Hassle-free
2021/01/16
手間なし
“hassle-free” は、キャッチコピーによく出る形容詞 。
■ 面倒な作業は不要
■ 誰でも簡単にできる
■ あっと言う間に完了
こんな製品・サービスの宣伝文句に打ってつけ。
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形容詞 なので、名詞を飾るのが基本。
また、動詞を伴い、述語となることも普通にある(例文参照)。
【参照】 英語の形容詞は弱すぎて、述語として自立不能
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◆ 「ネット通販戦国時代」とも称される、通販全盛期の昨今。
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とりわけ頻出な言い回しが、
hassle-free returns
<返品手続きが非常に簡単>な便利さが売り。
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大手アマゾンやイーベイが一部導入していること
からも、売り手(セラー)側の要求事項として、
事実上の標準になりつつある。
買い手(バイヤー)にとっては、確実な安心材料となる。
消費者保護の観点からも、有効な制度に違いない。
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一方、セラー側にとっては、酷なケースが少なくない。ー
理不尽な返品をも受け入れる必要性が高まるからである。
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法定の危険負担を上回る責任の大きさに耐えきれず、
撤退する販売業者も多い。
同時に、返品処理や苦情対応を担当する従業員の
ストレス軽減に役立つ側面もあり、損ばかりでない。
“hassle-free returns“ は、
即効の満足感と消費者重視を追求する世界的時流に乗っており、
今後ますます定着していくはず。
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特に、海外通販・個人輸入・海外オークションには不可欠。
海外と取引する機会のある方は、ひと目で認識できれば心丈夫。
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◆ “hassle-free” の起用は、返品にとどまらない。
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例えば、パソコン分野でも多用される。
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hassle-free access
(簡単アクセス) -
hassle-free install
(手間なしインストール) -
hassle-free setups
(簡単設定)
形容詞 “hassle-free” を1語入れるだけで、企業努力を
さり気なくアピールできる ため、企業に都合よい。
煩わしさを最小限に押さえてあり、
使い勝手がよい利点をさらりと示す。
くどい宣伝に見えないので、好印象。
形容詞1語と書いたが、実際は2語をハイフンで結ぶ
複合形容詞(compound adjective)である。
<「複合形容詞」例 >
“laid-back“、”unheard-of“、”fill
“self-explanatory“、”
“long-overdue“、”well-done“、”so-called“、
“life-threatening“、”unhea
”well-established”、”shell-shocked”、”self-inflicted”
※ 複合名詞(compound nouns)兼用も含む
“hassle-free” は、名詞 “hassle”(困難)に、
連結形 “free”(~がない)をつなげた複合語。
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すなわち、<名詞+形容詞形>の複合形容詞。
ここでの “- free” は、接尾辞(suffix)でない。
独立した形容詞 “free” から生じた点で、
単独使用できない接尾辞 とは異なる。
間違いやすい点なので、おさらいしてみよう。
■ 「接尾辞」(suffix)
単語の意味を変えたり、広げたりする部分
【例】 “ful”(満ちている)、 “less”(~のない)
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■ 「連結形」(combining form)
独立した単語を組み合わせて、新しい用語を作る
【例】 “self-explanatory“、 ”well-established”
普段は意識しなくてもよいが、英文法上、
「接尾辞」と「連結形」は区別すべきものである。
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より詳細は、以下をご参照いただければと願う。
・ 「接尾辞」と「連結形」の違い
・ 「接頭辞」と「連結形」の違い
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ー-
「連結形」” free ” を用いた「複合形容詞」例
- advertise-free / ad-free
(広告なしの)
– - alcohol-free
(アルコールを含まない)
– - barrier-free
(バリアフリーの)
– - caffeine-free
(カフェイン抜きの)
– - cancer-free
(癌がない)(癌が治った)
– - cholesterol-free
(コレステロール抜きの)
– - commercial-free
(コマーシャルの入らない)
– - device-free
(電子機器なしの)
– - drug-free
(麻薬を使わない)
– - duty-free
(免税の)
– - fat-free
(無脂肪の)
– - hands-free
(ハンズフリーの)
– - jam-free
(紙詰まりなしの)
– - nuclear-free
(非核の)
– - odor-free
(無臭の)
– - regret-free
(後悔なしの)
– - sugar-free
(砂糖の入っていない)
– - toll-free
(フリーダイヤルの)
– - distraction-free
(気が散らない)
◆ “hassle” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
【発音】 hǽsl
【音節】 has-sle (2音節)
ー
語源は不詳とされるが、初出は20世紀前半。
– 名詞 「口論」「けんか」「困難」 ※ 可算・不可算兼用
– 自動詞 「口論する」
– 他動詞 「悩ます」
一貫して困った様子で、ネガティブな印象。
ここでは名詞「困難」、ひいては「面倒なこと」。
“hassle“
–
noun
1. [countable, uncountable] spoken
something that is annoying, because it causes
problems or is difficult to do.
–
2. [countable] American English; informal
an argument between two people or groups.
(LDOCE6、ロングマン)
【発音】 hǽsl
【音節】 has-sle (2音節)
【ご注意】
◆ “hassle-free” の趣旨は、冒頭の緑字の通り。
- 名詞 “hassle“(困難)
- 連結形 “free“(~がない)
「困難がない」、ひいては「 面倒がない 」。
定訳はないに等しいので、内容に応じて和訳する。
時折「ハッスルフリー」と書き表すウェブサイトを見かける。
先述の “hustle” と混同する危険があるため、
カタカナ書きは避ける方がよいかもしれない。
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–
“Let me show you a hassle-free way to cut meat.”
(お肉の簡単な切り方をお見せしましょう。)
“I want to make sure your trip is hassle-free.”
(あなたの出張が円滑にいくようにしたい。)
“This device provides hassle-free charging system.”
(このデバイスで手間なく充電できます。)
“Thank you for the hassle-free transaction.”
(スムーズなお取引をありがとうございます。)
“I’m looking for the hassle-free path to paperless.”
(難なくペーパーレス化する方法を探している。)
“Our immigration procedures were hassle-free.”
(我々の出入国手続きは手間がかからなかった。)
“Tips for hassle-free styling of hair”
(手間なしで髪を整えるための秘訣)