サイトアイコン プロ翻訳者の単語帳

Wet ink / Wet sign / Wet signature

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 24 minutes

本人が自分の氏名を手書きしたもの  ( = 本人の直筆サイン

この5つは、 一般実務では、 ほぼ同じ意味合いで使用されている。

すなわち、

■  物理的 ( → wet,  physical )
な 「 手書き 」、

ひいては 「 原本 ( wet copy )」

 

 

■  電子認証 ( → dry )
と 反対の立ち位置

大半の使い方は、 こちらを指す。

「 本人が 自分の氏名を 手書きしたもの 」


つまり
ご本人の直筆サイン、 肉筆サイン、 自署。

昔ながらの 「 手書き 」。

■  本来は  技術用語  として、  別の語義があるのだが、

   実務では、 5つとも 「 自署 」 を意味する。

   ひいては、「 原本 」( wet copy ) を示唆

▼  提出先が、 こう指示(  ” wet ” 指定  )する場面で頻出。


電子認証 ( → dry ) は不可


電子認証
  では受け付けません。

メール提出は ×。 

直筆署名した原本  を郵送などでご提出願います。

▼  提出先の要求は、


直筆 」 かつ 「 原本

( → wet )

の文書を提出してください

▲   ” wet ” 指定  メール提出 ×、  原本を 持参・郵送

【 実例 】  日本の役所の ” wet ” 指定 文言 


本紙は、 氏名を直筆で記入いただく必要があるため、
電子メールでの送付はできません。


2023年7月、 官公庁から届いた実物である。

 

◆  まずは、表題の 「 3つの  ” wet  」  を見ていきたい。

同じく ” wet ” で、  物理的な  =  physical 

physical signature ”    ” physical sign

については後述する。


◆  ” wet ”  には、 形容詞・名詞・自動詞・他動詞がある。

語源は、 古期英語  「 湿った 」 「 ぬれた 」 ( wǣt )。

【発音】  wét  (1音節)

” wet ”  は、 「 1音節 ( one syllable ) 」 の単語。

「 音節 」( syllable、シラブル ) とは、 発音の最小単位

1音節だから、 腹の底から  ゲロする  勢いで、 思いっきり、

ウエット


と吐き出し、 一息に発声する。

まさに、 ゲロ同然の響き。


日英の音は、 舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が

まったく違います

  英   語 「 息の音 」
  日本語 「 声の音 」

ウエット

 

「 発音の最小単位 」 に切れ目がない 「 1音節 」 のため、

一気にゲロする凄みが出るのが  ” wet “。

ここでも、 「 湿った 」  「 ぬれた 」 の意。

状態だから、 形容詞adjective )。

ウエット

 

ウエット

 

ウエット

 

 

ウエット

 

 

ウエット

 


ウエット

 

「 誰々の寝床を ぬらす 」 なら、 ” Wet  one’s  bed “。

動詞の過去形  ” wet ”  である。

 

◆  ” wet one’s bed ” も、 ” wet one’s bed ”  も、 ” wet ” は

形容詞( adjective )ではなく、 他動詞( transitive verb )。

動詞  ” wet ”  の活用形 ( verb forms ) は、 変則的。


LANGUAGE NOTE :

The forms wet and wetted are both used as
the past tense ( 過去形 ) and past participle ( 過去分詞形 )
of the verb( 動詞 ).

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/wet


そのため、

どちらも正しい。

よって、 こう換言できる。

動詞の過去形  ” wetted ”  である。

 

◆  ” one’s ”  とは、 「 誰々の 」。

【発音】  wˈʌnz  (1音節)

one’sには、 通常は人称代名詞 ( personal pronoun )の

所有格possessiveを入れる。

すなわち、 次のいずれか。

  •  my   私の
  •  your   あなたの
  •  his   彼の
  •  her   彼女の
  •  their   彼らの
  •  our   我々の
  •  its   それの

” one’s ” は、所有格の代表形 として、
辞書などで起用される。

具体的には、不定代名詞( an  indefinite  pronoun
” one ”  の所有格が  ” one’s “。

上記の所有格を代表する。

いわば、所有格のワイルドカードとして使われる。


◆  「 ウェットティッシュ 」 は、 ” wet  tissues ” よりは、

wet wipes ”  または  1語  ” wipes ”  が一般的。

通常、 複数形  ” wipes ” で使う。

自他動詞  ” wipe ” ( 拭く、ぬぐう ) の名詞化。

【発音】  wáip  (1音節)

