Please do so.
2022/06/17
(1) そうしてください (2) そうしてよ
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May I use this whiteboard ?
(このホワイトボードを使ってよいでしょうか。)Please do so.
(そうしてください。)
” Sure.” か ” Yes.” と副詞1語の応答が目立つ印象。
時に、別の対応をされることがある。
その中で、比較的よく聞くのが ” Please do so.”。
「 そうしてください。」が定訳に近い。
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- 副詞・間投詞 ” please ” ( どうそ )
- 他動詞 ” do ” ( する )
- 副詞 ” so “( そのように )
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このように構造は容易。
単語も文法も基礎レベル。
◆ シンプルな応答表現には、
別のニュアンスも兼ね持つ場合がある。
一見簡単だが、 実は微妙な表現。
” Please do so. ” も、その一例。
何ら問題がなさそうな「 そうしてください 」。
ところが、 使用場面によっては、 相手を刺激するから
怖い。
3語の使用単語のうち、火種になるのはどれか。
答えは、3語すべて。
全体的に誤解を招きがち。
◆ まず、間投詞 ” please “。
副詞とも解釈できる(後述)。
「 間投詞 」( interjection )とは、
単独で文となりうる呼掛け言葉。
「 感嘆詞 」( exclamation )とも言う。
「 ! ( 感嘆符 )」 は、” an exclamation mark “ または
” an exclamation point ”。
【例】
” Oh ! “、” Alas ! “、” Oops ! “、” Whoa ! “、” Gross ! “、“ Check!”、
” Welcome back ! “、” Well done ! “、” Barf ! “、” Snap ! ”
◆ これまでにも、” please ” のリスクについては、
弊サイトで何度も取り上げてきている。
日本の学校教育でほとんど教えないこと。
目上だからと “ please ” をつけると、
かえってよくないことが多々あるのだ。
以下、 ” Take good care of – ” より再掲。
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◇ 目上の相手の自重自愛を祈る場合、
この2つの言い回しなら、すっきり恬淡な
「 ご自愛ください 」。
- ” Take care. “
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△ Please take care.
– - ” Take care of yourself. “
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△ Please take care of yourself.
上記の場合、” please ” を入れない方が無難。
【 ご注意 】
目上だからと “please” をつけると、
かえってよくない場合も多々ある。
なぜなら、
副詞・間投詞 “please”(どうか)には「命令形」が続く
のが原則のため、状況と相手によっては、失礼が生じる。
“please” の弱点 :
■ 時に押しがましく、または子ども扱い
■ 慇懃無礼で嫌味な印象を伴うリスク
■ 命令調に聞こえがちで、目上を怒らせる
↑ 日本の学校教育で教わる機会の乏しい
“please” の弱点は、ぜひ知っておきたい
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◇ ” Please V ( verb = 動詞 )” のパターンを、
「 半命令形 」
と称することもある。
意図せずして、命令調になってしまい、不遜に響く。
“ Could you update me on – ? ” にて、事細かに取り上げた。
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【留意点】
命令形・命令文とは、「 文の形式 」 の文法用語。
「 命令 」 の 「 機能 」 を表すわけではない。
「 命令 」 するために使うとは限らないものの、 実際に
「 命令 」 で多用されるため、 悪印象・誤解を与えがち。
「 命令形 」
Update me on your schedule.
「 半命令形 」
Please update me on your schedule.
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【参照】
・ 上司には “ please ” よりも “ could you ” が無難
・ “ need ” や “ want ” は 「 差し迫った要求 」 → 対人用途では高リスク
◆ <言葉の裏表> については、まだ実社会に出ていない
中学・高校生に教えるのは、 まあ難しかったりする。
受験との兼ね合いもあり、 額面通りの意味を、
基本に忠実に教えるに留める方が現実的だろう。
すなわち、依頼や要求に添えて丁寧にする ” please “。
◆ ” please ” には、他動詞・自動詞・間投詞がある。
依頼や呼掛けの「 どうぞ 」を間投詞でなく、
副詞または自動詞として扱う辞書も少なくない。
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【例】
・ 副詞 → 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』
・ 自動詞 → 『 リーダーズ英和辞典 第3版 』
語源は、ラテン語「喜ばす」( placēre )。
- 他動詞 「 喜ばせる 」「 喜ぶ 」
- 自動詞 「 喜ばせる 」「 好む 」
- 間投詞 「 どうぞ 」「 どうか 」「 ぜひ 」
表題 ” Please do so. ” では、 間投詞。
質問に対し「 そうしてください 」と応じる
時に使うことは前述の通り。
◆ この回答がまずい場面は、相手が目上の時。
目上に “please” がよくない主な理由は、上の赤枠に記した。
” Please do so. ” では、「 子ども扱い 」「 慇懃無礼 」でなく、
「 命令調 」に聞こえる危険がある。
” do so “( そのようにする )( そのようにやる )自体
に失礼はないのだが、 応対としては微妙 なのである。
- そうしてよ
- そうやってよ
という感じ。
相当ざっくばらんな物言いである。
” Go ahead. ” や ” OK. ” と似た言い振りであり、
分かりやすい利点はあるに違いないが、
質問相手への答え方としては、 やや無骨。
目上なら、無作法 と受け取られても不思議でない。
これに、 ” please ” をつけると、
- そうしてください
- そうやってください
- どうぞそうして
- どうぞそうやって
今度は「 命令調 」になってしまう可能性。
” please do( = V ) ” で、先述の「 半命令形 」。
「 そうしろ 」と命じられている気にもなりかねない。
あたかも、 居丈高に厳命された心境で、
目上なら、 気分を害してもおかしくない。
繰り返すが、 日本語「 ください 」の弱みに似る。
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◆ 言葉遣いは難しい。
ー
理由を伺うつもりで 「 どうして ? 」と尋ねたら、
いきなり目上の相手が気色ばんだ。
ー
なぜなの、 と日本語学習者から先日相談された。
” Why ? ” を日本語に置き換えたのだろうが、
確かに失礼かも、 と思った。
日本語を母語にする社会人であれば、 この
トラブルの原因を察することはできるはず。
ー
これが、日本語母語話者( 日本語ネイティブ ) の強みである。
それでは、 この日本語学習者に論理的に解説できるか
と言えば、 なかなか難しい。
ー
「 Why = どうして 」と学校で教わったとすれば、
疑問が生じて当然であろう。
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◆ 英語にも、この種の問題が多い。
表題も一種。
ー
学校教育で教えないというより、 諸般の事情を考慮
すれば、 すべてを教えることは非現実的なのである。
私自身、 相手の予期せぬ反応から、 英語の
< 裏ニュアンス > を学ぶことは、 今もままある。
親切な方であれば、 質問すれば教えてくれるが、
実社会は甘くない。
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ぷいと 席を立たれて、 茫然自失したりする。
それなりに傷つくが、 原因調査後 、語彙採集の一環
として、脳みそと 「 単語帳 」 にさっと格納してしまう。
時の流れは不可逆的で、 過去は取り返しがつかないから、
今回得た「 教訓 」を ” lessons learned ” に昇華させる。
一生忘れない表現になること必至。
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長期的には有益だから、感謝千万である。