 言語(Verbal) 7%
※ 1971年発表
※ “7-38-55 Rule” ともいう
目で見て判断することは本能に近い。
それを裏打ちする研究結果である。
その要素に美醜が含まれるのは、自然なことであろう。
【参照】 “Beyond recognition“(見る影もなく)
本稿では、<人間以外の視覚的醜さ>を中心に取り上げたい。
忌避されがちの見目形の表現に比べれば、日常的に役立つ
と考えるからである。
そこで “ugly” と並んで、多用されるのが “unsightly“。
両方とも形容詞である。
※ “ugly” には、名詞「醜い人」「不機嫌」もある
この説明に該当するのは、次に挙げる日本語。
※ <人間以外の視覚的醜さ>と無関係な記載には、
取り消し線を入れた。
「醜い」
(1)見ていやな感じがする。見苦しい。
(2)容貌が悪い。みめがよくない。
「見苦しい」
(1)見るにたえない。みにくい。みっともない。
(2)ものを見るのに困難である。見づらい。
「みっともない」
見るにたえない。また、外聞がわるい。–
「目障り」
(1)ものを見るのに邪魔になること。また、そのもの。
(2)見て不愉快に感じること。また、そのもの。
(広辞苑 第六版)
絶望的なネガティブさに満ちた語釈ばかり。
視覚的イメージが、情動(emotion)を動かすことを
実感してしまう。
「醜い」の英訳は、”ugly” が目立つ。
心・考え方の醜さや状況の悪さにも使えるため、
広範をカバーする。
中級以上の英語学習者なら、既習の基礎単語である。
一方、”unsightly” には “ugly” の応用力は欠ける。
上記LDOCE説明の短さからも分かるだろう。
視覚に限定されるのは、名詞・自他動詞の “sight”
が「視覚」「見る」を意味することからも自明。
■ “unsightly” は形容詞のみ。副詞ではない。
“sight” に接頭辞 “un”(反対)と接尾辞 “ly”(~のような)
を足したもので、「見えないような」が直訳。
転じて、「見苦しい」「醜い」。
13世紀以前から、この意味で使われ続けている。
■ 名詞は、”unsightliness” で不可算名詞。
■ 形容詞 “unsighted”(見えていない)
■ 形容詞・他動詞 “unsight”(調べていない、見えなくする)
は意味は異なるが同根。この2語はめったに使われない。
◆ “ugly” が、人間の姿形に使われるのは言うまでもない。
“unsightly” も、人間に用いることができる。
マクミランによれば、「”ugly” を上品にした言葉」。
しかし、実際の用途では、いわゆる「ルックス」
(顔立ち・体つき)以外に起用されるケースが多い。
人について “unsightly” を用いる場合、
全体的な容姿(ルックス)よりは、
部位的な醜さに多用される傾向
- unsightly facial hair(顔のムダ毛)
- an unsightly scar(醜い傷跡)
- unsightly teeth(みっともない歯)
- unsightly wrinkles and blotches(醜いしわとしみ)
- an unsightly skin disease(醜い皮膚病)
- unsightly hair loss(醜い抜け毛)
- an unsightly bump(醜いこぶ)
- unsightly veins(醜い静脈)
どれも見苦しい例に違いない。
しかし、カタカナ「ルックス」からは一線を画する。
あくまでも<部分的な問題>であり、顔立ち・体つきを
指しているのではないからである。
近頃は「パーツ」と称する内容である。
そのため、話題の禁忌度は下がると考えられる。
それでも、その持ち主にとっては、苦しみが伴うだろう。
5つとも、”ugly” で置き換えることができるので、
ネガティブな要素は拭いきれない。
少なくとも、人前で好んで持ち出す話題ではない。
◆ では人体を離れ、一般の物品を見てみよう。
それほど自制する必要はなく、”unsightly” の本領
というべき使い方である。
- unsightly buildings(見苦しい建物)
- unsightly holes(醜い穴)
- unsightly stains(目障りな汚れ)
- unsightly billboards(目障りな広告板)
- unsightly cracks(醜い割れ目)
- unsightly market(見苦しい市場)
- an unsightly litter box(猫用の目障りなトイレ)
- unsightly trash(見苦しいごみ)
–
–
【類似表現】
- “beyond recognition”
https://mickeyweb.info/archives/29487
(見る影もなく)
– - “not a pretty picture”
(美しくない光景)
※「好ましくない状況」の 婉曲表現- “My financial situation was not a pretty picture.”
(私の経済状況はよくなかった。)