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Feasible

      2024/01/23

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 7 minutes

実行可能な

ビジネス場面では、筆舌問わず普通に出てくる形容詞。

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)

しかし、 英単語全体から見ると、 頻出ではない。

LDOCE6 ( ロングマン ) の表記によれば、

  • 重要 :6001~9000語以内
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

このぱっとしない位置づけから、 やはりビジネス寄りの単語。

つまり、 仕事における出番が中心となると考えられる。


◆  それもそのはず、 ” feasible ” の意味は 「 実行可能な 」。

事業目標を計画する上で、 避けて通れない算用が、
自社の調達可能なリソース内で実行できるか否か。

民間企業であれば、 事業展開・予算計画・生産計画・
販売計画・人員計画・収支計画などを期間ごとに
検討し、 最終的な収益  を見積もる必要がある。

成算が全く立たなければ 「 実行可能ではない 」 と判断。

すなわち、 ” not feasible ”  という結論。

逆に、 勝算が十分あれば、 ” feasible   で 「 実行可能 」。

大組織に限らず、 どんな規模のビジネスでも、 通常は
こうしたプロセスを経て、 実行か否かを決めている。



できる?



◆  ” Is it feasible ? “( 実行可能か )の考察の次に来るのは、


To do, or not to do, that is the question.

( やるべきか、やるべきでないか、それが問題だ。)


見込みがあると評価できれば、行動を起こす

上記は、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ、
ハムレット 』( 1600年頃 )の一節を勝手にもじったもの。

『 ハムレット 』の 数ある引用句 のうち、最も有名なのが、


To be, or not to be, that is the question.

( すべきか、すべきでないか、それが問題だ。)
( 生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。)

” Hamlet ”   ACT III Scene I
『 ハムレット 』 第三幕 第一場


悩める王子ハムレットの場合、父親の復讐を果たそうか、
それともやめておこうか、と心が堂々巡りする。

解釈が分かれる一文で、 明治初期から 多彩な和訳
が展開されている。


◆  個人レベルでも、いざ人生の岐路に立てば、目当ての
進路が ” feasible ” かどうか、うんうん頭を絞ることになる。

ある程度の「 実行可能性 」を推算できなければ、単なる
向こう見ずな猪武者に終わる。

本当に実行できるだろうか  …

リスク回避のために熟慮する。
自分の人生そのものだから、仕事よりも慎重になったりする。

こうしてプライベートでも、同じ趣旨で使われる “ feasible ”。

頻出度が圏外なのが、やや意外である。


◆  ” feasible ” は形容詞のみ。

語源は、中期フランス語「 できる 」( faisible )。

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)

音節」( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位。

日本語は、原則として「 仮名一字が1音節 」。

そのため、音節を意識する機会は乏しい。

→  音節の差異が顕著な日英比較は、” integrity ” 参照

意味は緑、緑ハイライトがほぼすべて。

比較的単純である。

(1)
基本的意味は「 実行可能な 」 「実現可能な 」。

筆頭の同義語は、”possible” または “practicable”(後述)。

(2)
派生した意味が「 もっともらしい 」 「ありそうな 」。

かすかに嫌味が込められている使い方が多い。
主な同義語は、同じく形容詞の  ” probable “。

(3)
さらに ” feasible for – ” のパターンで、
~に適した 」 「 ~ にふさわしい 」。

” for ” は、対象の前置詞「 ~ に 」。
主な同義語は、” suitable for – “。


  以下、” To the extent possible ” より再掲。

法律用語の ” probable ” と ” possible ” を比べたもの。

目安として、” possible ” は、公算が 50% 以下 。

50% であれば、” probable ”  または  ” likely “。

probable = likely  > possible
       50%超                50%以下


この根拠は、米国の『 ブラックス法律辞典 』。

判例などに最も引用される辞典である。

1891年刊で、130年以上の歴史を誇る。

英米法を学ぶ学生で、知らない者は皆無レベルの 存在感

1990年刊の「 第6版 」には、こうある。

  • probable
    Having the appearance of truth.
    ( p. 1201 )
  • likely
    probable.
    ( p. 925 )
  • possible
    free to happen or not; the word denotes improbability,
    without excluding the idea of feasibility.  It is also
    sometimes equivalent to ” practicable ” or ” reasonable “.
    ( p. 1166 )