「 拭くこと 」 「 拭くために使う用品 」 を指す。

用途に応じて、

語源は、 古英語 「 拭く 」 ( wīpian )。

画面上の小窓 「 ワイプ 」、 記憶装置の消去 「 ワイプ 」も、

この  ” wipe “。

 

◆  アダルトな 「 ぬれ場 」 は、 ” wet scene ”  ではなく、

” love scene “、 ” sex scene “、 ” intimate scene “。

俗語の  ” wet scene ”  は、 血なまぐさい殺しの場。

この  ” wet scene ”  では、 エロくなくて凄惨な体液。

エロい
《形》
(「 エロ 」の形容詞化 )
好色である。  官能的である。


『 広辞苑 第七版 』
新村 出(編) 岩波書店、  2018年刊
( ロゴヴィスタ  アプリ版 )


第七版 ( 2018年1月発行 ) に 初登場

 

◆  それぞれ直訳は、

いずれも 「 自署 」 として多用される。

” wet ”  の直後にハイフンを入れる、

複合名詞 の表記 ( wet-ink ) もある。

【発音】  sign   /sáin/  1音節
【発音】  signature   /sígnətʃər/   sig-na-ture  (3音節)

2語とも、 ラテン語  ” signāre “( 印をつける、 刻みつける )
から成り立っている。

この動詞から、さらに名詞化したラテン語  ” signum ” ( 印、 記号 )
より成り立ったのが、 ” sign “。

したがって、 同語源と考えてよい。

” sign ” には、 名詞の他、 他動詞と自動詞があるが、 語源に
忠実な意味合いばかり。

日本で使われる  「 サイン 」 「 サインする 」 と大方共通するので、
理解しやすい。

” signature ” には、 名詞と形容詞があり、 動詞はない。

名詞中心で、 基本的意味は語源に沿った 「 署名 」 「 調印 」。

形容詞はマイナー用法ではあるものの、

独自の 」 「 特徴的な 」 「 代表的な

の意味で、 見聞きする機会は少なくない。


  東日本大震災直後、 愛用したバーキンバッグをオークションに出品して寄付。
病を押して、 いち早く自費で単身来日したジェーン・バーキン( 1946-2023 )。
渋谷の街頭にて自ら募金活動し、 復興支援イベントとコンサートを開催して貢献。
3年間のワールドツアーで27か国74都市を巡演し、 多額の義援金を集めてくれた。

◆  ” ink ”  の他動詞用法には 「 署名する 」 の意も含む。

【発音】  íŋk  (1音節)


◆  ” ink ”  の語源は、 ギリシア語 「 紫色のインク 」( enkauston )。

※  同義扱いの 「 インキ 」は、オランダ語  ” inkt ” より

平板で、均一なリズムの日本語では、「 3音節 」の

イ – ン – ク

英語では 「 1音節 」 なので、 こっちも ゲロ

イン

 

◆  「 音節 」 の日英比較は、  ” integrity ”  で事細かに取り上げた

( 図入り、 動画入り )。


殊に、 「 1音節 ( one syllable ) 」 の単語については、

「  音節( syllable ) 」 の感覚を知るため、

ゲロ の迫力で、 しばらく練習するとよい。

→  ゲロ吐くように、 発音してみる

日本語母語話者にとって、

英語の発音は動物の鳴き声に近い。

日本語で表記しがたいのは言うもおろか。

犬猫の声と一緒で、 そもそも日本語では書き起こし

きれないのに、 英語音を無理くり邦文で表現しようとする。

等しく不条理だからアプローチを変える。

口周りをまじまじと見据えて、 模倣する。

integrity “  より


やり方も、 ” integrity ”  でご紹介している ( 図入り、 動画入り )。

 

【参考】    ※  外部サイト

 

 

「 ゲロ同然の響き 」 で、 練習に最適な1音節単語が  ” wet “。

ウエット

 


志村けんはいかがでしょう 』 ( 1993~1995年 放映 ) のコント

「 ろくでなし 」 の名物 「  ウィ ! 」 ( 1音節 ) に似通うリズム。

これは、 典型的な  「 1音節 ( one syllable ) 」 の発音。

私たち日本語話者でも、 割と簡単に発音できることが分かる。


大勢の観客が声を合わせ 「  ウィ ! 」 と叫んでいたことからも明らか。

当時、 画面越しに見ていた私も、 大喜びで 「  ウィ ! 」 とやっていた。

【 ウィッ 動画 】

https://www.youtube.com/watch?v=UDaFmArGp4k
↑  全長  24秒

https://www.youtube.com/watch?v=YXXnbmcV3vk
↑  全長  40秒

” wet ”  は 「  ウェット !

