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Feasible

      2020/05/22

実行可能な

ビジネス場面では、筆舌問わず普通に出てくる形容詞。

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)

しかし、英単語全体から見ると、頻出ではない。
LDOCE6(ロングマン)の表記によれば、

  • 重要:6001~9000語以内
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

このぱっとしない位置づけから、やはり
ビジネス寄りの単語と考えられる。

つまり、仕事における出番が中心となる。


◆ それもそのはず、”feasible” の意味は「実行可能な」。

事業目標を計画する上で、避けて通れない算用が、
自社の調達可能なリソース内で実行できるか否か。

民間企業であれば、事業展開・予算計画・生産計画・
販売計画・人員計画・収支計画などを期間ごとに
検討し、最終的な収益を見積もる必要がある。

成算が全く立たなければ「実行可能ではない」と判断。
すなわち、”not feasible” という結論。

逆に、勝算が十分あれば、”feasible で「実行可能」。

大組織に限らず、どんな規模のビジネスでも、通常は
こうしたプロセスを経て、実行か否かを決めている。



◆ “Is it feasible ? “(実行可能か)の考察の次に来るのは、

To do, or not to do, that is the question.
(やるべきか、やるべきでないか、それが問題だ。)

見込みがあると評価できれば、行動を起こす

上記は、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ、
ハムレット』(1600年頃)の一節を勝手にもじったもの。

『ハムレット』の数ある引用句のうち、最も有名なのがこちら。

To be, or not to be, that is the question.
(すべきか、すべきでないか、それが問題だ。)
(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。)

“Hamlet”  ACT III Scene I
『ハムレット』第三幕 第一場

悩める王子ハムレットの場合、父親の復讐を果たそうか、
それともやめておこうか、と心が堂々巡りする。

解釈が分かれる一文で、明治初期から多彩な和訳
が展開されている。


◆ 個人レベルでも、いざ人生の岐路に立てば、目当ての
進路が “feasible” かどうか、うんうん頭を絞ることになる。

ある程度の実行可能性を推算できなければ、単なる
向こう見ずな猪武者に終わる。

本当に実行できるだろうか …

リスク回避のために熟慮する。
自分の人生そのものだから、仕事よりも慎重になったりする。

こうしてプライベートでも、同じ趣旨で使われる “feasible”。

頻出度が圏外なのが、少々意外である。


◆ “feasible” は形容詞のみ。

語源は、中期フランス語「できる」(faisible)。

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)

音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語は、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。

意味は緑ハイライトがほぼすべて。比較的単純である。

(1)基本的意味は「実行可能な」「実現可能な」。
筆頭の同義語は、”possible” または “practicable”(後述)。

(2)派生した意味が「もっともらしい」「ありそうな」。
かすかに嫌味が込められている使い方が多い。
主な同義語は、同じく形容詞の “probable“。

(3)さらに “feasible for – ” のパターンで、
~に適した」「~にふさわしい」。
“for” は、対象の前置詞「~に」。
主な同義語は、”suitable for – “。

■ 以下、”To the extent possible” より再掲。

法律用語の “probable” と “possible” を比べたもの。

目安として、”possible” は、公算が50%以下
50%であれば、”probable” または “likely“。

probable = likely  > possible
       50%超                50%以下

この根拠は、アメリカの『ブラックス法律辞典』。
判例などに最も引用される辞典である。

1891年刊で、100年以上の歴史を誇る。
最新版は、第10版(2014年刊)。

※ 詳しい定義は “To the extent possible”  へ

普段使いの “feasible” は、実行可能性を表すに
すぎない。

現に、上掲『ブラックス法律辞典』の最新版に、
“feasible” は項目立てされていない(後述)。
※ 2019年7月14日 初稿時点 → 第10版(2014年刊)

probable“、”likely“、”possible” と重なる
意味合いで使われているものの、厳格な公算の定義
からは外れる模様である。

◆ 英語学習者向けには、次のように区別されている。

↑ “LDOCE5” ロングマン現代英英辞典 第5版
(アプリ版)”possible” より転載ー-※ 第6版アプリ短所


【参照】    ※  外部サイト
Is It  ‘Feasible’  or Is It  ‘Doable‘ ?
https://www.merriam-webster.com/words-at-play

