プロ翻訳者の単語帳

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Alternative

      2019/04/06

代替、代替の、選択肢

“alternative” には、形容詞と名詞がある。
主な意味合いは重なる。

◆ 語義のポイントは、次の2つ。

  • 代わり( → 代替
  • 選ぶ( → 選択

この2つを押さえておけば、”alternative”
の基本は会得可能。

【発音】 ɔːltə́ːrnətiv

image.pngーーー 「代替」と「選択」がポイント


日常的に見聞きする代替○○の定訳が
“alternative”。

実際は、alternative _____” と表現される名詞が、
「代替○○」と和訳され、日本社会に取り入れられる
流れが一般的。

その代表格が、「代替エネルギー」と「代替医療」。
時代の趨勢に乗り、日英メディアによく出てくる。

旭日昇天の勢いと言ったら過言だろうが、いずれも
未来への展望を指し示す注目分野に違いない。

日英それぞれ、日常に定着した感のある言葉である。

◆ まず「代替エネルギー」。

英語学習者向けの定義は、

electricity or power that is produced 
using the energy form the sun, wind, 
water, etc.

(OALD9、オックスフォード現代英英辞典)

英語圏では「再生可能エネルギー」(renewable energy)
の一種として見込まれている。

image.png——–  代替エネルギー(新エネルギー)

日本の「代替エネルギー」は「石油代替エネルギー」を表す。
それゆえに「新エネルギー」と銘打って区別している。

本来の “alternative energy” は、有限資源である
「枯渇性エネルギー」に対するもの。

ところが、日本式「代替エネルギー」は、一部の「枯渇性
エネルギー」を含む。

そのため、両者を混同しないように、日本では
「新エネルギー」と称している。

地下資源(ウランが中心)を利用する「原子力発電」は、
石炭、石油、天然ガスなどと並び、「枯渇性エネルギー」
に分類される。 非化石エネルギーだが、有限なのである。

「原子力発電」は、「石油代替エネルギー」かつ
「枯渇性エネルギー」。 日本式の「代替エネルギー」
には入るが、”alternative energy” ではない。

したがって、「新エネルギー」からも外される。

1997年施行の「新エネルギー法」及び「施行令」の
対象は、”alternative energy” と重なる。

上図の「太陽光」発電、「風力」発電が分かりやすい。
その他、バイオマス(動植物)、水力、地熱など。

“alternative energy” の直訳は「代替エネルギー」。
しかし、法規をはじめとする各方面との兼ね合いから、
日本では「新エネルギー」と訳されるわけだ。

この英訳は “new energy” だが、英語圏では
“alternative energy” で根付いている。

まったく紛らわしい。 もう翻訳者泣かせ。
やむを得ず、カッコに入れて和訳したりする。
ーー

◆ 次に「代替医療」。

「通常医療の代わりに用いられる医療」を指す。

学術用語辞典の定義は、

Alternative medicine is a wide range of
treatments for medical conditions that
people use instead of, or within,
Western medicine.

Cambridge Academic Content Dictionary

image.png————————  代替医療  

近代西洋医学に基づく「通常医療」に対する位置づけ。
「代替エネルギー」に劣らず、定義づけは複雑な様相。

「代替医療」の定義も中身も、国によってかなり異なる。

例えば、鍼灸やハーブ療法の一部を通常医療として
扱う国もあれば、そうでない国もある。

漢方医学についても、見解は大きく分かれ、一定の
効用を認めつつも、代替医療として分類する国が多い。

日本でも、漢方医学に関心や理解を示し、漢方薬を
処方する医師も増えてきたとはいえ、まだまだ
蚊帳の外に置かれる模様。

※ 日本では、あん摩・マッサージ・指圧には
国家資格があり、「医業類似行為」に分類される

「代替医療」の担い手の主体は、医師以外。
これが、2019年現在における各国の潮流と言える。

その反面、時代を先導する有力リーダーや知識層ほど、
代替医療を重んじる傾向が世界的にみられる。

これまた、真の評価が揺らぐ一因をもたらしている。

◆ 最近は「オルタナティブ医療」の表記も珍しくない。

  オルターナティブ【alternative】

1. 代案。代替物。
2. 既存の支配的なものに対する、もう一つのもの。
特に、産業社会に対抗する人間と自然との共生型
の社会を目ざす生活様式・思想・運動など。

… 広辞苑 第五版(1998年11月刊)
… 広辞苑 第六版(2008年1月刊)

  オルタナティブ【alternative】

1. 代案。代替物。
2. 既存の支配的なものに対抗する、
生活様式や思想・運動。

… 広辞苑 第七版(2018年1月刊)
※  見出し(読み)も改訂された

20年以上も『広辞苑』に載っている割には、
一般社会に馴染まなかった印象がある。

長ったらしく、発音しにくい語だからか。

【英語発音】 ɔːltə́ːrnətiv

いよいよ出番が増えてきたとすれば、我が国における
代替医療の立ち位置が変わってきたのかもしれない。

◆ 門外漢による概要説明はさておき、
本領の語学面に話頭を転じることにする。

冒頭に記した通り、”alternative” には
形容詞と名詞(可算名詞のみ)がある。

■ 形容詞 “alternative”

代わりの、代替の、どちらかの

  • 重要度: <3001~6000語以内>
  • 書き言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
  • 話し言葉の頻出度:<2001~3000語以内>

