For the rest of one’s life
2020/12/06
死ぬまでずっと
非日常的なことが起きた時に、よく出てくる。
使用者は、自他問わない。
「死ぬまでずっと」となれば、相当なこと。
嫌でも銘記し、互いに忘れないはず。
事の重大さを強調する趣旨 の常套句である。
もっとも、年がら年中使われているため、大方聞き慣れている。
その結果、真剣な動機を与える力は弱まっている印象。
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◆ このフレーズのポイントは “rest”。
【発音】 rést (1音節)
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その他は、単語も用法も基本的である。
この “rest” は、「休息」「休む」の “rest” ではない
発音は同じだが、語源の異なる完全な別物である。
【参照】 “final resting place” (墓場)
表題の “rest” には、名詞と自動詞がある。
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語源は、ラテン語「残っている」(restare)。
多義でなく、この語源から派生する意味ばかり。
- 名詞「~の残り」「残余」「その他の人々・物」
- 自動詞「~のままである」 ※ まれ
“rest” は名詞中心 で、自動詞はまれ。
自動詞 “rest” よりは、自動詞 “remain”
を用いる方が一般的であり、出番は少なめ。
◇ 唯一、自動詞用法で押さえておくべきは、
” please rest assured “
「 ご安心ください 」
顧客宛文書の決まり文言である。
こちらも「休む」の “rest” ではなく、表題の “rest”。
“for the rest of one’s life” でも、”rest” は名詞。
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◆ 名詞用法では “the rest“ の使い方が大切。
定冠詞 “the” と<2語ワンセット>になるのが通例。
主な意味は2つ。
表題は、(1)の「~の残り」。
(1) 「~の残り」「残余」「その他の~」
- “The rest of my kids are boys.”
(その他の私の子どもは男の子です。)
– - “The rest of us were angry.”
(残された者たちは怒ってました。)
– - “I will do the rest.”
(残りはやっておきます。)
– - “Please keep the rest for yourself.”
(残りはお受け取りください。)
※ 「おつり」など
(2) 「その他の人々・物」 ※ 複数扱い
- “The rest are gone.”
(その他の人たちはいなくなった。)
– - “The rest were girls.”
(その他は少女だった。)
– - “The rest have to quit.”
(その他の人たちは、辞めなければならない。)
■ “for“ は、期間を示す前置詞「~の間」「ずっと」。
■ “life“ は名詞のみの単語。
可算名詞と不可算名詞がある。
ここでは可算名詞「人生」「生涯」「終生」。
■ “one’s“ は「誰々の」。
「死ぬまでずっと」などと、
圧力をかけたい相手(自分自身も可)を入れる。
通常は人称代名詞の所有格。 すなわち、
my / your / his / her / their / our / its
のいずれか。
“one’s” は、所有格の代表形として、
辞書などで起用される。
具体的には、不定代名詞 ”one” の所有格が “one’s”。
上記の所有格を代表する。
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いわば、所有格のワイルドカード。
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代名詞でなく、固有名詞や一般名詞でもよいが、
この用途では代名詞が目立つ。
頻繁に見聞きするのは、”my” と “your”。
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◆ 以上より、表題 “for the rest of one’s life” は、
■ 直訳では 「 誰々の人生の残りの間 」
■ 換言して 「 誰々の残りの人生の間 」
■ ずばっと 「 死ぬまでずっと 」
◇ 「発言」した時点から「残りの人生の間」だから、
<現在>から<死>までを指す
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◆ 通常、死期は予測できないため、
その期間の長さは不確定である。
生きている限り、終わりはない
ゴールが見えないまま、ず~~~っと続く。
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こう考えると、”for the rest of one’s life”
は、恐ろしくインパクトのある表現である。
つまるところ、その状態が、
「死ぬまで」続く
本質的に重く、深刻な言葉。
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自ら述べても、他者に言われても、
プレッシャーが伴う。
かなり使い古されたフレーズなので、
そう感じにくいだけ。
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◆ 自他に圧力を加える効果があるのは、
例文を見れば一目瞭然だろう。
- “I will never forgive you for the rest of my life.”
(死ぬまであなたを絶対許さない。)
– - “Unfortunately, my father was paralyzed from
the neck down for the rest of his life.”
(不幸にして、父は死ぬまで、首から下が麻痺していた。)
– - “I want to be with you for the rest of my life.”
(死ぬまであなたと一緒にいたい。) ※ プロポーズ
– - “I will love you for the rest of my life.”
(死ぬまであなたを愛します。) ※ プロポーズ
– - “I will do this for the rest of my life.”
(私は死ぬまでこれをやりたい。)
– - “The rest of your life is in my hands.”
(君の今後は俺次第。)
– - “He will have to work for the rest of his life.”
(彼は死ぬまで働かなければならないはず。)
– - “What are you going to do with rest of your life ? ”
(残りの人生、どうするつもりなのよ?)
– - “He spent the rest of his life in prison.”
(残りの人生を彼は刑務所で過ごした。)
– - “She threw away the rest of her life.”
(彼女は残りの人生を棒に振った。)
– - “He will regret it for the rest of his life.”
(彼はそれを終生後悔するだろう。)
– - “Today is the first day of the rest of your life.”
(残された人生の初日が今日である。) ※ 格言
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ただし、既に触れたように、常日頃より安易に使われること
が多く、使い手の希望通りの効力は発揮できなかったりする。
自分に発破をかける上でも役立つ表現だが、
大上段に振りかぶると、時にみっともない。
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【関連表現】
- “Tomorrow is the first day in the rest of your life.”
(明日とは、残りの人生の初日。)