プロ翻訳者の単語帳

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英文法の参考書 『キク英文法』

      2020/10/22

  •  網羅性 :  ★★★★☆  (充分網羅している)
  •  読みやすさ :  ★☆☆☆☆  (本文がすし詰め気味で、配色が残念)
  •   :  ★★★★☆  (中級者には難しくない)
  •  学参 専門書   ★☆☆☆☆  (表紙に「学参」と明示)
  •  中級者への推奨 :  ★★☆☆☆  (主目的は大学入試で、過去問が素材)
  •  目次と索引 :  ★★★★★  (両方とも丁寧な作り)

キク英文法

一杉 武史 (編著)
アルク、2007年刊

18.2×13.1cm、396頁、【 CD2枚付き(57分、54分)】
<出版社HP>   <アマゾン>   <楽天ブックス>


中身はしっかりしているのに、以下の具合に配色がひどい。

過半を占める、本文素地の青と赤が、どぎついのである。

わずかに色薄ければ、読み心地はだいぶ違ったはず。


上記の色様式が、全体を貫くので、結構きつい。

読み続けると、文字色と対抗し合い、目がチカチカする。
やたらと疲れて集中力が削がれ、学習どころでない感じ。

下地が濃すぎて、蛍光ペンなどでマークしても、際立たない。
白地以外への書き込みも大変で、余計なストレスが積もり積もる。

なにをどう間違えば、こんな色あしらいになるのだろう。

ああ、もったいない。

◆  暗記のためかと思い、手持ちの赤シートをかぶせてみた。


中途半端に文字が隠れてしまい、意味をなさない。

よって、赤シート用の色使いではないのは明らかである。
その旨の説明はなく、シートも付属していないので当然か。

価格(本体 1,600円)からして、専門書よりは学参(学習参考書)扱い。
確かに「アルク学参シリーズ」と表紙に明記されている。

若者ならば、平気で読める色味なの?

さっぱり分からない。


◆  幣サイトのレベルですら、初歩的な配色管理を実施している。

読者様には、中高年の年齢層が多い。
我が同世代に向けて、できるだけ色合いに配慮するよう努めている。

もとより、色覚の弱い方々が大勢存在することは、統計に出ている。

「先天色覚異常」については、

日本人での頻度は男性の約 5%、女性の 0.2%

日本眼科学会 「先天色覚異常」
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_senten.jsp

フランスや北欧では男性で約 10%、女性で約 0.5%

ウィキペディア 「色覚異常」
https://ja.wikipedia.org/wiki/色覚異常

加えて、後天的な要因。
遺伝子の特性の違いや、緑内障などの網膜の病気、
白内障などのために、
一部の色の組み合わせを区別
しにくく不便を感じる人が、日本に 数百万人
います。
『カラーユニバーサルデザイン  推奨配色セット  ガイドブック』

見やすい色調はもちろんのこと、視認性・可読性・判読性を含む
ユニバーサルデザイン の視点は、シニア限定の課題ではない。

※  本稿末尾に、参考動画のご紹介

◆  2007年5月の初版以降、『キク英文法』は幾度も刷を重ねている。

2020年3月購入分の奥付に 「2019年1月17日(第14刷)」、
スキャン用の2冊目には 「2020年8月25日(第16刷)」。

アルク様(創業 1969年)のように、名の知られた株式会社の商業出版で
あれば、色相や印刷方面のプロも製作過程に関わるのでは、と不審が募る。

色彩設計に役立つ、こちらの資料は、無料で入手可能。

◇  『カラーユニバーサルデザイン  推奨配色セット  ガイドブック』
http://www2.cudo.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/CUD_Colorset_Guidebook.pdf
2013年11月第1版発行

※  PDF 全12頁、8MB


◆  やや不体裁な見てくれの印象が否めない『キク英文法』。

一方、複数の英語教育系 YouTubers 推しの英文法書でもある。

絶賛を博したおかげか、殊に2019年から2020年上旬にかけて、
極端に品薄で、新本はどこも品切れ、中古価格が高騰していた。

私の1冊目も中古本で、定価の3倍の「ほぼ新品」。
プレミアム価格と引き換えに、ようやく手に入れた。

その価値はあったか。

“Was it worth it ? ”
“Definitely.”

