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Against all odds

      2021/03/21

あらゆる困難をものともせず

悪条件を克服し、周囲をあっと言わせる成功を
勝ち得た様子を表す副詞的フレーズ。

刻苦の果てに、勝者になった人を称える典型表現。

  • against all the odds

    または  “all”  抜きの
  • against the odds

初めて見聞きすると、意味不明かもしれない。

だが、個性的な言い回しなので、一度覚えたら忘れにくい。

文法的には基本に忠実で、そう難しくない。

一目で意味が分かるようにしておくとよい。

◆  “against” には、前置詞・副詞・形容詞・接続詞がある。

【発音】  əgénst
【音節】  a-gainst  (2音節)

前置詞は多義だが、それ以外の品詞はマイナー用法。

–  前置詞 「反対して」「不利に」「対して」
–  副詞 「反対で」「不利で」
–  形容詞 「反対の」「不利の」
–  接続詞 「~に備えて」    ※  方言

ここでは、前置詞 「反対して」。

◆  “all” には、形容詞・代名詞・名詞・副詞がある。

【発音】  ɔ́ːl
【音節】  all  (1音節)

最頻出は形容詞だが、それ以外も多用される。

–  形容詞 「全部の」「すべての」「いかなる」「もっぱら」
–  代名詞 「全員」( ← 複数扱い )  「万事」( ← 単数扱い )
–  名詞 「全財産」「森羅万象」
–  副詞 「すっかり」「まったく」「ひどく」

ここでは、形容詞 「すべての」。

◆  “odds” は、通例「複数」扱いの「 複数名詞 」(plural noun)。

【発音】  ɑ́dz
【音節】  odds  (1音節)

つまり、最初から “s” つきで、単数にならない名詞。
単数形では使われず、複数扱いが原則の用法。

【例】
doldrums“、 ”grounds“、 ”leftovers“、
belongings”、 ”strings“、 ”clothes

名詞以外に自他動詞もあるが、動詞はマイナー用法。

辞書によっては、自他動詞を【俗語】とする。
( 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』 など )

–  名詞 「見込み」「勝ち目」「確率」
–  自動詞 「うまく逃れる」     ※  マイナー用法
–  他動詞 「一か八かやってみる」     ※  マイナー用法

名詞 “odds” は細かく見ると多義だが、基本は上記の通り。

ここでは、名詞「 勝ち目 」。

競馬・競艇・競輪などの掛け率「 オッズ 」と重なる。

すなわち、掛け金に対する配当の率、倍率を指す。

◆  日本最大の国語辞典と名高い『日国』の全文はこちら。

2001年発行。

日本国語大辞典 第二版 』第2巻、p. 1223、
小学館(2001年刊)より転載

“against all odds”  では、語釈(2)が該当する。

◆  2020年発行の「カタカナ語辞典」は、もっとシンプル。

『 コンサイス  カタカナ語辞典  第5版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  2020年刊
<三省堂HP>

前出『日国』の語釈(1)には触れていない。

さらに、2021年発行の国語辞典では、

  オッズ 【 odds 】

[名]
競馬・競輪などで、レース前に発表する概算配当率。
掛け金に対する倍率で表される。

明鏡国語辞典  第三版 』
北原保雄(編集)大修館書店、  2021年刊
<大修館書店HP>

以上、全文。

 

◆  直訳はこんな風。

against all odds

  • 前置詞  “against“(反対して)
  • 形容詞  “all“(すべての)
  • 名詞  “odds“(勝ち目)

【直訳】

  •  すべての勝ち目に反対して
  •  すべてのオッズに反して

転じて、「 あらゆる困難をものともせず 」。

やや脚色めいている気がする。

上掲の直訳のままだと、日本語として分かりにくいためであり、
穏当な和訳だとこうなる。


◆  成り立ちは、名詞・形容詞の “odd“(奇数、奇妙な)の特殊用法。

【発音】  ɑ́d
【音節】  odd  (1音節)

“odd” の語源は、古ノルド語「奇数」(oddi)から「奇妙な」へ。

“odd” から  “odds” に展開していった過程は不詳とされる。

the exact sense evolution is uncertain.

https://www.etymonline.com/search?q=odds


有力なのは、複数語尾の ” s ” を加えて、名詞化したとの説。

(『ジーニアス英和大辞典』)

◆  一見理解しがたいため、次の短文で考えてみよう。

■  The odds are against us.

【直訳】  勝ち目は私たちに反対している

  勝ち目はない

  •  against all odds
  •  against the odds
  •  against all the odds

これらは、目的格(me、him、her、us、them、you、it)
を含まないが、内容は先の短文に重なる。

前置詞 “against“(反対して)の反義語になる
前置詞 “for“(味方して)で置き換えると、

■  The odds are for us.

【直訳】  勝ち目は私たちに味方している。

  勝ち目はある

“for” は、以下の  “against” に比べ、めったに出てこない印象。

against all odds

despite something seeming very unlikely
.
(ロングマン、LDOCE6)

※  下線は引用者

極端に劣悪の条件下では、押し潰されても不思議でない。

ところが、そんな周囲の予想に反して、どんでん返しを打つ
驚きの結末

人間の可塑性と無限の可能性を再確認できる鮮やかな展開が、
人々の心を動かし、興奮させる。

一方で、他者の成功に対する純粋な称賛は現実には珍しい。

とりわけ、褒め合う色合いに乏しい日本社会では、周囲の
嫉妬・ひがみを刺激しないよう、細心の配慮を要する。

【参照】
integrity“、 ” stand tall “、 ” well-liked “、 ” dazzling

心持ち皮肉を放つ場面が多々生じるのが、衆生界の常。

【参照】
Tough luck ! “、 ” Well done ! ” 、 ” Way to go ! ” 、
Good job ! “、  ” Nice going ! “

 

◆  だが、” against all odds ” は、ほぼほぼ嫌味を帯びない。

諸手を挙げて喜ぶ「人間賛美」のような前向きな気概を含む。

同じく、日本語の

 あらゆる困難をものともせず 

逆境に立ち向かう、頼もしい勇気に満ちており、
思わず応援したくなってくる思いが湧き起こる。

  • “She passed the test against all odds.”
    (あらゆる困難をものともせず、彼女は合格した。)
  • “He became a doctor against all odds.”
    (あらゆる困難をものともせず、彼は医者になった。)
  • “The team managed to win against all odds.”
    (勝ち目がなかったのに、そのチームは何とか勝った。)
  • Against all odds, she survived cancer.”
    (治る見込みはなかったのに、彼女はがんから生還した。)

映画  Against All Odds

邦題『 カリブの熱い夜 』 (米 1984年)

暗黒の世界に巻き込まれつつ、危険な恋におちていく
男女のミステリー・ロマン。

絶体絶命の罠にはめられた 主人公(ジェフ・ブリッジス)
が、どうにか生き延びる姿 こそ  ” Against All Odds “。

フィル・コリンズの歌う同名主題歌  も大ヒットした。

曲の邦題 『 見つめてほしい 』。

↑  『 ビッグ・リボウスキ 』( ” The Big Lebowski “、米 1998年)
“The Dude” 役のブリッジス(1949 – )の若かりし頃が堪能できる。

 

 

 

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