墓、埋葬地
- X’s final resting place announced
(X氏の埋葬地発表)
– - X’s final resting place to be P
(X氏の埋葬地、P地に決定)
– - X finds his final resting place today at P
(X氏、本日P地に埋葬)
※ 今年2018年発表のニュース見出しより
有名人のお墓に言及する際に出てくる表現が、
<3語ワンセット>の “final resting place”。
訃報関連のニュースで通年見聞きする。
一般人にも使われる。
頭には、所有格または定冠詞 “the”(後述)。
–
人称代名詞であれば、
my / your / his / her / their / our / its。
特に見出しでは、冠詞と代名詞の代わりに、本人の
名前が入るケースが多い。冒頭3文がその例である。
※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
–
◆ “resting place”(休息場所)に “final”(最後の)を
加えて「最後の休息場所」。
<死>関連の数ある婉曲語 の一つである。
直訳を目にすれば、「墓」「埋葬地」「永眠の地」を指す
ことは、どうにか想像できる。
しかし、初めて “final resting place” に接した場合はどうか。
すぐに「墓」が思い浮かぶほど、容易ではないだろう。
文脈上、キーワードとなる可能性が高く、その場で理解
できないと困る。
–
そのため、本稿にて取り上げたい。
「最終の休息場所」→「墓」
ちょいと頭を使うと、なんてことない。
素直なからくりなので、一度学べば、次回はパッと分かる。
ー
◆ <3語ワンセット>のうち、焦点は “rest”。
–
詳しくは後に述べることにし、”final” と “place” を先に見ていく。ー
–
“final“ には、形容詞と名詞がある。
【発音】 fáinəl
語源は、ラテン語「終わり」(finālis)。
形容詞「最後の」、可算名詞「最後」が基本的意味。
ファイナル【final】
1. 最後の。最終の。
2. 最後の勝負。決勝戦。
(広辞苑 第七版)
広辞苑の語釈とそのまま重なる。
本稿では形容詞「最後の」。
–
【参照】 “finalize“(完結させる、終わらせる)
“final resting place” は、形容詞 “last”(最後の)を用いて、
“last resting place” とも言う。
OALD9 と CALD4 では、両者を同一視する。
■ “final / last resting place”
… OALD9(オックスフォード)
–
■ “last / final resting place”
… CALD4(ケンブリッジ)
【英英辞典の基本表記】 スラッシュ( / )=「または (or) 」
→ “final resting place” または “last resting place”
- last
連続したものの最後の物や出来事についていう - final
最後を締めくくることであり、確定的なことを含意
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
同じ用法の “final” を用いた死の婉曲表現に、
“took one’s final breaths” がある。
直訳は、「誰々の最後の息を吸う」。
したがって、今際の際(いまわのきわ)、
すなわち「臨終の時」を指す。
「誰々の」=”one’s” は、これまた所有格。
最期を迎えつつある人を指すのは言うまでもない。
ー
ー
◆ “place“ には、名詞・他動詞・自動詞がある。
【発音】 pléis
–
語源は、ラテン語「広い通り」(plātea)。
表題は可算名詞「場所」で、最も基本的な使い方。
「墓」「埋葬地」という、用途が特定された具体的な場所。
よって、可算名詞となる。
一方、”place” には抽象概念としての不可算名詞もある。
特定の場所を示すのではなく、つかみどころのない不可算。
–
例えば、「時間と場所」は “time and place” で不可算名詞。
“in place” でも不可算。–
無冠詞から推知されるように、不可算名詞。
「正しい位置に、ぴったり配置」という抽象概念としての位置
だから、不可算名詞。
不可算なので、不定冠詞はつかない。
–
◆ 大団円は “resting“。
【発音】 rɛ́stɪŋ
–
形容詞「休んでいる」の意。
語源は、動詞 “rest” (休憩する)に接尾辞 “ing” を加えた
現在分詞 “resting”。
これが形容詞になったもの。
中央の “REST AREA” は、道路上の案内標識。
–
日本のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)
のように、一休みするスペースが設けてあることを表す。
いずれも休憩施設に違いないが、充実度は場所によりけり。
“rest” の語源は、古英語「休息」(rest)。
この “rest” は、「残り」の “rest” ではない
発音は同じだが、語源の異なる完全な別物である。
【参照】 “for the rest of one’s life“(死ぬまでずっと)
表題の “rest” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
3品詞とも比較的多義。基本的意味は語源に忠実。
- 名詞「休息」「休養」「安心」※ 可算・不可算兼用
- 自動詞「休憩する」「安心する」
- 他動詞「休ませる」「止める」「置く」
