プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

I have no clue.

      2018/08/03

私には分かりません。

口語表現としてよく聞く。
次の言い回しも意味は同じ。
ニュアンスに少し違いがある。

  • I don’t have a clue.
  • I don’t have any clue.
  • No clue.

次も同義とされる。

だが、日本の学校で教わる機会のある
この2つの表現に比べ、”clue” の方は
めったにないようだ。

上記いずれも便利な口語表現。
英英辞書のほとんどに “informal
と記されている。

すなわち、非正式でくだけた表現である。

「知らない」「分からない」と否定する
ため、投げやりな物言いさえしなければ、
が、相手や場面を問わず使える。

◆ 2文は同義なので、論理的に考えれば、
“clue” は “idea” と同義になるはず。
確かに意味のやや重なる可算名詞だが、
必ずしも同義語レベルには至らない。

類語辞典(thesaurus)で調べると、
辞書によって可否は分かれる。
例えば、オックスフォード(Thesaurus of
English)では同義語扱いされていない。

しかし、”clue” 項目下の “not have a clue” は、
“have no idea” 及び “not have any idea” の
同義フレーズとして明記されていた。

語学には、このようなケースが多い。
フレーズや文全体として同義になっても、
構成要素である単語を比較すると、
同義にならなかったりする。

<解釈>が入ることもあり、適用する論理が
理数系とは異なると考えられる。

◆ “clue” には、名詞と他動詞がある。
語源は「糸玉」(clew)。ここから「糸口」に。
発音は、klúː

基本的意味は、
– 名詞「糸口」「手がかり」
– 他動詞「手がかりを与える」

主な同義語は “hint”、”indication”、”lead”。

◆ 一方、”idea” は名詞のみだが、はるかに多義。

ギリシア語「イデア」を語源とする。
基本的意味は「考え」「見解」「観念」で、
哲学・論理学・医学・心理学・音楽など
の分野を幅広く網羅する。

「糸口」「手がかり」にとどまる “clue”
とは比較にならない。

また、“clue” は可算名詞のみだが、
“idea” は不可算名詞も兼ねる。

“idea” の主な同義語は、
“concept”、”notion”、”thought”、’plan” など。
(Oxford Thesaurus of English)

◆ “I have no clue.” や “I have no idea.”
が口語として重宝される一因は、
「私には分かりません」という英語表現が
単純でないからである。

I don’t know.“(分かりません) は日本の中学校で必ず学ぶ。
基本中の基本の表現である。
だが、実用では要注意

シンプルだが、実にそっけなく聞こえがちなのだ。
びしゃり「分かりません」「知りません」。
相当すげなく、取り付く島のない冷たい様子
を伴う場合が少なくない。

そもそも “I don’t know.” は、否定が目的。
あらぬ疑いなどを強く否定する上では有効だが、
日常使用には露骨すぎる勢いのある3語。

言い方に気をつけないと、
そんなの知るか」「知らねーよ」「さあね
みたいな冷淡で無関心な印象を与えてしまう。

そのため、もっとソフトで誤解を招きにくい、
“I have no clue.” や “I have no idea.”
が好まれるのである。

結果的に、”I don’t know.” の婉曲表現として役立つ。

◆ 反論ではない単純な否定の際は、言い振りに
気をつける必要がある。

本稿で挙げた全表現とも、状況次第では、
そんなの知るか」「知らねーよ」「さあね
と受け手に聞こえる可能性がある。

敬語があいまいな英語ゆえのリスクである。

◆ このような大切なことは、学校ではなかなか
教えてくれない。

自ら恥をかきつつ、覚えていくことが多い。

相手を怒らせたり、赤っ恥をかいて学んだ表現
は忘れにくい。

40年以上、こうして英語学習を重ねてきた私は、
大きく恥をかけば得るものも大きい>と実感している。

プロの翻訳・通訳者でもない限り、
語学的な間違いはきちんと謝れば、大抵どうにかなる。
心配しすぎないで、どんどんトライしよう。

 

 

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