Alternative
2022/03/20
代替、 代替の、 選択肢
” alternative ” には、形容詞と名詞がある。
主な意味合いは重なる。
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◆ 語義のポイントは、 次の2つ。
- 代わり ( → 代替 )
- 選ぶ ( → 選択 )
この2つを押さえておけば、” alternative ” の基本は会得可能。
【発音】 ɔːltə́ːrnətiv
【音節】 al-ter-na-tive (4音節)
- “A wet signature is an alternative to a digital signature.”
( 直筆サインは、デジタル署名の代わりになります。)ー
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「 代替 」と「 選択 」
ー
日常的に見聞きする「 代替○○ 」 の定訳が、” alternative “。
実際は、” alternative _____ “ と表現される名詞が、
「 代替○○ 」と和訳され、 日本社会に取り入れられる
流れが目立つ。
その代表格が、「 代替エネルギー 」と「 代替医療 」。
時代の趨勢に乗り、日英メディアによく出てくる。
旭日昇天の勢いと言ったら過言だろうが、いずれも
未来への展望を指し示す注目分野に違いない。
日英それぞれ、日常に定着した感のある言葉である。
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◆ まず「 代替エネルギー 」。
英語学習者向けの定義は、
electricity or power that is produced
using the energy form the sun, wind,
water, etc.
( OALD9、 オックスフォード現代英英辞典 )
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英語圏では「 再生可能エネルギー 」( renewable energy )
の一種として見込まれている。
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代替エネルギー
ー-
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◆ 日本の「 代替エネルギー 」は「 石油代替エネルギー 」を表す。
それゆえに「 新エネルギー 」と銘打って区別している。
本来の ” alternative energy ” は、有限資源である
「 枯渇性エネルギー 」に対するもの。
ところが、日本式「 代替エネルギー 」は、
一部の「 枯渇性エネルギー 」を含む。
そのため、両者を混同しないように、日本では
「 新エネルギー 」と称している。
地下資源( ウランが中心 )を利用する「 原子力発電 」は、
石炭、石油、天然ガスなどと並び、「 枯渇性エネルギー 」
に分類される。
非化石エネルギーだが、 有限なのである。
「 原子力発電 」は、「 石油代替エネルギー 」かつ
「 枯渇性エネルギー 」。
日本式の「 代替エネルギー 」 には入るが、
” alternative energy ” ではない。
したがって、「 新エネルギー 」からも外される。
1997年施行の 「 新エネルギー法 」及び「 施行令 」の
対象は、” alternative energy ” と重なる。
上図の「 太陽光 」発電、「 風力 」発電が分かりやすい。
その他、バイオマス( 動植物 )、水力、地熱など。
” alternative energy ” の直訳は「 代替エネルギー 」。
しかし、法規をはじめとする各方面との兼ね合いから、
日本では「 新エネルギー 」と訳されるわけだ。
この英訳は ” new energy ” だが、 英語圏では
” alternative energy ” で根付いている。
まったく紛らわしい。 もう翻訳者泣かせ。
やむを得ず、 カッコに入れて和訳したりする。
ーー
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◆ お次は 「 代替医療 」。
「 通常医療の代わりに用いられる医療 」を指す。
学術用語辞典の定義は、
Alternative medicine is a wide range of
treatments for medical conditions that
people use instead of, or within,
Western medicine.