    “ Black’s Law Dictionary, 6th Edition ”
    (West Publishing Co. 1990).   より抜粋


◆  その後、およそ四半世紀を経た「 第10版 」及び「 第11版 」
に至ると、形容詞 ” possible ” は、 大見出しから消えている。

第10版は、2014年刊。

Amazon Japan  /  Amazon US


” possible ” の代わりに、最も近いと考えられる
名詞  ” possibility ” をご案内。

  • probable
    having more evidence for than against.
    ( p. 1395 )
  • likely
    probable.
    ( p. 1069 )
  • possibility
    the word often ( but not always ) conveys
    a sense
    of uncertainty or improbability.
    ( p. 1353 )

    Black’s Law Dictionary, 10th Edition
    (Thomson Reuters 2014).   より抜粋

第11版は、2019年刊。


Amazon Japan  /  Amazon US

  • probable
    Likely to exist, be true, or happen.
    ( p. 1454 )
  • likely
    Apparently true or real;  probable.
    ( p. 1113 )
  • possibility
    the word often ( but not always ) conveys a sense
    of uncertainty or improbability.
    ( p. 1410 )

    Black’s Law Dictionary, 11th Edition
    (Thomson Reuters 2019).   より抜粋

likely ” は、ここでは副詞でなく、どれも形容詞。


◇  抄出ではない、全文は ” To the extent possible ” に転載中

◆  もっとも、” possible ”  が 「 50% 」 を含むか否かは、
解釈が割れる。

ジーニアス英和大辞典 』は、 ” possible ” の語釈にて、
「 起る公算が 50%より小さい と話し手が考えている場合 」
と記す。



『 ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版
<大修館書店HP>


つまり、” possible ” は、公算が 50% 未満  とする説を採用。


◆  普段使いの ” feasible ” は、実行可能性を表すに
すぎない。

現に、上掲『 ブラックス法律辞典 』の直近2版、
すなわち「 第10版 」と「 第11版 」
に、” feasible ” は
独立した大見出しとして、項目立てされていない(後述)。

probable “、” likely “、” possible ” と重なる
意味合いで使われているものの、厳格な公算の定義
からは外れる模様である。

◆  英語学習者向けには、次のように区別されている。



↑  “ LDOCE5 ” ロングマン現代英英辞典 第5版
(アプリ版) ” possible ” ー  –◇  第6版アプリ 短所


この
解説を読んでも、はっきりしないというのが、
大半の英語学習者の本音であろう。

英文による解説だからと考えるのは、早計に過ぎる。

次の辞書をご覧いただきたい。



『 ランダムハウス英和大辞典  第2版 』
小学館、1993年刊 ( アプリ版 )
…  ” possible ” の語釈より


いかがだろう。

母語で読んでも、ばっちり把握できると言いがたいのでは。

要は、日常用法としては、大差ない語と考えられる。

それでも、英語学習者としては、きっちり学びたいと願う。
これぞ、見上げた心意気。

だが、上記の言葉に関しては、一般的な英語ネイティブの
普段の使い方を観察してみても、ことさら区別して用いている
とは思えない。

一般人の言葉遣いが、案外適当なのは言うまでもない。

高度な教育を受けた専門家と異なり、厳密な差異を
意識することなく、気軽に使っていたりする。

こと ” feasible ” 周辺については、そんな気がする。

だから私たち学習者も、とりあえず、ざっくり理解する。

その後に、微に入り細を穿つ姿勢でよいと私は考える。

例えば、「 ざっくり理解する 」とは、3つの意味を押さえること。

「 微に入り細を穿つ 」とは、複数の類語辞典を 精査する こと。

  1.  実行可能な
  2.  もっともらしい
  3.  ~に適した  ( feasible for )

そもそも、” feasible ” の重要度と頻出度はそう高くない。

これは、冒頭で確認した通りである。


◆  ここまで来ると、3大学習英英辞典( EFL辞典 )の説明が気になる。

” feasible “

a plan, idea, or method that is feasible
is possible and likely to work.
SYN: possible
( LDOCE6、ロングマン )

that is possible and likely to be achieved.
SYNONYM: practicable
OPPOSITE: unfeasible
( OALD9、オックスフォード )

able to be made, done, or achieved.
possible or reasonable.
( CALD4、ケンブリッジ )

※  SYN  =  Synonym  =  同義語
※  OPPOSITE  =  反意語

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)


