今はもっと快適な場所にいます。
典型的な弔辞 ( condolence、 eulogy ) の一句。
有名人 などの逝去時の弔意によく用いられる。
この世を離れ、 ” a better place ” ( もっと快適な場所 ) に
今頃いますよ、 と表現することで、 関係者を慰めている。
◆ ” a better place ” が、 常に 「 死後の世界 」 を意味
するわけではない。
- ” She made this world a better place.”
( 彼女は世界をよりよい場にしてくれた。)
– - ” The world is a better place now that he’s gone.”
( 彼が死んだ今、 この世はよりよい場所になった。)
大きな問題を抱えていた X氏 が、 よりよい環境で元気に暮らし
ているなら、 例えば、
- ” Mr. X is in a better place now. ”
- ” Mr. X seems to be in a better place now.”
下記も同趣旨。
- ” Mr. X is in a good place now. ”
- ” Mr. X seems to be in a good place now. “
X氏 は ” a better / good place ” で、 ぴんぴん生きている。
よりよい 「 場所・環境 」 → よりよい 「 状況・状態 」 と敷衍して、
- ” X is hoping to reach a better place with his children
amid an ongoing custody battle with Y. ”
( Xは、Yとの親権争いが続く中、子どもたちと
よりよい関係を築きたいと願っている。)
リアルな場所なのか様子・様態なのか、 判別しにくい文脈も少なく
ないが、 better = 「 よりよい 」 こそ重点を置くべき要素である。
【発音】 bétər
【音節】 bet-ter (2音節)
◆ とはいえ、 こと ” in a better place ” は、 亡き者に使われる方
が目立つ印象。
複数人であれば、
- ” They are in a better place now.”
- ” They seem to be in a better place now.”
– - ” They are in a good place now.”
- ” They seem to be in a good place now.”
–
【参考】 ※ 外部サイト
- Johnny Depp ‘ In a Good Place ’ 2 Years After Amber Heard Trial
https://www.usmagazine.com/celebrity-news/news/johnny-depp-in-a-good-place-2-years-after-amber-heard-trial-details/
2024年5月15日付
–
◆ 欧米人の示す哀悼の意 ( pay tribute、 pay homage )
は、 日本人とは視点が異なると以前より感じてきた。
そこに興味を抱き、 長らくメディア報道から
悼辞を 収集 してきた。
これまで集めた文言から、5点をご案内したい。
–
< 選択基準 >
a. 当事者の宗教・宗旨宗派は不問
b. 適切かつ印象的な弔慰
c. 遺された者を慰め、勇気づける内容
d. 基礎的な英文
e. 一般人でも使用可能
–
設定上、 故人は男性( he )とした。
女性ならば、 主格を ” she ” に置き換える。
–
- He is in a better place now.
( 今はもっと快適な場所にいます。)
– - He will never be in pain again.
( もう二度と苦しむことはないでしょう。)
– - He is in a safer and happier place now.
( 今はもっと安全で幸せな場所にいます。)
– - He lived long enough to see you succeed.
( あなたの成功を見届けるまで長生きしました。)
– - He died doing what he loved.
( 大好きなことをしつつ旅立ったのです。)
–
◆ 直前には、 次のような言い回しが置かれたりする。
1 ~ 5 と考えることで、 遺された者たちが救われる
と考える発言者の願いを反映する。
–
- ” It makes me happy to know that – “
( ~ と思えば、私はうれしいです。)
– - ” We have the comfort of knowing that – “
( ~ と思うと、私たちも安心できます。)
– - ” I take comfort in knowing that – “
( ~ なので、私も安心できます。)
– - ” We found solace in knowing that – ”
( ~ と知って、私たちも安堵を感じています。)
– - ” We found peace in knowing that – ”
( ~ と知って、私たちも安らぎを感じています。)
–
- ” We are at peace knowing that – ”
( ~ と思い、私たちも安心しています。)
–
以上の使用対象は、有名人 限定ではない。
普遍性のある内容であり、 私たちも使える。
この点、 上の 「 選択基準 e. 」 に掲げた通り。
中身が無難であることは、自明 であろう。
どれも実際に多用されている。
ー
◆ では、 1 ~ 5 を順繰りに見ていこう。
基本的な英文ばかりなので、 それぞれ
ポイントを絞って取り上げてみたい。
–
–
1.
