要するに、 実際には
ビジネス場面では、停滞した会話に活を入れる
効果がある前置き表現。
しどろもどろの話や紛然とした見解を前に、
がつんと食らわす勢い を帯びる “The thing is”。
錯綜した中、いきなり、
こういうことなのです。
と言い切られると、周囲はびくっとひるむ。
当否は別としても、一応は耳を傾けざるえない。
皆が身構える中、発言することになるため、
“The thing is” は意見に自信があるか、
難局打開の意気込みのある人が用いる言葉。
時には、単にうんざりして、とっとと結論したい
人が使う場合もある。
会議中、”The thing is” が出てきた時は、続く内容
次第で、発言者の思考レベルが露呈したりするので、
見物ではある。
–
「要は、変化が必要」 「その通り」
◆ 前置きの “I mean“ や “Let’s see” と同じく、
口頭中心で文頭に置くことが多い。
直後にコンマを入れるのが通例。
両者ほど日常的に頻出ではないが、珍しくもない。
“I mean“ とは意味合いも似ている。
□ ” I mean ” = “I mean to say”
(私が言おうとしているのは)
- 「つまり」
- 「えっと」
- 「というか」
- 「いやその」
相手に分かりやすいように言い直したり、
自分の説明を補う。
□ ” Let’s see. ” = “Let us see”
(私たちに考えさせて)
- 「えっと」
- 「うーん」
- 「どれどれ」
–
※ いずれも、2語の方が一般的な言い回し
ビジネス用途の “The thing is” の出番は、
次のような流れが目立つ。
- そうでなく、本当はこういうこと
- それよりも、こういうこと
- 実際には、こういうこと
- 率直に言えば、こういうこと
- 言いたいことは、こういうこと
- 要するに、こういうこと
- 結局、こういうこと
つまり、”The thing is” に続く内容の大半は、
状況説明、要約、釈明、社会通念、一般論
◇ ビジネス用途では、自分の意見を加えるのが主目的
必ずしも、相手を否定するものではないものの、
「実はこういうなんだよ」との思いを明らかにしたい。
そのため、”I mean”(というか)に比べて、主張が強め。
◇ 片やプライベートな会話では、
話し掛けに使う場合も少なくない
「あのさ」 「ねえ」 「聞いてよ」
【関連表現】
- “I’ll tell you what.” (ではこうしよう。)
- “You know what ? “(ちょっといい?)
- “Here’s the thing.“(こういうことなのです。)
–
◆ “thing” は名詞のみで、可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
【発音】 θíŋ (1音節)
1音節なので、腹の底からゲロする勢いで、一息に発声する。–
–
“th” の発音は2種類
◇ 有声の摩擦音「ð」
→ 有声歯摩擦音 (ゆうせい は まさつおん)
◇ 無声の摩擦音「θ」
→ 無声歯摩擦音 (むせい は まさつおん)
※ 「θ」 「ð」 の具体例は、 “smooth out” へ
–
■ “thrill” は “θ” → 無声歯摩擦音
無声歯摩擦音「θ」 (むせい は まさつおん)
舌先が上の前歯の裏側に軽く触れ、そのすき間から呼気
が押し出されて調音される。 その間声帯は振動しない。
『新装版 英語音声学入門 CD付き』 p. 94、
竹林 滋 (著)、大修館書店、2008年刊
発音時に声帯を使わないため、喉がぶるぶる震えない。
それゆえ、声帯振動なしの無声の摩擦音となる。
“thrill“、”threshold“、”math“、”theory“、
“thumb“、”thought” と同じ。
発音時の 声帯振動(喉ぶるぶる)の有無で、θ と ð に分かれる。
「θ」も「ð」も、日本語には存在しない発音。
舌の先端と上顎前歯で、隙間を作って発音する点は共通する。
両者こんな感じ。
–
θ「無声歯摩擦音」
声帯振動なし : 喉ごろごろ
–
「θ」と「ð」については、”smooth out” で詳しく取り上げた。
–
◆ “thing” の原則は可算名詞。
■ 基本的意味は、
「物事」=「物」「事」
日本語の「物事」と同様、
抽象的・総称的な意味合いがある
- “Things change.”
https://mickeyweb.info/archives/3326
(事情は変わる。)
– - “Things happen.”
https://mickeyweb.info/archives/9323
(こんなこともある。)
– - “sort things out”
https://mickeyweb.info/archives/1464
(解決する。対処する。けりをつける。)
– - “talk things out”
https://mickeyweb.info/archives/5615
(徹底的に話し合う)
– - “work things out”
https://mickeyweb.info/archives/9698
(問題を解決する)
– - “get things going”
https://mickeyweb.info/archives/10469
(事を進める)
– - “everyday things” ※ “thing” は単数でも可
https://mickeyweb.info/archives/10909
(日常の物事)
–
◆ 表題の用法では、冠詞 “the”、単数 “thing” が常。
“A thing is” または “The things are” とは言わない。
これではまったく別の意味となる。
“The thing is – ” の直訳は「そのことは~です」。
実際の文脈では、上掲一覧のような流れで使われる。
ビジネス用法を挙げる。 和訳は一例。
- “The thing is, they don’t know what’s going on.”
(実のところ、彼らは何が起きているか理解していない。)
– - “The thing is, she is too difficult to work with.”
(要するに、彼女と一緒に働くのは大変すぎます。)
– - “The thing is, they never tried to help us out.”
(実際、彼らはまったく助けてくれようとしなかった。)
– - “The thing is, I don’t feel comfortable working for him.”
(実は、あの人の下で働くのは適切と思えないのです。)
(正直言えば、彼の元では働きたくないのです。)
– - “The thing is, she is not qualified for the job.”
(要は、彼女はその仕事に適格ではないということ。)
(はっきり言うと、彼女はあの仕事に不適格。)
– - “The thing is, we must move forward.”
(要するに、我々は前に進む必要があります。)
(とにかく、我々は前進しなくちゃ。)
– - “The thing is, they don’t trust us.”
(要するに、彼らは我々を信用してないということです。)
(結局、うちらは信用されてないんですよ。)
– - “The thing is, its buildings are aging and in need of care.”
(実際問題として、建物が老朽化して、修繕が必要なのです。)
–
- “The thing is, he has never provided any support for us.”
(結局、彼は何の支援もしてくれなかったということです。)
– - “The thing is, I didn’t know anything about this matter.”
(本当に、私はこの件について何も知らなかったのです。)
– - “The thing is, they fired me.”
(要は、クビになったんだ。)
–
–
【類似表現】
“The bottom line is – ”
https://mickeyweb.info/archives/26351
(最重要なのは~です、要するに~なのです)
“as it turned out”
https://mickeyweb.info/archives/474
(蓋を開けてみれば)
“at the end of the day”
https://mickeyweb.info/archives/2498
(最終的には)
“as it turned out”
https://mickeyweb.info/archives/474
(蓋を開けてみれば)