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英文法の参考書 『キク英文法』

      2024/10/09

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 11 minutes
  •  網羅性 :  ★★★★☆  ( おおかた網羅している )
  •  読みやすさ :  ★★☆☆☆  ( 本文がすし詰め気味で、 配色が残念 )
  •   :  ★★★☆☆  ( 中級者にはそう難しくない )
  •  学参 専門書   ★☆☆☆☆  ( 表紙に「 学参 」と明示 )
  •  中級者 への推奨 :  ★★☆☆☆  ( 主目的は大学入試で、 過去問が素材 )
  •  目次と索引 :  ★★★★★  ( 両方とも丁寧な作り )

【 概評 】
・ 英文法の基礎力がない人に、文法書としてはおすすめしない
・ 基礎力が盤石ならば、大学入試に役立つ「 文法書 × 問題集 」
・ プロ4名の朗読音声は、見事な仕上がりで、リスニングに有益


キク英文法

一杉 武史 (編著)
アルク、 2007年刊、 【 CD2枚つき( 57分、54分 )】
18.2×13.1cm、 396頁

音声ダウンロード 無料

<出版社HP>    <アマゾン>    <楽天>


  Contents ( 目次、全6頁 ) に掲げる 「 文法項目 212 」

 

中身はしっかりしているのに、以下の具合に配色がひどい。

過半を占める、本文素地の「 」 と 「 」が、どぎついのである。

わずかに色薄ければ、読み心地はだいぶ違ったはず。



上記の色様式が、 全体を貫くので、 結構きつい。

読み続けると、 文字色と対抗し合い、 目がチカチカする。

やたらと疲れて集中力が削がれ、 学習どころでない感じ。

下地が濃すぎて、 蛍光ペンなどでマークしても際立たない。

白地以外への書き込みも大変で、 余計なストレスが積もり積もる。

なにをどう間違えば、 こんな色あしらいになるのだろう。

ああ、もったいない。

◆  暗記のためかと思い、手持ちの赤シートをかぶせてみた。


中途半端に文字が隠れてしまい、意味をなさない。

よって、赤シート用の色使いではないのは明らかである。

その旨の説明はなく、シートも付属していないので当然か。

価格( 本体 1,600円 )からして、専門書よりは学参( 学習参考書 )扱い。

確かに「 アルク学参シリーズ 」と表紙に明記されている。

若者ならば、 平気で読める色味なの

さっぱり分からない。


◆  幣サイトのレベルですら、 初歩的な配色管理を 実施 している。

読者様には、中高年の年齢層が多い。

我が同世代に向けて、できるだけ色合いに配慮するよう努めている。

もとより、色覚の弱い方々が大勢存在することは、統計に出ている。

「 先天色覚異常 」については、


日本人での頻度は男性の約 5%、女性の 0.2%

日本眼科学会 「 先天色覚異常 」
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/先天色覚異常


フランスや北欧では男性で約 10%、女性で約 0.5%

ウィキペディア 「 色覚異常 」
https://ja.wikipedia.org/wiki/色覚異常


加えて、 後天的な要因。


色覚には個人差があり、 一般的な色覚を持つ人とは色の感じ方が
異なる色弱の人が、 日本では 300万人 以上いるといわれています。

『 カラーユニバーサルデザイン  推奨配色セット  ガイドブック 』

※  後掲


見やすい色調はもちろんのこと、 視認性・可読性・判読性を含む
ユニバーサルデザイン  の視点は、 シニア限定の課題ではない。

※  本稿末尾に、 参考動画のご紹介

◆  2007年5月発行の初版以降、『 キク英文法 』は幾度も版を重ねている。

2020年3月購入分の奥付に 「 2019年1月17日(第14刷)」、
スキャン用の2冊目には 「 2020年8月25日(第16刷)」。

アルク様( 創業 1969年 )のように、名の知られた株式会社の商業出版で
あれば、色相や印刷方面のプロも製作過程に関わるのでは、と不審が募る。

色彩設計( color design )に役立つ、 こちらの資料は、 無料で入手可能。


◇  『 カラーユニバーサルデザイン  推奨配色セット  ガイドブック

http://cudo.jp/wp-content/uploads/2018/10/cud_guidebook.pdf
2018年7月 第2版発行

※  PDF 全16頁、 12MB



◆  蛇足を添えると、 有料の参考書の逸品は、


◇  『 伝わるデザインの基本   増補改訂3版
よい資料を作るための レイアウトのルール

高橋 佑磨 (著)、 片山 なつ (著)
技術評論社、 2021年刊、 B5変形判、 256頁

<出版社HP>    <アマゾン>    <楽天>


2名の理学博士が手掛けた、一般人向けのルールブック。

2021年4月発行。


伝わるデザインの基本   増補改訂3版
よい資料を作るためのレイアウトのルール

p. 54.

