英文法の参考書 『キク英文法』
2024/10/09
- 網羅性 : ★★★★☆ ( おおかた網羅している )
- 読みやすさ : ★★☆☆☆ ( 本文がすし詰め気味で、 配色が残念 )
- 難 ⇔ 易 : ★★★☆☆ ( 中級者にはそう難しくない )
- 学参 ⇔ 専門書 : ★☆☆☆☆ ( 表紙に「 学参 」と明示 )
- 中級者 への推奨 : ★★☆☆☆ ( 主目的は大学入試で、 過去問が素材 )
- 目次と索引 : ★★★★★ ( 両方とも丁寧な作り )
–
【 概評 】
・ 英文法の基礎力がない人に、文法書としてはおすすめしない
・ 基礎力が盤石ならば、大学入試に役立つ「 文法書 × 問題集 」
・ プロ4名の朗読音声は、見事な仕上がりで、リスニングに有益
–
Contents ( 目次、全6頁 ) に掲げる 「 文法項目 212 」
中身はしっかりしているのに、以下の具合に配色がひどい。
過半を占める、本文素地の「 青 」 と 「 赤 」が、どぎついのである。
わずかに色薄ければ、読み心地はだいぶ違ったはず。
–
–
–
上記の色様式が、 全体を貫くので、 結構きつい。
読み続けると、 文字色と対抗し合い、 目がチカチカする。
やたらと疲れて集中力が削がれ、 学習どころでない感じ。
下地が濃すぎて、 蛍光ペンなどでマークしても際立たない。
白地以外への書き込みも大変で、 余計なストレスが積もり積もる。
なにをどう間違えば、 こんな色あしらいになるのだろう。
ああ、もったいない。
–
◆ 暗記のためかと思い、手持ちの赤シートをかぶせてみた。
–
–
中途半端に文字が隠れてしまい、意味をなさない。
よって、赤シート用の色使いではないのは明らかである。
その旨の説明はなく、シートも付属していないので当然か。
価格( 本体 1,600円 )からして、専門書よりは学参( 学習参考書 )扱い。
確かに「 アルク学参シリーズ 」と表紙に明記されている。
若者ならば、 平気で読める色味なの?
さっぱり分からない。
–
◆ 幣サイトのレベルですら、 初歩的な配色管理を 実施 している。
読者様には、中高年の年齢層が多い。
我が同世代に向けて、できるだけ色合いに配慮するよう努めている。
もとより、色覚の弱い方々が大勢存在することは、統計に出ている。
「 先天色覚異常 」については、
–
日本人での頻度は男性の約 5%、女性の 0.2%日本眼科学会 「 先天色覚異常 」
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/先天色覚異常
–
フランスや北欧では男性で約 10%、女性で約 0.5%ウィキペディア 「 色覚異常 」
https://ja.wikipedia.org/wiki/色覚異常
加えて、 後天的な要因。
–
–
色覚には個人差があり、 一般的な色覚を持つ人とは色の感じ方が
異なる色弱の人が、 日本では 300万人 以上いるといわれています。
–『 カラーユニバーサルデザイン 推奨配色セット ガイドブック 』※ 後掲
–
見やすい色調はもちろんのこと、 視認性・可読性・判読性を含む
ユニバーサルデザイン の視点は、 シニア限定の課題ではない。
※ 本稿末尾に、 参考動画のご紹介
–
◆ 2007年5月発行の初版以降、『 キク英文法 』は幾度も版を重ねている。
2020年3月購入分の奥付に 「 2019年1月17日(第14刷)」、
スキャン用の2冊目には 「 2020年8月25日(第16刷)」。
アルク様( 創業 1969年 )のように、名の知られた株式会社の商業出版で
あれば、色相や印刷方面のプロも製作過程に関わるのでは、と不審が募る。
色彩設計( color design )に役立つ、 こちらの資料は、 無料で入手可能。
–
–
◇ 『 カラーユニバーサルデザイン 推奨配色セット ガイドブック 』
http://cudo.jp/wp-content/uploads/2018/10/cud_guidebook.pdf
2018年7月 第2版発行
※ PDF 全16頁、 12MB
–
–
◆ 蛇足を添えると、 有料の参考書の逸品は、
–
–
◇ 『 伝わるデザインの基本 増補改訂3版
よい資料を作るための レイアウトのルール 』
高橋 佑磨 (著)、 片山 なつ (著)
技術評論社、 2021年刊、 B5変形判、 256頁
–
2名の理学博士が手掛けた、一般人向けのルールブック。
2021年4月発行。
–
–
『 伝わるデザインの基本 増補改訂3版
よい資料を作るためのレイアウトのルール 』p. 54.
