Paperwork
2020/11/10
文書業務、 事務作業、 事務手続き
紙を扱う仕事だから「文書業務」。
【発音】 péɪpɚwɝ̀k
【音節】 pa-per-work (3音節)
不可算名詞(後述)である。
- 名詞 “paper“(紙)
- 名詞 “work“(仕事)
本来は中立的な意味合い。
ところが、なぜかネガティブな文脈で
使われる場面が日常的に見受けられる。
粗末な扱いに甘んずる位置づけの印象。
- I got sick and tired of endless paperwork.
(とめどない書類作成にうんざりした。)
– - I have to deal with a lot of paperwork.
(大量の書類仕事をやらねばならない。)
– - I’m wasting my time doing paperwork.
(文書業務なんかで時間を浪費している。)
– - I spent my weekend preparing paperwork.
(書類作成に週末を費やした。)
– - I did all my paperwork during lunch break.
(昼休みに事務手続きをすべて終えたよ。)
– - I don’t want to wait until all paperwork is perfect.
(書類が完全に整うまでなんて、待ちたくない。)
こんな風にぶちまけたりする。
オフィスにおける代表的な使用例である。
文書業務は、円滑な業務運用や手続きに
欠かせない仕事の一部(後述の語釈参照)。
しかし、創造性や生産性とは無縁で、誰に
でもできる「作業」とみなされている様子。
手書きで書き損じた場合、文書によっては、
一からやり直す必要が生じることさえある。
こうして、荷厄介な仕事未満の面倒事として、
大勢の人が毛嫌いするのが “paperwork”。
–
◆ 冒頭に記した通り、成り立ちは単純。
2つの名詞を合わせた不可算名詞。
“paper” と “work” は、ともに可算と不可算を兼ねる名詞である。
日本人学習者が混乱しがちな点なので、
これから詳しく見ていこう。
ー
“paperwork” の数々
ー
–
■ paper (可算・不可算)
語源は、ラテン語「パピルス」(papȳrus)。
パピルスとは、水生植物の一種。
–
紙がパピルスで作られたことから “paper” に。
「パピルス」は、シャープの電子辞書の名称として、
かつて名を馳せた。(現在は「Brain」に移行)
名詞 “paper” のポイント5つ
- 原則は、不可算
「紙」と言えば、普通は不可算名詞。
– - 「紙」が成果物になったものは、可算名詞
【例】
新聞、論文、答案、紙袋
– - 可算・不可算を兼ねるものもある
【例】
「壁紙」(wallpaper)
– - 複数扱いの “papers” で、総称的な「証明書」「書類」
【例】
身分証明書(identification papers)
入管書類(immigration papers)
– - 不可算の「紙」には、決まり表現がある
【例】
“a sheet of paper”、”three sheets of paper”
“a roll of paper” などの決まり表現がある。
–
不可算の「水」の
“a glass of water”、”three glasses of water”
と重なるパターンである。単位ないし容器による<輪郭づけ>である。
–
【参照】 “hot water“
■ work (可算・不可算)
語源は、古英語「労働」(weorc)。
名詞 “work” のポイント4つ
- 原則は、不可算
「仕事」と言えば、普通は不可算名詞。
職業としての「総称的な仕事」を指す。–
– - 具体的に課せられた「任務」や
特定の「勤め口」としての「仕事」は、
可算名詞が原則–
次の類義語と同じ。
・ task ・ job ・ assignment ・ duty
– - 「仕事」が成果物になったものは、可算名詞
【例】
著作、芸術作品
– - 複数扱いの “works” で、特に「工事」「事業」
“work” のままでも使われることもある。
【例】
基礎工事(ground works)
公共事業(public works)
上記のポイントは似通っている。
–
なぜなら、可算と不可算を区別する視点が
同じだからである。
◇ 不可算 → 抽象的な概念
◇ 可算 → 形の見える具体的なもの
中級学習者なら、これらの原則は学習済み。
「例外」が多すぎるため、混乱してしまうのだ。
<paper>
「紙」は、もともと 「ロール状の塊」。
どうにも数えようのない、どでかい物質
として、不可算。
例えば、こちら。 両端に写る人間を凌駕する「ジャンボロール」である。
【出典】 https://www.asahi.com/articles/ASN3366LZN33UQIP02Z.html
「食パン」も、同様の考え方で、不可算名詞。
<work>
