Sit back and watch
2020/01/05
何もしないで見ている
何もせずただ見ていること。
座視(ざし)の英語版。
「座視」「坐視」
そばで見ているだけで、
関与しようとしないこと。
傍観。
(広辞苑 第六版)
ビジネス用途では、日英とも印象がよくない。
仕事中は常にコストが発生している ため、
<何もしない>こと自体が、問題視されがちである。
「見てないで何かやれよ」
「ただ見てるだけだった」
「何もしてくれなかった」
怠惰な他者を非難 するのに使う場合が多い
ネガティブな意味合いの句動詞 “sit back”
には、決まり文句がある。
- sit back and do nothing
- sit back and wait
- sit back and ignore
一方、”sit back” には、単純にリラックスする
意味もある。主にプライベート用法。
くつろいで楽しむ感じで、後ろめたさ抜き。
文字通りであり、他意はない。
- sit back and enjoy
- sit back and get comfortable
- sit back and relax
【関連表現】
“laid-back“(のんびりした、おおらかな)
※ 好意的な印象
◆ ロングマン(LDOCE6)とイメージでまとめてみる。
“sit back“
1. to get into a comfortable position,
for example in a chair, and relax.
2. to relax and make no effort to get involved in
something or influence what happens.
3大EFL辞典(LDOCE、OALD、CALD)を含む
主な英英辞典のほとんどが、この2つの意味を記載する。
だが、中には一方だけの辞書もある。
オンライン辞書例を挙げると、
“sit back“
取り上げられているのは、すべてネガティブ用法である。
「リラックスして、何もしない」。
つまり、LDOCE6 の「2」の意味。
したがって、基本はこちらと考えられる。
ビジネスの現場でも、ネガティブな文脈中心なので、
本稿でもこの用途を考察していく。
“sit back” は、「あえてやらない」のがポイント。
先の4本の英文下線(LDOCE6 も含む)が描写する、
意図的に関わらない姿勢である。
やらねばならないこと、またはやればできること。
これらをすべて放棄している。
だから、悪口に使われる。
◆ “sit back” は句動詞。
“sit” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
圧倒的に使われるのは自動詞で、非常に多義である。
ここでも自動詞で、最も基本的な「座る」。
“back” には、名詞・形容詞・副詞・他動詞・自動詞
がそろう。
ここでは、副詞「後ろへ」。
- “step back“(後ずさりする)
- “lean back“(後ろへもたれる)
と同じ用法である。
◆ “watch” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
自他動詞とも、基本的意味は
「じっと見ている」「待ち構える」。
同じく自他動詞の同義語 “see” も「見る」だが、
“see” は、意図的か否かに関係なく、目を向ける姿。
目に映る対象をそのまま見る有様。
一方、”watch” は<目をそらさず、ずっと見る>。
ジーッと見つめるので、対象を意識している。
「テレビを見る」は “watch TV”。
暇つぶしにボーッと見ても “watch TV”。
表題でも、意図的に「目をそらさないで、じっと見る」。
◆ 以上より、”sit back and watch” の直訳は、
「後ろへ座って、目をそらさないで、じっと見る」
<ビジネス用途>
「見てるだけ」で、何もしない状態
たいてい、 わざとだから、たち悪い
職場であれば、次のような反感を買って当然であろう。
- “Don’t just sit back and watch.
Do something about it ! ”
(ただ見てないで、何かしろよ!)
–
- “Why do you just sit back and watch ? ”
(なぜ、お前は傍観してるんだ?)
(なぜ、お前は何もしないの?)
– - “You can’t just sit back and watch this.”
(これを傍観するだけなんて許されないよ。)
(何もしないなんて許されないよ。)
– - “She just sat back and watched all the way through.”
(彼女は最後まで見ていただけでした。)
– - “He simply sat back and watched the situation.”
(彼はただ状況を見ていただけ。)
例文のように、副詞 “just” や “simply“(ただ、単に)
を伴い、<何もしない>様子を強調するパターンが
一般化されている。
最後の2文は過去の出来事を述べているので、
過去形 “sat” と “watched” が用いられている。
“sit back” が、実際に「座っている」とは限らず、
<何もしない>態度を示すために起用されるのは、
上掲の広辞苑及び英英辞典の定義から明らか。