<出版社HP>    <アマゾン>    <楽天>


学者の手になる物珍しいデザイン本なので、
類書に見当たらない長所がひときわ目立つ。

配色の法則のみならず、和欧混交文の推奨フォント、
行頭の記号の扱い、ハイフンとダッシュの区別などの
留意点を、オールカラーかつ平明達意の筆致で記す。

「 合計15万部突破の本書が、さらにパワーアップ 」
との販促文言に適う出来映えの 「 増補改訂3版 」


◆  やや不体裁な見てくれの印象が否めない『 キク英文法 』。

一方、複数の英語教育系 YouTubers 推しの英文法書でもある。

絶賛を博したおかげか、殊に2019年から2020年上旬にかけて、
極端な品薄で、新本はどこも品切れ、中古価格が 高騰 していた。

私の1冊目も中古本で、定価の3倍の「 ほぼ新品 」。

プレミアム価格 と引き換えに、ようやく手に入れた。

その価値はあったか。

Was it worth it ?
Definitely.

◆  これから本領のご案内。

立ち位置を大学入試に定めているのは、彩り華やかな帯が表す。

文法書 ×として 大活躍 ! 」


目を引く 「 シリーズ ○○○万 部突破 」。

数値が、着々と伸びている様子からも、
手堅く売れ続けていることが分かる。

手元の2冊の帯は、
・「 2019年1月17日 ( 第14刷 ) 」  →  「 シリーズ 400万 部突破
・「 2020年8月25日 ( 第16刷 ) 」  →  「 シリーズ 450万 部突破

出版業界の目安として、売上部数  10万冊以上を「 ベストセラー 」
と呼ぶ風潮がある。

シリーズ全体とはいえ、売上基準を優に超えた学参は、
確実に「 ベストセラー 」の域に達しているに違いない。

【参照】  トーハン 年間ベストセラーアーカイブ

◆  矢印  ⇔  の 「 対応範囲 」 は、本書の自信の表れだろう。

「 中学卒業 」 から 「 難関大学 」 まで対応可能とある。

しかし、 この帯が描写する想定読者層は、 少々無謀な気がする。

CEFR( セファール、 ヨーロッパ言語共通参照枠 ) の「 A1 」と「 C1 」
に属する学習者の用いる学参が共通するケースは少ないと感じる。

英検 「 4級 」 と 「 1級 」 の教材も、一緒くたにしがたい。

双方の4技能 ( 聞く・読む・書く・話す ) の力量は、 完全に異なる。

辞書・事典類を除き、通常、使用教材が重なるわけないのだ。

カバー範囲を、ここまで堂々押し出す学参は滅多にない。

これでは、 あたかも 「 英語力不問 」 と宣伝するようなもの。
あるいは、 対応範囲 「 小学1年生    高校3年生 」のごとし。

現に、 文科省発行の対照表では、英検 ( 実用語技能定 )
の 「 4級 」 は圏外。



文部科学省  公式サイト
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf
( リンク切れ )


無用の誤解を防ぐため、ターゲット層を絞って示す方がよいと考える。

まだ全体像を把握していない 初学者・初心者 には、見分けがつかないから。

見合わない教材で勉強すると、混迷脱落しやすく、「 英語嫌い 」一直線。

実際に、どのレベルの学習者に最適か、本稿で考察していきたい。

◆  「 ゼッタイに覚えられる 」が、本書の触れ込み。

若さあふれる高校生向けらしく、特長を鮮明にアピールする。



上掲の前置きと最初に掲げた目次( Contents )は、白地で見やすい。

次の通り、索引( Index )も、この上なく明瞭に整っている。

和文・英文とも、きめ細かく拾い上げ、丹念に作りこんだ親切さが素晴らしい。


  Index ( 和文 全4頁、 英文 全14頁 ) の一部


本文の見場も、こうすっきりしていたら、よかったのに。

◆  可処分時間に応じて、3つの「 学習モード 」を編み出している。

1日「 3分 」「 6分 」「 9分 」と設定した「 学習時間の目安 」で、
「 学習モード 」を選ぶ形式を取り入れた工夫は特筆大書すべき。

きっかり「 Day49 」まで区分けされており、そのまま従えばよい。

なにかと多忙な現役学生にとって、手頃な 手引きとして期待できる。

「 モード学習 」 に基づき、 7週間の 「 スケジュール学習 」
で 「 大学入試最頻出 」 の 「 文法項目 212 」 をマスター

1日4ページで、 2項目 × 7週間 ( 49日間 )