He is in a better place now.( 今はもっと快適な場所にいます。)
–
◆ 2つの要点に分けて、考察してみる。
すなわち、 「 時制 」 及び ” a better place “。
まず、 私たち日本人学習者の苦手な「 時制 」( tense )。
現在形 ( present ) ” is ” で、 「 今は ~ にいます 」。
” is ” は、 「 be動詞 」 の三人称単数直説法現在形。
これを 完了形 ( perfect form ) で言い換えると、
–
–
He has gone to a better place.
( もっと快適な場所に行ってしまった。)
–
結果を表す「 現在完了形 」( present perfect )であり、
今も続いている ニュアンスを含む。
「 旅立ってしまって、 今はここにはいない 」
もしも、 彼が戻ってきたならば、 同じ「 現在完了形 」で表すと、
–
–
He has been in a better place.
( もっと快適な場所に行って、帰ってきた。)
–
どちらも 「 現在完了形 」( present perfect )であるものの、
- ” has gone ” は、「行ったままである 」 との 結果
- ” has been ” は、「 行ったことがある 」 との 経験
悲しくも 「 不帰の客 」 ゆえに、 前者 “ has gone ” が正しい。
まさに、「 逝ってしまった 」 で、この状態が永遠に続く。
さらに、「 過去形 」 ( past tense ) で表すとすれば、
–
–
He was in a better place.
( もっと快適な場所にいました。)
–
これまた、 不成立なのは言うまでもない。
逝って「 帰らぬ人 」で、 現在もあちらにいるからである。
表題通り、「 現在形 」( present )の ” is ” が正しい。
–
◆ 「 過去形 」 と 「 現在完了形 」 のニュアンスの違いは、
- 「 過去形 」 → 単に 「 過去の事実 」 を そのまま 述べている
- 「 現在完了形 」 → 「 過去の事実 」 に対し、 「 現在の視点 」
–
過去のことなのに、 視点は現在
–
話題は 「 過去 」 の出来事なのに、 話者の頭の中では、
「 その時から現在までに伴う感情 」 も混じっている。
It’s something at a particular moment in the past that I’m talking about now.
–
–
◆ 「 現在完了形 」 は日本語にない概念。
過去と現在の視点が合わさった、 情緒的で曖昧な表現。
「 現在完了形 」を用いると、
過去のある時点から現在までの、 継続した状態・動作
が表せる。
過去に起きたことを、 今なお忘れず、 ずっと追いかけている。
一度きりではダメで、 現在に至るまで、 絶えず続いている状態 が必要。
Events that began in the past and continue up to the present.
要は、 過去と現在のなんらかの変化 について言いたい。
–
–
→ 完了形 「 過去はこうだったけど、 現在はこんな状態よ 」 ↓
現在の状況説明 ( 今は、こうなっています )
–
当時から見て、
「 その後 」 にあたる、 今の有様( 現状 )まで、 一気に案内
できてしまうのが、 完了形の利点。
–
◆ 一方、–
「 過去形 」 であれば、 「 その後 」 は分からない。
なぜなら、 目の付け所は 「 過去 」 のみ だから。
–
It’s already finished, so I don’t know.
–
◆ 雰囲気を大胆に下品に例えると、–
–
■ 過去形 ( past tense )
→ やり逃げ
–
–
–
あの時がすべて!
–
… 「 その後 」 なんて、 知らんわ
–
とっくに心は離れて、 今の様子は知らない。
「 その後 」 に関心なく、 単なる 「 昔話 」 にすぎない。
–
■ 現在完了形 ( present perfect )
→ ストーカー
–
–
–
今こそ大事!
