プロ翻訳者の単語帳

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At no charge

      2020/01/01

無料で 

日常場面で「無料で」と表現するには、どう表すか。

代表格は次の8つ。

  1. for free
  2. for nothing
  3. at no cost
  4. at no expense
  5. for free of charge
  6. without charge
  7. with no charge
  8. at no charge

■ 太字が「キーワード」
free“、”nothing“、”cost“、”expense“、”charge

いずれも基本的で、多用されている。

正式な商取引ではなく、日常用途(”everyday English”)
であれば、区別に神経質になる必要はないだろう。

◆ では、この中より1つだけ、日本人学習者にお勧めするなら、
どれか。

私は “at not charge” を選びたい。
だから表題にした。

8つとも、日常生活で用いる常用表現。

違いを意識し、慎重に使い分ける類の言い回しではない。
普段遣いであれば、違いはないに等しい。

その中で、”at no charge” を抜擢した理由は、
応用しやすく、ほどよく上品であるから。

以下解説してみる。

◆ 手始めに、キーワード5語(黄枠太字)の重要度と頻出度
を “LDOCE6″(ロングマン)で調べた。

英単語として、最重要かつ最頻出な位置づけは、

  • 重要:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>

形容詞 “free“、名詞 “nothing“、名詞 “cost“、名詞 “charge
の4語はこの範疇。

唯一、名詞 “expense” は、

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

◆ <消去法>に基づいて分析した。

8つとも、基本的で多用されるのは間違いなく、
欠点を見つける方が早いと考えたため。

1)最初に、”at no expense” を排除  

【理由】
他と比較すると、”expense” の難易度・専門性は高い。
語源は、後期ラテン語「支払った」(expēnsa)。

可算・不可算名詞 “expense” は、「費用」「出費」「経費」。
ビジネス然としており、純然たるプライベートには堅すぎる傾向。
結果的に、応用範囲に難あり。

加えて、重要度・頻出度が格下なのは、先述の通り。

2)次に、”free” と “nothing” を排除  

【理由】
重要度・頻出度には申し分なく、幼児でも分かる容易な両単語。
だがそれゆえに、どこか軽い印象がつきまとう。

形容詞 “free” の意味の2柱は、「自由な」と「ただの」。
語源は、古英語「親愛なる」(frēo)。

「親愛」→「愛情」→「自由」→「ただ」と派生した。

「自由」で「ただ」なのは素晴らしいが、時として軽佻感を伴う。
この点、日本語にも似た要素がみられる。

日本語の「ただ」は「ろは」ともいう。

ろは
名詞
(「ただ」にあてる「只」の字が片仮名のロとハを続けた形
であるところから)代金を要さないこと。ただ。無料。

(精選版 日本国語打英辞典)

「ただ」は、いつでも気兼ねなく使えるとは言い難い。
非公式には「タダ」と片仮名書きで使われたりする。

例えば「タダ飯」。

という成句が示唆するように、あまりよい感じを与えない。

相手に対する非難を含む語勢が生じることがある。
また、状況によっては、下品に聞こえるリスクがある。
だから、”free” は最適ではないと判断する。

名詞 “nothing” も似たようなもの。

こちらも古英語が語源で、「何もない」(nāthing)。
「無料」なので「何もない」。単純だが、つかみどころに欠ける。
この漠とした感じが、お金の話題には適さないこともある。

要するに、”free” と “nothing” は、使用場面を選ぶ。
厄介なので外す。

3)次いで、”at no cost” をカット  

【理由】
重要度・頻出度は、”expense” より格上である。

2名詞とも、可算・不可算を兼ね、ビジネスライクな側面は共通。
「費用」「経費」「値段」を指し、語源に忠実。
すなわち、ラテン語「費用がかかる」(constāre)。

日本社会にも完全定着した「コスト」。
無料なのに「コスト」云々と言われたら不快だろう。

これは英語でも変わらない。

 

4)残るは “charge”  

重要度・頻出度は最高ランク。
“free” や “nothing” と違い、幼児には通じにくい。
幼児相手に「無料」を講釈するのは、本稿の想定外なので、
この点に問題はないと考える。

charge” には、他動詞・自動詞・名詞がある。
語源は、ラテン語「荷馬車に荷を積む」(carricāre)。
ここでは名詞。

expense“、”cost” と同じく可算・不可算を兼ねる。
「費用」「経費」「出費」を指し、意味が重なるばかりか、
ビジネスライクな点も共通。

2語と異なるのは、”charge” が相当多義なこと。

“expense” と “cost” とて名詞以外に存在するが、どの品詞も、
「費用」の意味合いを貫く。徹底して「お金」。
それぞれ語源に沿うのである。

一方、”charge” は「お金」にとどまらない。
自他動詞とも「請求する」を基本的意味とするが、
それ以外にも「充電する」「突撃する」「告発する」
「管理する」「責任を負う」も示す。

例えば、電池の「チャージ」やサッカーの「チャージ」
は、日本でも普通に使われている。

電子マネーに至っては、発行元も正式名称として採用
しており、「チャージ」以外に思いつかないほど。

これらは、英語 “charge” でも使う用途。
日本人の毎日に欠かせなくなった語である点を、評価したい。

要は、”charge” は多義なため、お金に直結しない点で露骨
になりにくく、かつ近年の日本人が親しんでいる単語。

この点が、他の名詞と異なる強みと考えた。

 

5)それでは、次の4つを比べたらどうなるか  

  1.  for free of charge
  2.  without charge
  3.  with no charge
  4.  at no charge

1は、4語構成でまだるっこい。
そして “free” を用いているので、できれば避けたい。
理由は既に説明した。

2~4の意味に差はほぼなく、前置詞が違うくらい。
ここでの “without charge”と “with no charge” は同義同然。
とすれば、”at no charge” の使い勝手が雌雄を決する。

“at no charge” に軍配を上げたのは、単独で完結した場合の
イメージ及び応用力である。

対面の会話であれば、ひと言「無料で」と付け足すことも
考えられる。

「無料です」「無償でやります」または、
「無料でできませんか」「無料でお願いできれば」。

こんな風にさらりと触れる際、自然に聞こえるのはどれか。

  • Without charge.
  • With no charge.
  • At no charge.

私の感覚では “at”。 発音もずっと楽。
※ “th” の発音の詳細は、”smooth out

使い分けは、”with” と “at” の文法に従うのが原則。

“at” の方がよく使われる前置詞であることは、中級学習者
であれば、経験上ご理解されているはず。

 

 

  • “I will fix this at no charge.”
    (これを無償で修理いたします。)
  • “Yes. At no charge.”
    (ええ。無料で。)
  • “We will send you refills at no charge.”
    (リフィルを無料でお送りいたします。)
  • “You can join this seminar at no charge.”
    (このセミナーには無料でご参加いただけます。)
  • “This service is available to our members at no charge.”
    (会員の皆様はこのサービスを無料でご利用いただけます。)
  • “They offered to do this at no charge.”
    (彼らは無料でやると言ってくれた。)
  • “They allowed us to enter the park at no charge.”
    (遊園地に無料で入場させてくれた。)

◆黄枠8つすべて、便利なシンプル表現に違いない。

「無料」を伝える上では、全部役立つ。

本稿は、日本人学習者用に、
「たった一つを選ぶとすれば」との前提で、
比較衡量した一考察にすぎない。

異論が存在することは十分承知している。
もとより、成否を見定めることを目的としていない。

 

 

 

 

 

 

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