–
学者の手になる物珍しいデザイン本なので、
類書に見当たらない長所がひときわ目立つ。
配色の法則のみならず、和欧混交文の推奨フォント、
行頭の記号の扱い、ハイフンとダッシュの区別などの
留意点を、オールカラーかつ平明達意の筆致で記す。
「 合計15万部突破の本書が、さらにパワーアップ 」
との販促文言に適う出来映えの 「 増補改訂3版 」。
–
–
◆ やや不体裁な見てくれの印象が否めない『 キク英文法 』。
一方、複数の英語教育系 YouTubers 推しの英文法書でもある。
絶賛を博したおかげか、殊に2019年から2020年上旬にかけて、
極端な品薄で、新本はどこも品切れ、中古価格が 高騰 していた。
私の1冊目も中古本で、定価の3倍の「 ほぼ新品 」。
プレミアム価格 と引き換えに、ようやく手に入れた。
その価値はあったか。
” Was it worth it ? ”
” Definitely. ”
–
◆ これから本領のご案内。
立ち位置を大学入試に定めているのは、彩り華やかな帯が表す。
–
「 文法書 × 問題集 として 大活躍 ! 」
–
目を引く 「 シリーズ ○○○万 部突破 !」。
数値が、着々と伸びている様子からも、
手堅く売れ続けていることが分かる。
手元の2冊の帯は、
・「 2019年1月17日 ( 第14刷 ) 」 → 「 シリーズ 400万 部突破! 」
・「 2020年8月25日 ( 第16刷 ) 」 → 「 シリーズ 450万 部突破! 」
出版業界の目安として、売上部数 10万冊以上を「 ベストセラー 」
と呼ぶ風潮がある。
シリーズ全体とはいえ、売上基準を優に超えた学参は、
確実に「 ベストセラー 」の域に達しているに違いない。
【参照】 トーハン 年間ベストセラーアーカイブ
–
◆ 矢印 ⇔ の 「 対応範囲 」 は、本書の自信の表れだろう。
「 中学卒業 」 から 「 難関大学 」 まで対応可能とある。
しかし、 この帯が描写する想定読者層は、 少々無謀な気がする。
CEFR( セファール、 ヨーロッパ言語共通参照枠 ) の「 A1 」と「 C1 」
に属する学習者の用いる学参が共通するケースは少ないと感じる。
英検 「 4級 」 と 「 1級 」 の教材も、一緒くたにしがたい。
双方の4技能 ( 聞く・読む・書く・話す ) の力量は、 完全に異なる。
辞書・事典類を除き、通常、使用教材が重なるわけないのだ。–
カバー範囲を、ここまで堂々押し出す学参は滅多にない。
これでは、 あたかも 「 英語力不問 」 と宣伝するようなもの。
あるいは、 対応範囲 「 小学1年生 ⇔ 高校3年生 」のごとし。
現に、 文科省発行の対照表では、英検 ( 実用英語技能検定 )
の 「 4級 」 は圏外。
–
–
–
文部科学省 公式サイト
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf( リンク切れ )
–
無用の誤解を防ぐため、ターゲット層を絞って示す方がよいと考える。
まだ全体像を把握していない 初学者・初心者 には、見分けがつかないから。
見合わない教材で勉強すると、混迷脱落しやすく、「 英語嫌い 」一直線。
