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Terminally ill

      2019/03/16

末期症状の  

病状が終わりに近い様子が「末期(まっき)症状」
または「末期的症状」。

無論、病気が治る意味での終わりではない。

すっかり悪くなって、救いがたい状態。
すなわち「末期(まつご)」に近い。
これが一般的な解釈。

  まっき【末期】
〘名〙
末の時期。終わりの時期。

  まっきてき【末期的】
〘形動〙
終わりの時期にあるさま。
また、もはや救いがたいさま。

  まつご【末期】
〘名〙
(「ご」は「期」の呉音)
命の終わる時期。人の死にぎわ。臨終。最期。

(精選版 日本国語大辞典)

「呉音(ごおん)」
日本漢字音のひとつ。中国南方系の音
に基づくとされる。
【例】男女=なんにょ、行=ぎゃう

今際の際(いまわのきわ)には、「まっき」と
「まつご」の両方該当するケースもあるだろう。

image.png

縁起でもない言葉だが、人間誰しも末期(まつご)を迎える。
だから、”terminally ill” の話題に事欠かない。

具体的には、事故などの被害者の状態や病床に伏す著名人
の現況を報道する際に使われる。

類似表現は次の通り。

  1. critically illso ill that you might die
  2. gravely ill = extremely ill
  3. seriously ill = very ill

(LDOCE6、ロングマン)

病状が重い順に付番した(1→3)。
いずれも日常的に見聞きする。

  副詞+形容詞 “ill”(病気の) のパターン。

英和辞典を引くと、一律「重病の」の意味合い。
特に、”critically ill” と “gravely ill” は、両者とも
危篤の」「瀕死の」で、死にかけているレベル。

1~3は、病状の深刻さに視点を置くのに対し、
表題 “terminally ill” は病気の段階に着目する。

incurablly ill は「不治の病にかかっている」。
名詞形は、”an incurable ill” または “an incurable disease”。
※ “ill” と “disease” の相違点は後述

したがって、incurably and terminally ill
は、「不治で末期症状の」。
深刻さと段階を同時に示している。

すべて重篤に違いない。

一般ニュースでは、ほぼ同様に使われている感がある。

医療関係者向けの情報でなく、関係者以外の一般人
にとって、そこまで厳密な区別は不要。
よって、病気が著しく重いとの趣旨がつかめれば、
報道として十分。

そもそも部外者が、詳しく知る必要はない。
情報の性質上、本来は “don’t need to know” なのである。

◆ それでも報道される。

今月2018年8月に亡くなった大物女性歌手の場合、

  • 〇〇 gravely ill
    (〇〇が危篤)
    ※ 英日の速報見出し
  • 〇〇 is ‘gravely ill’ as devastated family
    gather to ‘say goodbye’.
    (危篤の〇〇に別れを告げるため、悲嘆の家族集合)

このようなニュースが、亡くなる数日前から連日届いた。
米国発の速報だが、日本も負けじと追随した印象がある。

各報道機関から、相次ぎ「〇〇危篤」との速報が入っている。
あたかも選挙合戦。

お祭り騒ぎのようで、違和感を覚えたものだ。
– 本人は今、命がけで闘っている。
– 配慮なさすぎ。 失礼だよ。
– プライバシーの最たる情報のはず。

などと考えもするが、上記表現はどれも日頃から珍しくない。

“terminally ill”

having a very serious illness that you 
will die from.
(LDOCE6、ロングマン)

having a disease that cannot be cured
and will cause death.
(Merriam-Webster、メリアムウェブスター)

※ 下線は引用者

will die” と “will cause death” と下線部にあるように、
命取りの病(illness、disease)にかかっている。

この “will” は、推定の助動詞「~だろう」。
現在について、“may” よりも確信のある推定を表す。
「死ぬだろう」と断定するに近い。

それゆえ「危篤」「瀕死」に行き着く。

  きとく【危篤】
病気が重く、今にも死にそうなこと。

  ひんし【瀕死】
死にそうなこと。死にかかること。

(大辞林 第三版)

