プロ翻訳者の単語帳

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In this day and age

      2019/12/16

このご時世に、このご時世では 

<5語ワンセット>の決まり文句。

視点は「昔」ではなく「今」。
平たく言えば、「このごろは」「現在は」の意。

「過去」との比較で起用されることが多い。

そのため、使用者はその時代を経てきた中高年中心の感がある。

さらに、昔気質の古参に反発する、若者の物言いに出てくる。

昔は昔、今は今ですよ!
このご時世に
何でそんなことやってんですか?

英訳例は、

That was then, this is now !
Why are you doing it
in this day and age ?

悪態の言い回しとして、日英どちらも普通にありうる。

自分の知らぬ「過去」を一挙に唾棄する、
弱輩の小生意気な仕打ちが目に浮かぶ。

味噌も糞も一緒くたにする若い時分は、誰しも通る道。
ほんの一過性にすぎないから、放っておけばよい。


◆ 表題 “in this day and age” が表すのは「今」。

「今」以上の深意はないに等しい。
意味深長から程遠く、さらりと学んで会得できるレベル。

にもかかわらず、本稿で取り上げる理由は、
使い方が日本語の「このご時世」とそっくりで、
単語構成も重なるため。

なかなか面白い対比である。
from time to time“(時々)と似たパターン。

単調な内容にかかわらず、初めて見聞きすると、
おそらく意味不明。

ほぼ一義であっても、推測が効きにくく、
一度はしっかり学習する必要がある。

どこか印象的で忘れにくい表現。
言わずに覚えてしまおう。

◆ <5語ワンセット>としては、頻出でも重要でもない。

その反面、使用単語5つすべてが最重要かつ最頻出。

LDOCE6(ロングマン)の指標によれば、5語の位置づけは、
英単語全体から見ても、全3項目で最高ランク。

  • 重要:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>

中級学習者であれば、既習の単語ばかり。
文法的にも、難しくはない。

これより、各語を逐一検討していく。


◆ まず、前置詞 “in” は基本そのもの。

「時」「期間」の “in” である。 以下同様。

  • in 2019(2019年に)
  • in her youth(彼女の若い頃に)
  • in his forties(彼の40歳代に)
  • in two weeks(2週間で)
  • in the last decade(この10年間で)

和訳の「に」「で」は、時間を示す「格助詞」。

日英とも、基礎文法に属する。
このような基礎分野は、一部の専門家による精密な研究対象に
なっており、実は奥が深かったりする。

だが、今回分の理解に要する基礎知識については、皆様は
既に押さえておられるだろう。

◆ 次いで、”this“。

語源は古英語の指示代名詞。
“thes”(男性形)と “thēos”(女性形)に対する
中性形こそ “this”。

表題の用法を「形容詞代名詞(adjective pronoun)」
として説明する辞書が主流だが、後掲の図ではあえて
指示形容詞(demonstrative adjective)」を採用した。

研究社 新英和大辞典 第6版』などの説である。

この区別は重大な問題でなく、土台さえ把握しておけばよい。
つまり、次の例の違いが分かれば問題ない。

  1. 独立用法 の代名詞 “this”
    ・ What is this ?
    ・ I hate this.
    ・ This is a pen.
    ・ This is terrible.
    ・ This is my first time.

  2. 形容詞用法 の代名詞 “this”
    ・ I know this man.
    ・ This book is mine.
    ・ He overslept this morning
    ・ She is out this week.
    ・ I like this one.

表題の “this” は、2「形容詞代名詞(adjective pronoun)」。
本稿では「指示形容詞(demonstrative adjective)」とした。

照応関係から、1と2の両方が「言語外照応」「言語内照応」、
さらに「前方照応」「後方照応」と分けられる。

専門家であれば、事細かに理解する必要もあるが、

一般的には、上記例文より大枠をイメージできればOK。

少なくとも、本稿の “this” は基本用例に他ならない。

特に深入りしなくてもよいと考える。


◆ “day” は、ここでは可算名詞「現代」。

語源は、古英語「太陽が暑い時」(dæg)。
ドイツ語 “Tag”(日)と同源。

原則は可算名詞だが、「日中」「昼間」「日光」
を指す際は、不可算名詞にもなる。

最も基本的意味は、暦日の「1日」「日」。
または、「バースデー」「バレンタインデー」のような特定日。

いずれも「1日24時間」の区切りがあるため、可算名詞である。

“in this day and age” の場合、「1日24時間」のサイクルではない、
不確定な期間を示す。

具体的には、「時代」「時期」また「現代」「当世」のこと。
無期限とはいえ、概念上の区切り(始めと終わり)は存在
するので、同じく可算名詞となる。

「時代」「時期」は “days“、「現代」「当世」は “the day”
と多くの英和辞書が記す。  ※ 例外も少なくない

表題では「現代」を指すので、”the day” となるはず。
だが、定冠詞 “the” の代わりに “this” が置かれている。

“in this day and age” では、とりわけ「この 今の時代」と
強調するのが趣旨。
したがって、指示する対象がもっと明確な “this” が穏当。