◆  これから本領のご案内。

立ち位置を大学入試に定めているのは、彩り華やかな帯が表す。


目を引く「シリーズ ○○○万部突破」。

数値が、着々と伸びている様子からも、
手堅く売れ続けていることが分かる。

手元の2冊の帯は、
・「2019年1月17日(第14刷)」 → 「シリーズ 400万 部突破
・「2020年8月25日(第16刷)」 → 「シリーズ 450万 部突破

出版業界の目安として、売上部数 10万冊以上を「ベストセラー」
と呼ぶ風潮がある。

シリーズ全体とはいえ、売上基準を優に超えた学参は、
確実に「ベストセラー」の域に達しているに違いない。

【参照】  トーハン 年間ベストセラーアーカイブ

◆  矢印 の「対応範囲」は、本書の自信の表れだろう。

「中学卒業」から「難関大学」まで対応可能とある。
カバー範囲を、ここまで堂々押し出す学参は珍しい。

しかし、この帯の描写する想定読者層は、少々無謀な気がする。

CEFR(セファール、 ヨーロッパ言語共通参照枠)の「A1」と「C1」
に属する学習者の用いる学参が共通するケースは少ないと感じる。

英検「4級」と「1級」の教材も、一緒くたにしがたい。

双方の4技能(聞く・読む・話す・書く)の力量は、完全に異なる。
辞書・事典類を除き、通常、使用教材が重なるわけないのだ。

これでは、あたかも 「英語力不問」 と宣伝するようなもの。
あるいは、対応範囲 「小学3年生  ⇔  高校3年生」の如し。

現に、文科省発行の対照表では、英検(実用語技能定)
の「4級」は圏外。

文部科学省  公式サイト
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf


無用の誤解を防ぐため、ターゲット層を絞って示す方がよいと考える。

まだ全体像を把握していない初学者・初心者には、見分けがつかないから。

見合わない教材で勉強すると、混迷脱落しやすく、「英語嫌い」一直線。

実際に、どのレベルの学習者に最適か、本稿で考察していきたい。

◆  「ゼッタイに覚えられる」が、本書の触れ込み。

若さあふれる受験生向けらしく、特長を鮮明にアピールする。


上掲の前置きと最初に掲げた目次(Contents)は、白地で見やすい。

次の通り、索引(Index)も、この上なく明瞭に整っている。

和文・英文とも、きめ細かく拾い上げ、丹念に作りこんだ親切さが素晴らしい。

本文の見場も、こうすっきりしていたら、よかったのに。

◆  可処分時間に応じて、3つの「学習モード」を編み出している。

1日「3分」「6分」「9分」と設定した「学習時間の目安」で、
「学習モード」を選ぶ形式を取り入れた工夫は特筆大書すべき。

きっかり「Day49」まで区分けされており、そのまま従えばよい。

なにかと多忙な現役学生にとって、手頃な手引きとして期待できる。

「モード学習」に基づき、7週間の「スケジュール学習」
で「大学入試最頻出」の「文法項目212」をマスター

1日4ページで、2項目 x 7週間 (49日間)

2枚のCDで「目」と「耳」同時にインプット

「主要100大学 + センター試験」の過去問題に加え、
コーパスを徹底分析して、選出した文法項目。

したがって、

このレベルの文法力があれば、難関・最難関大学に
楽々合格できるだけでなく、海外の大学へ将来留学
することも夢ではなくなります。

p. 3  “Preface”

本書で扱う212の項目をマスターすれば、文法ミスを
せずに
「話す・書く」ことができる素地が完成します。

p. 3  “Preface”

