Feasible
2020/12/10
実行可能な
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ビジネス場面では、筆舌問わず普通に出てくる形容詞。
【発音】 fíːzəbl
【音節】 fea-si-ble (3音節)
しかし、英単語全体から見ると、頻出ではない。
LDOCE6(ロングマン)の表記によれば、
- 重要度:6001~9000語以内
- 書き言葉の頻出度:3000語圏外
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
このぱっとしない位置づけから、やはり
ビジネス寄りの単語と考えられる。
つまり、仕事における出番が中心となる。
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◆ それもそのはず、”feasible” の意味は「実行可能な」。
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事業目標を計画する上で、避けて通れない算用が、
自社の調達可能なリソース内で実行できるか否か。
民間企業であれば、事業展開・予算計画・生産計画・
販売計画・人員計画・収支計画などを期間ごとに
検討し、最終的な収益を見積もる必要がある。
成算が全く立たなければ「実行可能ではない」と判断。
すなわち、”not feasible” という結論。
逆に、勝算が十分あれば、”feasible“ で「実行可能」。
大組織に限らず、どんな規模のビジネスでも、通常は
こうしたプロセスを経て、実行か否かを決めている。
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できる?
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◆ “Is it feasible ? “(実行可能か)の考察の次に来るのは、
To do, or not to do, that is the question.
(やるべきか、やるべきでないか、それが問題だ。)
見込みがあると評価できれば、行動を起こす。
上記は、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ、
『ハムレット』(1600年頃)の一節を勝手にもじったもの。
『ハムレット』の数ある引用句のうち、最も有名なのがこちら。
To be, or not to be, that is the question.
(すべきか、すべきでないか、それが問題だ。)
(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。)
“Hamlet” ACT III Scene I
『ハムレット』第三幕 第一場
悩める王子ハムレットの場合、父親の復讐を果たそうか、
それともやめておこうか、と心が堂々巡りする。
解釈が分かれる一文で、明治初期から多彩な和訳
が展開されている。
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◆ 個人レベルでも、いざ人生の岐路に立てば、目当ての
進路が “feasible” かどうか、うんうん頭を絞ることになる。
ある程度の実行可能性を推算できなければ、単なる
向こう見ずな猪武者に終わる。
本当に実行できるだろうか …–
リスク回避のために熟慮する。
自分の人生そのものだから、仕事よりも慎重になったりする。
こうしてプライベートでも、同じ趣旨で使われる “feasible”。
頻出度が圏外なのが、少々意外である。
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◆ “feasible” は形容詞のみ。
語源は、中期フランス語「できる」(faisible)。
【発音】 fíːzəbl
【音節】 fea-si-ble (3音節)
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語は、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
意味は緑ハイライトがほぼすべて。– 比較的単純である。
(1)
基本的意味は「実行可能な」 「実現可能な」。
筆頭の同義語は、”possible” または “practicable”(後述)。
(2)
派生した意味が「もっともらしい」 「ありそうな」。
かすかに嫌味が込められている使い方が多い。
主な同義語は、同じく形容詞の “probable“。
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(3)
さらに “feasible for – ” のパターンで、
「~に適した」 「~にふさわしい」。
“for” は、対象の前置詞「~に」。
主な同義語は、”suitable for – “。–
■ 以下、”To the extent possible” より再掲。
法律用語の “probable” と “possible” を比べたもの。
目安として、”possible” は、公算が50%以下。
50%超であれば、”probable” または “likely“。
probable = likely > possible
50%超 50%以下
この根拠は、アメリカの『ブラックス法律辞典』。
判例などに最も引用される辞典である。
1891年刊で、100年以上の歴史を誇る。
最新版は、第10版(2014年刊)。
◇ 詳しい定義は “To the extent possible” へ
普段使いの “feasible” は、実行可能性を表すに
すぎない。
現に、上掲『ブラックス法律辞典』の最新版に、
“feasible” は項目立てされていない(後述)。
※ 2019年7月14日 初稿時点 → 第10版(2014年刊)
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“probable“、”likely“、”possible” と重なる
意味合いで使われているものの、厳格な公算の定義
からは外れる模様である。–
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◆ 英語学習者向けには、次のように区別されている。
この解説を読んでも、はっきりしないというのが、
大半の英語学習者の本音であろう。
英文による解説だからと考えるのは、早計に過ぎる。
次の辞書をご覧いただきたい。

『ランダムハウス英和大辞典 第2版』
(アプリ版) “possible” より転載
いかがだろう。
母語で読んでも、ばっちり把握できると言いがたいのでは。
要は、日常用法としては、大差ない語と考えられる。
それでも、英語学習者としては、きっちり学びたいと願う。
これぞ、見上げた心意気。
だが、上記の言葉に関しては、一般的な英語ネイティブの
普段の使い方を観察してみても、ことさら区別して用いている
とは思えないのが実態である。
一般人の言葉遣いが、案外適当なのは言うまでもない。
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高度な教育を受けた専門家と異なり、厳密な差異を
意識することなく、気軽に使っていたりする。
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こと “feasible” 周辺については、そんな気がする。
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だから私たち学習者も、とりあえず、ざっくり理解する。
その後に、微に入り細を穿つ姿勢でよいと私は考える。
例えば、
「ざっくり理解する」とは、3つの意味を押さえること。
「微に入り細を穿つ」とは、複数の類語辞典を精査すること。
- 実行可能な
- もっともらしい
- ~に適した (feasible for)
そもそも、”feasible” の重要度と頻出度はそう高くない。
これは、冒頭で確認した通りである。
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◆ ここまで来ると、3大学習英英辞典(EFL辞典)の説明が気になる。
“feasible”
a plan, idea, or method that is feasible
is possible and likely to work.
