Whodunit
2019/12/19
犯人は誰だ?
れっきとした英語である。
【発音】 huːdʌ́nit
「フダネッ」などと聞こえる。
“whodunnit“(nが2つ) とつづることもある。
“Who done it ? “(誰がやったのか)の略。
文法的には “Who had done it ? ” が正式。
“Who did it ? ” とほぼ同義。
初出は、1930年代。
- 1930s: from who done it?,
non-standard form of who did it?
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/whodunnit?q=whodunnit+ - “murder mystery,” 1930, U.S. slang,
originally a semi-facetious formation from who done it?
https://www.etymonline.com/search?q=whodunit
– - 1930。疑問文 Who done it ? (標準英語 Who did it ? に相当)
から作られたこっけいな語形成。
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
※ 下線は引用者
下線「こっけいな」が示唆するように、奇妙な見てくれである。
◆ “whodunit” は、可算名詞 のみ。
定訳は「推理小説」と「探偵小説」
「推理小説」の方が、一般的。
特に、殺人犯の解明が中心の小説を指す。
同種の映画や劇を含むことがある。
日本でも「フ-ダニット」のまま、
推理小説の分類として確立している。
アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』
(1934年刊)は、「フ-ダニット」を代表する
推理小説である。
◆ 本稿で “Whodunit” を取り上げるのは、
用途が<小説の分類>に収まらないから。
実際の事件報道にも起用される。
趣旨「犯人は誰だ?」
文字通り “Who done it ? “。
◆ 以下の英英辞典3点すべてが、”informal” と表記する。
つまり、くだけた表現で正式な言い回しではない。
大半の辞書では “slang” 扱いされていない模様。
上掲の有力語源サイト “ETYMONLINE” には “U.S. slang“
とあるものの、むしろ例外的である。
–
◆ 3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈はこちら。
whodunit
whodunnit
informal
a book, film etc about a murder case, in which
you do not find out who killed the person until the end.
(LDOCE6、ロングマン)
whodunnit
(British English)
(also whodunit North American English, British English)
informal
a story, play, etc. about a murder in which
you do not know who did the murder until the end.
(OALD9、オックスフォード)
whodunnit
(US whodunit)
informal
a story about a crime and the attempt to discover
who committed it.
(CALD4、ケンブリッジ)
【発音】 huːdʌ́nit
ごく普通の可算名詞(countable noun)である。
それでも、深刻な内容の記事に “whodunit”の字面が踊ると、
「ふざけているのか」と不謹慎に感じてしまったりする。
実物をご覧に入れたい。
<今年2017年 ニュース見出し>
・ “Hate crime whodunit: Do police have the wrong man?”
(CNN)
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・ “Kim Jong-nam’s Death: A Geopolitical Whodunit”
(The New York Times)
・ “Theft of Fishing Guide’s Ashes Becomes a Whodunit”
(The New York Times)
––
・ “4 Dead, Liverless Sharks Wash Ashore in Weird Whodunit”
(Live Science)
–
・ “Matthew Guy’s lobster dinner leak. Whodunit?”
(SBS)
–
・ “A tube misconnection and a death: a medical whodunit”
(Physician’s Weekly)
上記すべて、高い信用を得ているサイトの記事。
一見すると、ニュースなのか書評なのか、よく分からない。
- “I want to know the answer to this whodunit.”
(この推理小説の犯人か知りたい。)
– - “This will soon become a whodunit.”
(これはまもなくミステリーとなる。)
“Whodunit” とあるから、てっきり新作ミステリーの
レビューだと心弾ませて読み始めたところ、
中身は現実に起きた凄惨な事件で驚いたことがある。
その時のショックは忘れられない。