プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Wet ink / Wet sign / Wet signature

      2019/03/15

本人が自分の氏名を手書きしたもの
(= 本人の直筆サイン

”wet ink”、”wet sign”、”wet signature” は、
一般実務では同じ意味合いで使用されている。

「本人が自分の氏名を手書きしたもの」

だから本人の直筆サイン、肉筆サイン、自署。

◆ 本来は技術用語として、別の語義があるのだが、

   実務では、3つとも「自署」を意味する。

   ひいては「原本」を示唆する。

wet には、形容詞・名詞・自動詞・他動詞がある。
ここでは、形容詞「湿った」。

ダイビング用「ウェット スーツ」は “wet suit”。

よって、”wet ink” は「湿ったインク」。
“wet sign” と “wet signature” は「湿ったサイン」。

いずれも「自署」を指す。

“wet” の直後にハイフンを入れる表記(wet-ink)もある。
また、”ink” の他動詞用法には「署名する」の意も含む。

湿った」とはいえ、通常は ボールペン でもよい。

“wet” は、自署に用いる
<筆記具の種類>よりは、

「直筆」及び「原本」の指示が趣旨 


◆ なお、手書きでなく、ゴム印・印刷・代筆 による署名
(「記名押印」や「記名」)も、”wet ink”、
“wet sign”、”wet signature” に含むとする解釈もある。

「湿った」(wet)点で、条件を満たすからである。

A wet signature is created when a person
physically marks a document. 
Other cultures use name seals to the same effect.

https://www.laserfiche.com

【和訳】
“wet signature” とは、人が物理的に文書に署名する
こと。 文化によっては、同じ用途に印鑑を用いることがある。

だが、実際に “wet signature” などとして、通用するか
と言えば心許ない。  提出先などに確認する方がよい。

◆ 反対の “dry signature“、”dry sign
は、  コピーやファックスを通した署名   を指す。

直訳は「乾いた サイン」。

これは「原本」でない。

「原本」の英訳  

■ 本質的に「原本」は唯一の存在なので、
定冠詞 “the” が原則。

■ 原本が複数枚に渡ったり、種類が多数ある場合、
複数の文書」を意味する複数形の単語
documentsdocumentations など)
を付け加えて、無冠詞 または “the”。

■ 日常実務では、枚数や種類にかかわらず、シンプルな
the original” と “the original copy” が多用される。

【注意】
この用法の “copy” の意味は「原稿」が一般的
—————-
【誤】X 写し  X 控え  X コピー

  • a wet ink copy直筆の「原本」)
    ——–【誤】X「原本のコピー」
  • the original
  • the original copy
  • the original paper
  • the original  ____
    【例】manuscript(原稿)
  • original document(s)
  • wet ink document(s)
  • wet ink documentation(s)
  • wet ink copy ※ 上掲の赤枠【注意】参照
    → 表題と同時期に使われ始めた

後掲の「デジタル署名」もろとも、カラッと乾いた印象である。

衣類用「ドライ クリーニング」は “dry clean(ing)”。

例えとしての「直筆」が、”wet” なのは想像できるだろう。

さらに、

■  digital signatureデジタル署名)
■  electronic signature電子署名)

これらも “wet ink”、”wet sign”、”wet signature”
に 該当しない

「直筆」でも「原本」でもないからである。

一般実務における「デジタル署名」「電子署名」は、
「原本」の概念にそぐわない。

そもそも、何枚でも印刷(print out)できてしまう。
本人確認と認証こそ、これらの役目(後述)。

  • “Please digitally sign on the document.”
    (この文書にデジタル署名をお願いします。)

【例1】”digital signature”(デジタル署名)
Inline image 4
【例2】”digital signature”(デジタル署名)Inline image 2