実際に、どのレベルの学習者に最適か、本稿で考察していきたい。
–
–
◆ 「 ゼッタイに覚えられる 」が、本書の触れ込み。
若さあふれる高校生向けらしく、特長を鮮明にアピールする。
–
–
–
上掲の前置きと最初に掲げた目次( Contents )は、白地で見やすい。
次の通り、索引( Index )も、この上なく明瞭に整っている。
和文・英文とも、きめ細かく拾い上げ、丹念に作りこんだ親切さが素晴らしい。
–
–
Index ( 和文 全4頁、 英文 全14頁 ) の一部
–
本文の見場も、こうすっきりしていたら、よかったのに。–
–
◆ 可処分時間に応じて、3つの「 学習モード 」を編み出している。
1日「 3分 」「 6分 」「 9分 」と設定した「 学習時間の目安 」で、
「 学習モード 」を選ぶ形式を取り入れた工夫は特筆大書すべき。
きっかり「 Day49 」まで区分けされており、そのまま従えばよい。
なにかと多忙な現役学生にとって、手頃な 手引きとして期待できる。
–
「 モード学習 」 に基づき、 7週間の 「 スケジュール学習 」
で 「 大学入試最頻出 」 の 「 文法項目 212 」 をマスター
1日4ページで、 2項目 × 7週間 ( 49日間 )
2枚のCDで 「 目 」 と 「 耳 」 同時にインプット
–
「 主要100大学 + センター試験 」 の過去問題に加え、
コーパス を徹底分析して、 選出した文法項目。
–
「 ゼッタイに覚えられる 」 文法書 ・ 問題集です !–
Preface ( 全1頁 )
–
このレベルの文法力があれば、難関・最難関大学に
楽々合格できるだけでなく、海外の大学へ将来留学
することも夢ではなくなります。p. 3. ” Preface ”
–本書で扱う212の項目をマスターすれば、文法ミスを
せずに「 話す・書く 」ことができる素地が完成します。p. 3. ” Preface ”
–単に入試を突破するだけでなく、
将来英語を使って世界で活躍するために必要な
「 総合的な文法力 」をマスターできます。p. 10.
–
「 ゼッタイ 」 って …
なんだか、すごそう。
でも、1日「 3分 」「 6分 」「 9分 」、合計7週間 ( 49日間 )で、
本当にこなせる分量なのか。
それぞれ確認していこう。
◆ 「 1日最短3分、最長9分 」の「 Day 学習 」の内訳は、
- 3分 : 「 チェックモード – Rule をチェック!」
【 Check 1 】 例文を読み、解説を読み、CDを聞く
– - 6分 : 「 チャレンジモード – Exercise にチャレンジ!」
【 Check 1 】 + 【 Check 2 】 過去問を解く
–
- 9分 : 「 フィニッシュモード – Point を押さえてフィニッシュ!」
【 Check 1 】 + 【 Check 2 】 +
【 Check 3 】 解説を読み、CDを聞く
件のどぎつい下地の色に従い、「 青 」と「 赤 」でハイライトしてみた。
以下、そっくり真似て、色分け。
–
それでは Day 学習をスタート!例文を読む → 解説を読む → CDを聞く →
問題を解く → 解説を読む → CDを聞くの順番で進めよう!
p. 34.
