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Keep distance

      2024/09/25

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 9 minutes

距離を置く、–  距離を取る  

 

距離を取る

 

相手が人間であろうと、 物事であろうと、
距離を置かなければならない時期がある

冷静になるため。衝突を避けるため。
成長を促すため。 心身を休めるため。

しばし離れる方がよい場面は、
人生の随所随所に現れる。

その際、 時宜を得た判断に基づき、 適切な距離を保てるか。

これができれば、 大抵の困難は乗り越えていけるだろう。

時間が経てば、 潮目が変わることは多い。

そうなると、 自ずと見方も違ってくるもの。

Time changes.   Every tide turns.

しかし、 肝心な距離の取り方が難しい。


◆  ” keep distance ”  の表す「 距離 」は

心理的・物理的  →  両方OK


公私にわたり、 硬軟両様に幅広く使える 距離を置く

末尾の例文でご案内するように、 堅めのニュース記事にも出てくる。

体験的に理解できるばかりでなく、 日本語にだいぶ重なるため、
なにかと身近で便利な言い回し。

◆  これから、この2語を用いた決まり表現を一挙公開する。

いつもの 4大学習英英辞典( EFL辞典 )に加え、
オンライン英英2点、 ネイティブ向け辞書3点より引用。

この順に、 合計9点。

※  オンライン辞書のアクセスは、 本稿初稿時点( 2019年9月 )

要所には、 緑のハイライトを施した。

■  keep your distance

a)  to stay far enough away from someone or something to be safe.

b)  (also keep somebody at a distance)
to avoid becoming too friendly with someone.

( LDOCE6、 ロングマン )

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■  keep somebody at a distance

to refuse to be friendly with somebody; to not let
somebody be friendly towards you.

■  keep your distance (from somebody/something)

1.  to make sure you are not too near somebody/something.
2.  to avoid getting too friendly or involved with a person, group, etc.

( OALD9、 オックスフォード )

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■  keep your distance

to avoid going near someone or something, or to avoid getting
too friendly with people.

( CALD4、 ケンブリッジ )

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■  If you keep your distance from someone or something
or keep them at a distance, you do not become involved
with them.

■  If you keep your distance from someone or something,
you do not get physically close to them.

( COBUILD9、コウビルド )

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■  keep your distance

1.  to avoid going near someone or something.
2.  to avoid becoming friends with someone.

マクミラン

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■  keep one’s distance or keep at a distance

to stay aloof;  maintain a reserved attitude.

メリアム ウェブスター

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■  keep one’s distance

to maintain a proper or discreet reserve in respect of another person.

Collins English Dictionary, 12th Edition

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■  keep at a distance

to be reserved or cool toward; treat aloofly.

■  keep one’s distance

to be or remain aloof or reserved.

Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

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■  keep one’s distance

Stay away; also, remain emotionally remote.
[ Late 1500s ]

The American Heritage Dictionary of Idioms,  2nd Edition

  ハイライトは引用者

※  オンライン辞書のアクセスは、 本稿初稿時点( 2019年9月 )

——————————————————–

  •  形容詞  ” aloof ”   よそよそしい、離れた
    【発音】  əlúːf
    【音節】  a-loof  (2音節)

  •  形容詞  ” reserved ”   控えめな
    【発音】  rizə́ːrvd
    【音節】  re-served  (2音節)

  •  名詞  ” reserve ”   控えめな態度、 遠慮
    【発音】  rizə́ːrv
    【音節】  re-serve  (2音節)


つれなく冷たい。  
無情で思いやりがない。

そんな語釈ばっか。

だが、距離を置く 」「 距離を取る
とはそういうこと。


対象が無生物( ” something ” ) ならともかく、
生身の人間( ” somebody “、” someone ” )となると、
立場や余波を考慮する必要があり、 結構煩わしい。

