プロ翻訳者の単語帳

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Pull the plug

      2020/01/05

撤退する、支援をやめる、生命維持装置を外す

We’re ready to pull the plug.
(撤退する準備はできている。)
(資金援助をやめる用意がある。)

ドキッとする発言である。
戦略会議などで耳にする。

“pull the plug” にはインパクトがある。
破裂音の “P” が連続する発音(”the” は消え入る感じ)
と表現自体も印象的だが、その決定の余波は
内外に及んだりする。

こっくり居眠りしかけていた会議参加者も、
このフレーズが飛び出すと一気に目覚める衝撃度。

“Pull the plug on the project”

To end a project suddenly.

Manhattan Review Smart Business Talk, 2nd Ed.

※ 下線は引用者

電力を安定供給している最中に、いきなり
電源プラグを引っこ抜くイメージ。


その差し響きは強い。
供給先は停電状態に陥る。

 

◆ “pull” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
非常に多義であり、成句・熟語・句動詞も実に多い。

だが、語源の古英語「引っ張る」(pullian)から
派生した意味中心なので、比較的分かりやすい。

基本的意味は、
– 名詞「引くこと」※ 可算・不可算
– 他動詞「引く」「引き寄せる」
– 自動詞「引く」「こぐ」

ここでは、他動詞「引く」。
“pull” の最も基本的な用法である。

 

◆ “plug” にも、名詞・他動詞・自動詞がある。
語源は、中期オランダ語「栓」(plugge)。
こちらもかなり多義だが、基本的意味は語源に
沿ったもの中心。

– 名詞「栓」「詰め物」「プラグ」※ 可算のみ
– 他動詞「詰める」「ふさぐ」
– 自動詞「こつこつ働く」「詰まる」

ここでは、名詞「プラグ」。
「プラグ」とは、電気回路を接続するため、
コンセントに差し込む器具(上図参照)。

「コンセント」は和製語。
英語では、”an outlet” または “a socket” 。
口頭なら、コンセントそのものも “plug” 。

名詞 “plug” は可算名詞のみなので、通常は “a” がつく。
決まり表現の “pull the plug” では、”the” が常。
“plug” は、その場の話題であり、特定済みだから。

 

◆ “pull the plug” の直訳は「プラグを抜く」。
文字通りの意味で使うことも多いのは言うまでもない。

しかし、ビジネス用途では「撤退する」「支援をやめる」。
次のLDOCEが示すように、資金供給を止す決断を指す場合が多い。

“pull the plug (on something)”

informal: to prevent a plan, business etc
from being able
to continue, especially by
deciding not to give it any more money.
(ロングマン、LDOCE6)

※ 下線は引用者

このLDOCEには “informal”(口語体または非公式)
とあるが、至極真剣な会議や商談にも出てくる。

確かに口頭中心だが、下品さや馴れ馴れしさはなく、
ビジネス英語として一般的に使われている。

プラグを抜くと例えることで、

撤退する」「支援をやめるとの

酷な決定を 遠回しに述べている

つまり、婉曲表現である。

“pull the plug” は、さらに、
生命維持装置を外す」も意味する。
装置を取り外し、致命の時を待つ。

これ以上はありえない<酷な決定>である。

“the plug” とは:

  • 支援をやめる
    → 金銭などのリソース(資源)
  • 生命維持装置」を外す
    → 装置など

冒頭の言葉を換言すると、例えば、

  • “We are not going to offer funding.”
  • “We won’t be able to fund you anymore.”
  • “We can no longer provide support for you.”
    「資金援助は打ち切ります。」

何とも冷酷だが、ビジネスでは普通。
限られたリソースの使い道を取捨選択するのは当然である。

普段は意識しないが、社内外どころか、経済も社会も
家庭も、このような決定を重ねて運営されている。

不可逆的な「生命維持装置を外す」に比べれば、
大半の決断はどうにかなると思えるだろう。

  • “Let’s pull the plug on loans to the company.”
    (あの会社への融資は打ち切ろう。)
  • “We need to pull the plug on the publishing business.”
    (出版事業から撤退する必要がある。)
  • “Should I pull the plug on the brain-dead patient ?
    (脳死患者の生命維持装置を外すべきか。)

対象の前置詞 “on” を伴う例文ばかりである。

上掲LDOCEの項目立てにも該当するが、実際には
“pull the plug” を文末に置く言い回しも多い。

 

 

 

 

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