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Handful of

      2018/08/25

少量の~、少数の~、一握りの~

筆舌問わず使われる数量表現。
後述のように、不定冠詞つきの “a handful of” が通例。

一見簡単で、未習でも推測でどうにかなるように思える。
中級学習者の実力ならいけるはず。ある段階までは。

楽勝と思いきや、はたと困惑するパターンがこれ。

「”handful” が手のひら(掌)一杯なのは分かる。
これは多いのか少ないのか?」

<手>の大きさに着目すれば「少量」。
<一杯>満たすから「大量」。
どちらもありうる気がする。

数量表現なので、あいまいのままでは使えない。
答えは「少量」。
語源からして視覚に訴えるため、図示してみる。

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定訳「一握り」と同じ意味合いなので、一度覚えれば忘れにくい。

ひとにぎり【一握り】
片手で一度握ること。また、その程度の量や太さ。
転じて、わずかの量
(大辞林 第三版) ※ 下線は引用者

身近な「手」由来の成り立ちも一緒。
日英ともに、両手ではなく、片手を指す。
可算名詞 “hand”(手)+ 接尾辞 “ful”(一杯の)

“ful” は、形容詞 “full”(いっぱいに満ちた)から
派生した接尾辞で、“full” の基本的意味を引き継ぐ

主な意味は、
(1)~に満ちた(thoughtful、colorful)※ 形容詞
(2)~の性質・傾向をもつ(forgetful、careful)※ 形容詞
(3)~一杯分(spoonful、mouthful)※ 名詞

“handful” は(3)に該当し、「手に一杯分」が直訳。
ただ、国語辞典に掲載される「手一杯」は、名詞 “handful”
の基本的意味には直結していないので要注意。

次の語釈 2 のニュアンスが、少々被る程度である。

ていっぱい【手一杯】
〘名〙(形動)
1. 力のかぎりすること。思うように十分にすること。
また、そのさま。
2. 余裕のないこと。ぎりぎりであること。また、そのさま。
(精選版 日本国語大辞典)

1. 力の限り。なしうる限り。
2. その事をするのがやっとで、ほかに力が及ばないこと。
(広辞苑 第七版)

「手に一杯」と意味が異なるため、「手一杯」を
“handful” の語釈に含めない方がよいだろう。

2の「手一杯」であれば、複数形 “hands” を用いた
have one’s hands full の方がはるかに出てくる。
【例】”He has his hands full.”(彼は手一杯だ。)

この内容を、名詞 “handful” で表現する使い方はまれ。
“figurative expression”(比喩的表現)としてはあり
うるが、“handful” の基本用法からは外れる。

影響力の強い『研究社 新英和大辞典 第6版』及び
ランダムハウス英和大辞典 第2版』は「手一杯」
を並べるが、誤解を招くので適切とは考えにくい。

名詞 “handful” の意味は3つ。

  1. 手に一杯、一つかみ
  2. 少量、少数
  3. 手に負えない厄介者  ※ 口語中心

今回調べた英英辞典9点すべてが、揃いに揃って
この3つを明記していた。

無個性で酷似するシンプル語釈ばかりであったため、
このうち最も明解と思われるCALDをご紹介したい。
先の 1~3 にちょうど対応している。

handful” =
[C] an amount of something that can can be
held in one hand.
[S] a small number of people or things.
[S] a person, often a child, who is difficult to control.
(CALD4、ケンブリッジ) ※ 下線は引用者

※ [C] = countable = 可算名詞 
※ [S] = singular = 単数名詞  
 → 単数形で使われるのが一般的な名詞 

残りの8点もこんな具合で、ほとんど変わらない。
したがって、3つだけ押さえれば十分である。

1.手に一杯、一つかみ 2. 少量、少数 3. 厄介者

1 → 文字通り / 語源通り
2 → 重要 / 本稿の中心
3 → 口語 / マイナー用法 / 推測困難

それぞれ見ていこう。

  1.  手に一杯、一つかみ 

語源は確認済みなので、1は改めて論じるまでもない。
「片手で持てる量」だから「一つかみ」とほぼ等しい。
本来は “the open hand(開いた手)で「手のひら一杯」
なので、容量が違ってくる。だが、趣旨は同じ。

この用法では、基本的に可算名詞(countable)となる。
そのため、不定冠詞 “a” つきが原則。
続く名詞が複数形であっても、”a” つきなので注意。

  • a handful of rice
    (一つかみのお米)
  • a handful of sugar
    (一つかみの砂糖)
  • a handful of almonds
    (一つかみのアーモンド)
  • a handful of nails
    (一つかみの釘)
  • a handful of eggs
    (一つかみの卵)

時に、不可算名詞(uncountable)扱いすることもある。
辞書によっては、可算と不可算を併記する。
不可算扱いの場合、”a” なしだが、原則は可算の “a” つき

  2.  少量、少数   

これが本題。
“handful” といえば、この意味が主となる。
1 は額面通りの意味、3 はマイナー用法である
ため、フレーズとしては 2 が肝心要。
それゆえ、表題に掲げた。

“a handful of” のパターンが基本。
“of” は、<分量>を表す前置詞「~の」。
ゆえに “a handful of” は「少量の~」「少数の~」。

この用法では「単数名詞」扱いが原則。
すなわち、単数形で使われるのが一般的な名詞である。
可算名詞の単数名詞と不可算名詞の単数名詞
があるが、ここでは可算名詞の単数名詞

そのため、1同様に不定冠詞 “a” つきが原則。
続く名詞が複数であっても、単数形として
扱うので、やはり “a” つき。

「少ない」ことを強調するために、副詞 “only” または
“just”(ただ~だけ)を加えて、否定的な文脈で多用される。

  • only a handful of rich people
    (ほんの少数の金持ち)
  • just a handful of individuals
    (ごく一握りの個人たち)
  • only a handful of companies
    (ごく少数の会社)
  • a handful of employees
    (少数の従業員)
  • a handful of books
    (わずかな本)

形の似た類義語としては、”a small number of” と
a small amount of” が代表格。
“small” の代わりに、”tiny”、”few”、”trace” などの形容詞も
使える。

反意語の筆頭に数えられるのは “a lot“(多量、多数)。

  3.  手に負えない厄介者

この語義は、学ばない限り、推測しがたいに違いない。
「手に一杯」→「手に余る」流れで、「厄介者」。

主に口語で使う。”informal” 表示のある辞書も多い。
上掲の9冊中、6冊が “informal” と明示している。

「非正式」「くだけた表現」が “informal”。

上記 CALD4は “person” と定義するが、動物にも使える。
可算名詞の単数名詞で、内容が複数でも “a” がつくのは、
上記と同じ。

  • “My sons are a handful.”
    (息子たちには手を焼く。)
  • “Mary is a real handful.”
    (メリーは本当に厄介な人。)
  • “Those boys can be a handful.”
    (あの少年たちは厄介者になりうる。)
  • “Her cat is a handful.”
    (彼女の飼い猫は厄介だ。)
  • “This dog is quite a handful.”
    (この犬は実に手に余る。)

 

 

 

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