■ 可算名詞 “alternative”

選びうる1つのもの、二者択一

  • 重要度: <3001~6000語以内>
  • 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
  • 話し言葉の頻出度:<2001~3000語以内>

名詞も形容詞も<Academic Word List>(※)入り
※ 英語圏の大学教科書の頻出単語570語

(以上、ロングマン LDOCE6 の表記より)

両品詞の重要度・頻出度に大差はない。

形容詞の書き言葉の頻出度の方が、
ワンランク上回るだけの違い。

ともに、そこそこ使われている。

語原は、ラテン語「交替する」の過去分詞(alternātus)。
自他動詞・形容詞・名詞の “alternate”(交替する)
や 自他動詞 “alter”(変える)と同源である。

見た目も似ているが、意味も語源を引き継ぎ、
どれも「代わる」で重なり合っている。

“alternative” の場合、形容詞と名詞の示す
意味合いが共通する点は、既に触れた。

先述した「代替」と「選択」。
基本はこの2つに行き着く。

以下、形容詞と名詞をまとめて見ていこう。


◆ 日本語で「代替的」を「選択的」と言い換える
場面がある。

どちらも、複数の「選択肢」の存在を要する。
この「選択肢」は、可算名詞 “alternative”。
複数形は “alternatives”。

「選択」とはいえ、好き勝手に選べる
「選り取り見取り(よりどりみどり)」で自由な
選択ばかりとは限らない。

自由意志(free will)に基づく「選択」には、
名詞 “choice” または “option” の起用が好まれる。

特に、”option” は「オプション品」のイメージ通りで、
選んでも選ばなくてもよい気軽さがある。

一方、”alternative” はもっと窮屈な感じ。

「二者択一」が定訳の一つであることからも推察できる。
もっとも、日常用法では「二者」とは限らない。
(後掲 “OALD9” の下線部 “two or more参照)

いずれにせよ、必ず1つ選ばなければならない
といった強迫的なニュアンスを帯びがちなのが、
“alternative” の持ち味。

使い方にもよるが、先の “choice” や “option
に比べて、自由さに欠ける雰囲気ということ。

すなわち、いくぶん切羽詰まった様子である。

  • 取りうる可能な方法
  • 残された選択
  • 二つに一つ
  • あと一つの手段

先に図示した「代替エネルギー」や「代替医療」
にしても、その背景に、

  • 代わりを選ばずにいられない

急迫する事情を匂わす。

◆ 上掲の『広辞苑』が記す語釈は名詞用法。

それでも、形容詞と名詞の “alternative” をほとんど
カバーする内容である。

既述の「(形容詞と名詞の)主な意味合いは重なる」を
裏付ける一手になるため、3大学習英英辞典(EFL辞典)
突き合わせてみたい。

  オルタナティブ【alternative】

1. 代案。代替物。
(広辞苑 第七版)

【形容詞】
an alternative idea, plan etc is different
from the one you have and can be used instead.
(LDOCE6、ロングマン)

that can be used instead of something else.
(OALD9、オックスフォード)

An alternative plan or method is one that you
can use if you do not want to use another one.

(CALD4、ケンブリッジ)

【名詞】
something you can choose to do or use
instead of something else.
(LDOCE6、ロングマン)

a thing that you can choose to do or
have out of two or more possibilities.
(OALD9、オックスフォード)

something that is different from something
else, especially from what is usual, and offering
the possibility of choice
.
(CALD4、ケンブリッジ)

2. 既存の支配的なものに対抗する、
生活様式や
思想・運動。

(広辞苑 第七版)

【形容詞】
deliberately different from what is usual,
expected, or traditional.
(LDOCE6、ロングマン)

different from the usual or traditional
way in which something is done
.
(OALD9、オックスフォード)

Alternative things are considered to be
unusual and often have a small but enthusiastic
group of people who support them
.
(CALD4、ケンブリッジ)

【発音】 ɔːltə́ːrnətiv

※ 下線は引用者

1と 2 の両方に該当しうる英文語釈も含むが、
まずまず二分できたと考える。 いかがだろう。

完全一致と言わぬまでも、上記『広辞苑』でも
“alternative” の大枠は把握できる。

◆ 基本的意味は難しくない。

中級学習者が知識を総動員すれば、類推・推測可能。

例えば、
Provide an alternative email address.

こう指示されれば、予備的な「代替メルアド」を1つ
求められていると即座に分かるはず。

となると、対策すべきは、連語(コロケーション)。

前後に連なる語(=連語)を記載する本が、
コロケーション辞典」。

既記の通り、英単語全体から見た重要度・頻出度は、
トップランクの選に漏れる。

にもかかわらず、 “alternative” の連語に
たっぷり紙幅を割く辞書が少なくない。

これは実務上の大きい需要を示唆している。

◆ 私たちの学習用に、辞書アプリ3種から、
コロケーションを転載させていただこう。

image.png


↑ 
Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より

image.png

↑ “LDOCE5” ロングマン現代英英辞典 第5版
(アプリ版)より
※「LDOCE6」アプリの問題点は、こちら

ビジネスと相性のよい表現が目立つ。

代替策と選択を迫られるのが、ビジネス社会の常態
であるためか。

なにかと重宝される “alternative”。

ぜひ覚えておきたい。

< コロケーションについて >
・ “aware
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か

【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
backdrop“、”paperwork“、”struggle”、
downfall“、”bombshell

 

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