基本的意味「休息」から、<死の憩い>に発展した結果、
“rest” 自体が「死」を含むことになった。
■ “rest in peace“
RIP = 「安らかに眠れ」
※ “May he/she rest in peace” の略(通説)
【発音】 ˌɑːr aɪ ˈpiː
■ “eternal rest“
「永遠の休息」→「永遠の眠り」→「永眠」
形容詞 “eternal”(永遠の)抜きでも、「永眠」を指す場合もある。
■ “laid to rest“
他動詞 “lay”(横たえる)の過去・過去分詞形 “laid”は、
他動詞 “bury“(埋める)の婉曲語。
【発音】 leɪ
【活用形】 lays – laid – laid – laying
「休息のために横たわせた」→「埋葬された」
- “X Laid to Rest” ※ ニュース見出し
(Xが埋葬)
– - “X Laid to Rest in Private Service” ※ ニュース見出し
(Xが密葬で埋葬)
– - “X Laid to Rest at Funeral Attended by Y” ※ ニュース見出し
(X、Y参列の葬儀で埋葬)
– - “She was laid to rest here.”
(彼女はここに埋葬された。)
– - “X was laid to rest next to Z.”
(XはZの隣に埋葬された。)
この “lay“(横たえる)は他動詞で、自動詞は “lie“(横たわる)。
非常に混乱しやすいので、要注意。
【発音】 laɪ
【活用形】 lies – lay – lain – lying
えいみん【永眠】
名詞
(永遠の眠りの意から)死ぬことを間接的にいう語。
死去。また「永眠の地」などのいい方で、葬られてそこにある
意にいう。
(精選版 日本国語大辞典) ※ 下線は引用者
下線が示すように、日本語「永眠」も婉曲表現である。
「死」は人間の生存本能を脅かす。
通常は忌避すべき話題。
「死」の婉曲語は、大多数の言語にあるらしい。
【参照】 死の婉曲表現の例 ※ 外部サイト
・ 日本語(三省堂)
・ 英語(Weblio)
–
◆ 死が繊細な話題である理由はいくつも挙げられる。
–
誰しも通る道とはいえ、生きている限りは未知の世界。
(No pun intended.)
完全理解は不可能なので、実体は想像の領域に属する。
そうなると、「死」の解釈は人ぞれぞれ。
内面が問われるため、慎重にならざるを得ない。
特に宗教を抜きにして、死生観は語れない。
内心の信仰となれば、やたらめったら触れられない。
それでも「他界」「昇天」「召天」らの婉曲語が示す通り、
現世(げんせ)とおさらばする現象に疑いはない。
苦しみと哀しみだらけの人間界から解放され、
未来永劫安らかな世界にそっと引き渡される。
静穏な解釈だと、こんなイメージか。
–
◆ 近しい人の死を「旅立つ」と表現する日本の報道が、
近頃とみに増えた気がする。
上図と異なり、”I’m coming.” ばりに、自ら赴く感がある。
似た方向性なのが、こちらの婉曲表現。
-
return to Mother Earth
→ 母なる大地に戻る -
go to be with the Lord
→ 主の元へ行く -
meet his / her Maker
→ 創造主に会う -
gain one’s angel wings
→ 天使の翼を得る
主な使用場面は、弔辞や死亡記事。
日常的ではないが、意味だけは知っておきたい。
ー
◆ “died”(死亡した)の代わりに多用される4つ。
–
こっちは、確実に押さえておきたい。
< 動詞 「死亡した」>
-
gone
※ “go” の過去分詞の形容詞的用法口頭中心で「逝ってしまった」 -
deceased
※ 主に法律用語動詞「死亡した」・形容詞「亡き」・名詞「故人」 -
passed
※ 1 に準じる自他動詞があるが、「死ぬ」は自動詞
※ 個人的体験に基づく頻度順
類語辞典には、”perished“、”expired“、”ceased”
なども並ぶ。上記4つに比べ、普段向きではない。
◆ 本題 “final resting place” に話を戻す。
今回調べた英英辞典9点のうち、7点が “resting place”
で項目立てしていた。<2語ワンセット>の可算名詞。
“final resting place” は、語釈または例文に出てきた。
< “resting place” あり>
- “OALD9” オックスフォード現代英英辞典 第9版
- “CALD4” ケンブリッジ現代英英辞典 第4版
- “COBUILD9” コウビルド英英辞典 第9版
- Collins English Dictionary, 12th Edition
- Macmillan Dictionary
- Merriam-Webster
- Merriam-Webster’s Learner’s Dictionary
< “resting place” なし >
- “LDOCE6” ロングマン現代英英辞典 第6版
- Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition
◆ 弊サイトで参照する英英辞典は、毎稿6~9点ほど。
–
平日は、電子版(iOS 及び Kindle)とオンライン版中心。
疑問を抱いた際は、念のため書籍版で再確認する。
【参照】 “tapped out”
5分未満で、英英辞典6~9点の項目確認を終える。
一気呵成にコピペして、ささっと検索。慣れれば簡単。
書籍版のみなら、不可能な話。
【参照】 英語辞書は「紙」か「電子版」か
“resting place”
1. a grave.
