自ら課した、 自ら招いた
ニュースによく出る形容詞。
■ 多用される2つの表現
- a self-inflicted injury
( 自分に加えたケガ )
– - self-inflicted wounds (※)
- a self-inflicted wound
( 自傷障害 )
(※) 戦時中は、徴兵忌避 ( draft evasion、draft dodging )
のため行われたという。
–
a self-inflicted wound is the act of harming oneself
( 中略 )
where the injurer wanted to take advantage of being injured.
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Self-inflicted_wound
–
◆ “ self- ” は、 「 自分で 」 「 自己 」 を意味する、
「 連結形 」( combining form )。
【発音】 sélf (1音節)
–
■ 連結形 “ self- ” は、
独立した単語 “ self ” より生じた
■ 単独使用できない
「 接頭辞 」 ( prefix ) とは異なる
–
” self-explanatory ” も、「 連結形 」 の ” self- “。
「 接頭辞 」 ( prefix ) 扱いする有力辞書も存在するものの、
「 連結形 」 ( combining form ) の方が的確と私は考える。
–
普段はそう意識しなくてもよいとはいえ、 英文法上、
「 連結形 」 と 「 接頭辞 」 ( prefix ) は区別すべきものである。
「 連結形 」 と 「 接尾辞 」 ( suffix ) も混同されがち。
区別については、 別稿の ” newsworthy ” 及び ” well-established ”
に詳述した ( 図入り )。
◆ ” inflict ” の語源は、 ラテン語 「 打ちのめす 」( inflīctus )。
【発音】 ɪnflíkt
【音節】 in-flict (2音節)–
2音節の単語で、 後半に強勢( 強さアクセント )。
他動詞のみで、 自動詞はない。
基本的意味は、「 好ましくないもの 」を
- 負わせる
- 課する
- 加える
ネガティブな雰囲気を放つのが一般的で、語源に忠実。
” self-inflicted ” は、 他動詞 ” inflict ” の
過去分詞 ” inflicted ” が 形容詞化したもの。
【発音】 ɪnflɪ́ktɪd
【音節】 in-flic-ted (3音節)
「 過去分詞の形容詞用法 」 に似通う。
【例】 ” any given “、” short-staffed “、” shell-shocked ”
–
◆ よって、形容詞 ” self-inflicted ” は、
- 自分で負わせた
- 自ら課した
- 自ら招いた
–
名詞形は、不可算名詞の
- ” self-infliction “( 自分で負わせた苦しみ )。
–
–【発音】 ɪnflɪ́ktɪd
–【音節】 in-flic-tion (3音節)
【類似表現】
本来は中立的な意味で、「 自分でやった 」 ことを示すのみ。
故意・過失は問わないため、 不注意 も含む。
◇ ニュース報道で目立つ “ self-inflicted ” の用途
–
「 偽計 」 または 「 自殺 」
すなわち、周囲を欺く行為 または 自傷
–
「 自作自演 」 なイメージ。
意図的 な ケースが大半な印象。
報道価値 がある以上、 当然かもしれない。
自殺・自傷の疑いのある殺傷事件
には、 欠かせないキーワード。
–
” self-inflicted “
- caused by your own actions.
( メリアム ウェブスター )
– - a self-inflicted wound or injury is
one that you do to yourself deliberately.
( コリンズ )
- “He died of a self-inflicted gunshot wound.“
- “He died from a self-inflicted gunshot wound.”
(彼は自ら銃で撃ったケガによって死んだ。) ※ 頻出
– - “Jack suffered a self-inflicted gunshot wound to the chest.”
(ジャックは自分の胸部に銃を撃ち込み、負傷した。)
– - “The suspect was found dead from a self-inflicted gunshot wound.”
- “Suspect found dead by self-inflicted gunshot wound” ※ 見出し
- “Suspect found dead from self-inflicted gunshot wound” ※ 見出し
(容疑者は銃で自殺した状態で発見された。)
–
【発音】 sʌ́spekt
【音節】 sus-pect (2音節)–
– - “She died of a self-inflicted illness.”
(彼女は自ら招いた病気で死んだ。)
– - “Self-inflicted injuries surge among teenagers.”
(自傷による負傷が、ティーネージャーに急増している。)
– - “His problems are mostly self-inflicted.”
(彼の問題はほとんど自身がもたらしたものである。)
– - “She made a full recovery from self-inflicted pain.”
(彼女は自分に課した苦悩から完全に回復した。)
– - “He died of a self-inflicted firearm wound on April 30.”
(彼は4月30日に、自ら銃で撃ったケガによって死んだ。)
– - “She was found dead from an apparent self-inflicted gunshot wound.”