【例3】”electronic signature”(電子署名)Inline image 3

【出典元】https://acrobat.adobe.com
『電子サインと業務プロセスを変革』
アドビ システムズ 株式会社   ※ 2017年12月発表

【注意】
  上記資料で、アドビー社が「電子サイン」と和訳するものは、
本稿の
「電子署名」(electronic signature)を指す。

  “electronic signature” の定訳は「電子署名」

本稿も定訳に従った。

◆ 日本政府のサイトでも「電子署名」

『電子署名及び認証業務に関する法律』

施行日:2016年4月1日

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/

【参考英訳】日本法令外国語訳データベースシステム
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/

かつて、署名は「自署」が原則であった。
今では、「記名押印」や「記名」も広く採用されている。

◆ 日本のビジネス慣習上、法律的な証拠能力の有効性は、
次の順とされている。

  1. 署名捺印
  2. 署名
  3. 記名押印
  4. 記名
  • 署名」本人が氏名を筆記具で書く
     = wet inkwet signwet signature
  • 記名」ゴム印・印刷・代筆を含む
  • 押印・捺印」印章を押す

【参考】 押印」「捺印」「押捺」の違い  

近年、世界標準の実務にて定着しつつあるのが、
デジタル署名」(上図参照)。

本人確認や改ざん防止機能の実用性より、認証用に導入された。

文書を電子的にやり取りするのが日常になって以来、
自署やハンコ代わりに使われている。

 

◆ それでも、自署を要する場面はまだまだ健在だ。
直筆サインを求められる機会は、今後も消えないだろう。

■ 日本語では、
自署」「自筆」「手書き」「直筆」「署名」「肉筆
などと指示される

■ 英文の場合、近頃はほとんどが、
wet ink“、”wet sign” または “wet signature

一般組織では、2010年頃から散見された新しい表現である。

昔は、もっぱら “handwritten signature” だった。
電子認証導入後は “wet” ばかり目にする。


in” は、手段前置詞~を使って」「~で

◆ “wet ink”、”wet sign”、”wet signature”
の基本的意味を解説する英文サイトは数多く存在する。

また、直筆を求める要求事項(requirements)には、
今なお “wet” を引用符で囲んだものが目立つ。

  • A “wet” signature is required on Page 3.
    (3頁目に直筆サインをお願いいたします。)

一般社会では、まだまだ認知されていない証左であろう。

  • “All signatures on the document must be wet ink.”
    (その文書上の署名は自署に限ります。)
  • This document must be wet ink signed by the CEO.”
    (この文書への署名はCEOが自署すること。)

  • “All signature must be wet ink originals.”
    (すべての署名は直筆でなければならない。)

  • “Must be wet signature and not digital signature.”
    自署が必要で、デジタル署名は不可です。)
  • “We will require your wet signature for documentation.”
    (文書には自署していただきます。)
  • Wet signatures of all his creditors are needed to
    exonerate him.”
    (彼を免除するには、債権者全員の直筆サインが必要です。)
  • “All certificates will be signed electronically and no
    longer contain a wet ink signature.”
    (すべての証明書は電子署名を採用し、
    手書きの署名は廃止されます。)
  •  “Electronic signatures to replace ‘wet ink’ signatures
    自署から電子署名へ移行)  ※ 見出し


【発音】クリック

・ wet(wét
・ ink(íŋk
・ sign(sáin
・ signature(sígnətʃər
・ original(
ərídʒənəl)

 

【類似表現】

■ autographɔ́ːtəgræ̀f

– 名詞「自筆」「有名人のサイン」 ※ 可算・不可算兼用
– 他動詞「自署する」「自筆で書く」 ※ 自動詞はない
– 形容詞「サイン入りの」「肉筆の」

表題と意味合いは重なるものの、
ごく普通の事務・ビジネス向けではない。

文芸 が主用途

すなわち、文学学問芸術一般。
著作者または芸能人などの有名人に使うのが通例。

autograph letter
(手書きの手紙) ※ タイプ打ちでなく肉筆

autograph letter, signed
(署名入り肉筆手紙)

autograph manuscript
(手書きの原稿、肉筆原稿)

autograph manuscript, signed
(署名入り肉筆原稿) ※【略】a.ms.s.

 

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英語, 英語フレーズ