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Cut corners

      2021/01/25

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はしょる、 手を抜く、 節約する

「手抜きをする」といったらこれ。

定訳である。

私たちの大半は、内心<手抜き大好き>なので、
所構わず出てくる表現。

  てぬき【手抜】

〘名〙
1. 手を抜くこと。しなければならない手続・手段
を故意にしないでおくこと。するはずの一部を
省略しながら、完全になしとげたもののように
ごまかしておくこと。

(精選版 日本国語大辞典)

※  下線は引用者

“cut corners” は、カタカナで定着済みの2語で
構成されているため、覚えやすい。

また、定訳の一つ「はしょる」と成り立ちが似通う。

  はしょる【端折る】

〘他五〙(ハシオルの転)
2. はぶいて短く縮める。省略する。簡単にする。

(広辞苑 第七版)

  •  はしょる   =  端折る  =  端を折る  →  端を省略
  •  cut corners   =  角を切る  →  角を省略

この分かりやすい共通点こそ、人類みな「手抜き大好き」
な向きの一端を示す感がある。

この表現では 複数形 “corners” が通例

ー
◆  “cut corners” の語源には諸説ある。
–
主要説は、以下の英文サイトに詳述されている。
What’s the origin of the idiom “cut corners”

このサイトが述べる有力な由来は3つ。

(1) 屋根ふき工事(roofing)

上図のように、”corners”(角)を “cut”(切り落とす)。
継ぎ目を折り曲げる厄介な工程を省略し、切断してしまう。
–

(2) 狩猟(hunting) 

ウサギ猟などで、獲物にぴったりついて(directly behind)
追うのが、優秀な猟犬。 ぐうたら犬は、コースを外れがち
で、近道を行く(cut corners)。
–

(3) 船頭(gondolier)

ゴンドラ(平底船)の船頭が、大回りを避け、衝突すれすれ
にさばく、際どい漕ぎ方が “cut corners”。

サイト内で最も支持されているのは(3)。
※  2018年9月25日現在

その根拠のひとつとして引用されているのが、
OED(オックスフォード英語辞典)の編集長による回答。

1997年の記事だが、今でも通じる説明だろう。

The OED documents the phrase from 1869,
when Mark Twain described a gondolier who
“cuts a corner so smoothly, now and then,
or misses another gondola by such an
imperceptible hair-breadth that I feel myself
‘scrooching’, as the children say, just as one
does when a buggy wheel grazes his elbow”

(“Innocents Abroad“, chapter 23).

The original use was, therefore,
“to pass round a corner as closely as possible“;
the modern extended use is recorded from
the latter end of the 19th century.

JOHN SIMPSON
Chief Editor
Oxford English Dictionary

https://www.independent.co.uk/voices/
July 3, 1997

※  “scrooching”  =  しゃがむ (自動詞)

シンプソン編集長は、米作家トウェイン(1835-1910)
の紀行『地中海遊覧記』から、スリル満点な船漕ぎの描写
を引き合いに出す。

その上で、出版年の1869年を初出とする。

その根拠は、OEDが記述するからに他ならない。
ー

◆   “OED”  =  “Oxford English Dictionary” は、
1884年にイギリスで刊行が始まり、最新版の第2版
は1989年刊。

邦題 『オックスフォード英語辞典』。

全20巻、2万1730ページ、29万1500の見出し語、62kg。
世界最大の英語辞典である。
–
語義の配列は、頻出順ではなく、発生順の「歴史主義」。
成り立ちを、系統的にたどれる利点がある。
–
【公式サイト】   http://www.oed.com/