SYN: possible
(LDOCE6、ロングマン)
that is possible and likely to be achieved.
SYNONYM: practicable
OPPOSITE: unfeasible
(OALD9、オックスフォード)
able to be made, done, or achieved.
possible or reasonable.
(CALD4、ケンブリッジ)
※ SYN = Synonym = 同義語
※ OPPOSITE = 反意語
【発音】 fíːzəbl
【音節】 fea-si-ble (3音節)
これまで見かけた単語が連なるEFL辞典。
個性のない語釈だらけである。
とにかく、基本的意味が「実行可能な」で争いがない
ことは間違いない。
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◆ どの英英を調べても、似通った語釈と例文が出てくる感じ。
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まるで「コピペ」の世界。–
実はままある現象。
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種本はどれかと、勘繰りたくもなる。
- a feasible plan
(実行可能な計画)
– - a feasible approach
(実行可能な手法)
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- a feasible suggestion
(実行可能な提案)
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- a feasible idea
(実行可能なアイデア)
この辺りが定番。 確かにどれも分かりやすい。
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◆ さらに、コロケーション(連語)辞典をご紹介。
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“Oxford Collocations Dictionary for
Students of English“(アプリ版)より転載
代表格の『オックスフォード コロケーション辞典』である。
英作文の際に重宝するのが、連語(コロケーション)辞典。
【参照】
・ “aware”
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
“It is feasible.” では、「be動詞」の “is” に続いている。
形容詞なので、「be動詞」につながるのが基本。
※ 「be動詞」 = be、am、was、been、will be、is、were、are
それ以外に、動詞(verbs)の “appear”、”look”、”seem”、
“become”、consider”、”prove” と組めると書いてある。
いずれも、自動詞用法。
なぜ、基本として「be動詞」に続くのかは、”aware”、
”vocal about”、”conclusive” で詳述した。
英文法の基本であるので、ぴんとくることがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。
- “The project appears feasible.”
(そのプロジェクトは実行可能に見受けられる。)
– - “Any further drop in its prices does not look feasible.”
(その価格が、これ以上下がることはあり得ないように思える。)
– - “The July 14th deadline seems feasible.”
(7月14日の締め切りは実行可能に見える。)
– - “It may become feasible to offer incentives.”
(報奨金の提供も実現可能となるはずだ。)
– - “How feasible is it for him to get a full-time job ? ”
(彼が常勤の仕事に就ける可能性はどのくらいか。)
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◆ 動詞に比べると、副詞(adverbs)の方が目立つ印象。
副詞の修飾語としての役割及び多種多様性を考慮すると、
自然の流れであろう。
前置詞(prepositions)の “for” と “with” が、なぜか見当たらない。
『新編 英和活用大辞典』は、前置詞も明記する。
『新編 英和活用大辞典』(アプリ版)より転載
不足分は、紙の辞書であれば、手書きで加えておくとよい。
他書からコピーしたものを、貼り付けるのもグッド。
自由で楽しい手作り感が、勉学に対する興をさかす。
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電子版の場合、コメントが挿入できるアプリ以外は、なかなか厄介。
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こんな時、紙のよさを見直したりする。
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【参照】
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
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◆ 締めくくりに、派生語をご案内。
- feasibly
副詞「うまくできるように」「うまく」
【発音】 fíːzəbli
【音節】 fea-si-bly (3音節)
– - feasibility
名詞「実現可能性」「実行可能性」
【発音】 fìːzəbíləti
【音節】 fea-si-bil-i-ty (5音節)
既に確認してきたように、表題の形容詞 “feasible” は、最新版の
『ブラックス法律辞典』(第10版)に項目立てされていなかった。
【追記】 2019年6月に「第11版」が発行された。
(Amazon Japan / Amazon US)
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ところが、名詞 “feasibility” はある。 –全文がこの有様。
天下一品の法律辞典なのに、
これまた既視感たっぷりの語釈であった。
【関連表現】
・ “unrealistic”
https://mickeyweb.info/archives/16975
(実現することが難しい、実現困難な)
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【参照】 ※ 外部サイト
・ Is It ‘Feasible’ or Is It ‘Doable‘ ?
https://www.merriam-webster.com/words-at-play