Wrongdoing
2024/10/01
不正行為、 犯行、 悪行
名詞のみの単語。
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「 悪行 」「 非行 」「 不行跡 」。
さらに「 犯行 」「 不正行為 」「 犯罪 」を意味する。
程度の差はあれど、いずれも「 悪い行い 」。
文字通りである。
名詞 ” doing ” には、可算名詞 と 不可算名詞
があるが、” wrongdoing ” も同様。
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” wrongdoing “
formal: illegal or immoral behavior.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
【発音】 rɔ́ːŋdùːiŋ
【音節】 wrong-do-ing (3音節)
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◆ 以下のオンライン英英辞典でも、まるで
口裏を合わせたかのように、説明がほぼ一致する。
・ ロングマン( LDOCE )
・ オックスフォード( OALD )
・ ケンブリッジ( CALD )
・ コウビルド( COBUILD )
・ マクミラン( MEDAL )
・ メリアム ウェブスター
–
◆ 法律辞典ではどう説明されているか。
アメリカには、“ Black’s Law Dictionary “
( ブラックス法律辞典 )という、有力な法律辞典が存在する。
–
( Amazon Japan / Amazon US )
–
1891年に発刊され、130年以上の歴史を誇る。
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判例などに最も引用される辞典である。
英米法を学ぶ学生で、知らない者は皆無レベルの 存在感。
初稿時点( 2018年5月 )での最新版( 第10版、2014年刊 )
の解説は以下の通り。
wrongdoing. n. (15c)
1. Illegal or improper conduct.
2. An instance of bad or immoral behavior.
“ Black’s Law Dictionary, 10th Edition ”
p. 1849. (Thomson Reuters 2014).
※ 下線は引用者
–
どれも、以下の要素を含む。
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(1) illegal ( 違法の ) = not legal
(2) immoral ( 不道徳な ) = not legal
(3) dishonest ( 不誠実な ) = not honest
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◇ 公務員や医者などの業務上の不祥事は、
” misconduct ” ともいう。
不可算名詞である。
- “She was fired for gross misconduct.”
(彼女は甚だしい違法行為のため解雇された。)
– - “His past sexual misconduct is coming to light.”
(彼の犯してきた性的不正行為が表面化しつつある。)
◇ ” sexual misconduct ” は、米国の社会通念上の解釈では、
セクハラ( sexual harassment ) や性的暴行( sexual assault )
を含むのが一般的。
misconduct. (17c)
1. A dereliction of duty; unlawful, dishonest,
or improper behavior, esp. by someone in a
position of authority or trust.
2. An attorney’s dishonesty or attempt to
persuade a court or jury by using deceptive
or reprehensible methods.
“ Black’s Law Dictionary, 10th Edition ”
pp. 1149-1150. (Thomson Reuters 2014).
※ 下線は引用者、
※ ” esp. ” = ” especially “( 特に )
■ 名詞 ” misconduct “
【発音】 miskɑ́ndʌkt
【音節】 mis-con–duct (3音節)
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動詞とは、発音と強勢( アクセント )が異なる。
■ 動詞 ” misconduct “
【発音】 mìskəndʌ́kt
【音節】 mis-con-duct (3音節)
–
(1)illegal はすべてに記載されているため、
「 違法の 」は ” wrongdoing ” の根幹をなす。
「 悪い行い 」との成り立ちからも納得できる。
また、” formal “( 正式 )とほとんどにあるが、
普段のニュースでも、年がら年中出てくる印象。
ニュースに頻出の一文が、こちら。
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–
He denied any wrongdoing.( 彼は犯行を一切否定しました。)
( 彼は不正行為を一切否定しました。)
ここでは、不可算名詞である。
” wrongdoing ” の場合、可算名詞でなく、
不可算名詞が基本 となる。
本稿でも不可算名詞の用法に絞って、
取り上げる。
「 犯行 」とは「 犯罪行為 」
不可算名詞 ” wrongdoing ” は、
具体的な罪名や罪状に触れることなく、
「 不正行為 」や「 犯行 」を示唆
◆ 先述の通り、この「 違法の 」「 犯行 」こそ、
” wrongdoing ” の根幹。
これ以外の ” immoral ” や ” dishonest ” が示す、
