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Skyrocket

      2019/10/08

急上昇する、うなぎのぼりになる  

物価などが、とどまることなく、
どんどん上がることを「うなぎのぼり」という。
ウナギが、水中で上へ上へと昇ることが由来。
  うなぎのぼり【鰻登り・鰻上り】

■(ウナギが水中で身をくねらせて垂直に登ることから)
物価・温度、また人の地位などが、見る見るうちに
のぼること。
(広辞苑 第七版)

■ 物事の程度や段階が急激に上がっていくこと。
(大辞林 第三版)

※ 下線は引用者
「見る見るうちに」「急激に」なので、急ピッチな様子。

例えば、消費税の増税は「うなぎのぼり」とは言えない。
  • 1989年4月 施行:3%
  • 1997年4月 施行:5%
  • 2014年4月 施行:8%
  • 2019年10月 施行:10%
主要な国語辞典は「物価」を筆頭例に挙げるものの、
近年の日本では物価の急速な上昇は、そうそう見られない。


主に通貨の「ハイパーインフレーション」時に発生する現象である。

国際会計基準では、3年間で累積100%(年率約26%)が
「ハイパーインフレ」の定義(2019年現在)である。
この基準は高く、我が国で起こる可能性は低い。

したがって、国語辞典に頻出の「物価」のうなぎのぼりは、
日本人にとって、現実離れしていると考えられる。

それよりは、「売上」「人気」「成績」「評判」のうなぎのぼり
の方が、
よほど身近であろう。


◆ 表題 “skyrocket” の定訳のひとつが、「うなぎのぼりになる」。

 

image.png

ところが、日本語の「うなぎのぼり」は、上図の「ロケット」のような
物理的な物体の急上昇には使わない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/うなぎのぼり

こうした食い違いが語学の興趣だと感じるが、いかがだろう。
自家撞着する図を添えたのは、記憶に刻むには有効と考えたため。


◆ “skyrocket” の由来は「打ち上げ花火」。

【発音】 skáɪrɑ̀kət

17世紀から使われていた名詞で、「ロケット花火」を意味する。

無論、宇宙船・ミサイルなどを打ち上げるロケットエンジンは、
当時は存在しない。
一方、花火の歴史は長く、中国の宋(960–1279年)王朝以降、
既にロケット推進式の花火が「のろし」として活用されていた。

  のろし【狼煙・烽火】

■ 1. 戦時、非常時の緊急連絡のためにあげる煙。
(精選版 日本国語大辞典)

■ 1. 昔、戦争や事件が起こったあいずに、火をもやしてあげたけむり。
(三省堂国語辞典 第七版)

※ 語釈該当引用

「ロケット」とは、火薬などの爆発で生じるガス噴射
の反動力を利用した装置を指す。

ロケット推進式の打ち上げ花火なので、「ロケット花火」。
空に向けて打ち上げるので、名詞 “sky” が加わり、”skyrocket” に。

動詞「急上昇する」「うなぎのぼりになる」は、2世紀後の19世紀
より使われ始めた。

動詞は、自動詞中心。
他動詞に触れない辞書が多いが、後述の辞書が記すように、他動詞もある。
意味する内容は同然。

  • 名詞「ロケット花火
  • 動詞「急上昇する」「うなぎのぼりになる
    【語形変化】 skyrockets – skyrocketed – skyrocketed – skyrocketing

現在分詞 “skyrocketing” で、時に次のように和訳されるのが、
「物価」「株価」「地価」を始めとする価格関連。

  • 青天井(天井知らずで、長期間無制限に上がること)
  • 暴騰(急に大幅に上がること  ↔ 暴落)

“skyrocketing” は形容詞的にも用いられ、意味は重なる。

  • 高騰している(高く上がること  ↔ 低落)
  • 急騰している(急激に上がること  ↔ 急落)