▼ 「縮刷版」及び「CD-ROM版」も発売されている  ▼

[両方入手済み]  →   辞書の「自炊」と辞書アプリ–

–
◆  間一髪のすれ違いを「馬車の車輪がひじをかすめる
際にするように、身をかがめた」とトウェインは記す。

ここから、本来の “cut corners” が意味するのは、
「できる限り、ぎりぎり角を曲がる」(赤ハイライト)。

無駄を省き、時間が短縮できる一方、安全は二の次。
安全面を犠牲にしかねない点で「手抜き」に派生した
とする解釈である。

生真面目に角にびっちり沿った進行であり、サボりから
程遠いのだが、むやみに接近しすぎて危険を招いている。

それゆえ「手抜き」となる。

何だか分かりにくい。

だが、安全確保の側面から見ると、「手抜き」の語釈
「しなければならない手続・手段を故意にしない」
に該当していると考えられる。
ー

◆  黄枠の3つの由来のうち、すんなり理解しやすいのは、
(2)の「近道」だろう。

すなわち、角をきちんと曲がらないずぼらな手抜きを示す。

猟犬がサボり主のようだが、人間でも同じ。

はしょる

 

「近道する」も、”cut corners” の定訳のひとつである。

  ちかみち【近道・近路】

1. 距離の近い道(を行くこと)。
2. ぬけみち
3. はやくするための手段。はやみち。

(三省堂国語辞典 第七版)

 

  ぬけみち【抜け道】

1. 本道からはずれた近道。間道。
2. 法律の規制や責任を逃れるための手段・方法。

(明鏡国語辞典 第二版)

逆に「近道」の英訳の定訳は、可算名詞 “shortcut“。
上の国語辞典の「近道」にそのまま当てはまる意味。

“take shortcuts“ で「近道を行く」「近道する」。

  •  形容詞  “short“(短い)
  •  名詞  “cut“(道)

で、こちらも理解しやすい。

“shortcut” の初出は16世紀。19世紀の “cut corners”
に比べて、ずっと早い。

【発音】  ˈʃɔːt.kʌ
【音節】  short-cut  (2音節)
–

◆  ここで、双方の “cut” を見てみよう。

“cut” の語源は、中期英語「切り込む」(cutten)。

【発音】  kʌ́t
【音節】  cut  (1音節)

非常に多義で、他動詞・自動詞・名詞・形容詞
がそろう。基本的意味は、

  • 他動詞
    「切る」「減らす」「横切る」
  • 自動詞
    「切る」「切り替える」「横切る」
  • 可算名詞
    「切ること」「切り口」「切片」「抜け道」
  • 形容詞
    「切られた」「彫りの深い」

本稿と直結するのは、緑ハイライトの語義。
カタカナ「カット」にも、実は含まれる意味合い。

  カット【cut】

4. 野球で、他の選手への送球を途中に補給すること。
5. 球技で、相手チームがパスしたボールを途中で奪う
こと。

(大辞林 第三版)

どちらも、割り込んで<横取り>する。
相手側から見れば「横切る」方向になる。
語源「切り込む」から連想できるだろう。

本コースを無視しているから、「抜け道」にもつながる。

“cut corners” では他動詞、”shortcut” では名詞の “cut”。
基本的にそれぞれ「横切る」「抜け道」を意味する。

もっとも、先述の<3由来>ごとに検討すれば、

(1) 屋根ふき工事(roofing)  →  切る
(2) 狩猟(hunting)    →  抜け道を行く
(3) 船頭(gondolier)  →  通り抜ける

動詞 “cut” の語形変化は、cuts-cut-cut。
過去形も、過去分詞形も “cut”。
–

◆  他方の “corner” の語源は、ラテン語「角」(cornū)。

【発音】  kɔ́ːrnər
【音節】  cor-ner  (2音節)

名詞・他動詞・自動詞があり、基本的意味はこの通り。

  • 可算名詞
    「角」「端」「分野」「苦境」
  • 他動詞
    「角をつける」「角に置く」「独占する」「詰め寄る」
  • 自動詞
    「角にある」「買い占める」「独占する」「急カーブを曲がる」