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代替医療
–
–
◆ 近代西洋医学に基づく「 通常医療 」に対する位置づけ。
「 代替エネルギー 」に劣らず、定義づけは複雑な様相。
「 代替医療 」の定義も中身も、国によってかなり異なる。
例えば、鍼灸やハーブ療法の一部を通常医療として
扱う国もあれば、そうでない国もある。
漢方医学についても、見解は大きく分かれ、一定の
効用を認めつつも、代替医療として分類する国が多め。
日本でも、漢方医学に関心や理解を示し、漢方薬を
処方する医師も増えてきたとはいえ、まだまだ
蚊帳の外に置かれる模様。
日本のあん摩・マッサージ・指圧には、国家資格
が存在し、「 医業類似行為 」に分類される。
「 代替医療 」の担い手の主体は、医師以外。
これが、2022年現在における、各国の潮流と言える。
その反面、時代を先導する有力リーダーや知識層ほど、
代替医療を重んじる傾向が世界的にみられる。
これまた、真の評価が揺らぐ一因をもたらしている。
【参考】 ※ 外部サイト
「 東洋医学 」が今、 世界で大注目されているワケ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91104
2022年1月7日付
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◆ 最近は「 オルタナティブ医療 」の表記も珍しくない。
オルターナティブ【alternative】
1. 代案。代替物。
2. 既存の支配的なものに対する、もう一つのもの。
特に、産業社会に対抗する人間と自然との共生型
の社会を目ざす生活様式・思想・運動など。
… 広辞苑 第五版 ( 1998年11月刊 )
… 広辞苑 第六版 ( 2008年1月刊 )
ー
オルタナティブ【alternative】
1. 代案。代替物。
2. 既存の支配的なものに対抗する、生活様式や思想・運動。
… 広辞苑 第七版 ( 2018年1月刊 )
◇ 見出し( 読み )も改訂された
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◆ こうして1990年代から『 広辞苑 』に載っている
割には、一般社会に馴染まなかった印象がある。
長ったらしく、 発音しにくい語だからか。
【発音】 ɔːltə́ːrnətiv
【音節】 al-ter-na-tive (4音節)
いよいよ出番が増えてきたとすれば、我が国における
代替医療の立ち位置が変わってきたのかもしれない。
ー
◆ 門外漢による 概要説明 はさておき、
本領の語学面に話頭を転じることにする。
冒頭に記した通り、” alternative ” には
形容詞と名詞( 可算名詞のみ )がある。
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■ 形容詞 ” alternative “
代わりの、 代替の、 どちらかの
- 重要度: <3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
■ 可算名詞 ” alternative ”
選びうる1つのもの、 二者択一
- 重要度: <3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
名詞も形容詞も < Academic Word List >(※)入り
※ 英語圏の大学教科書の頻出単語570語
( 以上、ロングマン LDOCE6 )
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両品詞の重要度・頻出度に大差はない。
形容詞の書き言葉の頻出度の方が、
ワンランク上回るだけの違い。
ともに、そこそこ使われている。
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◆ 語原は、ラテン語「 交替する 」の過去分詞( alternātus )。
自他動詞・形容詞・名詞の ” alternate “( 交替する )
や 自他動詞 ” alter “( 変える )と同源である。
【発音】 動詞 ɔ́ltərnèit 形容詞・名詞 ɔ́ltərnit
【音節】 al-ter-nate (3音節)
【発音】 ɔ́ltər
【音節】 al-ter (2音節)
見た目も似ているが、意味も語源を引き継ぎ、
どれも「 代わる 」で重なり合っている。
” alternative ” の場合、形容詞と名詞の示す
意味合いが共通する点は、 既に触れた。
先述した「 代替 」と「 選択 」。
基本はこの2つに行き着く。
以下、 形容詞と名詞をまとめて見ていこう。
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◆ 日本語で「 代替的 」を「 選択的 」と言い換える
場面がある。
どちらも、複数の「 選択肢 」を要する。
この「 選択肢 」は、可算名詞 ” alternative “。
複数形は ” alternatives “。
「 選択 」とはいえ、好き勝手に選べる
「 選り取り見取り( よりどりみどり ) 」で、
自由な選択ばかりとは限らない。
自由意志( free will )に基づく「 選択 」には、
名詞 ” choice ” または ” option ” の起用が好まれる。
特に、” option ” は、「 オプション品 」のイメージ通りで、
選んでも選ばなくてもよい気軽さがある。
一方、” alternative ” はもっと窮屈な感じ。
「 二者択一 」が定訳の一つであることからも推察できる。
もっとも、日常用法では「 二者 」とは限らない。
( 後掲 ” OALD9 ” の下線部 ” two or more “ 参照 )
いずれにせよ、「 必ず1つ選ばなければならない 」