–… 「 今なお 」 ずっと引きずる
–
「 現在 」 に至るまで想い続け、 しつこく現状把握している。
これまでの様子が分かっており、 今の自分に結びつけたい。
–
◆ 仕事の懸案事項についてのメールでは、 「 完了形 」 が一般的。
まだ解決しておらず、 以前から現在に至るまでやり取り している状態。
前出の 「 完了形 」 ( perfect ) の出番である。
過去のある時点から現在までの、 継続した状態・動作
を表し、
過去に起きたことを、 今なお忘れず、 ずっと追いかけている。
もし 「 過去形 」 だと、 単なる 「 昔話 」 の扱いで、 無関心に響く。
今後も双方が歩み寄って取り組む、 共同歩調の必要な懸案なのに、
「 過去形 」 で表すと、 どこか 当事者意識に欠けた無責任な印象。
「 あれは終わってますが。 」
一方的に 「 過去 」 扱いされたら不愉快。
–
だから、 「 完了形 」 が多い。
現在まで続いてきた継続案件 ( ongoing project ) ゆえ、 「 完了形 」 。
情緒的な 「 完了形 」 に対し、 単純だが冷たく事務的な 「 過去形 」。
情緒はビジネスにそぐわないとはいえ、 意欲と配慮をアピールできる。
–
概して、 任務遂行に大切な素質は、
やりっぱなしの場当たり的な 「 やり逃げ 」 姿勢ではなく、 ← 「 過去形 」
執拗に追い求める 「 ストーカー 」 的な粘り強い忍耐力。 ← 「 完了形 」
一緒に仕事をすると分かる違い。
「 やり抜く力 」 は不可算名詞 ” tenacity “、 近年だと ” grit ” か。
◆ 「 過去形 」 は、 過去の出来事だけ、 客観的に淡々と語る。
完了形( 過去 & 現在 ) みたいな、 複眼的な視座はない。
現在の気持ちと断絶して、 やけに事務的。
単なる 「 昔話 」 だから、 既に興味はなく、 冷めている。
「 昔話 」 なんかに思い入れはなく、 当然 「 事務的 」 になる。
「 感情 」 が伴わず、 シンプルな思考 で、 分かりやすい。
イメージとしては、 並大抵な日本の小学校1〜2年生の作文
に目立つ描写が 「 過去形 」。
「 過去 」に起きたことを、 今の感情抜きで書いている。
目線は 「 過去 」 にとどまる から、 すごくシンプル。
興味ないので、 心がこもるわけなく、 活写しようもない。
思考が行ったり来たりしない ので、 すっきりしている。
あれこれ考えなくても、 過去の出来事をありのまま表せばよい。
もはや無関心だから、 とにかくシンプルで気が楽な 「 過去形 」。
過去を淡々と客観的・感情抜きで表現する単純さで、 煩わしくない。
本来は 「 完了形 」 で表すべき場面を、 様々な理由により単純化し、
あえて 「 過去形 」 で代用する技法は、 英語ネイティブも採用する。
話し言葉 ( 口語、口頭 )では、 案外普通だったりする。
「 完了形 」 よりは、 「 過去形 」 の方が重宝されがち。
【参考】 ※ 外部サイト
- 過去形は 「 スナップショット 」 です
https://brighture.jp/b-blog/1742
–
◆ 一例として、 ニュース記事の引用を挙げる。
大物キャスターの不倫発覚で、 同僚の証言がこちら。
–
–
I [had] heard a few pieces of gossip,
that he was involved with an anchor.( あるキャスターと関係しているとの噂は、
私も何度か聞いたことがあります。)
–
–
https://people.com/tv/katie-couric-on-being-shocked-by-matt-lauer-behavior-seemed-so-callous/
2021年10月13日付※ 黄ハイライトは引用者
–
話者 ( Ms. Couric ) は、 もともと 「 過去形 」 で発言していた。
よく知る同僚に関する、 際どく大変不都合な 「 噂 」。
「 今の様子は知らない 」
知らぬ存ぜぬと、 しらばっくれる折に、 「 過去形 」 が大活躍。
事務的な 「 過去形 」 で淡々と述べ、 当人を切り離す意欲満々。
英文法に従い、 的確な時制 「 完了形 」 に直すために、
書き手によって、 助動詞 ” had ” が挿入されている。
” had ” は、 ここでは助動詞 ( auxiliary verb ) である ” have ”
