Back to square one
2024/08/25
振り出しに戻って、出発点に戻って
–
We’re back to square one.
(最初からやり直しだ。)
(振り出しに戻ったね。)
–
熱心に取り組んできたプロジェクトが無残にも
失敗に終わった時、厳しい決断を迫られる。
ー
撤退するか、やり直すか。
ー
これまでかけた労力とサンクコストが脳裏を
よぎり、何ともやりきれない思い。
ー
やり直すと決めた場合、新規まき直しである。ー
その際「振り出しに戻って」と表現したりする。
この決まり表現の英語版が “back to square one“。
使用場面や伴う感情において、日英間に違いはないに等しい。
その上、表現にかなりの共通点が見られる。
そのため、身近で覚えやすく、容易に身につきやすい。
ー
◆ ” square one ” は 「 振り出し 」。
ー
ボードゲーム( 盤上ゲーム ) 由来の比較的新しい
表現である。
こちらには、初出は1960年と書いてある。
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from the use of numbered squares in some board
games.
First Known Use : 1960【出典】 Origin and Etymology of “square one”
etymology = 語源
【発音】 ètəmɑ́lədʒi
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四角のます目 ( square )の最初のます目は1番( one )。
だから、振り出しは “square one”。
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–
ふりだし【振(り)出し・振出】2. 双六(すごろく)の出発点。
転じて、物事の初め。
( 大辞林 第三版 )※ 語釈の該当項のみ引用
–
◆ “ square ” には、 名詞・形容詞・副詞・他動詞・自動詞がある。
【発音】 kwέər
ー
多義な基礎単語である。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
語源は、俗ラテン語「正方形にする」(exquadrāre)。
「正方形」は語源そのもの。
ー
基本的意味は、
- 名詞「正方形」「四角い広場」「2乗(平方)」
※ 円形の広場は “circle” - 形容詞「正方形の」「直角の」「2乗の(平方の)」
「公平な」「互角の」 - 副詞「四角に」「直角の」「公平に」「まっすぐに」
- 他動詞「四角にする」「直角にする」「互角にする」
- 自動詞「直角になる」「一致する」「身構える」
【発音】 kwέər
基本的な意味だけでも、これほど挙げられる。
実に多義だが、語源の「正方形」や「四角四面」
から派生した意味合いが大方を占める。
【関連表現】
“square off”
https://mickeyweb.info/archives/26399
(対決する構えをとる、対決する、対戦する)
–
先述のように、本稿では「ゲーム盤のます目」を指す名詞。
日常用途とは言えず、基本的意味には入らないため、
黄枠内には入れていない。
それでも「四角い」イメージは共通するだろう。
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◆ ” one ” には、 名詞・形容詞・代名詞がある。
語源は、古英語「1」(ān)。
【発音】 wʌ́n
英単語として、”square” より重要・頻出であるのは、
言うまでもない。
3項目すべて最高ランク。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
“square one” では、名詞「1」。
–
よって、”square one” は、1番目のます目を表す。
2語とも名詞なので、”square one” も名詞扱い。
<2語ワンセット>で不可算名詞である。
–
◆ ボードゲームに興じる機会はそうそうないため、
「 1番目のます目 」 のみでは使いにくい。
そのため、日常表現にはパターンがある。
ー
LDOCE6(ロングマン)は次の3つを挙げる。
※ 和訳は別
-
be back to / at square one
(振り出しに戻っている) -
go back to square one
(振り出しに戻る)
-
from square one
(最初から)
“square one”
■ the situation from which you started
to do something.
(LDOCE6、ロングマン)
■ [noncount]
the beginning stage or starting point.
(Merriam-Webster Learner’s Dictionary)
※ “noncount” = 不可算名詞
今回、7点の英英辞典を調べたが、この3フレーズ以外
に取り上げるべきものは見つからなかった。
この3つのうち、最も多用されると考えられるのが、
最初の1と2が兼ねる、”back to square one“。
1は「be動詞」、2は自動詞 “go“(行く)。
調べた7点の英英辞典のうち、5点で項目立て
されている。
5点それぞれ個性的なので、すべてご紹介する。
ざっと一読して、即座に把握できれば、きっと
中級学習者にふさわしい実力に達している。
“back to square one”
■ a return to the situation you were in at
the beginning of a project, task, etc.,
because you have made no real progress.
(OALD9、オックスフォード)
–
■ If you are back to square one, you have
to start working on a plan from the beginning
because your previous attempt failed completely.
(CALD4、ケンブリッジ)
–
■ PHRASE
If you are back to square one, you have to start
dealing with something from the beginning again
because the way you were dealing with it has failed.
(COBULD9、コウビルド)
–
“back to / at square one”
■ PHRASE
in the same situation that you were in
before you started to do something,
with no progress made.
(Macmillan、マクミラン)
–
“go back to square one”
■ to start over.
(Merriam-Webster)
※ 下線は引用者
“back to” の “back” は、副詞「戻って」。
“to” は、方向の前置詞「~に」「~へ」。
ー
よって、”back to square one” は、
「振り出しに戻って」。
これに先ほどの “be動詞” または 自動詞 “go”
を加えると「振り出しに戻る」になる。
ー
◆ 上掲の下線部をご覧いただきたい。
ー
英英辞典の語釈にも、苦渋に満ちた選択プロセス
が目に浮かぶ。
いわく「 進歩がないから 」「 失敗したから 」。
先に触れた 「 厳しい決断 」 を迫られる原因である。
ー
撤退するか、 やり直すか。
ー
やり直すならば、 ” go back to square one “。
すなわち、 振り出しに戻る。
失敗した結果、蒔き直すしんどさは、
誰しも覚えがあるのではないか。
学生時代の試験勉強でも経験する。
サンクコスト のことなど一切知らなくても、
出直しの苦しみと悔しさは理解できるもの。
功を成し遂げたからでなく、つまずいたがゆえに、
最初の位置に舞い戻るのはきつい。
表現の成り立ちに加え、 使用場面と伴う感情に
共通点があると既述したが、 ここまでのご説明で
納得いただけるのではないだろうか。
ー
◆ 以下の例文からも、 当事者の<痛み>が感じ取れる。
- “We have to go back to square one.”
(出直す必要があるな。)
– - “Let’s go back to square one.”
(最初からやり直しましょう。)
– - “I need to study this from square one.”
(これを一から勉強し直す必要がある。)
– - “Now I am back to square one of
my career.”
(今、キャリアの出発点に戻りました。)
– - “This project is back to square one.”
(このプロジェクトは振り出しに戻った。)
– - “Our plan didn’t work out, so we
had to go back to square one.”
(計画がうまくいかなかったので、
一からやり直さなければならなかった。)
– - “The police are back to square one
in their investigation.”
(警察の取り調べは振り出しに戻った。)
–
渋々やり直したところ、当初の目標を上回る成果に
恵まれたりする。
ー
最終的にどうなるか。
ー
そんなこと、誰にも分からない。
未来なぞ、分かるはずないのだ。
吉凶の予測しがたいのが人生で、 「 禍福は糾える縄の如し 」
とはよく言ったものである。