それゆえ、「 肝心な距離の取り方が難しい 」。

上記語釈を順繰りに読み、

  •  疎外感・不快感を覚えるか
  •  いじめられているようなつらさが伴うか
  •  神経を突き刺す痛みを催すか

これらの感覚が少しでも体感できれば、 英語に馴染んでいる。

自信をもってよい。

初学者は、 ネガティブ語釈のオンパレードでも、 まだ何も感じない。

◆  先の英英辞典9点をまとめると、 次の3つ。

  1.  keep your distance
  2.  keep one’s distance
  3.  keep at a distance

3つとも距離を置く 」「 距離を取る の意。

1と2は、 実質同じ。

なぜなら、 代名詞「 2.  one’s 」は、所有格の代表形。

具体的には、 不定代名詞 ( an  indefinite  pronoun )
” one ”  の所有格( possessive ) が  ” one’s “。

my、your、his、her、its、their、our を代表するのが、
” one’s “。

所有格のひとつに過ぎない 「 1.  your 」 以外にも対応する表現
であるから、 応用の効く代表形 「 2.  one’s 」 を起用している。

いわば、 所有格のワイルドカードとして使われる。

そして、「 3. keep at a distance 」は、
” LDOCE6 ” と ” CALD4 ”  が示すように、

  •  keep  somebody  at a distance

こうして、目的とする「 誰か 」( 下線部 )を挟むこともできる。

” somebody ” もここでは代名詞。

略して、 ” Sb “。

” someone ”、” something ” と同じく、 不定代名詞の複合語。

やはり、 代表形の機能を有し、 目的格を入れる箇所。

[ somebody someone ]

(1) somebody は someone より口語的 で、
呼びかけなどの場合に好まれる。

(2) 話し手と親密な関係にある特定の人を
念頭に置いている場合は someone が好まれる。
somebody はだれでもいい、とにかくだれか、
という気持を含む。

(3) 堅い書き言葉には通例 somebody は
用いない。



ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版 )
…  “ somebody ”  の語釈より
<大修館書店HP>


人称代名詞なら、me、you、him、her、us、them、it。

具体的な名前でもよい。

  •  Keep  him  at a distance.
  •  Keep  your boyfriend  at a distance.
  •  Keep  Bob  at a distance.
    ( 彼とは距離を置いとけ。)

ここの目的語は人間に限らない。

  •  Keep  the dog  at a distance.
  •  Keep  your phone  at a distance.
  •  Keep  drugs  at a distance.

無生物にも適用できるので、 相当重宝する。

以上より、このように二分できるのが  ” keep distance ” の決まり表現。

  •  Keep your distance
  •  keep one’s distance
  •  keep at a distance
  •  keep somebody at a distance

※  ” one ”  と ” somebody ” は、 不定代名詞
indefinite  pronouns )


上掲の  ” LDOCE6 ”  及び 『 メリアム ウェブスター 』の項目立てでは、
同義扱いされている。

したがって、 基本は全部距離を置く 」「 距離を取る でよい。

◆  語釈からは、 馴れ合いの人間関係を諌めている印象もある。

  • maintain a reserved attitude.( メリアム ウェブスター )
  • to maintain a proper or discreet reserve in respect of another person.
    ( Collins English Dictionary,  12th Edition )

既述したように、 ここでの ” reserved ” は、形容詞「 控えめな 」。

【発音】  rizə́ːrvd
【音節】  re-served  (2音節)

” reserve ” は、 ここでは名詞。

【発音】  rizə́ːrv
【音節】  re-served  (2音節)

他者を尊重するために、 遠慮がちな態度を取るという具合。

両者の解説は、 他とは趣が少々異なる。

「 親しき中にも礼儀あり 」 に似通う。

  • “My boss prefers to keep subordinates at a distance.”
    ( 私の上司は、部下から距離を置くことを好む。)

実際、 こういう方針の上司は少なくない。

意識的に他者を遠ざけるよう、 心掛ける人は大勢いる。

これまで挙げた数々の英英辞典で説明されている通り、
普遍性を示唆する。

つまり、 衆生界に蔓延する考え方。

国籍・人種・老若男女を問わず、 距離感のある人付き合いを
望む人々は、 まったく珍しくない。

経験上、 断言したくなる。

人間関係の苦手な方は、 このことを知るだけで、
心がぐっと楽に
なるかもしれない。

決して悪気はないのだ。

きっと、 十分な間合いを要する人なのだろう。

その人にとって、 それが心地よく、 安心な交わりなのだろう。

  • to stay far enough away from someone or something
    to be safe.
    ( LDOCE6 )