◆ これまで見てきたように、”skyrocket” の成り立ちと意味合いは、
比較的単純である。

しかし、単語自体は「3音節」で「R」入り。
日本人にとって、難易度が高めの発音。

音節」(syllableシラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。


◆ 実際のところ、”skyrocket” を普段使う機会はめったに訪れない。

平穏無事な日常に、「ロケット花火」やら「うなぎのぼり」やら、
物騒がしい雰囲気が入り込む余地は生じにくいのが一般人の生活である。

普段使いには、過激すぎる。
自ら使うより、見聞きする場面がずっと多い印象なのが “skyrocket”。


現に、
LDOCE6(ロングマン)の指標によれば、
全3項目ランク外。

・ 重要 :9000語圏外
・ 書き言葉の頻出:3000語圏外
・ 話し言葉の頻出:3000語圏外

それでも、海外の経済ニュースを読んでいると、
ちゃっかり姿を現すこと頻り。

英単語全体から見れば、重要でも頻出でもない。
なのに、経済分野では確固たる存在感を放つ。

それが “skyrocket”。

カタカナで馴染み深い「スカイ」と「ロケット」が
組み合わされた語であることが鮮明に見て取れる。

初めて接した場合でも、中級学習者であれば、
ぐっと興味を引き付けられる面構えではなかろうか。

こういう個性的な単語は、一度しっかり学べば覚えやすい。
ここで理解しておけば次回は自力でいけるはず。


◆ さっそく、今月2019年9月発表のニュース見出しをどうぞ。

どれも典型的な用法であり、難しくはない。

  • “Obesity rates skyrocket in Texas dogs”
    (テキサスの犬の肥満率が急上昇)
  • “US measles cases skyrocket”
    (米国のはしか患者急増)
  • “Oil shipping rates skyrocket”
    (石油輸送料が急上昇)
  • “X Sales Expected to Skyrocket”
    (Xの売上が急上昇の見込み)
  • “Store Closures Skyrocket in First Half of 2019”
    (閉店が急増した2019年上半期)
  • “Gas prices skyrocket in X”
    (Xにてガス価格が急騰)
  • “Sexually transmitted infections skyrocketed in X”
    (Xにて性感染症が急増)
  • “X’s failure causes flight prices to skyrocket”
    (X社の破綻で、航空運賃が急上昇)
  • “Gold prices are about to skyrocket 50% higher”
    (金価格が50%引き上げ寸前)
  • “Tech giants cause local rents to skyrocket”
    (テクノロジー大手がもたらした、地元家賃の急上昇)
※「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

◆ 先に “skyrocket” の意味合いは、比較的単純であると述べた。

3大学習英英辞典(EFL辞典)もこの通り。
skyrocket

■ [intransitive] informal
if a price or an amount skyrockets, it greatly increases 
very quickly.
(LDOCE6、ロングマン)

■ [intransitive]
(of prices, etc.) to rise quickly to a very high level.
(OALD9、オックスフォード)

■ [intransitive]
to rise extremely quickly or make extremely quick
progress towards success.
(CALD4、ケンブリッジ)

【発音】 skáɪrɑ̀kət
※ 下線は引用者
これまた “very quickly” “extremely quickly” で、
上掲の
国語辞典「見る見るうちに」「急激に」とお揃い。

にわかで激しい要素は、やはり不可欠なのである。

“price” は、ここでは主に「物価」(commodity price)を指すと
考えられるため、この点もほぼ同様。

“intransitive” は、自動詞 “intransitive verb” のこと。
3辞書とも、他動詞の表示は省かれている。


◆ これらの語釈では物足りないので、さらに兄弟辞典を援用してみる。

各系列のビジネス辞書、すなわち “Business English Dictionary”。
唯一、ロングマンには、他動詞 “transitive verb” が顔を出す。

skyrocket

■ [Intransitive, Transitive]
to increase quickly and suddenly.
Longman Business English Dictionary

■ verb
to go up very high and very fast.
Oxford Business English Dictionary

■ [intransitive]
to rise or become successful extremely quickly.
Cambridge Business English Dictionary

【発音】 skáɪrɑ̀kət
※ 下線は引用者
三者三様の専門性に期待したのに、EFL辞典を上回る素っ気なさ。

当てが外れて、がっかり。

本質的に簡素な語意なので、これ以上説明しようがないのだろう。

埋め合わせに、上記 “Oxford Business English Dictionary”
に掲載された、新聞向け「増減」をご紹介したい。

image.png

p. 277(Oxford University Press 2006)
より転載。※ 漢字は追加

おまけに、同義語の自動詞 “rocket” の語釈もご案内。

初出は、”skyrocket” と同じく、17世紀
語源は、イタリア語「糸巻き棒」(rocca)。
ロケットの形が、糸巻き棒に似ていることから。

rocket

■ [Intransitive] also rocket up
if a price or amount rockets, it increases quickly and suddenly.
Longman Business English Dictionary

■ verb
to increase very quickly and suddenly.
Oxford Business English Dictionary

■ [intransitive] (also skyrocket) informal
to increase extremely quickly or make extremely quick
progress
towards success.
Cambridge Business English Dictionary

【発音】 rɑ́kət
※ 下線は引用者
やたらと既視感を覚える文面。同義語なので不思議はないかも。

大切なことは、”skyrocket” と同義扱いで、経済面などに用いられる点。
両語とも、引用した英英辞典の一部に “informal“(くだけた表現、非正式)
と明記されている。

にもかかわらず、お堅いニュースにも年中出てくる。

初見だと、「ロケット」のイメージが邪魔して、場違いな感じ。
だが、事前に意味を押さえておけば、その場ですんなり把握できる。

“skyrocket” と一緒に、頭に格納してしまおう。

【類似表現】

“spike”
https://mickeyweb.info/archives/38396
(急上昇する)

 

 

 

 

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