の過去形 ( past tense )。
「 過去完了形 」( past perfect ) を作り出すために補われた。
それが、 ハイライト部分 [had] である。
ブラケット [ ] は、 引用した書き手が注釈を加える際に使う。
引用者による補足的説明を、 原文から区別する役目。
ニュース記事のみならず、 学術論文でも一般的な表記法。
【発音】 brǽkit
【音節】 brack-et (2音節)
和文の引用文中では、 亀甲( きっこう )括弧〔 〕を用いる。
◆ なお、 ブラケット [ ] は、 音声記号を括るにも起用される。
[ ] の代わりに、 スラッシュ // で括る場合もある。
【発音】 slǽʃ
【音節】 slash (1音節)–
言語学者の慣習としては、
- [ ] … 物理的な音 ← 音声学
- // … 抽象概念の音素 ← 音韻論
[ ] は、 最も正確な表音の「 精密表記 」 とみなすことも。
言語学者の用いる正式名は、
「 音節 」( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位。
” integrity ” にて、「 音節 」 の日英比較を深掘りした ( 図入り )。
–
–
音声表記
–
音韻論 で抽出した有限の音素 ( phoneme ) は
スラッシュ / / の間に入れて音韻表記するが、
–
音声学 における物理的な異音 ( allophone )は
国際音声記号 ( IPA ) を始めとした音声記号を
角括弧 [ ] で囲んで単音表記する。
–https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E5%AD%A6
※ 2024年5月14日 アクセス
※ 青字・太字・改行は引用者
–
音韻論 ( phonology )と 音声学 ( phonetics ) や IPA
についても、 ” integrity ” で解説している ( 図入り )。
◆ もうひとつの要点は、 ” a better place “。
–
可算名詞 ” place “( 場所 )なので、不定冠詞 ” a ” がつく。
定冠詞を用いて、 ” He is in the better place now. ”
と表すこともある。
この場合、 特定・限定された 「 もっと快適な場所 」 の印象
を帯びる。
名詞 ” place ” には、 不可算名詞もある。
語源は、 ラテン語 「 広い通り 」( plātea )。
【発音】 pléis
【音節】 place (1音節)
つかみどころのない、 抽象概念の 「 場所 」 は不可算。
- ” time and place ” ( 時間と場所 )
上記も、 通常は概念的に使う。
特定・限定されていないので、 ” time ” も ” place ” も
不可算の用法となる。
–
可算・不可算は、” in place ” で事細かに触れた。
–
–
◆ 表題では、物故者が「 今いる場所 」。
よって、用途が特定された具体的な場所 として、
可算名詞の ” place ” となる。
” better ” は、名詞 ” place ” を直接飾るため、
副詞でなく形容詞。
【発音】 bétər
【音節】 bet-ter (2音節)
” better ” は多義で、 名詞・副詞・形容詞・
他動詞・自動詞がそろう。
語源は、 古英語 「 すぐれている 」( betera )。
“ best ” と同語源であり、 ともにポジティブな語感を帯びる。
- 副詞 ” better ” 「 よりよく 」
→ ” well ” と ” very much ” の比較級
– - 形容詞 ” better ” 「 よりよい 」
→ ” good ” と ” well ” の比較級
両者の違いは、 ” better yet ” で詳しくご説明している。
「 よりよい場所 」 だから、 弔意としての用途を考慮
すると、和訳は「 より快適な場所 」 くらいになる。
キリスト教であれば、 神のもとで霊魂が永久の
祝福を受ける天国、 すなわち神の国が該当する。
” a better place ” そのものは、 変哲もない表現である。
–
現世であるこの世、つまり「 地上 」に比べて、
” better ” な ( よりよい ) 場所を指すのみ。
したがって、 宗教・宗旨宗派は問わないと考えられる。
ー
–
2.