といった 強迫的 なニュアンス を帯びがちなのが、
” alternative ” の持ち味。
使い方にもよるが、先の ” choice ” や ” option ”
に比べて、自由さに欠ける 雰囲気ということ。
すなわち、いくぶん切羽詰まった様子である。
- 取りうる可能な方法
- 残された選択
- 二つに一つ
- あと一つの手段
先に図示した「 代替エネルギー 」や「 代替医療 」
にしても、その 背景 に、
- 代わりを選ばずにいられない
と 急迫する事情 を匂わす。
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◆ 上掲の『 広辞苑 』が記す語釈は、 名詞用法。
それでも、形容詞と名詞の ” alternative ” をほとんど
カバーする内容である。
既述の「( 形容詞と名詞の )主な意味合いは重なる」を
裏付ける一手になるため、3大学習英英辞典( EFL辞典 )
と 突き合わせて みたい。
オルタナティブ【alternative】
1. 代案。 代替物。
( 広辞苑 第七版 )
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【形容詞】
■ an alternative idea, plan etc is different
from the one you have and can be used instead.
( LDOCE6、ロングマン )
■ that can be used instead of something else.
( OALD9、オックスフォード )
■ An alternative plan or method is one that you
can use if you do not want to use another one.
( CALD4、ケンブリッジ )
【名詞】
■ something you can choose to do or use
instead of something else.
( LDOCE6、ロングマン )
■ a thing that you can choose to do or
have out of two or more possibilities.
( OALD9、オックスフォード )
■ something that is different from something
else, especially from what is usual, and offering
the possibility of choice.
( CALD4、ケンブリッジ )
–
2. 既存の支配的なものに対抗する、
生活様式や思想・運動。
( 広辞苑 第七版 )
–
【形容詞】
■ deliberately different from what is usual,
expected, or traditional.
( LDOCE6、ロングマン )
■ different from the usual or traditional
way in which something is done.
( OALD9、オックスフォード )
■ Alternative things are considered to be
unusual and often have a small but enthusiastic
group of people who support them.
( CALD4、ケンブリッジ )
【発音】 ɔːltə́ːrnətiv
【音節】 al-ter-na-tive (4音節)
※ 下線は引用者
–
1と 2 の両方に該当しうる英文語釈も含むが、
まずまず二分できたと考える。
いかがだろう。
完全一致と言わぬまでも、上記『 広辞苑 』でも
” alternative ” の大枠は把握できる。
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◆ 基本的意味は難しくない。
中級学習者 が知識を総動員すれば、類推・推測可能。
例えば、
” Provide an alternative email address. ”
こう指示されれば、予備的な「 代替メルアド 」を1つ
求められていると即座に分かるはず。
となると、対策すべきは、連語( コロケーション )。
前後に連なる語( = 連語 )を記載する本が、
「 コロケーション辞典 」。
既記の通り、英単語全体から見た重要度・頻出度は、
トップランクの選に漏れる。
にもかかわらず、 ” alternative ” の連語に
たっぷり紙幅を割く辞書が少なくない。
これは実務上の大きい需要を示唆している。
ー
◆ 私たちの学習用に、辞書アプリ 3種から、
コロケーションを転載させていただこう。
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↑ “ Oxford Collocations Dictionary for
Students of English “ ( アプリ版 )
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ビジネスと相性のよい表現が並ぶ。
代替策と選択を迫られるのが、ビジネス社会の常態であるためか。
なにかと重宝される ” alternative “。
ぜひ覚えておきたい。
ー
< コロケーションについて >
・ aware
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
–
【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
threshold、 damage、 scrutiny、
backdrop、 paperwork、 struggle、
downfall、 bombshell、 feasible、
disparity、 presence