–
◆ 上記 「 利用法 」を当てはめると、こうなる。
- 3分 【 Check 1 】
例文を読む → 解説を読む → CDを聞く
– - 6分 【 Check 1 】 + 【 Check 2 】
例文を読む → 解説を読む → CDを聞く →
問題を解く
– - 9分 【 Check 1 】 + 【 Check 2 】 + 【 Check 3 】
例文を読む → 解説を読む → CDを聞く →
問題を解く → 解説を読む → CDを聞く
「 文法項目 212 」は、合計18章に分かれており、各章の結びに
「 章末問題 」 ( End-of-Chapter Exercise )を設けている。
見開き左側に6問の入試過去問、右側にその「 解答と訳 」。
- 6問 × 18章 = 「 108問 」
–
End-of-Chapter Exercise ( 全108問 ) の一部
–
この「 章末問題 」は、本書の売りである「 1日最短3分、最長9分 」
には不算入。
仕上げの試験みたいなものだから、と一応納得する。
–
◆ 逆に、問題視したくなる不算入が2つある。
まず、各章( 第18章以外 )のとば口を飾る ” Introduction ” が、
度外視されている。
「 モード学習 」( p.11. )による計算上は、
- 1日2項目 × 49日間 = 「 98項目 」
「 212項目 」から程遠い一因は、各4ページの ” Introduction ” に、
「 6項目 」が詰まっているから。
- 6項目 × 17章 = 「 102項目 」
–
Introduction ( 全102項目 ) の一部
–
「 Day 学習に入る前に、まずは○○に関する基本的な文法ルール
をチェック 」 と右上で呼びかける。
” Introduction ” の中身の重要性 ( 「 基本的な文法ルール 」 )を考慮に
入れると、これこそ「 Day 学習 」から外せないのではないか。
さらに、皮切りである ” Prologue ” の 「 12項目 」も、計算外。
計12ページの例文と解説が、 “Prologue” 兼 「 Day X 」用の課題。
「 きっかり Day49 」と先述したが、「 Day X 」はカウントされていない。
語順、 5文型、 平叙文、 疑問文、 命令文、 感嘆文、 句と節
これらの文法要素と基礎概念を、12ページで淡々と説明するのが、
「 Day X 」 すなわち ” Prologue “。
設問はない。
–
Prologue 「 Day X 」( 全12項目 ) の一部
–
のたまわく、
–
–
中学レベルの文法を、「 語順 」の視点から解説しています。
中学英語を完全にマスターしてる人は、ここは飛ばして
p.29 の Chapter 1 から学習を始めましょう。p. 15.
◆ 「 スケジュール学習 」とうたう割には、 意想外のからくりを蔵する。
1日 「 3分 」 「 6分 」 「 9分 」、 合計7週間 ( 49日間 ) の
「 学習モード 」に 算入されていない 文法項目が、
全「 212 項目 」 のうち 「 114 項目 」
–53.7% が 対象外–
–
つまるところ、–
◇ 文法項目 全「 212項目 」 の内訳
□ ” Prologue ” 12項目 → 「 学習モード 」除外
□ ” Introduction ” 102項目 → 「 学習モード 」除外
□ 「 Day 学習 」 98項目 【 Check 1 + Check 2 + Check 3 】
この部分のみで 「 7週間、 49日 」
以上、合計 212 項目。
おまけに、既述の通り、章末問題も 「 学習モード 」から除外されている。
□ ” End-of-Chapter Exercise ” 108問 → 「 学習モード 」除外
–
–
◆ 迫力みなぎる帯が強調するように、大学入試に焦点を合わせている。
■ ” Prologue ” 及び ” Introduction ” 以外の素材は、
すべて大学入試の過去問題から抽出
■ 過去問を解き、その解説から文法を習うパターン
■ 全部翻訳されているが、長文問題はない
全過去問は、出題大学名入り。
手が込んでいるが、出題年は一切記載なし。
「 本書を 文法書 としてのみ活用したい人は、Check 1 だけでOK ! 」( p.13. )
と臆面もなく言ってのけるが、 例文ばかりの 【 Check 1 】は過去問だらけ。
むしろ、” Prologue ” と ” Introduction ” の方が、「 文法書 」にふさわしい。
どちらの例文も、過去問から切り離されている様相で、基礎文法そのもの。
各章の ” Introduction ” の中身が濃いことは、上掲 「 Chapter 7 副詞 」の記述
から推知できよう。
過去問に立ち向かう前に、基本を固める大切さは言を俟たない。
–
◆ 提示された「 学習モード 」で実行しようとすれば、「 文法項目 212 」
のうち、実に 過半数の「 114 」もの基礎項目をスルーしなければならない。
「 中学レベル 」とする ” Prologue ” 12項目はおろか、
” Introduction ” 102項目を、 習得済みの学力が前提
「 114項目 」 = 53.7% が 対象外–
–
要は、
◇ 高水準の英語力がなければ、3つの「 学習モード 」は無効
標榜する 「 7週間後には、 大学入試再頻出の 212の 文法項目が身につく 」
ためには、 ” Prologue “と ” Introduction ” の 計「 114項目 」を飛び越せる
実力が、 あらかじめ要求されている。
いくらなんでも、現役高校生には無理でない ?