2枚のCDで 「 目 」 と 「 耳 」 同時にインプット


「 主要100大学    センター試験 」 の過去問題に加え、

コーパス を徹底分析して、 選出した文法項目。

 「 ゼッタイに覚えられる 」 文法書 ・ 問題集です !

  Preface ( 全1頁 )


このレベルの文法力があれば、難関・最難関大学に

楽々合格できるだけでなく、海外の大学へ将来留学
することも夢ではなくなります。

p. 3.  ” Preface ”

本書で扱う212の項目をマスターすれば、文法ミスを
せずに
「 話す・書く 」ことができる素地が完成します。

p. 3.  ” Preface ”

単に入試を突破するだけでなく、
将来英語を使って世界で活躍するために必要な
「 総合的な文法力 」をマスターできます。

p. 10.


「 ゼッタイ 」 って …

なんだか、すごそう。

でも、1日「 3分 」「 6分 」「 9分 」、合計7週間 ( 49日間 )で、
本当にこなせる分量なのか。

それぞれ確認していこう。

 

◆  「 1日最短3分、最長9分 」の「 Day 学習 」の内訳は、

  1.  3分 : 「 チェックモード  –  Rule をチェック
    Check 1 】 例文を読み、解説を読み、CDを聞
  2.  6分 : 「 チャレンジモード  –  Exercise にチャレンジ
    Check 1 】  +  Check 2 】 過去問を解く

  3.  9分 : 「 フィニッシュモード  –  Point を押さえてフィニッシュ
    Check 1 】  + Check 2  + 
    Check 3 】 解説を読み、CDを聞く

件のどぎつい下地の色に従い、「 」と「 」でハイライトしてみた。

以下、そっくり真似て、色分け。


それでは Day 学習をスタート!

例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
問題を解く  →  解説を読む  →  CDを聞く

の順番で進めよう

p. 34.


◆  上記 「 利用法 」を当てはめると、こうなる。

  1.  3分 Check 1
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く 
  2.  6分 Check 1 】 +  Check 2
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
    問題を解く
  3.  9分 Check 1 】 +  Check 2 】 +  Check 3
    例文を読む  →  解説を読む  →  CDを聞く  →
    問題を解く  →  解説を読む  →  CDを聞く

文法項目 212 」は、合計18章に分かれており、各章の結びに
「 章末問題 」 ( End-of-Chapter Exercise )を設けている。

見開き左側に6問の入試過去問、右側にその「 解答と訳 」。

  •  6問 × 18章  =  「 108問 」


  End-of-Chapter Exercise ( 全108問 ) の一部


この「 章末問題 」は、本書の売りである「 1日最短3分、最長9分 」
には不算入。

仕上げの試験みたいなものだから、と一応納得する。

◆  逆に、問題視したくなる不算入が2つある。

まず、各章( 第18章以外 )のとば口を飾る ” Introduction ” が、
度外視されている。

「 モード学習 」( p.11. )による計算上は、

  •  1日2項目 × 49日間  =  「 98項目 」

「 212項目 」から程遠い一因は、各4ページの ” Introduction ” に、
「 6項目 」が詰まっているから。

  •  6項目 × 17章  =  「 102項目 」


  Introduction ( 全102項目 ) の一部


「  Day 学習に入る前に、まずは○○に関する基本的な文法ルール
をチェック 
」 と右上で呼びかける。

Introduction ” の中身の重要性 ( 「 基本的な文法ルール 」 )を考慮に
入れると、これこそ「 Day 学習 」から外せないのではないか。

さらに、皮切りである  ” Prologue ” の 「 12項目 」も、計算外。

計12ページの例文と解説が、 “Prologue”  兼 「 Day X 」用の課題。

「 きっかり Day49 」と先述したが、「 Day X 」はカウントされていない。

語順5文型平叙文疑問文命令文感嘆文句と節

これらの文法要素と基礎概念を、12ページで淡々と説明するのが、
Day X 」 すなわち  ” Prologue “。

設問はない。


  Prologue 「 Day X 」( 全12項目 ) の一部


のたまわく、


中学レベルの文法を、「 語順 」の視点から解説しています。
中学英語を完全にマスターしてる人は、ここは飛ばして
p.29 の Chapter 1 から学習を始めましょう。

p. 15.