単に入試を突破するだけでなく、
将来英語を使って世界で活躍するために必要な
「総合的な文法力」をマスターできます。

p. 10

なんだか、すごそう。

でも、1日「3分」「6分」「9分」、合計7週間 (49日間)で、
本当にこなせる分量なのか。

それぞれ確認していこう。

 

◆  「1日最短3分、最長9分」の「Day学習」の内訳は、

  1.  3分 : 「チェックモード  –  Rule をチェック
    【Check 1】 例文読み、CD聞く←  全部が入試過去問 )  + 解説読む
  2.  6分 : 「チャレンジモード  –  Exercise にチャレンジ
    【Check 1】 + 【Check 2】 過去問を解く

  3.  9分 : 「フィニッシュモード  –  Point を押さえてフィニッシュ
    【Check 1】 + 【Check 2】 + 【Check 3】 解説を読み、CD聞く

それでは Day学習をスタート!
例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
問題を解く  →  解説を読む  →  CDを聞く

の順番で進めよう!

p. 34


上記「利用法」を当てはめるとこうなる。

  1.  3分【Check 1】
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く 
  2.  6分【Check 1 + 2
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
    問題を解く
  3.  9分【Check 1 + 2 + 3
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
    問題を解く  →  解説を読む  →  CDを聞く

文法項目212」は、合計18章に分かれており、各章の結び
に「章末問題」(End-of-Chapter Exercise)を設けている。

見開き左側に6問の入試過去問、右側にその解答・和訳・解説。

6問 x 18章  =  「108問」。

この「章末問題」は、本書の売りである「1日最短3分、最長9分」
には不算入。

仕上げの試験みたいなものだから、と一応納得する。

◆  逆に、問題視したくなる不算入が2つある。

まず、各章(第18章以外)のとば口を飾る “Introduction” が、
度外視されている。

「モード学習」による計算では、1日2項目 x 49日間  =  「98項目」。

「212項目」から程遠い一因は、各4ページの “Introduction” に、
「6項目」が詰まっているから。

6項目 x 17章  =  「102項目」。


Day学習に入る前に、まずは○○に関する基本的な文法ルール
をチェック
」と右上で呼びかける。

“Introduction” の中身の重要性を考慮に入れると、これこそ
「Day学習」から外せないと考える。

さらに、皮切りである “Prologue” の 「12項目」も、計算外。

計12ページの例文と解説が、 “Prologue” 兼「DayX」用の課題。
「きっかりDay49」と先述したが、「DayX」はカウントされていない。

語順、5文型、平叙文、疑問文、命令文、感嘆文、句と節。

英文法の基礎概念を、12ページに渡って説明する「DayX」。
設問はない。

いわく、

中学レベルの文法を、「語順」の視点から解説しています。
中学英語を完全にマスターしてる人は、ここは飛ばして
p.29 の Chapter 1 から学習を始めましょう。

p. 15


◆  「スケジュール学習」とうたう割には、意想外のからくりを蔵する。

1日「3分」「6分」「9分」、合計7週間 (49日間)
の「学習モード」に 算入されていない 文法項目が、
  全「212項目」のうち「114項目」

53.7% が対象外

文法項目「212項目」の内訳は、結局のところ、

  • “Prologue”  12項目  →  「学習モード」除外
  • “Introduction”  102項目  →  「学習モード」除外
  • 「Day 学習」 98項目  ←  この部分のみで「7週間、49日」
  • End-of-Chapter Exercise”  102問    「学習モード」除外