(明らかに自ら撃った銃創で死亡している状態で彼女は発見された。)
–
【発音】 əpǽrənt
【音節】 ap-par-ent (3音節)–
–
■ 加害者は 自分自身、 被害者も 自分自身
–
■ 自己責任だから 「 自業自得 」
–
これが ” self-inflicted ” の基本的な社会通念。
–
世知辛い現実を思えば、 この解釈は妥当に違いない。
だが、 切なく哀しい。
人間には 「 自己保存 」 ( self-preservation ) の本能がある。
正常であれば、 自らを傷つけようとはしない。
きっと何かに苦しみ、 病み果て、 適切な判断が
できなくなり、 自傷や自暴自棄などの
自己破壊的行為 ( self-destructive behavior )
に走るのだろう。
さらに、 生育環境 ・ 毒親 ・ 遺伝的素質が原因で、
自己破壊傾向が本質的に強い人も大勢存在する。
–
いずれも、 本人のせいばかりとは言えまい。
” self-inflicted ” の字面を見るたびに、
苦悶し、 のたうち回る姿を想像してしまう。
誰しも、 好き好んでそうなるわけない。
事情をよく知らない素人の第三者が、
「 自ら招いた 」
と決めつけるのは、 冷酷かつ横柄に感じる。
根っこを見極めると、 悲嘆と孤独と絶望が潜む。
自分だって、 いつかそうなるかもしれないのだ。
他人の不幸を軽々しく口にしない方がよいと思う。
◆ こんな格言もある。
趣意は同じ。
–
- 「 親の因果が子に報ゆ 」
https://kotobank.jp/word/%E8%A6%AA%E3%81%AE%E5%9B%A0%E6%9E%9C%E3%81%8C%E5%AD%90%E3%81%AB%E5%A0%B1%E3%82%86-454981
– - “ The sins of the fathers are visited upon the children. ”
Merriam-Webster.com Dictionary, Merriam-Webster,
https://www.merriam-webster.com/dictionary/the%20sins%20of%20the%20fathers%20are%20visited%20upon%20the%20children.
Accessed 4 Mar. 2024.
◆ 以下、 ” Smoking gun ” より再掲。
< 銃 >
- gun ( 銃 ) ※ 頻出
- handgun( 拳銃 )
- machine gun ( 機関銃 )
- pistol ( 拳銃 )
- revolver ( 回転式連発拳銃 )
- shotgun ( 散弾銃 )
- open fire( 発砲する )
–
< 軍事・行政用語 >
” Japan’s Shinzo Abe Fatally Shot in the Heart With Homemade Gun ”
https://www.thedailybeast.com/shinzo-abe-reportedly-shot-in-the-chest-on-nara-street-during-speech-and-rushed-to-hospital
2022年7月8日付
【参照】 「 Gmail 」で作る単語帳
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【参考】
アメリカ合衆国憲法 修正第2条 ( 武器保有権 )
Right to Bear Arms
Constitution of the United States Second Amendment
A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State,
the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.Ratified December 15, 1791.
–
< 参考和訳 >
武器保有権
アメリカ合衆国憲法 修正第2条
規律ある民兵団は、 自由な国家の安全にとって必要であるため、
国民が武器を保有し携行する権利を侵してはならない。
1791年12月15日成立
https://constitution.congress.gov/constitution/amendment-2/
https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/amendment/amendment-ii
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
趣旨は 「 自由を守る 」 ことであり、 「 国民の権利 」。
自由を脅かすあらゆる敵から、 自らを守るため国民が武器を保有する権利。
大まかに知るだけでも、 いかに繊細で難しい問題か察することができよう。
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【関連表現】
- ” What goes around comes around. ”
https://mickeyweb.info/archives/1038
( 因果応報。 因果は巡る。)
– - ” Serves you right. ”
https://mickeyweb.info/archives/1898
( ざまあみろ。)
– - “ You are asking for trouble. ”
https://mickeyweb.info/archives/1995
( 後でトラブルになるよ。)
– - ” You asked for it. ”
https://mickeyweb.info/archives/4660
( ご自分で招いたことです。 自業自得ね。)
– - ” You reap what you sow. ”
( 自分でまいた種は自分で刈り取る)
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■ ” reap ” ( 自他動詞で 「 刈り取る 」、 ここでは自動詞 )
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【発音】 ríːp (1音節)
【活用形】 reaps – reaped – reaped – reaping –
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■ ” sow ” ( 自他動詞で 「 種をまく 」、 ここでは自動詞 )
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【発音】 sóu (1音節)
【活用形】 sows – sowed – sown – sowing
【活用形】 sows – sowed – sowed – sowing
–
過去分詞形 ( past participle )は ↑
” sown ” と ” sowed ” 両方 OK !