◆  「 スケジュール学習 」とうたう割には、 意想外のからくりを蔵する。

1日 「 3分 」 「 6分 」 「 9分 」、 合計7週間 ( 49日間 )
「 学習モード 」に  算入されていない  文法項目が、
  全「 212 項目 のうち114 項目

53.7% が 対象外


つまるところ、

 ◇  文法項目  全「 212項目 」 の内訳

□  ” Prologue ”  12項目  →  「 学習モード 」除外
□  ” Introduction ”  102項目  →  「 学習モード 」除外

□  「 Day 学習 」 98項目  【 Check 1   +   Check 2   +   Check 3 】

この部分のみで 「 7週間、 49日 」

以上、合計 212 項目。

おまけに、既述の通り、章末問題も 「 学習モード 」から除外されている。

□  ” End-of-Chapter Exercise ”  108問    「 学習モード 」除外



◆  迫力みなぎる帯が強調するように、大学入試に焦点を合わせている。

  Prologue ”  及び  ” Introduction ” 以外の素材は、
すべて大学入試の過去問題から抽出

■  過去問を解き、その解説から文法を習うパターン

  全部翻訳されているが、長文問題はない

全過去問は、出題大学名入り。  

手が込んでいるが、出題年は一切記載なし。

「  本書を 文法書 としてのみ活用したい人は、Check 1 だけでOK ! ( p.13. )
と臆面もなく言ってのけるが、 例文ばかりの 【 Check 1 】は過去問だらけ。

むしろ、” Prologue ”  と  ” Introduction ” の方が、「 文法書 」にふさわしい。
どちらの例文も、過去問から切り離されている様相で、基礎文法そのもの。

各章の  ” Introduction ” の中身が濃いことは、上掲 「 Chapter 7  副詞 」の記述
から推知できよう。

過去問に立ち向かう前に、基本を固める大切さは言を俟たない。

◆  提示された「  学習モード 」で実行しようとすれば、「 文法項目 212 」
のうち、実に 過半数の「 114 」もの基礎項目をスルーしなければならない。

「 中学レベル 」とする ” Prologue ” 12項目はおろか、
Introduction102項目を、 習得済みの学力が前提

114項目 」 =  53.7% が 対象外


要は、

◇  高水準の英語力がなければ、3つの「 学習モード 」は無効

標榜する 「 7週間後には、 大学入試再頻出の 212の 文法項目が身につく 」
ためには、 ” Prologue “と ” Introduction ” の 計「 114項目 」を飛び越せる
実力が、 あらかじめ要求されている。

いくらなんでも、現役高校生には無理でない

大雑把な「 英検4級    英検1級 」 の背景は、こういうことね。

どこが 「 スケジュール学習 」なのか、と疑問が頭をもたげる。

それよか「 飛び級 」もどき。

規定の「 モード学習 」( p.11. )は、大半の高校生には実現不可能。

「 1日最短3分、 最長9分 」なんて、まったくもって、現実的ではない
というのが、私の結論。

「 1日最短30分、 最長90分 」の方が、よほど合点が行く。

◆  スケジュール設定に対しては、辛口の批評となった。

続いて、肝心な内容の適否を検討していきたい。

冒頭の目次において、 「 文法項目 」は ” Rule “、 「 章 」は ” Chapter ”。

本文中には、日英の言い回しが混在している。

” Preface”、” Prologue “、” Introduction “、” Appendix “、” Index ”
は英語表記で概ね統一されているが、慣れるのに一苦労するかも。

何度も触れてきたように、本文はごちゃごちゃ立て込んでいる。
配色のまずさもあり、見た目で大損している印象が付きまとう。

外観の弱点は打ち捨てて、以後、文法面を精査していく。


◆  本書の基幹となる Day 学習 98項目 について、例文( Check 1
と設問( Check 2 )のすべての典拠が過去問である特徴は、既に記した。

それぞれの解説Check 1 )、解答と訳Check 3を読み込むことで、
英文法を学ぶパターンであることにも触れた。

こうして、目次( Contents )にある文法項目を、きちんと網羅している。

取り上げる項目自体は、ほとんど重なるものの、過去問をこれほど
中心に据える構成は、 昔ながらの英文法の専門書にはない特色。

専門書は、説明・解説から入り、その後に問題を解く運びが一般的。

文法要素の分類に忠実で、なおかつ語義や文法の成り立ちを系統的
にたどる道筋を重視する傾向がある。

  結論と根拠を結びつける流れが、専門書とは大きく異なる。
大学入試問題に基づき 帰納的手法 で大部分を構成する。

確立された系統で文法を学びたい人には、不向きと考えられる

★★ 基軸は過去問 ★★

 

