Foul play
2021/10/18
不正行為、事件性
- No foul play is suspected.
Foul play is not suspected.
( 不正行為の疑いはありません。)
– - There is no evidence of foul play.
( 不正行為の証拠はありません。)
– - There is no reason to suspect foul play.
( 不正行為を疑う根拠はありません。)
– - There is no sign of foul play.
( 不正行為の形跡はありません。)
ニュースで年中見聞きする常套句。
下線部 ” is ” の代わりに、過去形 ” was ” もよく使われる。
「 ありません 」 → 「 ありませんでした 」と過去形になる。
両方「 be動詞 」の代表格。
- is 「 三人称単数直説法現在形 」
- was 「 一人称及び三人称単数直説法過去形 」
◆ 冒頭表現の主な趣旨は1つ。
<ニュース用途の “foul play”>
「犯罪絡みか否か」 の簡潔な状況説明
–
視点は「 犯罪絡み 」かどうか。
受け手の関心のとば口も同様。
もし犯罪に該当する場合、罪状や違反の内容には、
さらりと触れるにとどまるのが普通。
なぜなら、” foul play ” を用いた一般ニュースの大半は、
「事件性」の有無を知らせることが目的 だから。
報道時点では、詳細は不明ゆえでもある。
この点は、” DUI ” 報道と似た姿勢と言える。
通常の現場では、警察を中心に捜査が進められる。
そのため、主格に警察を据えるパターンが多い。
- The police do not suspect foul play.
- The police found no evidence of foul play.
- The police did not suspect foul play.
- The police said it could be foul play.
- The police had no reason to suspect foul play.
- The police have ruled out foul play in the case
of his death.
( 彼の死について、警察は事件性を否定した。)
–
冒頭の3文と合わせ、合計9文がニュース報道の頻出パターン。
像・音声・文面の区分を問わない。
これらが理解できれば、日常用法の “foul play” の基本はOK。
ー
◆ それでは、単語と文法をみていこう。
まず、”foul” には、形容詞・副詞・名詞がある。
【発音】 fául (1音節)
語源は、古英語「 不潔な 」(fūl)。
基本的意味はネガティブばかりで、語源に沿う。
” foul “
– 形容詞 「 悪臭のする 」「 不潔な 」「 荒れた 」
– 副詞 「 不正に 」「 違法に 」「 反則で 」
– 名詞 「 反則 」「 ファウル 」「 嫌なもの 」
※ 可算・不可算兼用
【発音】 fául (1音節)
野球の「ファウルボール」は “foul ball“。
ファウルラインの外側にそれた打球を指す。
「邪球」とも言うが、こちらは死語に近い。
ファウル
さらに「 ファウルチップ 」は ” foul tip “。
バットをかすり、捕手のミットに収まった打球。
ストライクになってしまう。
いずれも、打者にはネガティブに働く場面が
ほとんどなので、”foul” の本質を反映している。
表題 ” foul play ” と同じく、どちらも形容詞である。
–
◆ ” play ” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
【発音】 pléi (1音節)
語源は、古英語「すばやい動き」(plega)。
” foul ” もそこそこ多義だが、” play ” の比ではない。
ことに、動詞 ” play ” は非常に多義である上、英単語として最頻出かつ最重要。
名詞 ” play ” は、「 書き言葉の頻出度 」が、一段階下がる。
◇ LDOCE6(ロングマン)の表記によれば、
■ 動詞 “ play ”
– 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
– 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
– 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
■ 名詞 “ play ”
– 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
– 書き言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
– 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
– 自動詞
「 遊ぶ 」「 試合する 」「 行動する 」「 演技する 」
– 他動詞
「 演じる 」「 なりすます 」「 公演する 」「 演奏する 」
– 名詞
「 劇 」「 遊び」「 試合 」「 博打 」
※ 可算・不可算兼用
【発音】 pléi (1音節)
–
基本的意味の例示はこの通りだが、他にも存在する。
–
◆ 表題 ” foul play ” を分析してみる。
両者とも、基本的意味の上位に入らない用法である
ため、先述のリストには挙げていない。
- ” foul ” は、形容詞「 不正の 」 ※ 副詞ではない
- ” play ” は、名詞「 行為 」
- 2語一体の ” foul play ” で、不可算の複合名詞
” foul ” の基本的意味が、一貫してネガティブなことは
既述したので、” foul ” は難しくないだろう。
–
◆ 問題は ” play “。
「 遊び 」やら「 劇 」やら「 博打 」やら、
それほど真剣味が伴う感じはしない。
「 試合 」も含め、娯楽・エンタメに近いイメージ。
主要な英和と英英辞典 を調べてみたが、
該当する語釈がはっきりしない。
最も鮮やかな説明は、次の2点。
” play “
■ 5a 不可算名詞
(人に対する)行為、態度、対処の方法
現在は次の句でのみ用いる
・ fair play 公正な行為(態度)
・ foul play 反則、犯罪行為、殺人
(ジーニアス英和大辞典)
■ 31.
manner of action, conduct, or playing.
fair play
https://www.collinsdictionary.com
–
とにかく「遊び」「試合」の “play” ではなく、
「行為」を示すことは分かった。
“play” の語釈は今ひとつだったものの、
複合名詞としての “foul play” の語釈は
しっかり記載されているので、救いがある。
–
” foul play “
Uncountable
CRIME
a criminal act that results in serious damage
or injury, especially murder.
Uncountable
SPORT
in sport, the act of playing unfairly or doing
something that is against the rules.
( ケンブリッジ、 CALD4 )
※ 下線は引用者
–
犯罪の「 不正行為 」とスポーツの「 反則 」。
–
この2つが出揃った語釈で、似通った解説だらけだが、
最もすっきり網羅していると感じたのが、この ” CALD4 “。
下線がポイントで、「 人殺し 」と同一視した語釈もあった。
( OALD9、Macmillan、Collins など )
–
◆ 一方、法律辞典ではどう説明されているか。
アメリカには、“ Black’s Law Dictionary “
(ブラックス法律辞典)という有力な法律辞典
が存在する。
–
( Amazon Japan / Amazon US )
–
1891年に発刊され、130年以上の歴史を誇る。
–
判例などに最も引用される辞典であり、英米法
を学ぶ学生で知らない者は皆無レベルの 存在感。
現時点( 2018年5月 )での最新版( 第10版、2014年刊 )
の解説は以下の通り。
–
foul play. (15c)
1. Wrongdoing, esp. when it involves a person’s
murder.
2. A dishonest, unfair, or rule-violating act, esp.
one that happens during a sporting event.
“ Black’s Law Dictionary, 10th Edition ”
p. 771. (Thomson Reuters 2014).
※ 下線は引用者
※ ” esp. ” = ” especially “( 特に )
–
ここでも、殺意のある殺人 ” murder ” を明記する。
” wrongdoing ” は、「 悪事 」「 犯罪 」。
–
驚くことに、英英辞典やEFL辞典よりも、
あっさりした中身であった。
ー
◆ 以上より、不可算名詞 ” foul play ” は、
「犯罪絡み、特に殺人」について指す。
◇ 実際のニュース報道では、
” foul play ” の存在を否定し、
「 事件性はない 」ことを示す
ために多用されるのが一般的
上掲の9文が、その基本となる。
–
–
【関連表現】
- ” wrongdoing ” ※ 可算・不可算兼用
https://mickeyweb.info/archives/15135
( 不正行為、犯行、悪行 )
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【反意語】
- ” fair play ”
( フェアプレー = 正々堂々の試合態度 )
( 公明正大な行為 )