プロ翻訳者の単語帳

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Fast forward to –

      2021/04/13

~ まで話を進めて、  ~ まで早送りして、  ~ に時が流れて

再生機器のボタンでお馴染みの「早送り」。

ISO規格で標準化されている記号がこちら。


5108B : 
Fast run ;  fast speed
https://www.iso.org/obp/ui#iec:grs:60417:5108B

ISO 7000 / IEC 60417
“Graphical Symbols for Use on Equipment”
( 機器に用いる図記号 )


◆  “fast forward” は、名詞及び動詞として使われる。

「早送り」の趣旨は一貫する。

※  形容詞用法もあるが、まれ

「 早送り 」から、何かを早く進める 意味に発展した。

語源は、テープデッキの早送り。

初出は、名詞 1948年、 動詞 1974年

カセット、ビデオをはじめとする磁気テープに
親しんだ世代であれば、「早送り」のじれったさ
を覚えておられるだろう。

キュルキュル鳴る音に耳をそばだてつつ、やきもき
しながら、目当ての箇所を探る「早送り」の苦労。

命中の暁には、新鮮な喜びに包まれたものだ。

◆  ここでの ” fast ” は、形容詞「素早い」。

「ファストフード」は、素早く作れる食品だから、” fast food “。

語源は、古英語「しっかりした」(fæst)。

【発音】  fǽst
【音節】  fast  (1音節)

 

◆  ” forward ” には、形容詞・副詞・名詞・他動詞・自動詞
がある。

【発音】  fɔ́ːrwərd
【音節】  for-ward  (2音節)

成り立ちは、

  •  for –  ( 前へ )
  •  – ward( ~ の方向へ )

–  形容詞  「前方の」「進歩した」「早熟の」
–  副詞  「前へ」「先へ」
–  名詞  「(バスケ・サッカーなどの)フォワード」「先物」
–  他動詞  「転送する」「進める」
–  自動詞  「早送りする」「転送する」

既記のように、初出は名詞が先(1948年)。

デッキの「 先送り 」が始まり。

よって、副詞の「 先へ 」が該当すると考えられる。

動詞であれば、自動詞「 早送りする 」。

◆  “fast forward” とハイフン入りの「複合語」で
表記されることも多い。

ハイフンの有無には、ばらつきが見られる。
その旨を明記する辞書もある。

“fast-forward”

noun
1. (sometimes not hyphenated)

Collins English Dictionary, 12th Edition

「ハイフンを用いない場合もある」

まず、英英辞典9点の項目立てを確認する。

  • fast-forward (LDOCE6、ロングマン)
    動詞・名詞
  • fast-forward (OALD9、オックスフォード)
    動詞
    fast forward
    名詞
  • fast-forward (CALD4、ケンブリッジ)
    動詞
  • fast forward (COBUILD9、コウビルド)
    動詞・名詞
  • fast-forward (Macmillan Dictionary)
    動詞
    fast forward
    名詞
  • fast-forward (Merriam-Webster)
    動詞・名詞
  • fast-forward (同 Learner’s Dictionary)
    動詞・名詞
  • fast-forward (Collins English Dictionary, 12th Edition)
    動詞・名詞
  • fast-forward (Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition)
    動詞
    fast forward
    名詞

動詞・名詞ともに<ハイフンつき>が最多。

<ハイフンなし>は、COB9を除けば、名詞のみ。

だが、ハイフンの有無に有意義な違いがある
とは言い難い。

信用の置ける英語サイトの実例を調べてみると、
品詞を問わずハイフンなしも相当目立つ。

もう適当だなぁ、と感じ入るほど。

上掲の 名だたる英英辞典でも不統一

そう神経質にならずに、論は分かれるものくらいに
考えればよい。

本稿では、便宜上ハイフンなしを採用する。

◆  「早送り」の意味合いを貫く点は、既に触れた。

すなわち、「早送り」から想定できる語義ばかりで、
多義ではないということ。

派生語義の代表は「何かを早く進めること」。

殊に<時点>の案内に起用される。


例えば、

  fast forward to 2020  

  •  2050年まで、話を進めて 
  •  2050年まで、時を進めて 
  •  2050年まで、時が流れて

 

  Fast forward to 2050
What does the future hold ?  