この解説を読んでも、はっきりしないというのが、
大半の英語学習者の本音であろう。

英文による解説だからと考えるのは、早計に過ぎる。
次の辞書をご覧いただきたい。


ランダムハウス英和大辞典 第2版
(アプリ版) “possible” より転載

いかがだろう。
母語で読んでも、ばっちり把握できると言いがたいのでは。

要は、日常用法としては、大差ない語と考えられる。

それでも、英語学習者としては、きっちり学びたいと願う。
これぞ、見上げた心意気。

だが、上記の言葉に関しては、一般的な英語ネイティブの
普段の使い方を観察してみても、ことさら区別して用いている
とは思えないのが実態である。

一般人の言葉遣いが、案外適当なのは言うまでもない。

高度な教育を受けた専門家と異なり、厳密な差異を
意識することなく、気軽に使っていたりする。

こと “feasible” 周辺については、そんな印象。

だから私たち学習者も、とりあえず、ざっくり理解する。
その後に、微に入り細を穿つ姿勢でよいと私は考える。

例えば、
「ざっくり理解する」とは、3つの意味を押さえること。
「微に入り細を穿つ」とは、複数の類語辞典を精査すること。

  1. 実行可能な
  2. もっともらしい
  3. ~に適した (feasible for)

そもそも、”feasible” の重要度と頻出度はそう高くない。
これは、冒頭で確認した通りである。


◆ ここまで来ると、3大学習英英辞典(EFL辞典)の説明が気になる。

“feasible”

a plan, idea, or method that is feasible
is possible and likely to work.
SYN: possible
(LDOCE6、ロングマン)

that is possible and likely to be achieved.
SYNONYM: practicable
OPPOSITE: unfeasible
(OALD9、オックスフォード)

able to be made, done, or achieved.
possible or reasonable.
(CALD4、ケンブリッジ)

※ SYN = Synonym = 同義語
※ OPPOSITE = 反意語

【発音】   fíːzəbl
【音節】   fea-si-ble (3音節)

これまで見かけた単語が連なるEFL辞典。
個性のない語釈だらけである。

とにかく、基本的意味が「実行可能な」で争いがない
ことは間違いない。

◆ どの英英を調べても、似通った語釈と例文が出てくる感じ。

まるで「コピペ」の世界。
実はままある現象。

種本はどれかと、勘繰りたくもなる。

  • a feasible plan
    (実行可能な計画)
  • a feasible approach
    (実行可能な手法)
  • a feasible suggestion
    (実行可能な提案)
  • a feasible idea
    (実行可能なアイデア)

この辺りが定番。 確かにどれも分かりやすい。


◆ さらに、コロケーション(連語)辞典をご紹介。

Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より転載

代表格の『オックスフォード コロケーション辞典』である。
英作文の際に重宝するのが、連語(コロケーション)辞典。

【参照】
・ “aware
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ

“It is feasible.” では、「be動詞」の “is” に続いている。
形容詞なので、「be動詞」につながるのが基本。

※ 「be動詞」= be、am、was、been、will be、is、were、are

それ以外に、動詞(verbs)の “appear”、”look”、”seem”、
“become”、consider”、”prove” と組めると書いてある。
いずれも、自動詞用法。

なぜ、基本として「be動詞」に続くのかは、”aware”、
vocal about”、”conclusive” で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくることがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。

  • “The project appears feasible.”
    (そのプロジェクトは実行可能に見受けられる。)
  • “Any further drop in its prices does not look feasible.”
    (その価格が、これ以上下がることはあり得ないように思える。)
  • “The July 14th deadline seems feasible.”
    (7月14日の締め切りは実行可能に見える。)
  • “It may become feasible to offer incentives.”
    (報奨金の提供も実現可能となるはずだ。)
  • “How feasible is it for him to get a full-time job ? ”
    (彼が常勤の仕事に就ける可能性はどのくらいか。)


動詞に比べると、副詞(adverbs)の方が目立つ。

副詞の修飾語としての役割及び多種多様性を考慮すると、
自然の流れであろう。

前置詞(prepositions)の “for” と “with” が、なぜか見当たらない。

新編 英和活用大辞典』は、前置詞も明記する。

新編 英和活用大辞典』(アプリ版)より転載

不足分は、紙の辞書であれば、手書きで加えておくとよい
他書からコピーしたものを、貼り付けるのもグッド。
自由で楽しい手作り感が、勉学に対する興をさかす。

電子版の場合、コメントが挿入できるアプリ以外は、なかなか厄介。

こんな時、紙のよさを見直したりする。

【参照】
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か

◆ 締めくくりに、派生語をご案内。

  • feasiblyfíːzəbli
    副詞「うまくできるように」「うまく」
  • feasibilityfìːzəbíləti
    名詞「実現可能性」「実行可能性」

既に確認してきたように、表題の形容詞 “feasible” は、最新版の
ブラックス法律辞典』(第10版)に項目立てされていなかった。

【追記】   2019年12月11日付
2019年6月に「第11版」が発行された。
Amazon Japan / Amazon US

ところが、名詞 “feasibility” はある。 全文がこの有様。


Black’s Law Dictionary, 10th Edition
p. 726  (West Group 2014)
※ 自炊本

天下一品の法律辞典なのに、これまた既視感たっぷり
の語釈なのであった。

 

【関連表現】

“unrealistic”
https://mickeyweb.info/archives/16975
(実現することが難しい、実現困難な)

 

 

 

 

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