ご本人の希望により、 あえて距離を置かれているのであり、
必ずしもこちら側に問題があるわけでない

距離を取る動機は、 各人各様ということ

  • “She distances herself from me.”
    ( 彼女は僕から距離を置いている。)  ※  他動詞
  • “I’ve tried being friendly but she keeps her distance.”
    ( 彼女と仲良くしようとしたが、 距離を置かれている。)  ※  名詞
  • “She has distanced herself from me.”
    ( 彼女は僕から距離を置いた。)  ※  他動詞

そうは言っても、 この種のすれ違いはきつい。

  • “I’m keeping my distance from him.”
    ( 彼から距離を取っています。)  ※  名詞
  • “I’m grateful to have distanced myself from him.”
    ( 彼から距離を置けたことに感謝してるわ。)  ※  他動詞
  • “I opened up about distancing myself from him.”
    ( 彼から距離を取っていることを打ち明けました。)  ※  他動詞

相手に好意をもっている場合は、 なおさら。

拒絶されたと感じ、 ひどく傷ついたりする。

切ないものだ。

  • “You should keep your distance.”
    ( 距離を取る方がよい。)  ※  名詞

◆  一方、 厳しく拒む意図で、 露骨に遠ざける一幕もある。

  • to refuse to be friendly with somebody ( OALD9 )
  • you do not become involved with them ( COBUILD9 )
  • to avoid going near someone or something ( マクミラン )


refuse “、” do not “、” avoid ” は、 断固として拒むという感じ。

「  こっち来んな「  あっち行け「  絶対いや

こんな 峻拒 の意思を含み、 確実に避けている。

その理由は、 皆目見当がつかなかったりするから、 もう厄介。

いずれにせよ、 距離感の取り方は人それぞれである上、
状況いかん
で変動する性質を帯びるため、 悩ましい。

  • “At first, we kept our distance from each other.”
    (初めの頃は、お互いに距離を置いていた。)
  • “We ended up keeping our distance from each other.”
    (最終的に
    、お互いに距離を置くことになった。)
  • “I try to keep an emotional distance from my toxic parents.”
    (毒親から心理的距離を保つべく努めている。)
    (毒親から情緒的距離を保つべく努めている。)

◆  仕上げに、 単語チェック。

  ” keep ” は、 ここでは他動詞「 保つ 」の意味。

語源は、 古英語「 つかみ取る 」( cēpan )。

【発音】  kiːp
【音節】  keep  (1音節)

他動詞に加えて、自動詞と名詞もあるが、
この他動詞「 保つ 」こそ、 ” keep ” の真骨頂。

【活用形】
keepkeepskeptkeptkeeping

語源 「 つかみ取る 」 から生じた意味合いの、

持ち続ける 」 「 保つ 」 「 取る 」。

中級学習者 であれば、 どれも見慣れているはず。

よって、
距離を置く 」「 距離を取る 距離を保つ

に  他動詞 ” keep ”  を用いる点にも、 すんなり納得が行くだろう。

 

  ” distance ”  には、 名詞と他動詞がある。

【発音】  dístəns
【音節】  dis-tance  (2音節)

語源は、 ラテン語 「  離れて立つ 」( distantia )。

この 「 隔たり 」 感を貫くのが、 ” distance ” の持ち味。

 

空間・日時・感情・性質・身分の隔たり


広範にカバーする。

ほぼほぼ万能に近い。

–  名詞 「 隔たり 」「 距離 」「 広がり 」「 相違 」
「 敬遠 」「 遠慮 」「 よそよそしさ 」

–  他動詞 「 引き離す」「 遠ざかる 」「 遠のける 」

【活用形】
distance – distances – distanced – distanced – distancing

表題の  ” distance ” は、 名詞「 距離 」。

距離競技「 ディスタンスレース 」は、 ” distance race “。

  形容詞は  ” distant ” 。

【発音】  dístənt
【音節】  dis-tant  (2音節)

