Hands-on
2022/04/19
直接関与する、 実地の、 実用向けの
He is a hands-on dad.
(彼はイクメンなのです。)
–
「 イケメン 」でなく、「 イクメン 」。
–
いくメン【育メン】
[ 育児とイケメンの合成語 ]
俗に、子育てを積極的に楽しむ男性。
イケメン
容姿がすぐれている男性。
[ 若者語。「 いけてる( = カッコイイ ) 」
の略に「 面 」あるいは「 メン(men)」を
つけたものといわれる ]
( 大辞林 第三版 )
–
「 イケメン 」は、次の通り、2018年1月発売の
広辞苑 第七版 にも初登場。
「イクメン」は、未掲載。
–
いけめん【いけ面】
( 「 いけてる 」の略「 いけ 」と顔を表す「 面 」
とをあわせた俗語か。 多く片仮名で書く )
若い男性の顔かたちがすぐれていること。
また、そのような男性。
( 広辞苑 第七版 )
–
いきなり「 イクメン 」「 イケメン 」の語釈。
その理由は、” hands-on ” の ニュアンス を
うまく具現する姿が「 イクメン 」と考えるため。
ー-
これはイメージ。 あくまでイメージ。
「 イクメン 」の現実は、半端ではなく、大変な模様。
ワーキングマザーとは違った性質の葛藤も伴い、
人知れず苦しむ折も多々あるに違いない。
–
◆ ” hands-on ” は、形容詞。
名詞 ” hands ” と 副詞 ” on ” をハイフンで
つなげて形容詞にした「 複合語 」。
すなわち、「 複合形容詞 」( compound adjective )。
–
< ” hands-on ” の語源 >
初出は1969年。 比較的新しい。
というのは、もともとコンピュータ用語だったからである。
机上の知識でなく、 実際にキーボードを用いて、
現場でコンピュータを動かす様子。
” hands are on “( 両手が載っている ) の略。
キーボードは両手使いなので、 複数形 ” hands “ 。
それを、キーボード上に載せるので、
接触の副詞 ” on “(上に)。
※ ” on ” を形容詞とする説もある
hands are on
–
まさに、実地訓練 ” OJT ” = ” on-the-job training ”
の雰囲気。
【出典】
・『 ジーニアス英和大辞典 』
・『 NHK やさしいビジネス英語実用フレーズ辞典 』2003年刊
・ 語源サイト https://www.etymonline.com/search?q=hands-on
–
■ なお、” hands-off “(不干渉、口出ししない)
の類推による、との説もある
・『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』
–
◆ 成り立ちを詳細に述べたのは、以下の意味合い
に関係するからである。
現在、ビジネス用途では、
「 現場で自分の手を使い、しっかり取り組むこと 」。
そこから、「 自ら直接関わること 」「 直接関与する 」。
ひいては「 直接参加する 」。
これらは、先述の「 実際にキーボードを用いて、
現場でコンピュータを動かす 」から生じる。
さらに「 机上の知識でなく 」の側面から、
「 実地の 」「 実用向けの 」「 実際的な 」。
以上より、同義の形容詞の代表格は、それぞれ
- ” involved “( 関係している )
- ” practical “( 実用的な )
–
◆ その他、マイナー用法として、文字通り、
「 手動の 」 「 実際に手で操作する 」も意味する。
しかし、日常的にはあまり出てこない使い道。
技術分野で使うカタカナ「 ハンズオン 」は、この意味中心。
基本的に、” hands-on ” は、ポジティブな印象 の形容詞である。
特にビジネス視点から上記青字を見ると、
ネガティブな要素は感じにくいはず。
「 イクメン 」についても同様。
ただし、「 直接関与する 」 → 「 何でも自分でやりたがる 」
とのよくない解釈もある。
これまたマイナー用法。
めったに見聞きしないが、英英辞書には記載されている。
–
” hands-on “
a hands-on person is involved in something
and does not let other people do all the work
and make all the decisions.
( マクミラン )
※ 下線は引用者
【 下線の参考和訳 】
他の人にはすべての仕事やすべての決断を
させようとしない。
→ 自分で抱え込む、またはしゃしゃり出て、
他人から権利を奪う 煩わしい 人
–
◆ ” hands-on ” は形容詞なので、 名詞の前に置くのが大原則。
だが、 次のような使い方も珍しくない。
- “I like to be hands-on.”
(私は直接関わるのが好き。)
– - “He has been hands-on with his sons.”
(彼は息子たちに直接関わっていた。)
” hands-on ” は、名詞の前になく、 述語になっている。
自らが「 文の要素 」となる、「 叙述的用法 」の形容詞としての使い方。
この「 叙述的用法 ( predicative use )」の形容詞は、名詞を説明する。
「 名詞+動詞 」の後、または「 名詞 」の後に来るのが原則。
英和・和英では「 叙述 」、英英では ” not before noun ”
などと表記されている。
名詞の前に置き、名詞を直接修飾する「 限定的用法( attributive use )」
の形容詞と対をなす。
- 英語の形容詞の用法は2つ
→ 「 限定的用法 」と「 叙述的用法 」
– - 日本語の形容詞の用法は3つ
→ 「 限定的用法 」と「 叙述的用法 」と「 副詞的用法 」
※ 「 用法 」の直前の「 的 」が抜けても同義
–
【参照】 ※ 外部サイト
・ 形容詞の「 叙述的用法 」と「 限定的用法 」
・ 形容詞の限定用法と叙述用法
・ 英語の連結動詞とは?