後述の辞書の項目立てにあるように、決まり表現としても、
“this” が通例。

◆ “age” も、ここでは可算名詞。

語源は、中期フランス語「時代」(aage)。
これまた、不確定な期間を示す。

基本的意味は「年齢」。
この意味合いは、可算・不可算兼用だが、基本は可算。

名詞 “age” は、”day” と異なり、 不可算も幅を利かせる。
「成年」「高齢」「寿命」は、いずれも不可算名詞が原則。

表題の “age” は、可算名詞「時代」で、語源に忠実。
“day” の解釈と同様、「時代」には区切りがあるため、
可算名詞となる。

◆ “day”(現在)と “age”(時代)を接続詞 “and
で結べば、「現代と時代」。

既述の “in” と “this” と合わせると、こんな風になる。

“this” を形容詞用法の代名詞とする説も有力

直訳は「この現代と時代に」または「この現代と時代で」。

先に触れたように、”in this day and age” は、
「過去」との比較で起用されるがち。

「この現代と時代に」とは「今」を指す。

この点は、上記の “day” と “age” の分析からも看取できる。
両者の方向性は重なり、ともに「過去」でなく「今」。

何となく漠とした意味合いだが、このあいまいさもまた、
日本語の「時世」に通じる。

  じせい【時世】

当今の世の中。時代
(広辞苑 第七版)

時とともに移り変わる世の中。時代。ときよ。
(明鏡国語辞典 第二版)

その時その時の世の中。また、そのありさま。時代
(大辞林 第三版)

このうち、広辞苑は “day and age” とだいぶ似通う。

当今」とは「今」のことなので、day“。
それに「時代」= “age” を添えた語釈。

“in” と “this” を加えると、「このご時世に」同然になる
といっても過言ではない。

◆  続いて、4大学習英英辞典(EFL辞典)を確認する。

ひいきにしている “LDOCE6” では項目立てされておらず、
のっけにつまずいた。

仕切りなおして、3辞書のみご案内。

“in this day and age”

now, in the modern world.
(OALD9、オックスフォード)

at the present time.
(CALD4、ケンブリッジ)

In this day and age means in modern times.
(COBUILD9、コウビルド)

そろって端的な語釈である。

  • 形容詞 “modern“(現代の)
  • 形容詞 “present“(現在の)

どちらも「今」。

<「今」以上の深意はないに等しい。>
最初に述べたこの指摘の的確さがご理解いただけるであろう。

◆  使用場面もほぼ共通する。

利いた風な口をきいた若人の例は、そのひとつ。

繰り返すと、ポイントは、
「過去」との比較で起用されることが多い。

以下は、今月2019年7月発表のウェブ記事より採集した文例。

どれも過去の時代を意識していることを、多少とも感じ取れるはず。

  • “Getting Married In This Day And Age
    Might Just Be The Trickiest Thing Ever”   ※  見出し
    (結婚こそ、このご時世で油断できぬ最たるものかもしれない)
  • “In this day and age, traveling has never been easier.”
    (このご時世、旅行はかつてないほど簡単である。)
  • “Why should you compromise your lifestyle in any way
    when you’re pregnant in this day and age ? ”
    (妊娠したからって、自分のライフスタイルを少しでも
    妥協する必要がある? このご時世に?)
  • “How is this acceptable in this day and age ? ”
    (どうしてこんなことがこのご時世に許されるの?)
  • “In this day and age when a lot of parents are working
    to keep the bills paid, daycare has become a necessity.”
    (大勢の親たちが家計を支えるために働いているこのご時世では、
    託児所はに欠かせないものとなりました。)
  • “In this day and age, we’re drowning in information.“
    (このご時世では、私たちは情報に溺れかけています。)
  • “In this day and age, having excellent SEO is
    an essential requirement for any website.”
    (このご時世では、優れたSEOを備えることは、
    どんなウェブサイトにとっても、必要不可欠な要件である。)

    SEO = search engine optimization
    ーー——–= 検索エンジン最適化

 

世知辛い世の中を反映する記事が目立つ。

「時世」を用いた和訳でも、言葉の調子は大して変わらない感じ。
とすれば、やはり似ついているのである。

 

 

 

 

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