Precursor
2021/04/13
先駆者、 前兆
カジュアルな会話には出てこない。
口頭よりは文章で使われる印象。
堅めのニュース記事や評論に顔を出す。
【発音】 prikə́ːrsər
【音節】 pre-cur-sor (3音節)
日本語の「先駆者」同様、お堅い名詞。
語源はラテン語。 初出は16世紀。
- 接頭辞 “pre”(前)
- 名詞 “cursor”(走者)
だから「前を走る人」で「先駆者」。
さらに「前兆」。
ちなみに 、「カーソル」用途の “cursor” の
初出は1972年。
“precursor” の品詞は名詞のみ。可算名詞である。
< 日常使用は主に2つ >
(1) 先駆者 → 人間に限らず
(2) 前兆
“precursor”
formal: something that happened or
existed before something else and
influenced its development.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 prikə́ːrsər
【音節】 pre-cur-sor (3音節)
–
※ “formal” = 正式、堅めの表現
–
■ 専門分野 (可算名詞)
- 化学 「 前駆物質 」
- 生物 「 前駆体 」
- 物理 「 先行核 」
< 頻出パターンは2つ >
直後に、前置詞 ” to ” または ” of ” をつける。
- ” precursor to – “
→ 対象の前置詞 “to”( ~ にとっての )
– - ” precursor of – “
→ 主格関係の前置詞 “of”( ~ の )
※ 目的の前置詞 ” for “( ~のための )もあるが、
上記2つに比べると使用頻度は低い
直訳すると、それぞれ異なる意味に感じる。
だが、実質的には同じ内容となる(例文参照)。
英和辞典で “precursor” を引くと、「先駆者」に加え、
「前任者」や「先任者」が連ねる。
–
著名な英和辞典のほとんどがこの通り。
しかし、一般的な職場の「前任者」「先任者」であれば、
“precursor” ではなく、適切なのは、
“predecessor“
【発音】 prédəsèsər
【音節】 pred-e-ces-sor (4音節)
- 「 時代の先駆者 」
–
a precursor to his (her) time
(彼・彼女の時代にとっての先駆者)
–
a precursor of his (her) time
(彼・彼女の時代の先駆者)
– - 「 革命の先駆者 」
–
a precursor to revolution
(革命にとっての先駆者)
–
a precursor of revolution
(革命の先駆者)
–ー - 「○○技術の先駆者」
–
a precursor to XX technology
(○○技術にとっての先駆者)
–
a precursor of XX technology
(○○技術の先駆者)
“precursor” は、上述の意味合いで使う。
したがって、ごく普通の前任者を “precursor”
と称すると、仰々しく嫌味に聞こえるだろう。
< “precursor” の 主な 同義語 >
- predecessor (前任者)
【発音】 prédəsèsər
【音節】 pred-e-ces-sor (4音節)
– - forerunner (先駆け)
【発音】 fɔ́rrʌ̀nər
【音節】 fore-run-ner (3音節)
–
- pioneer (開拓者)
【発音】 pàiəníər
【音節】 pi-o-neer (3音節)
※ すべて可算名詞
一方、この3語が “precursor” の同義語で
あることに異存はない。
–
主要な類語辞典(thesaurus)にも網羅されている。
ここから学べるのは、同義語の主な和訳が、
もとの英語の和訳として適切になるとは限らない
こと。
すなわち、”predecessor” の和訳「前任者」は、
“precursor” の和訳として、数多くの英和辞典に記載
されているが、妥当ではないと私は考える。
「同義語」だから、論理的にはイコールとなるはず。
日本語同士でも、珍しくない現象である。
外国語学習で類語辞典を利用する際は、
特に気をつけなければならない。
–
◆ この欠点を補う道具のひとつが、
「コロケーション(連語)辞典」。
自然な英文を書く上で、役立つのがこちら。
『新編 英和活用大辞典』
(研究社、1995年刊)
※ iOS版
決して万能ではなく、触れていない基礎単語も少なくない。
(never、both、unless など)
しかも、発行は1995年。
だが、2017年9月(初稿時点)では、ベストチョイスと考える。
これを上回るものは、なかなか見当たらない。
この辞典や『ランダムハウス英語大辞典』は、
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ものを選ぶとよい。
LDOCE6のように、まともに機能しない<純正品>
も売られていたりする( 注意喚起!)。
◇ 詳細は、LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
–
◆ 両大辞典を含め、私の辞書は<電子版>中心。
–
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◇ 使用 ipad mini → 写真 ( 辞書の「自炊」と辞書アプリ )
世界中どこにいても、サイト記事を改善できてよい。
◆ 日本語の「コロケーション辞典」なら、この2冊。
–
弊サイトの作成時にも、よく参照している。
–
2017年9月現在、アプリ版は存在しない。
しかたないので、2冊とも「自炊」した。
ー
- 『 てにをは辞典 』( 2010年刊 ) ← 特にお勧め
- 『 てにをは連想表現辞典 』( 2015年刊 )
小内一編集、三省堂
◇ 2冊の比較レビュー
http://tokimaki.hatenablog.com/entry/2016/
コロケーション【collocation】
■ 文・句における語の慣用的なつながり方。
連語法。
(広辞苑 第七版)
■ 文や句において、文法的、意味的に関連する
二つ以上の単語の結合がある程度固定化して
いる関係。 また、その結合のしかたをいう。
(精選版 日本国語大辞典)
■ 文や句における、二つ以上の単語の慣用的な
つながり方。連語関係。
(大辞林 第三版)
◆ 既記の「先駆者」に次いで、「前兆」の文例を挙げる。
“A sore throat is a precursor to a cold.”
“A sore throat is a precursor of a cold.”
(のどの痛みは風邪の前兆である。)
“It may be a precursor to earthquakes.”
“It may be a precursor of earthquakes.”
(それは地震の前兆かもしれない。)
“Depression may be a precursor to Parkinson’s disease.”
“Depression may be a precursor of Parkinson’s disease.”
(うつ病はパーキンソン病の前兆かもしれない。)
“Failure is a precursor to success.”
“Failure is a precursor of success.”
(失敗は成功の前兆である。)
→ 失敗は成功の母
“This should not be seen as a precursor to a failure.”
“This should not be seen as a precursor of a failure.”
(これを失敗の前兆とみなしてはならない。)
–
◆ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
1. 初学者は 紙中心 がよい。
2. 学習レベル不問で、併用がベスト。
3. 電子版 は持ち運びが楽で、気楽に確認できるのが利点。
■ 初学者: 紙は必須。
紙中心がよい。できれば、電子版も併用。–
※ 日本の一般的な小学生・中学生・高校生は、この範疇
■ 中級者:紙と電子版のいずれか使いやすい方。
併用がベスト。–
■ 上級者:英語のプロでない限り、電子版のみでよい。
紙も併用するとベスト。–
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◇ 詳細は、英語辞書は「紙」か「電子版」か