◇ 詳細は、 ” Please be aware that – ”
‐
◆ よい機会なので、 ここで基礎文法のおさらい。
” aware ” より、再掲する。
–
日本語の形容詞は「 用言 」の一つで、
単独で述語 になることができる。
- 私は 悲しい。
- 彼女は きれい。
- それが 楽しかった。
太字は形容詞( adjective )。
「は」と「が」は、助詞( postpositional particle )。
名詞・代名詞の後ろに置き、
他の語との文法的関係を示す語。
前置詞( preposition )の反対の 後置詞( こうちし )。
それが、日本語の助詞。
–
◇ 『 日国 』の語釈全文を後掲
–
一方、 英語の形容詞は「 be動詞 」などの
助けを借りないと、 述語になれない。
日本語の形容詞に比べて、
力が弱いから。
–
- I am sad.
- She is beautiful.
- It was fun.
–
黒の下線部が ” be動詞 “。
※ 「 be動詞 」 = be、am、was、been、will be、is、were、are
要するに、英語の形容詞は、
弱すぎて、述語として自立不能。
–
–
先述の文例を比べると、
–
< 日本語の形容詞 > 単独で述語 〇
強くて独立している ので、「 助詞 」が欠けても可。
少なくとも「 話し言葉 」なら、大抵問題ない。
何もつかなくても、「 述語 」として、 立派に自立。
△ 私、悲しい。
△ 彼女、きれい。
△ それ、楽しかった。
–
< 英語の形容詞 > 単独で述語 ×
弱くて依存している ので、「 be動詞 」などは 不可欠。
よって、以下は完全に間違い。
× I sad.
× She beautiful.
× It fun.
–
「 be動詞 」 などと 組み、述語になれば、名詞の前に限定
されないで済むということ。
” I like to be hands-on.” では、” be ” が「 be動詞 」。
–
◆ ” hands-on ” は、公私不問で幅広く使われる。
辞書の指標では重要・頻出に至らないものの、後掲するように、
決まり文言として多用されるものが存在する。
冒頭の「 イクメン 」もこのパターン。
「 イクメン 」 = ” a hands-on dad ” にかなり重なる。
ー
◆ 日本の厚生労働省が「 イケメンプロジェクト 」
を立ち上げたのが、2010年。
男性の育休取得率を上げる狙いがあった。
同年6月、「 イクメンという言葉をはやらせたい 」と
国会で発言した当時の労働大臣に端を発する。
そこから、「 育児に積極的な男性 」として、
一般社会に普及していった流れ。
” hands-on ” 以上に、成り立ちが作為的である。
したがって、 解釈によっては、「 イケメン 」が
” hands-on dad ” にならない場合もありうる。
その逆も然り。
一般的なニュアンスの一致として、< ほぼ同義 >
くらいに考えていただければと思う。
–
◆ 次の7つは、辞書の例文に頻出な上、実際に活用
されている言い回し。
–
-
hands-on training
( 実地訓練 )
–
※ 実機に触れる ことを主眼とする教育訓練。
–
一方、” OJT ” は、現場で 働きつつ 仕事を覚える
ことが趣旨。
-
hands-on experience
( 実地体験 )
–
※ 無冠詞の不可算名詞が通例 -
hands-on management
( 実務にも 直接従事する経営陣 ) -
hands-on parenting
( 積極的な子育て )
–
※ ” hands-on parents “( 子育てに積極的な両親 ) も同様 -
hands-on activities
( 体験活動 )
–
※ 教育課程としてのボランティア活動など -
hands-on approach
( 現場主義 )
–
” hands-on ” の成り立ちを押さえておけば、
7つとも理解は難しくない。
【関連表現】
” hands down “
https://mickeyweb.info/archives/26312
( 楽々、 断然 )–
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「 助詞 」全文は、以下の通り。
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『 日本国語大辞典 第二版 』 第7巻、 p. 357、
小学館( 2001年刊 )※ 傍線は引用者
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おまけに、「 形容詞 」全文。
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『 日本国語大辞典 第二版 』 第4巻、 p. 1287、
小学館( 2001年刊 )※ 傍線は引用者
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緑の傍線が、 既記の
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< 英語の形容詞は「 be動詞 」などの 助けを借りないと、述語になれない >
–
に該当する。
–
◆ 英語も「 印欧語 」。
インド・ヨーロッパ語族( the Indo‐European languages )とも言う。
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–
【出典】 小学館 日本大百科全書 ( ニッポニカ ) の解説より
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「 印欧語 」と「 形容動詞 」は、” conclusive ” で取り上げている。
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◆ 日本語の文の種類は、3種類に大きく分けられる。
1. 名詞文
2. 形容詞文
3. 動詞文
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1. 「 名詞文 」 → 述語に名詞が使われる
1-1 私は学生です。
1-2 父は今ニューヨークです。
2. 「 形容詞文 」 → 述語に形容詞または形容動詞が使われる
2-1 富士山は美しい。(形容詞)
2-2 京都は有名である。(形容動詞)
3. 「 動詞文 」 → 述語に動詞が使われる
3-1 彼はそこに行きました。
3-2 私は昼食を食べました。
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上記を英訳してみる。
青字は動詞 ( 下線部は 「 be動詞 」 )。
1-1 I am a student.
1-2 My father is in New York now.
2-1 Mt. Fuji is beautiful.
2-2 Kyoto is famous.
3-1 He went there.
3-2 I ate lunch.
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動詞が「 3. 動詞文 」に用いられることは言うまでもない。
ところが、
「 1. 名詞文 」と「 2. 形容詞文 」にも
動詞( be動詞 )が使われている。
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日本語の「 1. 名詞文 」「 2. 形容詞文 」には動詞はないのが普通なのに、
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英語になると、必ず 動詞 が出てくる。
「 名詞文 」 「 形容詞文 」 「 動詞文 」
の すべて に、 英語では 動詞 が使われる。
日本語と英語の大きな違いである。
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