語源は、 ラテン語 「 離れて立っている 」( distans )。

「 隔たり 」感は、 名詞・他動詞  ” distance ”  と共通。

両語とも、 ラテン語の語源に忠実で分かりやすい。

  • a distant relationship
    ( 疎遠な人間関係 )

 

  ディスタンス【distance】

距離。間隔。

( 大辞林 第四版 )


◆  名詞  ” distance ” は、 可算と不可算を兼ねる。

可算・不可算兼用の名詞は無数あるが、 その名詞の
語意によって、 どちらかに分かれるケースが目立つ。

例えば、 抽象的な概念なら不可算、具体的な品物なら可算。

light ”  の場合、 エネルギーの光は不可算、 照明器具は可算。

ところが、 基本が兼用なのが ” distance ” の特色。

語源 「 隔たり 」からして、 可算と不可算兼用。

本稿で引用した英英の「 隔たり 」 =  ” distance ” は、
一様に兼用扱い( countable  or  uncountable )する。

ただし、コウビルドのみ、” N-VAR “と表記する。

これは、
「 可算名詞及び不可算名詞の両方の用法で使用される名詞 」。

すなわち 「 可算・不可算可変名詞 」( variable  noun
を指すので兼用同然である。

派生した 「 敬遠 」「 遠慮 」「 よそよそしさ 」 については、
兼用扱い( OALD9 )するものもあれば、 「 単数名詞 」
にする辞書もあり( LDOCE6、 CALD4 など )、 論が分かれる。

※  「 単数名詞 」( singular noun )
=  単数形で使われるのが一般的な名詞

【発音】  síŋgjulə
【音節】  sin-gu-lar  (3音節)

略して、 “ S ” または  “ sing ”。

◆  1つずつ引用すると、

  UNFRIENDLY FEELING  [ singular ]
a situation in which two people do not have a 
close friendly relationship.
( LDOCE6 )

   [uncountable, countable ] 
a situation in which there is a lack of friendly 
feelings or of a close relationship between two people
or groups of people.
( OALD9 )

※  ハイライトは引用者


大切なことは、” distance ” の最も基本となる語義「 隔たり 」は、

可算・不可算兼用だという点。

この点に争いはない。

先の9辞書の項目立てには含まれないものの、
無冠詞の ” distance ” も少数派ながらも使われている。


◆  今年2019年発表のニュース見出しで締めくくりたい。

  • “Senate Democrats keep distance from X campaign”
    (上院民主党はX陣営から距離を置く)
  • “Politicians Keep Distance From X Parties”
    (政治家たちはX政党から距離を取る)
  • “Yellowstone warns visitors to keep distance from wildlife”
    (イエローストーンは野生動物から離れるよう来訪者に警告)
  • “X is Warned To Keep a Distance From Former Colleagues”
    (Xは元同僚から距離を置くよう警告される)
  • “Federal employees want taxpayers to keep their distance
    (納税者に離れてもらいたがる国家公務員)
  • “X senator says Y warship in Black Sea should keep its distance
    (X国議員、黒海のY国軍艦は距離を置くべきと述べる)
  • “President to Keep Moscow at Distance in 2020 Race to Negate Rivals”
    (2020年大統領選でライバルをなくすため、モスクワと距離を取る大統領)
  • “Authorities Keep Distance, Yet Work With Armed Border Group”
    (国境の武装勢力と距離を保ちつつ、協力し合う当局)
  • Reminder to keep a safe distance from whales”
    (クジラから安全な距離を保つための注意喚起)
  • “Women’s Advocacy Groups Keep Their Distance
    From X Assault Scandal”
    (女性支援団体、X暴行スキャンダルから距離を置く)

◇  「 見出し 」英語の解説は、ここが秀逸  ↓
英語ニュースの読み方( 見出し編 )RNN時事英語

 

【類似表現】

 

【参照】     ※  外部サイト

「 ディスタンス 」 と 「 ディスタンシング 」、 意味は違う ?
新型コロナウイルス
https://www.asahi.com/articles/ASN6L7WZTN66UHBI035.html
2020年6月24日付

 

 

 

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