“illness” と “disease” は「病気」。
ともに、可算名詞と不可算名詞を兼ねる。

◆「病気」と言えば、”sick” を思う日本人学習者が多いが、
“sick” の基本は形容であり、名詞ではない。

誤解している日本人が多いため、ここでおさらい。

以下、”call in sick“(病気で休むと電話する) より再掲。

“sick” の名詞用法はまれ。
しかも「病気」そのものを意味しない。

“sick” には、形容詞・名詞・他動詞・自動詞がある
語源は、古英語「病気の」(sēoc)で、形容詞。

基本的意味は、
– 形容詞「病気の」「病気になった」「気分が悪い」
– 名詞「病人」「吐くこと」※ まれ
– 他動詞「吐く」※ まれ
– 自動詞「吐く」※ まれ

このうち、圧倒的に使われるのは形容詞
形容詞以外はマイナー用法。

  名詞「病気」

  • ailment
    (慢性的で重度ではないもの)
    可算名詞
  • disease
    (~病、伝染病などの重度なもの)
    可算・不可算
  • disorder
    (疾患、不調)
    可算・不可算
  • illness(特定の病気、軽い風邪は含まない)
    可算・不可算
  • sickness(病名のはっきりしないもの)
    可算・不可算
  • syndrome(一連の徴候のある「症候群」)
    可算

最頻出は “disease”(LDOCE6の表記による)。
日常的には、”disease” と “illness” で間に合う。

“sick” と “ill” の原則は形容詞で、病気である状態

  状態だから形容詞。

【参照】
・ “aware” は動詞でなく、形容詞
・ “vocal” は動詞でなく、形容詞 
・ “dead” は動詞でなく、形容詞

“sickness” と “illness” が、それぞれの名詞形に該当する。

もっとも、”ill” の方は可算名詞「病気」も指すが、”illness”
の方が多用される。

ill のほうが sick より形式張った語である。
《米》では両語は事実上区別なく使われているが、
《英》ではsick の代わりに ill を使うことはできず、
sick は常に「吐き気」の意を含んでいる。

He is ill.
《英》《米》彼は病気だ

He is sick.
《英》彼は吐き気をもよおしている
《米》彼は吐き気をもよおしている [彼は病気だ]

ただし限定用法・集合名詞的用法に用いる場合には
《英》《米》共に常に「病気の」の意で sick を用いる。

a sick person
病人

a home for the sick
病人の療養所( ill も副詞を伴えば限定的に用いられる:
a seriously ill man 重病人)

以上、『ランダムハウス英和大辞典 第2版』より

  ※ 吐き気(nausea / 発音:nɔ́ːziə

◆ 繰り返すが、”ill” も “sick” も、原則は

病気である 状態なので形容詞

2語の違いは、上記『ランダムハウス』の通り。

“ill” には、形容詞・名詞・副詞がある。
【発音】 íl
語源は、古ノルド語「悪い」(illr)で、形容詞。

基本的意味は、
– 形容詞「病気の」「気分が悪い」「好ましくない」
– 名詞「悪口」「悪」「病気」
– 副詞「悪く」「不満足に」

“sick” 同様、形容詞中心に使われている。
“terminally ill” でも、形容詞。

◆ “terminally” は “terminal” の副詞形。
【発音】 tə́ːrmənəli

“terminal” の語源は、ラテン語「終点」「末端」(terminālis)。
鉄道・バス・航空の「終点」を表す「ターミナル」は、
語源そのままということになる。

路線が集中する所も「ターミナル」。それは多数の終点
と起点、つまり「末端」が数多く集まった結果としての名称。

副詞 “terminally” も「終点」を引き継ぎ、「終点の」。
転じて「末期(的)の」。
形容詞 “ill”(病気の)を加えて、「末期の病気の」が直訳に。

「終末(期)医療」を「ターミナルケア」と表す機会が、
日本のメディアでも増えてきている。

  ターミナルケア【terminal care

治癒の可能性のない末期患者に対する身体的・心理的・社会的・
宗教的側面を包括した医療や介護。延命のための治療よりも、
身体的苦痛や死への恐怖をやわらげ、残された人生を充実させる
ことを重視する。

