プロ翻訳者の単語帳

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Lessons learned

      2024/08/20

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 6 minutes

学んだ教訓

トラブル発生後、 実務担当者などの当事者が、
よく書かされる報告書に  ” lessons learned ”  がある。

組織によって、 この文書の位置づけは異なるだろうが、

 トラブルから得た教訓 


これに焦点を定める点は共通する。

なぜなら、

学んだ教訓


が直訳だからである。


きょうくん 【 教訓 】


それぞれ語釈全文である。

◆  主な役割は、 内部資料としての報告書

私の所属してきた組織でも、 概ねこうだった。

文書名は、そのままずばり、

Lessons Learned


対外的で正式な報告書でも使われている名称。

【 英文報告書の実例 】   “mishap lessons learned”  filetype:pdf

 



Stars and Stripes
※  星条旗新聞
米軍の準機関紙 、 創刊 1861年 ) の見出し
https://epub.stripes.com/docs/MID_MID_220223/MID_MID_220223.pdf
2023年2月22日付

< 参考和訳 >

戦場の教訓
ウクライナ戦争の1年、米軍が改善すべき点を露呈 – アナリスト分析


【発音】
  bǽtlfìːld
【音節】  bat-tle-field  (3音節)


◇  「 見出し 」 英語の解説は、 こちらが秀逸  ↓
英語ニュースの読み方( 見出し編 )RNN時事英語

◆  翻訳者として、 今も年がら年中、 携わっている。

結構な数の  ” mishap lessons learned ”  を翻訳 ( 英 ⇄ 日 )
する機会に恵まれたおかげか、 本稿の執筆にも身が入る。

まったくもって不謹慎な話だが、 私の大好きな翻訳素材なのです。

その道のプロたちが不面目な失態をさらし、 反省文を書いている。

生々しい描写と緊張がぎゅう詰めで、 ついつい興奮してしまう。

激しい情動が全身を駆け巡り、 臨場感にほんのり汗ばむくらい。

英訳も和訳も面白く、 並の事務文書とは段違いの力の入れよう。

脳が高揚し、 意欲の血潮が心身の内奥から熱く込み上げてくる。

中身が暗い割に、 普遍的な教訓が凝縮されており、 専門用語だらけの
難解さにめまいがするものの、 ごく身近な職場周辺で起きた出来事・
設備・登場人物のリアルさにしびれ、 えも言われぬ陶酔が押し寄せる。

うっとりとした夢現の境を漂いつつ、 夢見心地でひたすら没頭。

わくわく胸を躍らせ、 大喜びで取り組んでいることを白状する。

極力あってはならない 翻訳依頼 を、 密かに心待ちにしている。

依頼が届き、 ドーパミンの脳内分泌される瞬間がたまらんわ。

親しい同僚らが、 懲戒処分( disciplinary  action )を受けて
いたりするのに、 意地悪すぎ。

 

◆  柱は3つ。

  1.  経緯説明 ・ 事故概要 descriptions または events )
  2.  根本原因 root causes )
  3.  是正処置 corrective actions )

時に、「 3. 是正処置 」 の代替または追加として、

4. 推奨事項 recommendations )

を記すこともある。

以下の用語も頻出。

  •  懸念領域 ( area of concern )
  •  要因 ( contributing factors )


◆  死亡、 重傷、 または長期休業を伴う重大事故であれば、
適正手順に従い、専門家を交えた調査が実施されたりする。

担当者で処理するレベルを超えており、 組織の社会的責任
の一環として、 適法で厳格な検証が必要となるからである。

 

◆  しかし、そのような深刻な事態は、 めったに発生しない。

そのため、その都度  ” lesson learned ”  で自省する手法に落ち着く。

過ちから教訓を学び取ると言えば、殊勝な心構えに聞こえる。

実際のところ、それ以外に手の施しようがない現実も大きい。

時の流れは不可逆的。

過去は取り返しがつかない。

もう、 後の祭

どうにか 前進 しなければ …

きつい責任が重くのしかかる。

いざ起きてしまえば手遅れで、 ほぞを噛むしかない。

◆  そこで、今回得た「 教訓 」を 予防措置 として機能させようとする。

◇  視点を未来に据え、 再発防止に重点を置く


そうすれば、 どんな災難も無駄なく意味づけることができる。

予防にまさる対策はない。

It won’t happen again. ”  と趣旨が重なる。


失敗から学ぶ

 

◆  労働災害や品質管理に欠かせない原理は、 経験則 に基づくものが中心。


責任追及に終始しない姿勢
 
が、すべての根底を流れる。

心の救済のためにも、 今後に活かすしかない。

活動していれば、 ミスの完全回避は無理難題。

行動には、 失敗がついて回る。

けれども、 学びもついて回る。

間違えることで、 学習できる。

次の名言も、 それを示唆する。

  • Experience is the name that
    everyone gives to their mistakes.

    ( 経験とは、皆が自分の失敗につける名前である。)

    オスカー・ワイルド
    Oscar Wilde ( 1854 – 1900 )

  • A person who never made a mistake
    never tried anything new.

    ( ミスしたことのない人は、
    新しいことに挑戦したことのない人である。)

    アルベルト・アインシュタイン
    Albert Einstein ( 1879 – 1955 )

  • Don’t worry about failures,
    worry about the chances you miss
    when you don’t even try.

