プロ翻訳者の単語帳

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Dish out

      2019/04/26

やたらとばらまく、情報を流す

ニュース見出しに表れる動詞は、
英語の中級学習者であれば、
だいたい意味が分かる。

動詞は、名詞と並んで、見出しの求心力を
を決定する品詞であるが、名詞に比べ、
難易度の調整がかなり効く。

よって、何かの引用でもない限り、
凝った動詞はそうそう出てこない。

ところが、単語は容易であっても、
意味のつかみがたい句動詞が少なくない。

表題 “dish out” も、その一例。
見出しにそこそこ出てくるのだが、主要な
英和辞書を引いても、すっきりしない。

以前から存在する句動詞だが、辞書通りの
意味を当てはめても、何だか理解できない。

だから、本稿で取り上げたい。

◆ 辞書の筆頭を占めるのは、

  • 英和辞書:「皿に取り分ける」「配る」
  • 英英辞典: “to serve food”

ほとんどの英和辞典は上記の通り。
英英辞典にもこのパターンが少なくない。

ニュース見出しに「皿」や “food” は
似つかわしくないので、「配る」だろう、
と見当がつく。

「配る」の句動詞は、

  • dole out
  • give out
  • hand around
  • hand out
  • pass around
  • share out

※ すべて、句他動詞

これらに置き換えてみて、意味をなす
見出しもあれば、そうでないものもある。

「皿に取り分ける」「配る」の日常使用例:

  • Could you dish the tomatoes out ?
  • Could you dish out the tomatoes ?
    (トマトをいただけますか?)
  • Waiters started dishing out the drinks.
    (接客係は飲み物を配り始めた。)
  • The chef is dishing out the sushi.
    (シェフがお寿司を取り分けています。)
    (シェフがお寿司を配っています。)

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これらは “dish” から連想しやすい。
ネガティブな印象はない。
これが本来の “dish out” のイメージ。

だが、ニュース報道では、大半が料理と無関係。

dish something out
(1)to give something to various
people 
in a careless way.
(2)to serve food to people.
(ロングマン、LDOCE6)

dish something out
informal
(1)to give or say things to people
without
thinking about them carefully.
(2)to give or serve food to people.
(ケンブリッジ、CALD4)

※ 青字、下線は引用者

LDOCE6 と CALD4 の語釈(1)は、
「やたらとばらまく」姿を描写している。
(2)は、上掲図の意味。

ポイントは下線部。

  • LDOCE6:”careless”
  • CALD4:”without – carefully”

後者を要約すると “careless” と同義。
この形容詞は、ここでは「不注意」でなく、
「軽率な」の意。

つまり、軽はずみにばらまく様子。

先の LDOCE6 は “give”(与える) のみだが、
CALD4 にある “say” であれば、
「軽率にべらべらしゃべる」感じ。

◆ 一方、次の解釈もある。

“dish out”
 to give or dispense freely.
(メリアム ウェブスター)

※ 副詞 “freely” = 気前よく

さらには、

“dish out (something)”
To give out something (advice, praise,
favors, insults, criticism, information, etc.)
in large amounts.

The idiom is normally used in a
critical sense and it is often negative
things that are “dished out.”

http://www.idioms.online/dish-out

※ 青字、下線は引用者

「アドバイス、称賛」などを「大量に」
与え、「往々にしてネガティブ」と
下線部にある。

◆ そもそも、なぜ “dish out” が、
「やたらとばらまく」「べらべらしゃべる」
も意味するか。

詳しく見ていこう。

“dish” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
語源は、ギリシア語「円盤」(diskos)。

陸上競技の円盤投げは、英語で “the discus
または “the discus throw”。

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– 名詞「大皿」「食器類」「料理」
– 他動詞「皿に盛る」「情報を流す」
– 自動詞「皿の形になる」「情報を流す」

名詞用法が最多で、名詞は可算名詞のみ。
名詞の英単語としての「重要」は最上位。

すなわち、3,000語以内に入っている。
(LDOCE6 の表記より)

“dish out” の “dish” は、他動詞。
ニュース用途では「皿に盛る」でなく、
「情報を流す」の方。

語形変化は、dish – dishes – dished – dishing。

“dish”
informal
to give a lot of information about
something or someone, especially
something that would usually be
secret or private.
(ロングマン、LDOCE6)

※ 下線は引用者

「通常は秘密や内輪」な「誰かまたは何か」
についての「たくさんの情報を与える」
との下線部から、軽率な行為が読み取れる。

これに、副詞 “out”(外に向かって)を加えると、

  • やたらとばらまく
  • 軽率に情報を流す

こんな意味合いとなる。これが基本。

ただし、先のメリアム ウェブスターの通り、
軽率に」というよりも「気前よく」
という文脈で用いられるケースも多い。
後述の例文にも出てくる。

この場合、必ずしも「ネガティブ」とは言えない。

いずれにせよ、「通常は秘密や内輪」には違いない。

dish on “(〜についてべらべらしゃべる)
と重なる意味合いである。

◆ 特に “dish it out” の<3語ワンセット>は、
けなす」「こらしめる」を意味する口語。

“dish it out”
to criticize other people.
(オックスフォード、OALD9)

ここでの人称代名詞の目的格 “it”(それを) は総称的。
通常は訳出しない。

既述の “dish something out” であれば、
“it” の代わりに、目的語を入れる。

◆ 以下の例文は、先の図と異なる用法を、
今年2018年(※)のニュース見出しから抽出したもの。

  • “Police Dish Out 52 Speeding Tickets”
    (警察が52枚の速度違反切符を乱発)
  • “President is About to Dish Out
    ‘Awards’ For ‘Most Corrupt Media'”
    (大統領が「最も腐ったメディア」に
    まもなく「賞」を授与)
  • “What kind of damage can
    a crossbow dish out ? ”
    (洋弓の破壊力とは?)
  • “Would you dish out $800 for
    peace of mind ? ”
    (あなたは安らぎに800ドル払うか?)
  • “7 YouTubers dish out life-changing advice”
    (ユーチューバー7名が人生を変える助言を流す)
  • “Bank to dish out scholarships for
    agricultural students”
    (銀行が農学生に奨学金を提供)
  • “Experts dish out tips for investors
    in the new year”
    (専門家が投資家に流す新年のタレ込み情報)

上記例文では、「軽率に」よりも「気前よく」
の意味合いが強い。

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※ 2018年2月現在なので、”past month”
(過去1ヶ月)で2018年の記事が出てくる

「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

 

 

 

 

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