大雑把な「 英検4級 ⇔ 英検1級 」 の背景は、こういうことね。
どこが 「 スケジュール学習 」なのか、と疑問が頭をもたげる。
それよか「 飛び級 」もどき。
規定の「 モード学習 」( p.11. )は、大半の高校生には実現不可能。
「 1日最短3分、 最長9分 」なんて、まったくもって、現実的ではない
というのが、私の結論。
「 1日最短30分、 最長90分 」の方が、よほど合点が行く。
–
◆ スケジュール設定に対しては、辛口の批評となった。
続いて、肝心な内容の適否を検討していきたい。
冒頭の目次において、 「 文法項目 」は ” Rule “、 「 章 」は ” Chapter ”。
本文中には、日英の言い回しが混在している。
” Preface”、” Prologue “、” Introduction “、” Appendix “、” Index ”
は英語表記で概ね統一されているが、慣れるのに一苦労するかも。
何度も触れてきたように、本文はごちゃごちゃ立て込んでいる。
配色のまずさもあり、見た目で大損している印象が付きまとう。
外観の弱点は打ち捨てて、以後、文法面を精査していく。
–
◆ 本書の基幹となる「 Day 学習 」 98項目 について、例文( Check 1 )
と設問( Check 2 )のすべての典拠が過去問である特徴は、既に記した。
それぞれの解説( Check 1 )、解答と訳( Check 3 )を読み込むことで、
英文法を学ぶパターンであることにも触れた。
こうして、目次( Contents )にある文法項目を、きちんと網羅している。
取り上げる項目自体は、ほとんど重なるものの、過去問をこれほど
中心に据える構成は、 昔ながらの英文法の専門書にはない特色。
専門書は、説明・解説から入り、その後に問題を解く運びが一般的。
文法要素の分類に忠実で、なおかつ語義や文法の成り立ちを系統的
にたどる道筋を重視する傾向がある。
◇ 結論と根拠を結びつける流れが、専門書とは大きく異なる。
大学入試問題に基づき 「 帰納的手法 」 で大部分を構成する。
確立された系統で文法を学びたい人には、不向きと考えられる。
–
–★★ 基軸は過去問 ★★–
■ 大学入試の過去問題を解き、 答えの「 解説 」から文法を習得
多数の過去問を用いて、 文法ルールを「 帰納 」 し、 「 解説 」 する。
過去問で学び取る 98 項目 に加え、 ▼ 課外扱いの基礎文法が 114 項目 ▼
- ” Prologue ” = 「 中学レベルの文法 」 ( 12 項目 )
- ” Introduction ” = 「 基本的な文法ルール 」 ( 102 項目 )
【 合計 】 文法項目 212
–
全項目は、 前掲の目次( Contents )にて、 目視確認できる。
とにかく 『 キク英文法 』では、「 文法項目 212 」( Rule )が学べる。
–
–
文法書 × 問題集 として 大活躍 !–
–
「 大活躍!」 と帯辞 ( 前出 ) で 自画自賛する破廉恥 はどうかと思うが、
「 文法書 」 以上に 「 問題集 」 の性質が顕著なのは確か。
実際に使われた入試問題なので、 見慣れる効果が期待でき、
受験対策には多少なりとも有効。
素材が過去問ゆえに、 難易度は出題校の英語の難易度に沿っている
と言っても過言ではない。
全編を通じて、センター試験から難関大まで、手広く取り揃えている。
「 主要100大学 + センター試験の過去問題 」と顕示するのが、例の帯。
つまり、難易度にばらつきがあり、かつ材源が広範囲に及んでいる
側面を鑑みると、「 中学卒業 ⇔ 難関大学 」は正しいかもしれない。
–
◆ 「 すし詰め 」の項目が散見される理由は、既記のパターンと
上図を見比べれば理解できる。
各文法項目( Rule )の紙幅は、等しく割り当てられている。