無声歯茎破裂音  [t]  を伴い、 最後は舌端を上歯茎に接触させて軽く調音。

やや難易度は上がるが、 「  ウィ ! 」 と似ており、 発音できるはず。

◇  湿った 」 とはいえ、 通常は ボールペン でもよい。

wet ”  は、自署に用いる
< 筆記具の種類 >よりは、

「 直筆 」 及び 「 原本 」 の指示 が趣旨 

 

wet ”  指定 ならば、 直筆 」 かつ 「 原本

■  「 原本 」を提出 ( 持参 郵送 が一般的 )
■   メール添付は不可 ( 後述 ” dry ” 参照 )


◆  なお、手書きでなく、 ゴム印や印鑑  による署名
( 後述の 「 記名押印 」 や 「 記名 」 ) も、” wet ink “、
“ wet sign ”、 ” wet signature ” に含むとする解釈がある。

「 湿った 」( wet ) 点で、 条件を満たすからである。


A wet signature is created when a person
physically  marks a document.

Other cultures use name seals to the same effect.

https://www.laserfiche.com/resources/blog/whats-the-difference-between-wet-digital-and-electronic-signatures/


【 参考和訳 】

” wet signature ” とは、人が  物理的に 文書に署名すること。

文化によっては、 同じ用途に 印鑑 を用いることがある。


【発音】  síːl  (1音節)

◇  人間の手で書いたり押したりする 「  物理的な  」 サインゆえ、

  •  physical  signature
  •  physical  sign

と表すこともある。

しかし、 表題の 「 3つの  ” wet 」 に比べて、出番は少ない。


【発音】  physical  /fízikəl/
【音節】  phys-i-cal  (3音節)

【発音】  physically  /fízikəli/
【音節】  phys-i-cal-ly  (4音節)


◆  形容詞  ” physical ”  には、

身体の 」 「 肉体の 」 の意味もある。

◆  被害などが身体に及ぶ際も、 ” physical “。


◆  「 肉体の 」 つながりで 色の 」    ” physical
で表せる。


Let’s  get  physical !

( 一緒に 寝よう


  オリビア・ニュートン=ジョン( Olivia Newton-John  1948-2022 )

  1981年の大ヒット曲   ” Physical ”   の聞かせどころ ( さび )


      フィジコ ~  ♪


世界中で、1000万枚以上売れたものの、 際どい歌詞が物議を醸す。

卑猥さの隠れ蓑に、 PVなどでは激しく踊れども、 真意はバレバレ。

むやみやたら官能をそそる、誘惑されそうなエロい表情からも自明。 
           

フィジコ ~      ウエット

physical  /  wet  →  直筆 かつ 原本



◆  自動詞  ” get ” ( ~ の状態になる ) を伴い、

get physical  ”  で、

自動詞  ” become ”  に比べ、 口語的な ” get ” の用法。

形容詞  ” physical ”  を補語 ( complement ) とする、

「 第2文型 SVC 」。

( SVC  =  主語 subject  +  述語動詞 verb  +  補語 )

自動詞  ” get ” の本義は、 自分の意思で 「 ある状態に達する 」。

 

【 フィジコ ~ 動画 】    ※  全長  約 3分40秒
https://www.youtube.com/watch?v=yPXNZo40ePE
https://www.youtube.com/watch?v=E-JGTk_WM1k

1972年   初来日。  来日回数10回以上。
2015年   被災地の福島で歌ってくれた。
2021年   旭日小綬章 を受章。

2022年8月8日   逝去 ( 享年73 )


I first visited Japan in 1972 and since then I’ve been back
more than 10 times,   one of my favourite countries and
favourite people.  A particularly memorable moment was
my ” Pray for Fukushima ” concert in 2015 in Fukushima.

