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Tamper with

      2020/08/18

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 2 minutes

不正にいじくる

権限も許可もないのに、みだりに手を加えるのが
“tamper”。

【発音】   tǽmpər
【音節】   tam-per  (2音節)

不注意ではなく、意図的な行為に使う。

不正であることは、行為者も自覚しているのが普通。

見つかったら、さあ大変。

ニュース沙汰になる身近な例を挙げる。

  • 食品・医薬品への異物混入
  • パチンコ・ゲーム機の改造
  • 製品へのいたずら
  • 書類の書き換え(改ざん)
  • 封筒・容器の無断開封
  • 走行距離の改ざん
  • 証明書の改ざん

うっかりとは考えにくいケースだらけ。
どれも故意と考える方が自然だろう。

“tamper” 対策が、

  • tamper-proof
  • tamper-resistant

日常用法では同義扱いされている。

ともに<状態>を表すので、形容詞

ハイフン入りの複合形容詞(compound adjectives)。
ハイフンを省いて表記される場合もあるが、意味は同じ。

  • 形容詞 “ proof ” (〇〇防止
  • 形容詞 “ resistant ” (耐〇〇

“tamper-proof”、”tamper-resistant” のための
商品は数多く存在する。

tamper-proof packaging(いたずら防止包装)

が代表例。

上図右上のラベルは、封印代わりに貼付する特殊シール。
無理やり開封すると、ぼろぼろになる作り。

左下の特殊ネジは、精密機器はもちろんのこと、
ヨーロッパなどでは自動車や家電にも使われている(特にトルクス)。

スマホやゲーム機で採用される主な理由は、普通のドライバーで
開けられないように “tamper-proof” にするため。

もっとも、特殊ドライバーと交換ビットが容易に入手できる昨今、
確実な “proof” からは程遠い。

一方、食品・医薬品の “tamper-proof” は、ずっと厳格。
国民の健康と安全に直結するからである。

右下図は、一度開けると元通りにならない仕組み。
ひと目で異変に気づく簡単な構造。

ごく普通のペットボトルでも見かける。

◆  “tamper” には、自動詞と他動詞がある。

【発音】   tǽmpər
【音節】    tam-per  (2音節)

語源は、中期フランス語「調整する」(temper)。

不正な「調整」ばかりに用いられているのは、冒頭で触れた。

– 自動詞「いじくる」「不正に変える」「異物混入する」「たくらむ」「干渉する」
– 他動詞「不正に変える」

【活用形】   tampers – tampered – tampered – tampering

先の例から、イメージはつかみやすい。
ネガティブ一辺倒の単語である。

  • “There was evidence of tampering.”
    (改ざんされた証拠があった。)


◆  “tamper” の主な句動詞は、表題 “tamper with” のみ。

他動詞の句動詞なので、句他動詞。

tamper with something”

to touch something or make changes to it 
without permission,
especially in order to deliberately
damage it.
(ロングマン、LDOCE6)

to make changes to something without permission
especially in order to damage it.
(オックスフォード、OALD9)

※ 下線、ハイライトは引用者

ずいぶん似通った解説である。

ハイライトが示す「加害目的で、許可なく変える」が要点。

with” は、対象の前置詞「~に対して」。

上掲英英では、代名詞 “something”(何か)の前に据えて、
項目立てしている。

よって、「 何かに対して、いたずらする 」に。

文体によっては、”something” の方が前にくることもあるが、
「何かに対していたずらする」の意味合いは変わらない。

  • “I knew that the product had been tampered with.”
    (その製品がいたずらされたのが分かった。)
  • “The evidence has been tampered with.”
    (証拠は改ざんされている。)
  • “Someone had tampered with my computer.”
    (誰かが私のコンピュータをいじった。)
  • “She must have tampered with the food.”
    (彼女が食物に異物を入れたに違いない。)
  • “I don’t want them tampering with my personal mail.”
    (私信を彼らに開けられたくない。)
  • “Don’t tamper with election results.”
    (選挙の開票結果に不正をするな。)
  • “Don’t tamper with his records.”
    (彼の記録をいじるな。)
  • “20 officials were penalized for tampering with documents.”
    (文書改ざんにより、20名の職員が処分された。)

以上の例文から推察できるように、不正の中身は、
一文から読み取れないことが多い。

例えば「異物混入」と「毒物混入」では、どちらが悪質かは
言うまでもないが、両方 “tamper with” で表現できる。

“tamper with” のみでは、具体的内容は不詳。
あいまいなため、様々な解釈が可能で、和訳でも迷う。

多用される「いたずら」「いじる」「いじくる」も、
相当あやふやである。

該当する語釈は、次の通り。

  いたずら【徒・悪戯】
他人に迷惑をかけるようなよくないふるまい。
わるさ。また、それをしばしば行うさま。

  いじる【弄】
はっきりした方針や目的もなく、または、部分的に
物事にあれこれと手を入れて変えたり、動かしたりする。

  いじくる【弄】
はっきりした方針や目的もなく、または、部分的に、
物事にあれこれと手を入れて変えたり、動かしたりする。

(精選版 日本国語大辞典)

※ 「いじる」と「いじくる」の項目立ては別であるが、
当該語釈は完全一致。「弄」の一字表記も同様。

肝要なのは、

“tamper with” は、作為的な干渉

「不正」が生じている状況  を把握すること

<悪さ>に気づくことがポイントとなる。

詳細については、その後の描写に任せるのが、
一般的な流れである。

 

【類似表現】

“compromise”
https://mickeyweb.info/archives/23494
(セキュリティ侵害 、情報漏洩する、不正アクセスする)

 

 

 

 

 

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