■  大学入試の過去問題を解き、 答えの「 解説 」から文法を習得

多数の過去問を用いて、  文法ルールを帰納 」 し、 「 解説 」 する。

過去問で学び取る 98 項目 に加え課外扱いの基礎文法が 114 項目

  •  ” Prologue ”   =  「 中学レベルの文法 」 12 項目 )
  •  ” Introduction ”   =  「 基本的な文法ルール 」 102 項目 )

 

【 合計 】 文法項目 212  

 


全項目は、 前掲の目次( Contents )にて、 目視確認できる。

とにかく 『 キク英文法 』では、「 文法項目 212 」( Rule )が学べる。


文法書 × 問題集 として 大活躍 !


「 大活躍」 と帯辞 ( 前出 ) で 自画自賛する破廉恥 はどうかと思うが、
「 文法書 」 以上に 「 問題集 」 の性質が顕著なのは確か。

実際に使われた入試問題なので、 見慣れる効果が期待でき、
受験対策には多少なりとも有効。

素材が過去問ゆえに、 難易度は出題校の英語の難易度に沿っている
と言っても過言ではない。

全編を通じて、センター試験から難関大まで、手広く取り揃えている。

主要100大学 + センター試験の過去問題 」と顕示するのが、例の帯。

つまり、難易度にばらつきがあり、かつ材源が広範囲に及んでいる
側面を鑑みると、「 中学卒業    難関大学 」は正しいかもしれない。

◆  「 すし詰め 」の項目が散見される理由は、既記のパターンと
上図を見比べれば理解できる。

各文法項目( Rule )の紙幅は、等しく割り当てられている。

その枠内に収める必要があるため、詳細な説明を要する
項目であれば、ぎゅう詰めになるのは道理ということ。

論点が多ければ、項目を切り分けできるはずだが、本書みたいに、
「 スケジュール学習 」を前面に押し出す場合、諸々絞らざる得ない。

しわ寄せは、多寡を調整しやすい解説に及ぶことになる。

仮に、紙幅に合わせて入試問題を選択していたとしても、
さほど不思議はないだろう。

こうした制約があるため、説明が総じて平易明快なのは、自然の数。

それでも、 全「 文法項目 212 」にて、必須レベルの知識はもれなく
踏まえている。

さすがである。

◆  しかしながら、「 なぜ 」には答えてくれない。

日本語と英語の違いは果てしない( 日本語と英語の違い 参照 )ため、
日本語母語話者( 日本語ネイティブ )が抱く疑問も際限ない。

本書は、日本人学習者が英文法を学ぶ上で、絶え間なく生じる
「 なぜ 」を解明する種類の文法書ではない。

質問は、てんで受け付けない姿勢で、不明点の追究など論外に近い。

これまで述べてきた持ち味を思えば、そこまでは求められない。

  •  こぢんまりした枠内で、簡潔かつ正確な表現 に徹している感
  •  英文法の 基礎知識が盤石 なら、そつはない「 文法書 × 問題集 」
  •  基礎知識が不足している なら、文法書としてはおすすめしない