“cut corners” では、<3由来>すべてで可算名詞「角」。

基本的意味そのもので、これまたカタカナ共通。

あえて擬態語(赤字)も加えて和訳してみた。

(1) 屋根ふき工事(roofing)  →  角をばさっと切る
(2) 狩猟(hunting)    →  角をささっと駆け抜ける
(3) 船頭(gondolier)  →  角をぎりぎり通り抜ける
–

◆  4大学習英英辞典(EFL辞典)は、次の通り。

“cut corners”

■  to save time, money, or energy by doing things
quickly and not as carefully as you should.
(LDOCE6、ロングマン)

■  (disapproving) to do something in the easiest, 
cheapest or quickest way, often by ignoring rules
or leaving something out.
(OALD9、オックスフォード)

■  to do something in the easiest, cheapest, or 
fastest way.
(CALD4、ケンブリッジ)

■  If you cut corners, you do something quickly
by doing it in a less thorough way than you should.
[DISAPPROVAL]
(COBUILD9、コウビルド)

※  下線は引用者

既記のように、複数形 “corners” で項目立てされている。

青字  “disapproving” 及び “disapproval“ とは、
「非難する表現」「好意的でない表現」を指す。
英英辞典の凡例用語。

反意語は、”approval” または “approving“ で、
「褒め言葉」。

CALD4の凡例によれば、

  • “approving”
    praising someone or something.–
  • “disapproving”
    used to express dislike or disagreement
    with someone or something.

【発音】

・  disappoval   /ˌdɪs.əˈpruː.vəl/
・  disapproving   /ˌdɪs.əˈpruː.vɪŋ/
・  approval    /əˈpruː.vəl/
・  approving   /əˈpruː.vɪŋ/

 

◆  「非難する」ニュアンスは、 上掲EFL辞典の下線部より明らか。

上から順に、ざっくりと、

  • “not as carefully as you should” (LDOCE6)
    注意を怠り
    –
  • “often by ignoring rules or leaving something out” (OALD9)
    手順無視 または 手数省略
    –
  • “in a less thorough way than you should” (COBUILD9)
    不徹底に

これらは冒頭の「手抜き」と重なる。
日英等しく、非難を含む語勢であるのが分かる。
ー

◆  最後に注意点。

“disapproving” と “disapproval” のネガティブ用法
が原則の “cut corners” であるが、「節約する」
の意で起用されることもある。

< 無駄を省き、コスト削減 >という建設的な意図である。

先のEFL辞書でも、下線を除く前半部分を取り上げると、
極めてポジティブな内容である。

< 時間・経費・エネルギーを節減 >とあり、効率重視が目標。

明るく前向きな姿勢にあふれ、下線部の示す怠惰な雰囲気はない。

このように、ポジ用途で使われる場合もあるのは確かである。

例えば、予算削減が議題の場面なら、不自然はない。

しかし、やはり

◇  圧倒的なのは「 否定的 」な印象

特に、ニュースに登場する “cut corners” は、あらかた

 人聞き悪い「 手抜き 」

だから、まずネガ用法から押さえていこう。

 

◆  皮切りは、力強い安全標語(safety slogan)。

Cutting Corners Costs Lives

「 手抜きは命取り 」

  • “Never cut corners on safety.”
    (安全面で決して手を抜くな。)
  • “People love to cut corners and do things the easy way.”
    (人は手抜きが好きで、楽しようとするもの。)
    –
  • “Don’t try to cut corners. Otherwise, you will regret it.”
    (手を抜こうとするな。さもないと後で後悔するよ。)
    –
  • “They are forcing us to cut corners.”
    (彼らは我々に手抜きするよう強いている。)
    –
  • “The manufacturer had cut corners everywhere.”
    (そのメーカーはあちこち手抜きした。)
    –
  • “We could finish this early if we cut corners.”
    (手を抜けば、早く終えることができる。)
    –
  • “We had to cut corners to meet the deadline.”
    (締切に間に合わせるため、手抜きせざるを得なかった。)

 

 

 

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