People say ‘resting place’ to avoid saying ‘grave’。
・ her final / last resting place
2. a place where you can rest.
(オックスフォード、OALD9) ※ 下線は引用者
【発音】 ˈrestɪŋ pleɪs
7点の語釈は似通っている。
特に明解であった、OALD9を選出した。
先の国語辞典の「永眠」と同様、遠回しの言い回し
であることを明記している(下線部)。
語釈1 から、形容詞 “final” または “last” がなくても、
「お墓」を表すことが分かる。
だが、語釈2の「休憩場所」と区別するため、どちらかを加える
方が普通。
- “We had to decide her resting place when she passed away.”
(彼女が亡くなった時、お墓を決める必要があった。)
– - “This is the final resting place of our beloved dog.”
(ここに私たちの愛犬のお墓があリます。)
– - “His final resting place is located in this temple.”
(彼のお墓はこのお寺にある。)
– - “I don’t know where my final resting place will be.”
(自分の墓がどこになるのか分からない。)
冒頭に記した通り、「お墓」の意味では、所有格または定冠詞
“the” がつくのが基本。
<唯一>である “final” と “last” の冠詞の原則はもちろんのこと、
お墓の性質から考えても<1人1基>が原則で、特定される対象
ゆえに “the” となる。
一方、「生きているうちに、自分のお墓の場所を決めたい」
など埋葬地の候補が複数あるケースでは、不定冠詞 “a” を用いる
ケースもある。
また、「一般論としてのお墓・埋葬地」は “a” でOK。
- “A cemetery is a final resting place for dead people.”
(墓地とは、死者のお墓のあるところです。)
– - “I’m searching for a final resting place of comfort.”
(安らぎのあるお墓を探しているのですが。)
– - “How do you find a final resting place ? ”
(お墓はどうやって探せばよいのでしょう。)
– - “We provide a final resting place for Christians.”
(弊社はクリスチャンのためのお墓をご提供しています。)
【「死」関連表現 】
“passed away”
https://mickeyweb.info/archives/347
(亡くなりました)
“with regret”
https://mickeyweb.info/archives/318
(残念ですが)
“declared dead”
“Pronounced dead”
https://mickeyweb.info/archives/1636
(死亡宣告された、死亡した)
“Confirmed dead”
https://mickeyweb.info/archives/2131
(1. 死亡が確認された 2. 確認された死者)
“took his / her own life”
https://mickeyweb.info/archives/4466
(自殺した)
“do away with oneself”
https://mickeyweb.info/archives/15503
(自殺する)
“a moment of silence”
https://mickeyweb.info/archives/3513
(黙祷)
“My prayers are with -.”
“My thoughts and prayers are with – . ”
https://mickeyweb.info/archives/3471
(~のために心からお祈りいたします。)
“He is in a better place now.”
https://mickeyweb.info/archives/24805
(今はもっと快適な場所にいます。)
“the beyond”
https://mickeyweb.info/archives/29487
(あの世)
“terminally ill”
https://mickeyweb.info/archives/29801
(末期症状の)