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Please disregard -

      2025/03/13

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~ を無視してください

前言撤回 行き違い 時の 釈明文言 として頻出。

趣旨は、

あれは無視してくださいと伝えること

  • Please disregard.
    ( どうか無視してください。)

と2語で完結することもある。

しかし、 その目的語が続く使い方が目立つ。

無視の対象は、 先に送った文書など。

メールレター請求書  が代表例。

その理由を一筆添えるのが礼儀。

また、 相手にお願いする立場の使用が多いため、
副詞または間投詞の  ” please ”  と組む表現が
定着している。

【参照】

◆  ” disregard ” には、 名詞と他動詞がある。

【発音】  dìsrigɑ́ːrd
【音節】  dis-re-gard  (3音節)

強いアクセント( 強勢 ) は最後の第3音節。

共通イメージは 「 故意に無視する 」。
–  名詞 「 無視 」
–  他動詞 「 無視する 」 「 軽視する 」

17世紀から使われている英語で、 成り立ちは、

  •  「 逆 」 を意味する接頭辞  ” dis ” ( ~しない )
  •  動詞  ” regard ” ( 注目する )

よって、 「 注目しない 」 で 「 無視 」 「 軽視 」 に。

  •  ” I’m facing criminal charges for disregarding the law.”
    ( 私は、法律を無視して、刑事罰に問われています。)
  •  ” We disregarded auditors and overpaid contractors.”
    ( 監査人を無視した結果、契約業者に払い過ぎてしまった。)
  •  ” Your disregard for other people was truly appalling.”
    ( 他者を軽視するあなたの態度は、本当にひどいものだった。)
    ※  名詞
  •  ” In their disregard for human life, they are bad people.”
    ( 人命を軽視する彼らは悪人である。)
    ※  名詞

◆  類義語の筆頭は、 ” ignore “( 他動詞・名詞 )。

■  ” ignore ” の方が、 語勢がつよい印象
→  「 ガン無視 」 レベルの冷たい雰囲気

【発音】  ignɔ́ːr
【音節】  ig-nore (
2音節)

” ignore ” は、 より日常に馴染んだ動詞だが、 時にすげなさを伴う。

印象としては、

■  ” disregard ” は、 堅めで上品

→  ” ignore ” に比べ、 ビジネス向き


◆  現実として、 対外的には 「 無視して 」 と書きにくい。

このような表現のさじ加減に、 翻訳者の力量が現れる。

どうぞご放念ください


は、 かつての日本のビジネス場面で、割かし見られた言い回し。

近頃は、 なかなか目にしない。

 


ほうねん【放念】

気にかけないこと。 心配しないこと。 放心。
大辞林 第四版

心にかけないこと。 心配しないこと。
精選版 日本国語大辞典


多く手紙文で使う 」と明記するのが、 『明鏡国語辞典 第二版』。– 

 

  •  ” Please disregard this reminder if you have already paid.”
  •  ” If you have already paid, please disregard this reminder. ”
    ( 既にお支払い済みでしたら、どうか本督促状はご放念ください。)
    ( 既にご入金済みの場合、本督促状と行き違いですのでご了承ください。
  •  ” Please disregard this email if you have already submitted it.”
    ( 既にご提出済みでしたら、なにとぞご容赦ください。
  •  ” Please ask your assistant to disregard.”
    ( アシスタントの方に、この件を無視するようお伝えください。)
     –
  •  ” Please disregard these notifications.”
    ( それらの通知は破棄してください。)
  •  ” Please disregard.   Mr. X will translate for this event.”
    ( 先のメールは無視してください。
    このイベントの通訳は、X氏が担当することになりました。)
  •  ” If you are no longer using this account, please disregard this message. ”
    ( 既に当アカウントを利用していない場合、このメッセージは無視してください。)
  •  ” I inadvertently sent you the card. Please disregard.”
    ( 私の不注意によりお送りしたカードは、
    お手数ですが破棄いただけますでしょうか。)
  •  ” If you did not go to the party, please disregard this message.”
    ( パーティに参加されなかった方は、本メッセージの対象外となります。)
  •  ” Please disregard any announcements in relation to the disaster drill.”
    ( 防災訓練用の放送ですので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。)
  •  ” Please disregard this email if you have already taken action.”
    ( 既に対処済みの場合、 本メールは無視してください。)
  •  ” Please disregard the previous alert. ”
    ( 先ほどの警告は無視してください。)

■ ログインアラート 」 の典型文言

→  不正予防用に送付される通知


If this was you, you can disregard this message.

( ご本人様であれば、 このメッセージは破棄してください。)
( ご自分で実行されたならば、 本メッセージは無視してください。)


If this was you, you can safely disregard this email.

( ご本人様であれば、 このメールは破棄して問題ありません。)
( ご自分で実行されたならば、 本メールは無視して大丈夫です。)


不正アクセスの可能性が生じた際、 本人に注意を促すための確認メール。

1つ目の指示代名詞  ” this ” とは、「 ログイン 」 する行為を指す。

「 ログイン 」 の別称である 「 サインイン 」 行為でも使う表現。

【 直訳 】
もし( if )、 これ( this = ログイン・サインイン ) が
あなた
( you ) であった( was )  ならば( if )、
あなた( you )は このメッセージ( this message )を
無視
( disregard ) できます( can )。

 

◆  以下、メールの実物。

米国のアマゾンより。



※  2020年4月26日付


自らログイン・サインインしたのであれば、

It was me. ( それは私だった )

無視 ( disregard ) してよい。

自分でなければ、

It wasn’t me. ( それは私ではない )

無視しないで行動せよ ( Do not ignore and take action. )。

日本のアマゾンは、 こんな感じ。



※  2020年8月22日付


こちらも同様。


If you initiated this download,

you can disregard this message.


※  2020年7月6日付

【直訳】
もし( if )、 このダウンロード( this download )を
あなた( you ) が 始めた( initiated ) ならば( if )、
あなた
( you )は このメッセージ( this message )を
無視
( disregard ) できます( can )

自らダウンロードしたのであれば、 無視してよい。

 

 

 

 

 

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