割り当てられるまで は、
抽象的な、職業としての「総称的な仕事」
として、不可算。
【参照】 “in place“、 “take action”、 “acting“
区別の基本は以上の通り。
私たち日本人には、かなり分かりにくい。
確かに、数ある「例外」を学ぶのは大変だが、
「基礎知識」を押さえるのは、それほど難しくない。
【参考】 ※ 外部サイト
・ 可算と不可算を見分ける簡単なコツ
・ 可算と不可算を兼ねる名詞について
・ 可算と不可算についてよくある質問
・ 不可算名詞は「物質」「抽象」「固有」の3つ
◆ “paperwork” が不可算名詞であることに、
異論はない模様。
後掲の4大学習英英辞典(EFL辞典)は、すべて
“uncountable”(不可算) と明記する。
- 不可算名詞 “paper“(紙)
→ 具体的な成果物ではない
– - 不可算名詞 “work“(仕事)
→ 総称的なやるべきこと
ここでは両方が不可算名詞。
それが合わさった “paperwork” が
不可算なのは、自然の成り行き。
初出は1587年。最初は「紙製の作品」を
意味したが、1889年から「文書業務」に。
“paperwork”
- 1. work such as writing letters or reports,
which must be done but is not very interesting.
2. the documents that you need for a business
deal, a journey etc.
(LDOCE6、ロングマン)
– - 1. the written work that is part of a job,
such as filling in forms or writing letters
and reports.
2. all the documents that you need for
something, such as a court case or
buying a house.
(OALD9、オックスフォード)
– - – part of a job that involves writing
letters and reports and keeping records.
– the written records connected with a
particular job, deal, trip, etc.
(CALD4、ケンブリッジ)
– - Paperwork is the routine part of a job
which involves writing or dealing with
letters, reports, and records.
(COB9、コウビルド)
【発音】 péɪpɚwɝ̀k
【音節】 pa-per-work (3音節)
※ 下線は引用者
4点とも似たり寄ったりで、月並みの
「文書業務」「事務作業」を説明する。
唯一、個性を認めるのは下線部(赤字)。
「退屈」を示唆する “LDOCE6″。
軽視の対象であることを匂わせている。
そうなる理由は既に触れた。
カタカナの「ペーパーワーク」にも、
「ペーパードライバー」(和製語)のような
軽い響きをかすかに覚える。いかがだろうか。
ペーパーワーク【paperwork】
- 事務処理。事務手続き。
(大辞林 第三版)
– - 1. 文書を扱う事務の仕事。
書類を作成する仕事。
2. 紙で作ること。またその作品。
(広辞苑 第七版)
–
◆ “paper” とはいえ、2019年現在は、
電子版の文書が盛んに導入されている。
–
英語圏の記入用紙では普通に見られる書式。
社員対象の事務手続きの場合、大組織であれば、
電子的な “paperwork” の方が一般的であろう。
電子メール経由の提出や決裁が容易で、時間短縮
につながる。
デジタル署名や電子署名を用いれば、「紙」と
変わらぬ効力をもたらす。
全般的に管理しやすいのが、電子版の利点である。
電子化の流れは、時代の趨勢に沿っている。
【参考】 電子版 vs 「自炊」
◆ 先に掲げた5つの例文は、不可算名詞
“paperwork” の使い方の基本を表す。
“paperwork” につながる主な単語(連語)
は、次の通り。
このように「コロケーション辞典(連語辞典)」を
引けば、組むべき単語をすぐ調べることができる。
ー
–
< コロケーションについて >
・ “aware”
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
–
【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
“threshold“、”damage“、 “scrutin
“backdrop“、”strugg
“bombshell“、”alternative”、”feasible“、
“disparity“、”presence”