( 2050年には、どうなっているのやら )

【初稿】  2018年10月17日

◆  ニュース記事では、過去から現在に向けての
事象を解説する際に多用される。
つまり、過去に発生した出来事を中心とする。

“fast forward” を用いて、未来への展望
を述べている上図のような機会は、
はるかに少ない印象がある。
ーー
なぜなら、検証済みの内容を語る方が、
リスクが低いからである。

未来予想の当否が、専門家としての能力を反映する
となれば、むやみに取り上げるのを回避するはず。

◯◯ 年 の ■■ 」などと銘打つ、近未来の予測本を
上梓したものの、結果的に大外れだったケースは、
枚挙にいとまがない。

とりわけ、投資分野で目立つ。

「 未来は未知 」こそ、この世の定めなのである。

  未来は誰にも分からない  

  • You never know
    what the future holds.
  • No one knows
    what the future holds.

  • Who knows
    what the future holds.


◆  さて、上記9点の英英辞典の中から、分かりやすい
語釈を精選してみる。

「早送り」の語義は、五十歩百歩で無個性だったため、
列挙せずに抄出したい。

最初に、語源通りの基本的意味から。

単純なので、語釈も例文も1つずつ。

「早送り」

録音・録画の再生を、通常より早い速度で
進めること。

(広辞苑 第七版)  2018年1月発行

 

▼  広辞苑の旧版の語釈  ▼

録音・録画テープなどを、通常より早い速度で
進めること。

(広辞苑 第五版)  1998年11月発行
(広辞苑 第六版)  2008年1月発行

 

“fast forward”

■  noun  [uncountable]
a button or control that moves a recording
forward to a later point without playing it.

(OALD9、オックスフォード)

 

“fast-forward”

■  verb  [intransitive, transitive]
1. to wind a tape or video forwards quickly
in a machine without playing it.
(LDOCE6、ロングマン)

◇  “wind” は、「風」(ウィンド  wínd)ではなく、
語源の異なる自他動詞「巻く」(インド  wáind

【発音】  ˌfæst ˈfɔːrwərd

ここでは、先述のキュルキュル音の「早送り」
を説明する名詞と動詞。

デジタル世代には、イメージするのは少々難しいかも。
これが広辞苑の「テープ」部分が消えた一因であろう。

名詞は、不可算名詞(uncountable)。
動詞は、自動詞(intransitive)と他動詞(transitive)。
意味は、「早送り」そのもの。

  • “Press the fast forward button.”
    (早送りボタンを押して。)
  • “Let’s fast forward the tape.”
    (テープを早送りしましょう。)

【活用形】
fast forwards – fast forwarded –
fast forwarded – fast forwarding

以上は、理解しやすい「早送り」。

◆  次いで、「何かを早く進める」の “fast forward”。

先の図を思い出していただきたい。

若干複雑なので、語釈は2つずつ。

“fast forward”

■  noun
2. the act or condition of speeding up
and advancing.

(Webster’s New World College
Dictionary, 5th Edition)

2. (informal) a state of urgency or 
rapid progress.
(Collins English Dictionary, 12th Edition)

 

“fast-forward”

verb  [intransitive, transitive]
2. to move quickly to a later point in a
story.

(LDOCE6、ロングマン)

to advance to a later time at an accelerated
speed.
Webster’s New World College
Dictionary, 5th Edition


◇  “accelerated”  =  形容詞 「加速された」
→  「早送りされた」

【発音】  ˌfæst ˈfɔːrwərd

名詞「早送りすることまたはその状態」。
動詞「時を早送りして進めること」。

「早送り」から派生した中身であることは、
容易に分かるだろう。

起点を過去に置く傾向については上述の通り。

その理由も考察した。

表題に “to” を加えたのは、この用法こそ
メディア報道で使われやすいからである。

「時の終点」を示す前置詞 “to”(~まで)。

  • “Fast forward to 2010, I got fired.”
    (2010年には、解雇されたのです。)
  • “Fast forward to Tokyo at the end of the century.”
    (その世紀末の東京に話を進めます。)
  • “The movie scene fast forwards to 1920s.”
    (映画の場面は1920年代に飛ぶ。)
  • “Fast forward nine years when I marry her.”
    (彼女と結婚する9年後に話を一気に進めます。)
    ※  「終点」でなく目的語なので、”to” 不要
  • “I wish I could fast forward to the future.”
    (未来に飛べたらいいのに。)
  • “I want to put her career in fast forward.”
    (彼女のキャリアを急成長させたい。)
  • “We always fast forward through commercials.”
    (皆たいていコマーシャルを飛ばす。)
  • “Let’s fast forward to the present.”
    (話を現在まで進めましょう。)

 

【関連表現】

“move forward”
https://mickeyweb.info/archives/7144
(前進する、行動を起こす)

 

 

 

 

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