He will never be in pain again.( もう二度と苦しむことはないでしょう。)
–
◆ ” be in pain ” がポイント。
–
” pain ” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
【発音】 péin
【音節】 pain (1音節)
語源は、 ギリシア語 「 罪 」( poinē )。
身体または精神の激しい苦痛を幅広く表す語。
先述の ” place ” 同様、 可算名詞と不可算名詞がある。
原則は不可算名詞で、 特定箇所の痛みが可算名詞。
これが、 基本的な考え方。
【参照】 “ worry “、 ” concern “、 “ wonder ”
ここでも不可算。
特定の苦しみでないから。
–
生きる苦しみや病む苦しみという、誰の人生にも
つきまとう抽象的な苦痛を指す。
不可算名詞のため無冠詞。
状態を示す前置詞 ” in “( ~ の状態で ) を伴う
” in pain ” の直訳は「 苦痛の状態で 」。
転じて、「 痛みがある 」「 苦しむ 」の意。
「 be動詞 」つきの ” be in pain ” は、「 苦しんでいる 」。
–
” I am in pain. “( 私は苦しんでいます。)
と同じ自動詞 ” be ” である。
” will never be in pain ” は、
「 二度と( 決して )苦しむことはないでしょう 」
と単純未来( simple future )を示す。
–
殊にイギリス英語なら、 ” shall never be in pain ”
とも言える。
ー
–
3.
He is in a safer and happier place now.( 今はもっと安全で幸せな場所にいます。)
–
◆ これは「1」と同じ構造。
” a better ” の代わりに、
” a safer and happier place ” なので、
「 もっと安全で幸せな場所 」となる。
” better ” 同様、比較級 を用いる。
- ” safe ” → ” safer ” ( もっと安全な )
- ” happy ” → ” happier ” ( もっと幸せな )
「1」と同じく、” in ” は場所の前置詞「 ~ に 」。
” is ” は、三人称の単数現在形のbe動詞「 ~ ある 」。
” safer and happier “(もっと安全かつ幸せ)
との全体が可算名詞 ” place ” にかかるので、
不定冠詞 ” a ” はひとつだけ。
” a safer and a happier place ” とする場合、
「 もっと安全な場所ともっと幸せな場所 」
と2つに分かれるはずだが、 日常使用では
同義扱いされている感がある。
「 もっと安全で幸せな場所 」 とは、
「1」と同様、 苦しみの絶えない人間界から
解放された楽園を指す。
–
–
4.
He lived long enough to see you succeed.( あなたの成功を見届けるまで長生きしました。)
–
◆ 受け手 ” you ” よりも、 故人がずっと年配に
あたるケースが多い。
–
祖父母や親、 恩師など。
本人が、 まだ海の物とも山の物とも知れない頃から
目を掛け、 温かく見守り、 成長に目を細めつつ支援。
–
ついに功成り名遂げた後、 ほどなく他界。
- ああ、 あれほどお世話になったのに …
- まともに恩返しする前に、 死んじゃった …
自責の念が尽きないことは、 容易に想像できる。
もう取り返しがつかない。
–
なんとも泣かせる話である。
激しい後悔と悲嘆に暮れている姿に、 声を掛ける
としたら、 この「4」だろう。
ポイントは、 ” to see you succeed “。
” to ” は、 他動詞 ” see ” ( 見る ) にかかる前置詞。
” succeed ” は、 自動詞 「 成功する 」。
【発音】 səksíːd
【音節】 suc-ceed (2音節)
語源は、 ラテン語 「 後に続く 」( succēdere )。
– 自動詞 「 成功する 」「 相続する 」
– 他動詞 「 後任になる 」「 次いで起こる 」
” lived ” は、 自動詞 「 生き延びる 」 の過去形。
特に < 主語+live+to do > の場合、
「 生きた結果 ~ する 」 の意味がある。
さらに、 ” live long enough to ” は、
「 長生きして ~ する 」。
- 主格 ” he “( 彼は )
- 他動詞の過去形 ” lived “( 生きた )
- 形容詞 ” long “( 長い )
- 副詞 ” enough “( 十分に )
- 結果の前置詞 ” to “( ~ になるまで )
- 他動詞 ” see “( 見る )
- 目的格 ” you “( あなたが )
- 自動詞 ” succeed “( 成功する )
よって、 直訳は、
「 彼は長生きした結果、あなたが成功したことを見た 」
弔文としてはそっけないので、 少々工夫して、
「 彼はあなたの成功を見届けるまで長生きしました 」
など。
- 立派になったあなたを、しっかり見てもらえた。
- あんなに喜んでいたから、ちゃんと恩返しできた。
- だから、そんなに悲しまなくてもいいんだよ。
ー
–
5.