その枠内に収める必要があるため、詳細な説明を要する
項目であれば、ぎゅう詰めになるのは道理ということ。
論点が多ければ、項目を切り分けできるはずだが、本書みたいに、
「 スケジュール学習 」を前面に押し出す場合、諸々絞らざる得ない。
しわ寄せは、多寡を調整しやすい解説に及ぶことになる。
仮に、紙幅に合わせて入試問題を選択していたとしても、
さほど不思議はないだろう。
こうした制約があるため、説明が総じて平易明快なのは、自然の数。
それでも、 全「 文法項目 212 」にて、必須レベルの知識はもれなく
踏まえている。
さすがである。
–
◆ しかしながら、「 なぜ 」には答えてくれない。
日本語と英語の違いは果てしない( 日本語と英語の違い 参照 )ため、
日本語母語話者( 日本語ネイティブ )が抱く疑問も際限ない。
本書は、日本人学習者が英文法を学ぶ上で、絶え間なく生じる
「 なぜ 」を解明する種類の文法書ではない。
質問は、てんで受け付けない姿勢で、不明点の追究など論外に近い。
これまで述べてきた持ち味を思えば、そこまでは求められない。
-
こぢんまりした枠内で、簡潔かつ正確な表現 に徹している感
-
英文法の 基礎知識が盤石 なら、そつはない「 文法書 × 問題集 」
-
基礎知識が不足している なら、文法書としてはおすすめしない
–
◆ 2枚の音声CDは、【 Check 1 】 と 【 Check 3 】 で用いる。
–
Listen ))) 解説を読んだら、 CD-□○○で左ページの英文を聞いてみよう。□ = ディスク A または B
○○ = トラック番号
–
手抜かりなく誘導してくれるおかげで、 どっちのCDを、
いつ聞くべきか迷わずに済む。
ナレーションは、日英とも男女1名ずつ。
全4名のプロが、 澄み切った声で穏やかに読み上げており、
とても聞きやすい感触。
英語ネイティブ同士の日常会話に比べると、 大幅にゆっくりだが、
有名どころの英語試験のナレーションと比較すれば、 普通の速度。
普段、 英語に接する機会が少なければ、猛烈なスピードに感じる。
英語の発音は、アメリカ英語。
男女別にペアを組み、 { 男性ペア ⇔ 女性ペア } と繰り返す。
–
{ 英文( 男性 ) → 和訳( 男性 ) } ⇔ { 英文( 女性 ) → 和訳( 女性 ) }
–
一文ごとに、男女ペアが交互に朗読しているので、変化に富む。
【 Check 1 】 は、例文とその和訳。
【 Check 3 】 は、正答とその和訳。
発音・声質・速度・間隔のどれをとっても、 完成度は高い。
男女の日英共演は、 ぼうっと聴くだけで、 うっとりするほど高品質。
プロ4名が、 代わりばんこに出てくるから、 飽きにくいのも強み。
ただし、 朗読中は終始一貫、 小音量の BGM ( 音楽 ) が鳴り響く
ため、 神経質な方であれば、 気になってしまうかも。
–
◆ 入試問題の朗読といっても、 大概が文法問題で出題された
英文であるため、 素材自体はリスニング専用ではない。
『 キク英文法 』は、 あくまでも「 文法書 × 問題集 」である。
どこまで自力で聴き取れるかを判定したり、聴き取り力を日頃
訓練したりする教材としては良質で、かなり使えるに違いない。
翻って、リスニングには主眼を置いていないことも間違いない。
そのため、受験直前期のリスニング対策には、別の教材がよい。
—
◆ 「 1日最短3分、最長9分 」の「 Day 学習 」を再掲すると、
- 3分 : 「 チェックモード – Rule をチェック!」
【 Check 1 】 例文を読み、解説を読み、CDを聞く
– - 6分 : 「 チャレンジモード – Exercise にチャレンジ!」
【 Check 1 】 + 【 Check 2 】 過去問を解く
–
- 9分 : 「 フィニッシュモード – Point を押さえてフィニッシュ!」