これまで見かけた単語が連なるEFL辞典。

個性のない語釈だらけである。

とにかく、基本的意味が「 実行可能な 」で争いがない
ことは間違いない。

◆  どの英英を調べても、似通った語釈と例文が出てくる感じ。

まるで「 コピペ 」の世界。
実は、ままある現象。

著名な国語辞典でも、同様の現象がみられる。

【参照】   ” presence

種本はどれかと、勘繰りたくもなる。

  •  a feasible plan
    (実行可能な計画)
  •  a feasible approach
    (実行可能な手法)

  •  a feasible suggestion
    (実行可能な提案)

  •  a feasible idea
    (実行可能なアイデア)

この辺りが定番。 確かにどれも分かりやすい。


◆  さらに、コロケーション( 連語 )辞典をご紹介。


Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“ ( アプリ版 )


代表格の 『 オックスフォード コロケーション辞典 』 である。

英作文の際に重宝するのが、 連語( コロケーション )辞典。

【参照】

・  ” aware
・  LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・  辞書の「自炊」と辞書アプリ

” It is feasible.” では、「 be動詞 」の “ is ” に続いている。

形容詞なので、「 be動詞 」につながるのが基本。

※  「 be動詞 」 =  be、am、was、been、will be、is、were、are

それ以外に、動詞( verbs )の ” appear “、” ook “、” seem “、
” become ”、” consider “、” prove ” と 組める と書いてある。

いずれも、自動詞用法。

なぜ、基本として「 be動詞 」に続くのかは、” aware ”、
と ” vocal about”  で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくることがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。

  • “The project appears feasible.”
    (そのプロジェクトは実行可能に見受けられる。)
  • “Any further drop in its prices does not look feasible.”
    (その価格が、これ以上下がることはあり得ないように思える。)
  • “The July 14th deadline seems feasible.”
    (7月14日の締め切りは実行可能に見える。)
  • “It may become feasible to offer incentives.”
    (報奨金の提供も実現可能となるはずだ。)
  • “How feasible is it for him to get a full-time job ? ”
    (彼が常勤の仕事に就ける可能性はどのくらいか。)
  • “Wearing a mask is not feasible for a dog.”
    (マスク着用は、犬には無理。)


◆  動詞に比べると、副詞(adverbs)の方が目立つ印象。

副詞の修飾語としての役割及び多種多様性を考慮すると、
自然の流れであろう。

前置詞( prepositions )の ” for ” と ” with ” が、なぜか見当たらない。

新編 英和活用大辞典 』は、前置詞も明記する。


新編 英和活用大辞典 』(アプリ版)


◆  不足分は、紙の辞書であれば、手書きで加えておくとよい

他書からコピーしたものを、貼り付けるのもグッド。
自由で楽しい手作り感が、勉学に対する興をさかす。

電子版の場合、コメントが挿入できるアプリ以外は、なかなか厄介。

こんな時、紙のよさを見直したりする。

【参照】   英語辞書は「紙」か「電子版」か

◆  締めくくりに、派生語。

  •  feasibly
    副詞「 うまくできるように 」「 うまく 」
    【発音】   fíːzəbli
    【音節】   fea-si-bly  (3音節)
  •  feasibility
    名詞「 実現可能性 」「 実行可能性 」
    【発音】   fìːzəbíləti
    【音節】   fea-si-bil-i-ty  (5音節)


◆  既に確認したように、表題の形容詞 ” feasible ” は、
直近2版のブラックス法律辞典 』( 第10版、11版 )
項目立てされていなかった。

ところが、名詞 ” feasibility ” はある。

全文はこちら。



Black’s Law Dictionary, 10th Edition
p. 726.    (Thomson Reuters 2014).

 

Black’s Law Dictionary, 11th Edition
p. 753.   (Thomson Reuters 2019).


5年間で、 一字一句、変わっていない。

しかも、 天下一品の法律辞典なのに、
なんだかどこかで見たような語釈。

これまた既視感たっぷりなのであった。

 

 

【関連表現】

・  ” unrealistic ”
https://mickeyweb.info/archives/16975
(実現することが難しい、実現困難な)

 


【参照】    ※  外部サイト

・  Is It  ‘ Feasible ‘  or Is It  ‘ Doable ‘ ?
https://www.merriam-webster.com/words-at-play

 

 

 

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