迫力みなぎる帯が強調する通り、大学入試に焦点を合わせている。

  “Prologue” 及び “Introduction” 以外の素材は、
すべて大学入試の過去問から抽出

■  過去問を解いて、文法解説を読むパターン中心

  全部翻訳されているが、長文問題はない

全問、出題大学名入りで手が込んでいるが、出題年は一切なし。

本書を 文法書 としてのみ活用したい人は、Check 1 だけでOK !
(p.13)と述べるものの、例文ばかりの【Check 1】は過去問だらけ。

むしろ、”Introduction” の方が、「文法書」にはふさわしい。
ここの例文は、過去問から切り離されている様相で、基礎文法そのもの。

各章の “Introduction” の中身が濃いことは、上掲「副詞」から推知できよう。
過去問に立ち向かう前に、基本を固める大切さは言を俟たない。

提示された「学習モード」で実行しようとすれば、「文法項目212」
のうち、過半数の「114」もの基礎項目をスルーすることになる。

とすれば、「中学レベル」の “Prologue” 12項目はおろか、
“Introduction” 102項目を、習得済みの学力が本書の前提。

要は、

高水準の英語力がなければ、3つの「学習モード」は無効

標榜する「7週間後には、大学入試再頻出の212の文法項目が身につく」
ためには、”Prologue”と “Introduction” の計「114項目」を飛び越せる
実力が、あらかじめ要求されている。

いくらなんでも、現役高校生には無理でない?

大雑把な「中学卒業    難関大学」 の背景は、こういうことね。

どこが 「スケジュール学習」なのか、と疑問が頭をもたげる。

それよか「飛び級」もどき。

規定の「モード学習」(p.11)は、大半の高校生には実現不可能。

「1日最短3分、最長9分」なんて、まったくもって、現実的ではない
というのが、私の結論。

「1日最短30分、最長90分」の方が、よほど合点が行く充実度。

◆  スケジュール設定に対しては、辛口の批評となった。

続いて、肝心な内容の適否を検討していきたい。

冒頭の目次において、「文法項目」は “Rule”、「章」は “Chapter”。

本文中には、両者の言い回しが英日混在している。

“Preface”、”Prologue”、”Introduction”、”Appendix”、”Index”
は英語表記で概ね統一されているが、慣れるのに一苦労するかも。

何度か触れているように、本文はごちゃごちゃ立て込んでいる。
配色のまずさもあり、見た目で大損している印象が付きまとう。

外観の弱点は打ち捨てて、以後、文法面を精査していく。

続きます

 

 

 

◆  これまたメディア付き教材でよく出会う煩わしさだが、
「見返し」に貼付された音声CDの包装が取り外しにくい。

CD2枚付きの『キク英文法』の場合、表表紙と裏表紙
の「見返し」に1枚ずつ、べっとり貼り付けられていた。

収納用に用意されたケースではなく、再利用不可の極薄袋。
空の袋がひっついたままでは、読みずらく、ちょいと目障り。

ところが、がむしゃら頑張っても、きれいにはがせない。
泣く泣くやむなく、表と裏の各「見返し」を切り取った。

その結果、表紙をめくると「本とびら」。
「奥付」直後に裏表紙。

外観上、みっともないばかりでなく、本の強度が弱まってしまう。
読みさしならない本である以上、製本テープで「ノド」を補強した。



取り組む前からこんな作業が必要となると、意欲に差し障る。
時間とモチベーションの損失。

配色同様、今一つの出来。  どうにかならないものか。

できれば、改善をお願いしたいと思う。

【参照】  本の構成要素と印刷・製本
https://ksp-group.co.jp/knowledge/p05_book.html

 

◆  美点がかすむ色取りとCD媒体のしつらえ。

内容が見事でも、取り扱いが面倒だと、使わずじまいになりがち。

反復学習が肝要な学参であれば、なおさら。

部外者が申し上げるのもおこがましいが、編著者が気の毒だろう。

かえすがえすも残念な話。

【参考動画】     ※  YouTube

色覚補正眼鏡( EnChroma 製)で、生まれて初めて色を目にした瞬間。

  中級の英語力の持ち主であれば、あらかた聴き取れる動画

視聴者の心がこもった英文コメントも、ぜひご覧いただければと願う。

 

◇  「英文法の参考書」 連載

 

 

 

 

 

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