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Fast forward to –

      2019/04/14

~まで話を進めると、~まで早送りすると

再生機器のボタンでお馴染みの「早送り」。
ISO規格で標準化されている記号がこれ。

image.png
5108B: 
Fast run; fast speed
https://www.iso.org/obp/ui#iec:grs:60417:5108B

ISO 7000 / IEC 60417
“Graphical Symbols for Use on Equipment”
(機器に用いる図記号)

“fast forward” は、名詞及び動詞として使われる。
「早送り」の趣旨は一貫する。
※ 形容詞用法もあるが、まれ

「早送り」から、何かを早く進める意味に発展した。

語源は、テープデッキの早送り。
初出は、名詞 1948年、動詞 1974年

カセット、ビデオをはじめとする磁気テープに
親しんだ世代であれば、「早送り」のじれったさ
を覚えておられるだろう。

キュルキュル鳴る音に耳をそばだてつつ、やきもき
しながら、目当ての箇所を探る「早送り」の苦労。

命中の暁には、新鮮な喜びに包まれたものだ。

◆ ここでの “fast” は、形容詞「素早い」。
語源は、古英語「しっかりした」(fæst)。

さらに、”forward” の語源は、
“for – “(前へ)+ “- ward”(~の方向へ)

既記のように、初出は名詞が先(1948年)。
デッキの「先送り」が始まり。

よって、ここでは副詞の「先へ」「先に」が該当
すると考えられる。

◆ “fastforward” とハイフン入りの複合語で
表記されることも多い。

ハイフンの有無には、ばらつきが見られる。
その旨を明記する辞書もある。

“fast-forward”

noun
1. (sometimes not hyphenated)

Collins English Dictionary, 12th Edition

「ハイフンを用いない場合もある」

まず、英英辞典9点の項目立てを確認する。

  • fast-forward(LDOCE6、ロングマン)
    動詞・名詞
  • fast-forward(OALD9、オックスフォード)
    動詞
    fast forward
    名詞
  • fast-forward(CALD4、ケンブリッジ)
    動詞
  • fast forward(COB9、コウビルド)
    動詞・名詞
  • fast-forward(Macmillan Dictionary)
    動詞
    fast forward
    名詞
  • fast-forward(Merriam-Webster)
    動詞・名詞
  • fast-forward(同 Learner’s Dictionary)
    動詞・名詞
  • fast-forward(Collins English Dictionary,
    12th Edition)
    動詞・名詞
  • fast-forward(Webster’s New World College
    Dictionary, 5th Edition)
    動詞
    fast forward
    名詞

動詞・名詞ともに<ハイフンつき>が最多。
<ハイフンなし>は、COB9を除けば、名詞のみ。

だが、ハイフンの有無に有意義な違いがある
とは言い難い。

信用の置ける英語サイトの実例を調べてみると、
品詞を問わずハイフンなしも相当目立つ。
適当だなぁ、と感じ入るほど。

上掲の名だたる英英辞典でも不統一

そう神経質にならずに、論は分かれるものだと
考えればよい。

本稿では、便宜上ハイフンなしを採用する。

◆「早送り」の意味合いを貫く点には既に触れた。

すなわち、「早送り」から想定できる語義ばかりで、
多義ではないということ。

派生語義の代表は「何かを早く進めること」。
特に<時点>の案内に起用される。

例えば、”fast forward to 2050″ で、
「2050年まで話を進める」という具合。

image.pngFast forward to 2050 – What does the future hold ?
(2050年には、どうなっているのだろう?)

ニュース記事では、過去から現在に向けての
事象を解説する際に多用される。
つまり、過去に発生した出来事を中心とする。

“fast forward” を用いて、未来への展望
を述べている上図のような機会は、
はるかに少ない印象がある。
ーー
なぜなら、検証済みの内容を語る方が、
リスクが低いからである。

未来予想の当否が、専門家としての能力を反映する
となれば、むやみに取り上げるのを回避するはず。

「◯◯年の■■」などと称する近未来の予測本を
上梓したものの、結果的に大外れだったケースは、
枚挙にいとまがない。とりわけ投資分野で目立つ。

「未来は未知」こそ、この世の定めなのである。

  • You never know
    what the future holds.
  • No one knows
    what the future holds.