    ( 失敗を恐れるな。
    トライせずにチャンスを逃すことを恐れよ。)

    ジャック・キャンフィールド
    Jack Canfield ( 1944 – )
      ” Chicken Soup for the Soul
    ( 『 こころのチキンスープ 』 ) の作者



◆  ” lesson ” には、 名詞と他動詞がある。

語源は、 ラテン語 「 読むこと 」( lēctiō )。

名詞は、 カタカナ 「 レッスン 」 と内容はほぼ一緒。

【発音】  lésn
【音節】  les-son  (2音節)


レッスン 【 lesson 】

1.  稽古。 練習。
2.  学課。 課。 教程。
( 広辞苑 第七版 )

課業。  けいこ。
( 岩波 国語辞典 第八版 )

1.  授業。 稽古。  練習。
2.  学課。 教程。
( 大辞林 第四版 )

1.  学課。 教程。
2.  授業。 また、練習。  けいこ。
特に、日時を決めて個人的に指導を受けるもの。
( 明鏡国語辞典 第三版 )

1. 〔 習いごとなどの 〕 授業。
2.  学課。
( 三省堂国語辞典 第八版 )

いj-
こちらも、 各全文。

 

◆  英語 ” lesson ” の他動詞は、「 教える 」「 訓戒する 」。

他動詞用法は、 現在ではまれ。

《 古 》 と表記するのは、『 ジーニアス英和大辞典
や 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』。

つまり、” lesson ” は名詞用法が基本。

可算名詞である。

上掲の国語辞典の語釈以外に、英語の可算名詞 ” lesson ”
には、こうした意味もある。

  •  懲らしめ
  •  見せしめ

意地悪い思惑を含む。

前掲 『 三省堂国語辞典 第八版 』 の「 教訓 」も、

「  いましめ  」 と明記する。

- 

◆  ” learn ” には、 自動詞と他動詞がある。

【発音】   lərn 
【音節】   learn  (1音節)

語源は、古英語「 学ぶ、読む、思案する 」( leornian )。

ドイツ語  ” lernen “( 学ぶ )、” lesen “( 読む ) と同根。

原義( もともとの意味 )については、後掲アプリをご参照のこと。

自他動詞ともに「 学ぶ 」「 知る 」「 覚える 」 で意味が一貫している。

【活用形】   learns – learning – learned ( または  learnt )

過去形と過去分詞形は、 ” learned ” と ” learnt ” のいずれも使える。

◇  ” learned

【発音】   lə́ːrnid | lə́ːrnd
【音節】   lear-ned  (2音節)  learned  (1音節)

◇  ” learnt

【発音】   lə́ːrnt
【音節】   learnt  (1音節)

<  ” learn ”  の過去形・過去分詞形 >

一般的に、以下のように区分されている。

  • アメリカ英語  ” learned
  • イギリス英語  ” learnt

どちらも使われているが、 現在は “ learned ” が優勢。


《米》では learned が普通。
《英》では特に過去分詞で learnt が用いられる


ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版 )
…  “ learn ”  の語釈より
<大修館書店HP>


◆  さらに、オックスフォード系のオンライン辞書によれば、


Both are acceptable,  but  learned  is often used in

both British English and American English,
while  learnt  is much more common in British English
than in American English.


” Learnt ” Or ” Learned ”  ?
https://www.lexico.com/grammar/learnt-vs-learned  ( リンク切れ )

※  2022年6月13日 アクセス


文書名に起用されるのは、 ほとんど  ” learned “。

こんな印象が強い。

まれには ” lesson learnt ” も見かける。



◆  ” lessons learned ”  の  ” learned ” は、
自動詞「 学ぶ 」の過去分詞形。

したがって、既述の通り、直訳は学んだ教訓

action required “( 要行動、 対応必須 ) に似たパターン。

” lessons learned ”  の場合、 2語まとめて
「 学んだ教訓 」 として名詞的に扱われている。

事故から学ぶ 「 教訓 」 は、 複数 あるのが一般的


よって、 複数形  lessons ”  の方が一段と目立つ様子だが、
単数形  ” lesson learned ”  も普通に使われている。

「 学んだ教訓 」 として単複両方使われているということ。

  • “Here are the lessons learned from
    the incident.”
    (これらが今回の出来事から学んだ教訓です。)
  • “The lessons learned from in this incident
    should not be forgotten.”
    (この出来事から学んだ教訓を忘れてはならない。)
  • “Let’s apply the lessons learned from the incident.”
    (この出来事から学んだ教訓を活用しましょう。)
  • “We revised the policy based on the lessons
    learned.”
    (学んだ教訓に基いて、方針を改訂しました。)
  • “I want to share the lessons learned with
    everyone.”
    (学んだ教訓を全員と共有したい。)
  • “Lessons learned from COVID-19’s first wave”
    (新型コロナウイルスの第1波から学んだ教訓)
    ※  ニュース見出し

 

◇  ” learned

【発音】   lə́ːrnid | lə́ːrnd
【音節】   lear-ned  (2音節)  learned  (1音節)

◇  ” learnt

【発音】   lə́ːrnt
【音節】   learnt  (1音節)

 

 

【関連表現】

 

 

 

 

 

 

 

 

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