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Hands-on

      2019/08/25

直接関与する、実地の、実用向けの

He is a hands-on dad.
(彼はイクメンなのです。)

「イケメン」でなく、「イクメン」。

  いくメン【育メン】

[育児とイケメンの合成語]
俗に、子育てを積極的に楽しむ男性。

  イケメン  

容姿がすぐれている男性。
[若者語。「いけてる(=カッコイイ)」
の略に「面」あるいは「メン(men)」を
つけたものといわれる]

(大辞林 第三版)

「イケメン」は、次の通り、2018年1月発売の
広辞苑 第七版 にも初登場。

「イクメン」は、未掲載。

  いけめん【いけ面】

(「いけてる」の略「いけ」と顔を表す「面」
とをあわせた俗語か。多く片仮名で書く)
若い男性の顔かたちがすぐれていること。
また、そのような男性。

(広辞苑 第七版)

いきなり「イクメン」「イケメン」の語釈。

その理由は、”hands-on” のニュアンス
うまく具現する姿が「イクメン」と考えるため。
ー-
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これはイメージ。あくまでイメージ。

「イクメン」の現実は、半端ではなく大変な有様。
ワーキングマザーとは違った性質の葛藤も伴い、
人知れず苦しむ折も多々あるに違いない。

◆ “hands-on” は、形容詞。

名詞 “hands” と 副詞 “on” をハイフンで
つなげて形容詞にした「複合語」。すなわち、
「複合形容詞」(compound adjective)。

< “hands-on” の語源 >

初出は1969年。比較的新しい。
というのは、もともとコンピュータ用語だった
からである。

机上の知識でなく、実際にキーボードを用いて、
現場でコンピュータを動かす様子

hands are on“(両手が載っている) の略。

キーボードは両手使いなので、複数形 hands
それを、キーボード上に載せるので、
接触の副詞 on(上に)。
※ “on” は形容詞とする説もある

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まさに、実地訓練OJT= “on-the-job training”
の雰囲気(相違点は後述)。

【出典】
・『ジーニアス英和大辞典
・『NHK やさしいビジネス英語実用フレーズ辞典』2003年刊
・ 語源サイト  https://www.etymonline.com/search?q=hands-on

■ なお、hands-off(不干渉、口出ししない)
の類推による、との説もある
・『ランダムハウス英和大辞典 第2版

成り立ちを詳細に述べたのは、以下の意味合い
に関係するからである。

現在、ビジネス用途では、
現場で自分の手を使い、しっかり取り組むこと

そこから、「自ら直接関わること」「直接関与する」、
ひいては「直接参加する」。

これらは、先述の「実際にキーボードを用いて、
現場でコンピュータを動かす」から生じる。

さらに「机上の知識でなく」の側面から、
実地の」「実用向けの」「実際的な」。

以上より、同義の形容詞の代表格は、それぞれ

  • involved(関係している)
  • practical(実用的な)

“hands-on”

doing something rather than just talking about it.
(オックスフォード、OALD9)

【発音】ˈhændzˈɑːn

その他、マイナー用法として、文字通り、
「手動の」「実際に手で操作する」も意味する。

しかし、日常的にはあまり出てこない使い道。
技術分野で使うカタカナ「ハンズオン」は、この意味中心。

基本的に、”hands-on” はポジティブな印象
の形容詞である。

特にビジネス視点から上記青字を見ると、
ネガティブな要素は感じにくいはず。
「イクメン」についても同様。

ただし、「直接関与する」→「何でも自分でやりたがる」
とのよくない解釈もある。これまたマイナー用法。
めったに見聞きしないが、英英辞書には記載されている。

“hands-on”

a hands-on person is involved in something

and does not let other people do all the work
and make all the decisions.
マクミラン) ※ 下線は引用者