【 参考和訳 】

1972年の初来日以来、 10回以上日本を訪れています。
大好きな国のひとつで、 日本人も大好きです。
とりわけ思い出深いのは、 2015年の福島でのコンサート、
Pray for Fukushima ” ( 福島に祈りを ) です。

https://www.abc.net.au/news/2021-11-03/
dame-olivia-newton-john-to-receive-japans-highest-honour/100589182

Dame Olivia Newton-John to receive Japan’s
highest civil honour, the Order of the Rising Sun

2021年11月3日付


秋の叙勲受章オリビア・ニュートン=ジョンさん単独インタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=dJgg4G_xbj8
2021年12月22日
※  全長  2分47秒  ( 日本語字幕付き )

尻振り オリビア 

グリース 』 ” Grease ”  米 1978年

 

◆  ゴム印や印鑑が、 ” wet signature ” として、
実際に通用するかと言えば、 心許ない。

提出先に確認する方が、 一安心できる。

ご本人が近場にいるなら、 サインしてもらう方が早いかも。

日本では「 記名 」だが …

◆  表題の対となるのが、 dry signature “、” dry sign “。

【発音】  drái  (1音節)

 コピー や ファックス を通した署名   のこと。



◆  ” wet ”  な原本をスキャンし、 電子メールの 「 添付ファイル 」 で送ると、

受け手側の取り扱いは、

” dry ” になってしまう。


からくりは、「 コピー 」 「 ファックス 」 同様。

無論、 送信者の手元の文書は、 ” wet ”  のまま。

この点を理解せずにメールし、 提出期限  が過ぎたら大変。

悲惨だけれども、 なんだか間抜けな話だわ。

  ” wet ” 指定 の場合、 または 郵便・宅配便 で提出しましょう。

 

◆  資力に恵まれた組織であれば、  電子認証 ( 後述 ) を導入可能。

海外と頻繁にビジネスするグローバル企業は、 既に活用しているはず。

一方、 それほど余裕のない零細・中小企業などは、 ” wet ” で署名し続ける
しか手立てがなかったりする。

法的効力のある電子認証を取り入れるには、 専門業者と契約する必要があり、
それなりのコストがかかるために、 固定費節減で投資できない事業者も多い。

よって、 メールで受信した電子( dry )署名入りの契約書( PDFなど )を
出力後、 手書き( wet )で署名し、 紙で送り返す( 郵便・宅配便 )。

これでは、 電子メールと電子認証の利点を享受しきれない、ちぐはぐな流れ。

すなわち、 次の電子認証のメリットが生かせず、 中途半端な有様。

【 電子認証の利点 】  →  返送不要ゆえに 郵送費 と時間、 さらに 印紙代
 も節約でき、 手間なく  速やかに進められる  ( 手続きの即日完了も可 )

【参考】    ※  外部サイト

■  「 直筆 」 の文書  =  ” wet copy ” 

   PDF  にしたものは「 原本 」 として通用しない。


◆  要するに、  「 物理的 」 で  “ wet ” な
「 手書き署名 」 「 ゴム印 」 「 印鑑 」 「 ハンコ 」 を、

以下に加工したものは、 どれも 「 原本 」 として通用しない。

PDFコピーファックス電子メール スクショ

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

” dry ” になってしまう。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


提出先から、 ” wet ” 指定 があれば、 アウト



◆  特に企業・組織間のビジネスで、 厳格な法的効力のある ” dry ” 署名

を実施するには、 専門業者( 第三者の事業者 )との契約が必須である。

これが基本。

「 本人性の確認 」 及び 「 非改ざん性の確保 」 が法的要件となり、 高度な
技術とシステムを要し、 たやすく自前開発・内製化できる類のツールではない。

  個人的な提出物 ( 履歴書など ) の形式的な電子署名とは根本的に違う
→  専門業者との契約は通常不要で、 アドビ などのソフトウェア のみで署名可能
→  パスワードはあるが、 「 本人性の確認 」 及び 「 非改ざん性 」 の効果は弱め
→  形式的な本人確認で、 個人の日常的な提出物に法的効力を求める意図は大抵ない

実務上、 「 本人性の確認 」 は、 「 本人認証 」 「 本人確認 」 とも称する。

取引する双方が電子認証を導入していない限り、 電子メールでは完結しない。

結果的に非効率に陥るが、 私の経験上は珍しくなく、 現実的にやむを得ない。

移行期は、 新旧入り交じるのが世の習い。

電子認証の普及に伴い、 その確かな利便性から ” wet ” 指定 は減少
していくと考えられるが、 後に述べるように、 完全消滅はないだろう。

電子認証dry ) と  物理的 wet ) な署名は、 おそらく併存していく。

 