  • Who knows
    what the future holds.

    (未来は誰にも分からない。)

◆ さて、上記9点の英英辞典の中から、分かりやすい
語釈を精選してみる。

「早送り」の語義は、五十歩百歩で無個性だったため、
列挙せずに抄出したい。

最初に、語源通りの基本的意味から。
単純なので、語釈も例文も1つずつ。

「早送り」

録音・録画の再生を、通常より早い速度で
進めること。

(広辞苑 第七版)2018年1月発行

【参考】広辞苑
< 第五版(1998年)と第六版(2008年)>
録音・録画テープなどを、通常より早い速度で
進めること。

“fast forward”

noun [uncountable]
a button or control that moves a recording
forward to a later point without playing it.
(OALD9、オックスフォード)

“fast-forward”

verb [intransitive, transitive]
1. to wind a tape or video forwards quickly
in a machine without playing it.
(LDOCE6、ロングマン)

※ “wind” は、「風」(ウィンド wínd)ではなく、
語源の異なる自他動詞「巻く」(インド wáind

【発音】ˌfæst ˈfɔːrwərd

ここでは、先述のキュルキュル音の「早送り」
を説明する名詞と動詞。

デジタル世代には、イメージするのは少々難しいかも。
これが広辞苑の「テープ」部分が消えた一因であろう。

名詞は、不可算名詞(uncountable)。
動詞は、自動詞(intransitive)と他動詞(transitive)。
意味は、「早送り」そのもの。

  • “Press the fast forward button.”
    (早送りボタンを押して。)
  • “Let’s fast forward the tape.”
    (テープを早送りしましょう。)

語形変化は、
fast forwards – fast forwarded –
fast forwarded – fast forwarding

以上は、理解しやすい「早送り」。

◆ 次いで、「何かを早く進める」の “fast forward”。

先の図を思い出していただきたい。

若干複雑なので、語釈は2つずつ。

“fast forward”

noun
2. the act or condition of speeding up
and advancing.

(Webster’s New World College
Dictionary, 5th Edition)

2. (informal) a state of urgency or 
rapid progress.
(Collins English Dictionary, 12th Edition)

“fast-forward”

verb [intransitive, transitive]
2. to move quickly to a later point in a
story.

(LDOCE6、ロングマン)

to advance to a later time at an accelerated
speed.
Webster’s New World College
Dictionary, 5th Edition

※ “accelerated” = 形容詞「加速された」
→「早送りされた」

【発音】ˌfæst ˈfɔːrwərd

名詞「早送りすることまたはその状態」。
動詞「時を早送りして進めること」。

「早送り」から派生した中身であることは、
容易に分かるだろう。

起点を過去に置く傾向については上述の通り。
その理由も考察した。

表題に “to” を加えたのは、この用法こそ
メディア報道で使われやすいからである。
「時の終点」を示す前置詞 “to”(~まで)。

  • “Fast forward to 2010, I got fired.”
    (2010年には、解雇されたのです。)
  • “Fast forward to Tokyo at the end of the century.”
    (その世紀末の東京に話を進めます。)
  • “The movie scene fast forwards to 1920s.”
    (映画の場面は1920年代に飛ぶ。)
  • “Fast forward nine years when I marry her.”
    (彼女と結婚する9年後に話を一気に進めます。)
    ※「終点」でなく目的語なので、”to” 不要
  • “I wish I could fast forward to the future.”
    (未来に飛べたらいいのに。)
  • “I want to put her career in fast forward.”
    (彼女のキャリアを急成長させたい。)
  • “We always fast forward through commercials.”
    (皆たいていコマーシャルを飛ばす。)
  • “Let’s fast forward to the present.”
    (話を現在まで進めましょう。)

 

【関連表現】
“move forward”
https://mickeyweb.info/archives/7144
(前進する、行動を起こす)

 

 

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