【下線和訳】
他の人にはすべての仕事やすべての決断を
させようとしない。
→ 自分で抱え込む、またはしゃしゃり出て、
他人から権利を奪う煩わしい

◆ “hands-on” は形容詞なので、
名詞の前に置くのが大原則。

だが、次のような使い方も珍しくない。

  • “I like to be hands-on.”
    (私は直接関わるのが好き。)
  • “He has been hands-on with his sons.”
    (彼は息子たちに直接関わっていた。)

“hands-on” は名詞の前になく、述語になっている。

◆ よい機会なので、ここで基礎文法のおさらい。
aware” より、再掲する。

 

日本語の形容詞は用言の一つで、
単独で述語 になることができる。

  • 私は悲しい
  • 彼女はきれい
  • それが楽しかった

太字は形容詞。
「は」と「が」は、助詞

名詞・代名詞の後ろに置き、
他の語との文法的関係を示す語。
前置詞の反対の 後置詞(こうちし)。

それが、日本語の助詞。

◆ 一方、英語の形容詞は「be動詞などの
助けを借りないと、述語になれない。

日本語の形容詞に比べて、
力が弱いから。

  • I am sad.
  • She is beautiful.
  • It was fun.

黒の下線部が “be動詞“。

be動詞be、am、was、been、
will be、is、were、are

要するに、英語の形容詞は、
  弱すぎて述語として自立不能。

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先述の文例を比べると、

  <日本語の形容詞>  単独で述語 ○  

強くて独立しているので「助詞」が欠けても可。
少なくとも「話し言葉」なら、大抵問題ない。

私、悲しい
彼女、きれい
それ、楽しかった

  <英語の形容詞>  単独で述語 X  

弱くて依存している
ので、「be動詞」などは不可欠
よって、以下は完全に間違い。

X  I sad.
X  She beautiful.
X  It fun.


“be動詞” などと
組み、述語になれば、名詞の前に限定
されないで済む
ということ。

“I like to be hands-on.” では、”be” が「be動詞」。

◆ “hands-on” は、公私不問で幅広く使われる。

辞書の指標では重要・頻出に至らないものの、後掲するように、
決まり文言として多用されるものが存在する。

冒頭の「イクメン」もこのパターン。
「イクメン」= “a hands-on dad” にかなり重なる。

◆ 日本の厚生労働省が「イケメンプロジェクト」
を立ち上げたのが、2010年。
男性の育休取得率を上げる狙いがあった。

同年6月、「イクメンという言葉をはやらせたい」と
国会で発言した当時の労働大臣に端を発する。

そこから、「育児に積極的な男性」として
一般社会に普及していった流れ。

“hands-on” 以上に、成り立ちが作為的である。

したがって、解釈によっては、「イケメン」が
“hands-on dad” にならない場合もありうる。
その逆も然り。

一般的なニュアンスの一致として、<ほぼ同義>
くらいに考えていただければと思う。

◆ 次の7つは、辞書の例文に頻出な上、実際に活用
されている言い回し。

  • hands-on training
    (実地訓練)
    実機に触れることを主眼とする教育訓練。
    一方、”OJT” は、現場で働きつつ仕事を覚える
    ことが趣旨。
  • hands-on experience
    (実地体験)
    ※ 無冠詞の不可算名詞が通例
  • hands-on management
    (実務にも直接従事する経営陣)
  • a hands-on manager
    (実務にも直接従事するプレーイングマネージャー)
    ※ 否定的な解釈では、実務まで微細に管理
    しようとする、うざいマネージャー
  • hands-on parenting
    (積極的な子育て)
    ※ “hands-on parents“(~両親) も同様
  • hands-on activities
    (体験活動)
    ※ 教育課程としてのボランティア活動など
  • hands-on approach
    (現場主義)

“hands-on” の成り立ちを押さえて
おけば、7つとも理解は難しくない。

 

【関連表現】
“hands down”
https://mickeyweb.info/archives/26312
(楽々、断然)

 

 

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