◆  2枚の音声CDは、Check 1 】  Check 3 で用いる。


Listen  )))   解説を読んだら、 CD-□○○で左ページの英文を聞いてみよう。

□  =  ディスク A または B
○○  =  トラック番号


手抜かりなく誘導してくれるおかげで、 どっちのCDを、
いつ聞くべきか迷わずに済む。

ナレーションは、日英とも男女1名ずつ。

全4名のプロが、 澄み切った声で穏やかに読み上げており、
とても聞きやすい感触。

英語ネイティブ同士の日常会話に比べると、 大幅にゆっくりだが、
有名どころの英語試験のナレーションと比較すれば、 普通の速度。

普段、 英語に接する機会が少なければ、猛烈なスピードに感じる。

英語の発音は、アメリカ英語。

男女別にペアを組み、 {  男性ペア    女性ペア  } と繰り返す。

英文( 男性 ) →  和訳( 男性 ) }   英文( 女性 ) →  和訳( 女性 ) }


一文ごとに、男女ペアが交互に朗読しているので、変化に富む。

Check 1 】 は、例文とその和訳。
Check 3 】 は、正答とその和訳。

発音・声質・速度・間隔のどれをとっても、 完成度は高い。

男女の日英共演は、 ぼうっと聴くだけで、 うっとりするほど高品質。

プロ4名が、 代わりばんこに出てくるから、 飽きにくいのも強み。

ただし、 朗読中は終始一貫、 小音量の BGM ( 音楽 ) が鳴り響く
ため、 神経質な方であれば、 気になってしまうかも。

◆  入試問題の朗読といっても、 大概が文法問題で出題された
英文であるため、 素材自体はリスニング専用ではない。

『 キク英文法 』は、 あくまでも「 文法書 × 問題集 」である。

どこまで自力で聴き取れるかを判定したり、聴き取り力を日頃
訓練したりする教材としては良質で、かなり使えるに違いない。

翻って、リスニングには主眼を置いていないことも間違いない。

そのため、受験直前期のリスニング対策には、別の教材がよい。

◆  「 1日最短3分、最長9分 」の「 Day 学習 」を再掲すると、

  1.  3分 : 「 チェックモード  –  Rule をチェック
    Check 1 例文を読み、解説を読み、CDを聞く
  2.  6分 : 「 チャレンジモード  –  Exercise にチャレンジ
    Check 1 】  +  Check 2 】 過去問を解

  3.  9分 : 「 フィニッシュモード  –  Point を押さえてフィニッシュ
    Check 1 】  Check 2  + 
    Check 3 】 解説を読み、CDを聞く

9分間で、「 フィニッシュモード 」を試してみたが、恐ろしくせわしい。

先の結論通り、時間配分は現実的ではない。

音声は、例えば章ごとに、まとめて聞く方が効率的と考える。

 

◆  これまたメディア付き教材でよく出会う煩わしさだが、
「 見返し 」 に貼付された音声CDの包装が取り外しにくい。

CD2枚付きの『 キク英文法 』の場合、 表表紙と裏表紙
の 「 見返し 」 に1枚ずつ、 べっとり貼り付けられていた。

収納用に用意されたケースではなく、 再利用は望めない仕様。

開け口は、再剝離可能になっているとはいえ、 極薄袋で心許ない。

空の袋がひっついたままでは、 読みづらく、 ちょいと目障り。

ところが、 がむしゃら頑張っても、 きれいにはがせない。

泣く泣くやむなく、 表と裏の各 「 見返し 」 を切り取った。

その結果、 表紙をめくると 「 本とびら 」。

「 奥付 」 直後に裏表紙。

外観上、 みっともないばかりでなく、 本の強度が弱まってしまう。

読みさしならない本である以上、 製本テープで 「 ノド 」 を補強した。




取り組む前からこんな作業が必要となると、 意欲に差し障る。

時間とモチベーションの損失。

配色同様、 今一つの出来。

どうにか ならないものか。

できれば、 改善をお願いしたいと思う。

【参照】     ※  外部サイト

■  本の構成要素と印刷・製本

◆  もっとも、アルク様の公式サイトによると、音声CDの提供は
順次終了していくとある。

今後は、ダウンロード音声を提供する方針を明らかにしている。


2019.10.29

【 お知らせ 】書籍及び教材に付属する
音声CDの提供終了について

https://ec.alc.co.jp/info/notice1910-cd.html


『 キク英文法 』 の音声は、以下の専用サイトから、
誰でもダウンロードできる仕組み。

◇  アルク様 ダウンロードセンター より   ↓


本文学習用音声【mp3】68.5MB

本文学習用音声【mp3】65.0MB
https://www.alc.co.jp/dl/7007131/

 

◆  ともあれ、 雑な色取りが惜しい。

内容が立派でも、 読みづらいと美点がかすむ。

反復学習が肝要な学参であれば、 使わずじまいになりがち。

かえすがえすも、 残念な話。

 

【参考動画】     ※  YouTube

色覚補正眼鏡( EnChroma 製 )で、 生まれて初めて色を目にした瞬間。

  中級 の英語力の持ち主であれば、 あらかた聴き取れる動画


視聴者の心がこもった英文コメントも、 ぜひご覧いただければと願う。

 

◇  「 英文法の参考書 」 連載

 

 

 

 

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