◆  ” dry signature ” の直訳は、「  乾いたサイン 」。

後掲の 「 デジタル署名 」 もろとも、 カラッと乾いた印象である。

例えとしての 「 直筆 」が、 ” wet ” なのは想像できよう。

◇  「 原本 」の英訳  

  原本は、 本質的に  唯一の存在  なので、
定冠詞 ” the ”  が原則。

  ただし、 特定の原本ではなく、 単なる呼称  としての
「 原本 」には不定冠詞も使う。

なぜなら、

どんな原本でも用をなし、 唯一の存在でない

どれでもいい、1つのもの

【 例 】  ” wet ink copy

単なる呼称・総称で、 なんでもあり。

  原本が複数枚に渡ったり、種類が多数ある場合、
「 複数の文書 」を意味する複数形の単語
documents    documentations  など )
を付け加えて、 無冠詞 または  “ the ”。

  日常実務では、枚数や種類にかかわらず、シンプルな
the original ” と “ the original copy ”  が 多用される。

【発音】  original   /ərídʒənəl/  o-rig-i-nal  (4音節)
【発音】  copy   /kɑ́picop-y  (2音節)


【 ご注意 】

  この用法の  ” copy ” は 「 原稿 」 の意味合い

【誤】  × 写し  × 控え  × コピー  

・ a  wet ink copy  =  直筆の 「 原本
・ a  wet copy  =  同上   ←  原本そのもの

【誤】  × 原本のコピー 」


一般的には、こう考えてよい。

×  ” 〇〇 copy ” は 「 〇〇 の  写し 」  ←   原本

「 原本 」



英文ビジネス契約書大辞典 [ 増補改訂版 ] 』  pp. 45-46.

山本 孝夫 ( 著 )
日本経済新聞出版社、 2014年刊

<出版社HP>    <アマゾン>    <楽天>

 

  コピー機  ( 富士ゼロックス  カラー複合機、 水色の下線は引用者

の表面に記載された 「 原本 」 は複数形の   originals “。

 

< ” copy ”  語源 >

ラテン語 「  たくさん 」( cōpia )  →  「 たくさん 書く 」
→  「 原本を たくさん 写し取る 」  →  「  複写 する 」

 

▼ 「 複写 」「 写し 」 以外 の意味 ( 名詞 ” copy ” ) ▼

■  1部・1冊・1枚
■  原稿
■  広告文  

英和辞典の語釈はあいまいなものが多く、 やや紛らわしい感触。

【発音】  kɑ́pi
【音節】  cop-y   (2音節)

 

【 マイナー用法 】    ※  ” Loud and clear. ”  参照

無線では、「 了解 」 を表す決まり文句。

市民ラジオ由来の表現とされる。

Do you copy ?  ” ( 聞こえますか
→   ” Copy that ! ” ( 了解 ! )。
→   ” Copy ! ” ( 了解 ! )。

” I have received your transmission. ”  ひいては
” I understand what was said. ”  の意。

無線に限らず、 社内メールの返信でも見かける。

  •  ” Copy.”  ( 了解しました。)
  •  ” Copy that.”  ( その件、了解しました。)
  •  ” Copy on this.”  ( この件につき、了解しました。)
  •  ” Copy on that.”  ( その件につき、了解しました。)
  •  ” Copy all. ”  ( 全部了解しました。)

メールの件名や返事に、 こうして出てくる場合、

  • Good copy ”  ( 興味深いお知らせ )

「 2語ワンセット 」 で、 ” interesting news ”
LDOCE、  Merriam-Webster ) のこと。

→  目上に対する 「 了解 」 の可否 についても、
Loud and clear. ”  参照


◆  さらに、

■  digital signature ( デジタル署名 )
■  electronic signature ( 電子署名 ) 


これらも  ” wet ink “、 ” wet sign “、 ” wet signature ”
に  該当しない

どちらも  “ dry ”  signature  である。

一般実務における 「 デジタル署名 」 「 電子署名 」 は、
「 原本 」 の概念にあまりそぐわない。

そもそも、 何枚でも印刷( print out )できてしまう。



◆  もっとも、 先に触れた通り、  専門業者と契約し、 法的効力のある
電子認証を導入すれば、 “ dry ” ながらも、 実務上は「 原本 」 に準じる。

有効な 「 原本 」 が複数生じる  ものの、  本来の役割が異なるから可。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

