Who benefits ?
2020/01/02
誰が得するのか?
今時の若者言葉「誰得(だれとく)?」。
その英語版のような感じ。
“Who benefits ? ” は、昔から日常的に使われている。
もし相関しているとすれば、「誰得?」がこの和訳版と
考える方が順序的に正しい。
ほぼ直訳なので、分かりやすい(後述)。
使用場面も重なる。
無論、”Who benefits ? ” は若者言葉ではない。
ビジネス会話にも出てくる。
文面では、”Who benefits” の後に内容が続く方が
一般的である(後述)。
会話中ならば、2語で完結することも多い。
2語完結の場合、「一体、誰が得する?」と
詰問する雰囲気が漂うことが少なくない。
<得する人の存在>を相手に質す以上、
使い手は現状に納得していない。
「この状態では誰も得しない」が本心。
さらに「やっても無駄」「そんなのよせ」
と本音が覗いたりする。
その気持ちを強調するのが反語法。
すごみが出ても不思議でない。
「反語」
(3) 断定を強めるために、言いたい内容の肯定と
否定とを反対にし、かつ疑問の形にした表現。
「そんな事知るものか」の類。
「反語法」
強調のために反語(3)を用いる表現方法
(広辞苑 第七版)
【参照】 – ※ 反語的
- “What’s the use of – ? ”
(~なんて、何の役に立つのか?)
– - “What’s the point ? ”
(それに何の意味があるの?)
– - “What do you know? ”
(あなたに何が分かるの?)
–
◆ “benefit” には、名詞・他動詞・時動詞がある。
【発音】 ˈben.ə.fɪ
語源は、ラテン語「善行」(benefactum)。
ビジネスで使われるカタカナ「ベネフィット」
の示す「利益」「恩恵」が基本的意味。
- “a cost-benefit analysis”
(費用対効果分析)
– 名詞「利益」「恩恵」「給付金」
– 他動詞「~の利益になる」「~のためになる」
– 自動詞「利益を得る」
このように、意味合いが一貫しているため、
単語の理解は難しくないだろう。
名詞は、可算・不可算を兼ねるため、少々厄介。
–
◆ “Who benefits ? ” では、他動詞「~の利益になる」。
主格の疑問代名詞 “who” を加えた直訳は、
- 誰の利益になる?
- 誰のためになる?
「誰の得になる?」と換言できるので、「誰得?」。
–
◆ “who” の疑問文に続く動詞は、単複両方可。
主格が特定されていない場合や単複が不詳の場合は、
単数扱いが通例(アメリカ英語)。
そのため、単数が目立つ。
主格が複数であることが明らかであれば、動詞も複数扱い。
ただし、”Who are coming to the party ? ” などは微妙で、
“Who is coming to the party ? ” が適切。
なぜなら、複数人のパーティー参加者が予想できるものの、
中身が特定されていないので、原則に従い単数となるから。
したがって、場合によっては、複数 “Who benefit – ? ”
もありうる。–
ところが、反語用法の場合、既述のように、
使い手(質問者)は「誰も得しない」と確信している。
つまり、実質ゼロ人で、複数人はありえない前提の発言。
結果的に、他動詞 “benefit” は単数で、”s” がつく。
–
◆ 先述の通り、口頭の “Who benefits ? ” では2語完結
も珍しくないが、文面では後に続く方が一般的な印象。
“Who benefits from the tax reform ? ”
(この税制改革で誰が得するのか?)
(この税制改革は誰のためなのか?)
“Who benefits if there is no will ? ”
(もし遺言書がない場合、恩恵を受けるのは誰か?)
※ “will”=遺言(書)… 可算名詞
“Who benefits from globalization ? ”
(グローバリゼーションで誰が得するのか?)
(グローバリゼーションは誰のためなのか?)
“Who benefits from low interest rates ? ”
(低金利で誰が得するのか?)
(低金利は誰のためなのか?)
“Who benefits if interest rates rise ?”
(もし金利が上れば、誰が得するのか?)
“Who benefits from cyber attacks ? ”
(サイバー攻撃で誰が得するのか?)
(サイバー攻撃は誰のためなのか?)
例文のように、原因の前置詞 “from”(~で)
または 仮定の前置詞 “if“(もし~ならば)
と組むのが、頻出パターン。
【関連表現】
“the benefit of the doubt”
https://mickeyweb.info/archives/20124
(有利に対応する、無罪放免する)