「 不行跡 」「 不道徳 」「 不誠実 」は、
ニュースではマイナー用法。
そもそも、瑣末な悪行なら 報道価値 はない。
ニュースになるには、相応の「 違法 」「 犯行 」に至る必要がある。
これは、ニュース報道に限らない。
辞書にある ” wrongdoing ” の程度は様々だが、
日常的に使われる用途も、やはり「 違法 」「 犯行 」が目立つ。
少々の不行跡では、問題視されにくいため、
” wrongdoing ” の出番が少ない。
–
日常使用の < 頻出度 > は、こんな流れで決まることが珍しくない。
プロの検証が入るニュースと異なり、
日常では「 不正行為 」と総称されたりする。
不正を認めるには、正当な法の手続き( due process )
に従う必要があり、その手続きは煩雑で時間がかかる。
通例、形容詞 ” any ” を伴い、「 なんらかの悪い行い 」
といったあいまいな内容を「 疑い 」の段階から発表できる
便利さがある。
” any wrongdoing ” は、
< 2語ワンセット >で多用される。
- 否定文に用いて「 悪いことは なにも していない 」
- 肯定文に用いて「 なんらかの 疑惑 」
–
副詞 ” not ” の他、他動詞 ” deny “( 否定する )
のような否定を意味する動詞にて、否定文を
構成することができる。
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◆ 自分を弁護するには、
- ” I deny any wrongdoing. “
- ” I didn’t do any wrongdoing. “
- ” I haven’t done any wrongdoing. “
( 悪いことは なにもしていない。)
私は やってません
◆ 逆に一部でも認める場合は、否定語は入れず、
- ” I apologize for any wrongdoing.“
(疑惑に対して、お詫び申し上げます。)
(不正に対して、お詫び申し上げます。)
繰り返すが、
◇ 具体的な罪名や罪状には触れずに、
あいまいな「 なんらかの悪い行い 」を
「 疑惑 」段階から 表現できる
このため、” wrongdoing ” は重宝される。
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- “There is no evidence of wrongdoing.”
(不正行為の証拠はない。)
– - “The company repeatedly denies any wrongdoing.”
(その会社は不正行為を繰り返し否定している。)
– - “She was cleared of any wrongdoing.”
(彼女の犯行の疑いが一切晴れた。)
– - “He was exonerated of charges of wrongdoing.”
(彼は不正行為の容疑から解放された。)
– - “I never admitted any wrongdoing.”
(私は不正をしたことを一度も認めていない。)
– - “I never intended any wrongdoing.”
(意図的に悪事を行おうとしたことは一切ない。)
【類似表現】
” foul play ”
https://mickeyweb.info/archives/25901
(不正行為、事件性)
【参考】
今回の事件〔 STAP細胞の小保方問題:引用者注 〕は、
科学的不正( misconduct )の典型例である。ミスコンダクトは、事実のでっち上げ( fabrication )、
データの改竄( falsification )、他人の成果の剽窃( plagiarism )
に代表される、科学的成果の信頼を損なうような行為を指し、
これらの頭文字から FFP問題 と称されることもある。(中略)
最も判断が難しいのは、研究者が意図的に行う
詐欺行為( research fraud )よりも、
無意識の不正( unconscious misconduct )
の方が多いということである。( 2015.1.31 )
( うえやま たかひろ・科学技術政策 )上山隆大(2015)「 科学的不正と私益のはざま 」,
『 図書 』 2015年4月号, pp.12-16, 岩波書店.––
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※ 英単語も全部、原文のまま。
ただし、見やすくするため、一部に色を加え、太字にした。
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・ misconduct
■ 名詞 ” misconduct “
【発音】 miskɑ́ndʌkt
【音節】 mis-con–duct (3音節)
■ 動詞 ” misconduct “
【発音】 mìskəndʌ́kt
【音節】 mis-con-duct (3音節)
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・ fabrication
【発音】 fæ̀brikéiʃən
【音節】 fab-ri-ca-tion (4音節)
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・ falsification
【発音】 fɔ̀ːlsifikéiʃən
【音節】 fal-si-fi-ca-tion (5音節)
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・ plagiarism
【発音】 pléidʒərìzm
【音節】 pla-gia-rism (3音節)
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・ fraud ※ ” scam ” 参照
【発音】 frɔd
【音節】 fraud (1音節)
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・ unconscious
【発音】 ʌnkɑ́nʃəs
【音節】 un-con-scious (3音節)