しかしながら、  ” wet ” 指定 があれば、 これでは通じない

これぞ間違いやすい点で、提出先の要求 に従わないと、 先に述べた悲劇をもたらす。

電子認証で大抵OKだが、 ” wet ” 指定 されていれば、「 直筆 」 かつ 「 原本 」

分かりにくい感覚だが、 電子認証に使い慣れると容易に理解できるようになる。

◆  電子認証に慣れると、 ” wet ” 指定  が面倒で煩わしく、 時代遅れに感じる。

わざわざ送るなんて、 「  時間・手間暇・人件費・郵送費・印紙代 のムダ

「 電子認証なら今日中に終わるのに、 締結完了のため、 来週まで待つのか 

「 仕事を増やさないでよ 」 と勝手な恨み節がぶうぶう出てしまったりする。

ハンコが残る一因は、 あえてムダを残して、 雇用を維持するためとの説がある。

ハンコの市場規模は、 2022年でおよそ17億円。

◇  本人確認 と 認証 こそ、
デジタル署名 ・ 電子署名 の役目

電子認証 ( → dry )

 

◆  昨今では、 身分証明書 ( identification = ID ) にも、

physical ID ”  と  ” digital ID “  がある。

【発音】  iaidèntəfikéiʃən
【音節】  i-den-ti-fi-ca-tion  (6音節)

” physical driver’s license ”  と ” digital driver’s license ”

( 運転免許証 ) が筆頭格。

紙やプラスチックの状態は、 物理的な  =  physical

ゆえに、 physical ID ”  に分類される。

状態だから、 形容詞adjective )。

 

◆  ” get carded ”  とは、 身分証明書の提示を求められること。

口語的な言い回しで、 自動詞 ” get ”  と 他動詞  ” card ” を用いる。

ここでの  ” get ”  は、 受動態の変形で動作の変化を強調
( 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』 ” get ”  )する自動詞用法。



『 ランダムハウス英和大辞典  第2版 』
小学館、1993年刊 ( 物書堂  アプリ版 )
  …  ” get1 ”  の語釈より


自動詞用法の本義は 「 ある状態に達する 」〕。


『 ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( ロゴヴィスタ アプリ版 )
…  “ get ”  の語釈より
<大修館書店HP>


受身の 「 助動詞 」 ( auxiliary verb ) と明記する大辞典もある。



『 研究社 新英和大辞典 第6版 』
研究社、2002年刊 ( ロゴヴィスタ  アプリ版 )
  …  ” get 1 ”  の語釈より  

いずれにせよ、 補語 ( complement ) に過去分詞を伴い 「 ~ される 」。

上記の補語は、 他動詞  ” card ”  の過去分詞  ” carded “。

 

 

フィジコ ~ 

 


スマホなどで提示する、 従来にないデジタル方式が、 ” digital ID “。

これからの主流になるに違いない。

先述したように、 「 移行期は、 新旧入り交じるのが世の習い 」。

物理的wet ) と  電子認証dry ) の関係にも当てはまり、

physical ID ”  限定で、 ” digital ID ”  を認めない手続きもある。

【発音】  dídʒitəl
【音節】  dig-it-al  (3音節)

 

◆  ” digital ”  の語源は、 ラテン語  「 指の 」 ( digitālis )。

” digit ” ( 数字、 桁 ) の語源は、 ラテン語  「 」 ( digitus )。

」 で数えることから、 数字 につながった。

まさしく、  デジタル。

 

Wet ”  では ない 代表例

電子認証 ( → dry )

 

以下は例示。

【 例1 】  ” digital signature ” ( デジタル署名 )

【 例2 】  ” digital signature ” ( デジタル署名 )


【 例3 】  ” electronic signature ” ( 電子署名 )


◆  日常実務では、 ざっくりと全部ひっくるめて、

e-signature ”  や  ” e-sign

と呼ぶことがある。

” electronic ” ( 電子の ) の略で、 読みは 「 イー 」。

【発音】  ilèktrɑ́nik
【音節】  e-lec-tron-ic (4音節)

e-sport “、 ” e-sports ” ( イースポーツ )や

後出の  ” E-Sign Act ” ( 電子署名法 ) も同様。



電子サインと電子署名で業務プロセスを変革
アドビ システムズ 株式会社
https://www.adobe.com/content/dam/dx-dc/pdf/jp/adobe-sign-electronic-and-digital-signatures-wp-jp.pdf
2021年4月 発表
※  PDF 全11頁、287KB

