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Turn oneself in

      2020/01/01

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 2 minutes

自首する、出頭する 

ニュースで年中出てくる句動詞。

“oneself”(自分自身) には、目的語(再帰目的語
としての代名詞を入れる。

すなわち、以下の通り

  • himself
  • herself
  • myself
  • ourselves
  • themselves
  • yourself
  • yourselves

英和辞典には、「自首する」または「出頭する」と
書かれている場合が多く、ほぼ定訳扱いされている。

しかし、日本の法律上「自首」と「出頭」は
同義ではない(後述)。

そのため、両者を表すのは不自然と考えられる。

だが、一般向けニュースの “turn oneself in”
は、「自首」と「出頭」のいずれも表現しうる。

それが「自首」「出頭」のどちらであるかは、
その後の報道より検証できるケースが多い。

その結果、確かに2つの意味で使われている
ことが確認できる。

これはどういうことか。
まず、英英辞典の “turn oneself in” を見ていこう。

◆ 調べた全7点の英英辞典において、目的語としての
“oneself” ではなく、”somebody” で項目立てされていた。

そのうち、3点を挙げる。

“turn someone in”
“turn in someone”

  • to tell the police who or where a criminal is.
    (LDOCE6,ロングマン)
  • (informal)
    to take somebody to the police or somebody in
    authority because they have committed a crime.
    (OALD9、オックスフォード)

“turn in”

  • [TRANSITIVE]
    to tell the police about someone, or to take
    them to the police, because they have
    commited a crime.
    (Macmillan Dictionary)

※ 下線は引用者
※ “TRANSITIVE” = 他動詞 → 句他動詞
transitive phrasal verb)となる

上記に添えられた例文には “oneself” も
含まれる。

  • “He decided to turn himself in.”
    (OALD9)
  • “She turned herself in to local police.”
    (Macmillan Dictionary)

とすれば、上位項目が “someone” であり、
“oneself” はこの範疇ということ。

“someone” が上位にあるにもかかわらず、
“oneself” を本稿の表題に挙げた理由は、
“oneself” の方がニュースに出てくるから。

当局に他者を突き出す行為よりは、自首・出頭
の方が報道価値があると考えられる。

◆ 枠内をまとめると、「警察または当局に対して、
犯人を知らせる(tell)または連れて行く(take)」。

つまり、
犯人についての情報提供または犯人を突き出す。

“oneself” であれば、本人に置き換えて、
自分についての情報提供または自分を突き出す。

◆ ここで、「自首」「出頭」の区別を見てみよう。

最初に「自首」から。

  じしゅ【自首】

  • 犯罪者が、その犯罪やその犯人の発覚する前に、
    官憲に対し事故の犯罪事実を申告し、その訴追
    を求めること。刑の減軽事由となる。自訴。
    また、一般には犯罪の発覚以前、以後に関係なく
    犯人が自ら警察に出頭することにいう。

    (精選版 日本国語大辞典)
  • (「首」は述べる意)犯罪事実・犯人の発覚前
    に、犯人自ら捜査機関に対して犯罪事実を申告
    し、その処分を求めること。一般に刑の減軽の
    自由となる。
    (広辞苑 第七版)

※ 下線は引用者

犯人が判明していない段階で、犯人自ら
警察・検察に申し出て、処罰を求めること。

次に「出頭」。

  しゅっとう【出頭】

  • ある場所へ本人が自分で出ること。
    役所や集まりなどに出向くこと。
    (精選版 日本国語大辞典)
  • 本人自ら、ある場所、特に役所など公の場に
    出向くこと。
    (広辞苑 第七版)

「自首」と違って、「出頭」は法律用語ではない。

だが、「自首」との比較では、犯罪事実や犯人・
容疑者が発覚した状態で、自ら警察・検察に出向く
ことを指す。

また、刑の減軽事由ではない。

このように、日本語の「自首」と「出頭」には、
<発覚前後>という明らかな違いがある。

にもかかわらず、日常使用上はごっちゃに
使われている傾向がある。

そのヒントとなるのが、上掲の緑字の部分。

再び引用すると、「自首」とは、

一般には犯罪の発覚以前、以後に関係なく
犯人が自ら警察に出頭することにいう。

(精選版 日本国語大辞典)

「発覚前」との定義にかかわらず、「出頭」
のように扱うのが一般用途であると述べる。

こうなれば、冒頭の疑問も解決できたと同然。

さらに、先の英英辞典の “oneself” の語釈に戻ると、

自分についての情報提供または自分を突き出す」

一般用途の「自首」「出頭」両方ありうる。

以上により、ニュース使用のおける “turn oneself in”
は、「自首する」または「出頭する」。

 

“I decided to turn myself in.”
(私は自首することを決意した。)

“She turn him in to the police.”
(彼女は彼を警察に突き出した。)

“He turned himself in to the authorities.”
(彼は当局に出頭した。)

“Her parents turned her in to the police.”
(彼女の両親によって、警察に引き渡された。)

“The escaped prisoner finally turned himself.”
(脱獄者はついに警察に出頭した。)

“She turned herself in to immigration officials today.”
(今日、彼女は入国管理局に出頭した。)

 

◆ 以上の例文の和訳は一例である。

これまで見てきた通り、「自首」と「出頭」は、
世間一般では厳密に区別されていないため、
はっきりしない側面が残るためである。

押さえるべきポイントは、”turn X in” により、

X の身柄を当局に差し出したこと

こうして、ざっくり理解できればよい。

 

 

 

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