(大辞林 第三版)

そのために設けられた施設の代表格が「ホスピス」。

  ホスピス【hospice】

(もと宗教団体などの宿泊所の意)
癌などの末期患者の身体的苦痛を軽減し、残された時間を
充実して生きるとともに心静かに死に臨むことができるよう
幅広い介護につとめるための施設。また、そのような活動。
患者の家族もその対象に含まれる。

(広辞苑 第七版)

以上より、”terminally ill” の大枠はイメージできるだろう。

死に直面する状態に報道価値を認めるかどうかは、
人それぞれ。

スマホのアラートを何気に確認したら「●●危篤」。
どきんとするインパクトがあるのは確か。

◆ 同じく2018年8月、ある米上院議員の逝去後、
私の Gmail はこんな感じに埋まった。 ※ モザイクは故人名


速報(breaking news)の受信時刻をご覧いただきたい(右端)。
わずか30分余りで、8本届いた。

次いで、2018年9月。世界的に有名な映画俳優の死。


これらの迫力に、ぎょっとしないわけにいかない。

上記のGmail の全ラベルは自動貼付された。
事前にフィルターを設定しておいたおかげ。

例えば、黒字に白の “Obituary”(訃報)ラベル
フィルター設定には、次の6つ。

・ subject : dead
・ subject : died
・ subject : dies
・ subject : obituary
・ subject : 訃報
・ subject : 死去
・ 
subject : 死す

 

これで、日英のほとんどの訃報に対応できる。
白黒ラベルが自動的につき、注意喚起に役立っている。
おかげで見逃しなし。

各報道機関の名称も自動貼付。
一度設定すれば、あとは楽ちん。

Gmail のラベルとフィルターの設定は簡単かつ無料
大量のメールを手間なしで管理できるようになる。
かなり自由が効くので、ご活用されるとよい。

◆ 今月2018年8月発表のニュース見出しから、
以下用例を抽出した。

見出しだけでも身につまされるが、いかがだろうか。

Terminally ill patient granted her wish to get married”
(末期患者が叶えた結婚の夢)

“X is reportedly terminally ill
(Xは不治の病との報道)

Terminally ill dog finds home”
(新しい家族に受け入られた不治の病の犬)

Terminally Ill Man Awarded Millions in Lawsuit”
(末期患者の男性に数百万ドルの賠償)

Terminally ill children euthanized”
(末期患者の子どもたちが安楽死)

“Stop Blaming Terminally Ill for Our Health-Care
Spending Problems”
(医療費問題を末期患者のせいにするな)

→ 最後の “terminally ill” は、
集合的に「末期患者」を指す形容詞

文法上は “the” がつくのが原則だが、
見出しゆえに省略されている。

 

※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

 

【「死」関連表現 】

“passed away”
https://mickeyweb.info/archives/347
(亡くなりました)

“with regret”
https://mickeyweb.info/archives/318
(残念ですが)

“declared dead”
“Pronounced dead”
https://mickeyweb.info/archives/1636
(死亡宣告された、死亡した)

“Confirmed dead”
https://mickeyweb.info/archives/2131
(1. 死亡が確認された 2. 確認された死者)

“took his / her own life”
https://mickeyweb.info/archives/4466
(自殺した)

“do away with oneself”
https://mickeyweb.info/archives/15503
(自殺する)

“a moment of silence”
https://mickeyweb.info/archives/3513
(黙祷)

“My prayers are with -.”
My thoughts and prayers are with – . ”
https://mickeyweb.info/archives/3471
(~のために心からお祈りいたします。)

“He is in a better place now.”
https://mickeyweb.info/archives/24805
(今はもっと快適な場所にいます。)

“the beyond”
https://mickeyweb.info/archives/29487
(あの世)

“final resting place”
https://mickeyweb.info/archives/28844
(墓、埋葬地)

 

 

 

 

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