【 ご注意 】

  上記資料で、アドビー社が「 電子サイン 」と和訳するものは、
本稿の「 電子署名 」( electronic signature )を指す。


◇ 
” electronic signature ” の定訳は「 電子署名 」

本稿も定訳に従った。

  日本政府のサイトでも「 電子署名 」

『 電子署名及び認証業務に関する法律 』


https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=412AC0000000102

【参考英訳】  日本法令外国語訳データベースシステム

” Act on Electronic Signatures and Certification Business “

https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/3821


  米国の電子署名法  ” E-Sign Act ”  は、2000年施行

▼  米政府発行
Electronic Signatures in Global and National Commerce Act
https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-106publ229/pdf/PLAW-106publ229.pdf
2000年6月30日付
※  PDF 全14頁、223KB


  世界各国の電子サイン情報へのリンク( 英文 )

▼  アドビ システムズ 株式会社
https://www.adobe.com/trust/document-cloud-security/cloud-signatures-legality.html

  電子署名とは — 電子署名法2条・3条のポイント解説

電子署名法の全体構造と電子署名の要件
https://www.cloudsign.jp/media/20180803-denshisyomeihou/

 


電子署名、脱ハンコで急拡大  3年後は200億円市場に

2020年10月13日付

新型コロナウイルス禍で 「 脱ハンコ 」 が進むなか、
電子署名の利用が急増している。

( 中略 )

電子署名はオンラインで契約を結ぶ際、契約者本人であることなどを
証明するのに必要となる。

( 中略 )

背景には電子署名の方式が2つに分かれていることがある。


「 電子署名、 脱ハンコで急拡大 3年後は200億円市場に 」
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64908610S0A011C2TJ2000/
2020年10月13日付

  『 電子契約サービスに関するQ&A
総務省 ・ 法務省 ・ 経済産業省 

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/denshishomei_qa.pdf
2020年7月17日付

※  PDF 全3頁、221KB


かつて、 署名は 「 自署 」 が原則であった。

今では、「 記名押印 」 や 「 記名 」 も広く採用されている。

◆  日本のビジネス慣習上、 法律的な証拠能力の有効性は、

次の順とされている。

  1.  署名捺印
  2.  署名
  3.  記名押印
  4.  記名
  •  「 署名 」  本人が氏名を筆記具で書く
       →  wet inkwet signwet signature
  •  「 記名 」  ゴム印・印刷・代筆を含む
  •  「 捺印 」「 押印 」  印章を押すこと
       →  名詞 seal他動詞 seal

    【発音】  síːl  (1音節)

【参考】    ※  外部サイト

  『 押印についてのQ&A
内閣府 ・ 法務省 ・ 経済産業省 

https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf
2020年6月19日付

※  PDF 全5頁、137KB


  『 地方公共団体における押印見直しマニュアル 』
内閣府

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/i_index.html


近年、 世界標準の実務にて急速に定着しつつあるのが、

dry ”  の 「 デジタル署名 」( 上図参照 )。

◇  本人確認 や 改ざん防止機能 の実用性
から、認証用 に導入された。

wet ink “、” wet sign “、” wet signature
では ない


文書を電子的にやり取りするのが日常になって以来、
自署やハンコ代わりに使われている。

 

◆  それでも、 自署を要する場面はまだまだ健在だ。

  日本語では、

自署 」「 自筆 」「 手書き 」「 直筆 」「 署名 」「 肉筆

  近頃、とみに見聞きするようになった英語が、

wet ink “、” wet sign “、” wet signature


直筆サインを求められる機会は、 今後もきっと完全には消えない。

一般組織では、2010年頃 から散見


電子認証
の導入に伴う新しい表現

 

■  wet ink
■  wet sign
■  wet signature

直筆 かつ 原本     ポイント



◆  昔は、 もっぱら  ” handwritten signature ”  だった。

電子認証   


の導入後は、 ” wet  ” ばかり。

handwritten signature ”  は、

ビジネス社会では、 ほとんど死語に近い印象。

既記の通り、 dry wet  の概念は、 技術用語から派生  した。

日常的な形容詞である  ” handwritten ”  は分かりやすいけれども、

電子認証  の対ではなく、 的確な用語ではないことが消えた一因。

もっとも、 「 手書き 」 全般では、 現在も常日頃より使われる。

in ” は、 手段の前置詞 ~ を使って 」 「 ~ で

 