【 Check 1 】 + 【 Check 2 】 +
【 Check 3 】 解説を読み、CDを聞く
9分間で、「 フィニッシュモード 」を試してみたが、恐ろしくせわしい。
先の結論通り、時間配分は現実的ではない。
音声は、例えば章ごとに、まとめて聞く方が効率的と考える。
◆ これまたメディア付き教材でよく出会う煩わしさだが、
「 見返し 」 に貼付された音声CDの包装が取り外しにくい。
CD2枚付きの『 キク英文法 』の場合、 表表紙と裏表紙
の 「 見返し 」 に1枚ずつ、 べっとり貼り付けられていた。
収納用に用意されたケースではなく、 再利用は望めない仕様。
開け口は、再剝離可能になっているとはいえ、 極薄袋で心許ない。
空の袋がひっついたままでは、 読みづらく、 ちょいと目障り。
ところが、 がむしゃら頑張っても、 きれいにはがせない。
泣く泣くやむなく、 表と裏の各 「 見返し 」 を切り取った。
その結果、 表紙をめくると 「 本とびら 」。
「 奥付 」 直後に裏表紙。
外観上、 みっともないばかりでなく、 本の強度が弱まってしまう。
読みさしならない本である以上、 製本テープで 「 ノド 」 を補強した。
–
–
–
–
–
取り組む前からこんな作業が必要となると、 意欲に差し障る。
時間とモチベーションの損失。
配色同様、 今一つの出来。
どうにか ならないものか。
できれば、 改善をお願いしたいと思う。
–
–
【参照】 ※ 外部サイト
■ 本の構成要素と印刷・製本
- https://shimadzu-design.jp/?p=1471
- https://www.daiichiinsatsu.co.jp/200_support/2305_kouzou_meisyou.html
- http://pro.bookoffonline.co.jp/book-enjoy/books-trivia/20150804-books-name.html
–
◆ もっとも、アルク様の公式サイトによると、音声CDの提供は
順次終了していくとある。
今後は、ダウンロード音声を提供する方針を明らかにしている。
–
2019.10.29【 お知らせ 】書籍及び教材に付属する
音声CDの提供終了について
–
『 キク英文法 』 の音声は、以下の専用サイトから、
誰でもダウンロードできる仕組み。
◇ アルク様 ダウンロードセンター より ↓
本文学習用音声【mp3】65.0MB
https://www.alc.co.jp/dl/7007131/
◆ ともあれ、 雑な色取りが惜しい。
内容が立派でも、 読みづらいと美点がかすむ。
反復学習が肝要な学参であれば、 使わずじまいになりがち。
かえすがえすも、 残念な話。
【参考動画】 ※ YouTube
色覚補正眼鏡( EnChroma 製 )で、 生まれて初めて色を目にした瞬間。
–
■ 中級 の英語力の持ち主であれば、 あらかた聴き取れる動画
–
視聴者の心がこもった英文コメントも、 ぜひご覧いただければと願う。
- 大人の反応 ( 英語版 ) 10分44秒
https://www.youtube.com/watch?v=pJ6YV9-qxmg
– - 少年の反応 ( 英語版、英語字幕付き ) 3分1秒
https://www.youtube.com/watch?v=j6AqVzmbU-E
– - 青年の反応 ( 英語版 ) 6分20秒
https://www.youtube.com/watch?v=nG3-SypqqI0
– - 花婿の反応 ( 英語版 ) 3分8秒
https://www.youtube.com/watch?v=WUtoevhiQaU
– - 色覚異常と見え方の比較 ( 英語版 ) 6分35秒
https://www.youtube.com/watch?v=GCQE1U2EQ_4
◇ 「 英文法の参考書 」 連載