ウエット


直 筆

 

wet指定 ならば、直筆 」 かつ 「 原本

■  「 原本 」を提出 ( 持参 郵送 が一般的 )
■  メール添付は不可 ( 上述の通り ” dry ” に )

 

◆  ” wet ink “、 ” wet sign “、 ” wet signature ”
の基本的意味を解説する英文サイトは数多く存在する。

また、 直筆を求める要求事項 ( requirements )には、
” wet ”  を 引用符 で囲んだものが、 今なお少なくない。

2024年現在、 世間一般には、さほど認知されていない証左であろう。

 

【類似表現】

■  ” sign off ”  

他動詞の句動詞だから 「 句他動詞 」( transitive phrasal verb )。

主要な意味は、

署名して締結する 」 「 署名して承認する 」 「 締めくくる

「 絵文字 」  は、 英語でも  ” emoji ”   →   ” shrug off ”  参照

【発音】  imóudʒi
【音節】  e-mo-ji (3音節)

「 句他動詞 」( transitive phrasal verb ) の用法が目立つが、
「 句自動詞 」( intransitive phrasal verb ) でも使う。


副詞  ” off ” は、 ” top off “( 締めくくる ) と同じ用法。

 

主な使用場面は、 次の2つ。

  1. 承認権限のある部門・人物による 決裁

  2. 契約書・合意書の 締結


承認や締結の際に、重宝する句動詞である。

■  ” autograph

【発音】  ɔ́ːtəgræ̀f
【音節】  au-to-graph  (3音節)

–  名詞  「 自筆 」「 有名人のサイン 」     ※  可算・不可算兼用
–  他動詞  「 自署する 」「 自筆で書く 」     ※  自動詞はない
–  形容詞  「 サイン入りの 」「 肉筆の 」

意味合いは表題に重なるものの、 普通のビジネス向けではない。

◇  文芸 が主用途


すなわち、  文学 学問 芸術

著作者  または  芸能人  などの 有名人に使うのが通例。

autograph letter
( 手書きの手紙 )    ※  タイプ打ちでなく、肉筆

autograph letter,  signed
( 署名入り肉筆手紙 )

autograph manuscript
( 手書きの原稿、 肉筆原稿 )

autograph manuscript,  signed
( 署名入り肉筆原稿 )    【 略 】  a.ms.s.

【発音】  mǽnjəskrìpt
【音節】  man-u-script  (3音節)

 

 

【参考】    ※  外部サイト

■  脱ハンコで攻勢。
電子契約 “ 国内利用1位 ” VS “ 世界1位 ” それぞれの闘い方
https://www.businessinsider.jp/post-230201
2021年2月25日付

■  行政手続きの認め印全廃 婚姻届や車検 実印は継続
【和文】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66173380T11C20A1AM1000/
【英文】
https://asia.nikkei.com/Politics/Japan-to-drop-seal-requirement-in-99-of-administrative-procedures
2020年11月13日付

■  弁護士の解釈「電子署名」と「電子サイン」の違い
https://toyokeizai.net/articles/-/375564
2020年9月30日付

■  ハンコは「抵抗勢力」か 印章制度の本質と過度なデジタル化の危険
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200812/pol/00m/010/013000c
2020年8月13日付

■  「脱ハンコ」へ整備加速  電子書類の公的認証、年内に  テレワークの拡大契機
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59355130Q0A520C2EE8000/
2020年5月21日付

■  在宅勤務で「電子印」広がる 慣行見直し加速か
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/200521/ecd2005210655001-n1.htm
2020年5月21日付

■  「紙」「ハンコ」「手書き」の三悪を撲滅せよ
アフターコロナ、「IT後進国」の日本は生まれ変われるか
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00868/050100079/?P=4
2020年5月12日付

■  英語の「サイン」の書き方・使い方・求め方
https://eikaiwa.weblio.jp/column/knowledge/tourism/signature_autograph
2016年11月8日付
↓↓↓


自筆署名は 「 信頼 」 と 「 信用 」 そのもので、

意思表示 」 と 「 自己同一性 」 の証明手段

 

 

 

 

 

 

モバイルバージョンを終了