He died doing what he really loved.( 大好きなことをしつつ旅立ったのです。)
–
◆ 比較的若くして、事故死した人を悼む言葉。
いわゆる ” an untimely death ” ( 早すぎる死 )
である。
危険の伴う業務の他、 スポーツや趣味をしていて死亡する
事例も該当する。
” died ” は、 動詞 ” die ” の過去形 ( past tense ) と
過去分詞形 ( past participle )。
ここでは、 自動詞「 死んだ 」の 過去形。
” dead ” は動詞ではなく、
形容詞 「 死んでいる状態 」。
行為ではなく、 状態だから形容詞。
” doing what he really loved ” がポイント。
” doing ” は、他動詞 ” do ” の現在分詞形( present participle )。
「 まさに ○○ している !! 」
「 まさしく ○○ しつつある !! 」
こうした 能動的な生感覚 が、 現在分詞形の持ち味である。
【参照】 ” Moving forward ”、 ” Just checking in ”
ここでは、
「 まさに やっている !! 」
「 まさしく やりつつある !! 」
その対象となる ” what he really loved ” は、
- 関係代名詞 ” what “( こと、もの )
- 主格 ” he “( 彼が )
- 副詞 ” really “( 本当に )
- 他動詞の過去形 ” loved “( 愛した )
よって「 彼が本当に愛したこと 」。
–
日本語の「 愛した 」は強すぎるため、
「 彼が大好きだったこと 」くらい。
よって、直訳は、
「 彼は大好きなことをやりつつ、死んだ 」
やや間抜けな様相だが、あくまでも、
遺された者に対する慰めを旨とする。
死は悲しいが、 遅かれ早かれ訪れるもの。
大好きなことをしつつ昇天したのだから、
ご本人としては、 そう残念でないはず。
日本人には新鮮味を感じるような言い様だが、
「 5 」は事故死による早世( premature death )
によく出てくる。
–
–
–
◆ 締めくくりとして、 個人的にぐっときた弔詞をご紹介したい。
‐
「 神様を 笑わせてやれ 」
–
–
2014年8月に亡くなった、米俳優の
ロビン・ウィリアムズ ( 1951-2014 )
を悼む掲示版。
抱腹絶倒の傑作コメディを幾多も残してくれた、
ロビンを称える力強い3語である。
–
MAKE GOD LAUGH
–
この ” Make god laugh. ” は 「 命令形 」( imperative form )の文。
相手に何かを求める際、 動詞の 原形 から始める文が英語の命令文。
–
命令形・命令文とは、「 文の形式 」 の文法用語。
「 命令 」 の 「 機能 」 を表すわけではない。
–
単なる 「 文の形 」 にすぎないのだが、 大勢が間違って理解している。
もっとも、 命じる際に多用されるため、 悪印象・誤解を与えてしまい、
反発を食らいがちなのも事実なので、 要注意。
別稿 ” Could you update me on – ? ” で詳らかにした ( 図入り )。
–
【 弔辞の文言集 】 ※ 英文サイト
・ Condolence Examples
・ Choosing the Perfect Words of Condolences
・ What to Write in a Sympathy Card
・ How To Express Sympathy
・ 64 Quotes About Grief, Coping and Life After Loss
–
【 元長官の死去を伝える大統領の声明 】 ※ 米ホワイトハウス
” A Proclamation on the Death of Madeleine Korbel Albright ”
( マデレーン・オルブライトの死去を伝える声明 )
2022年3月23日付
→ 米大統領が、法令に基づき半旗掲揚の命令をしている。
オルブライトは、 米国初の女性国務長官( 1937-2022 )。
–
–
『 ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( ロゴヴィスタ アプリ版 )
… “ die 1 ” の語法より
<大修館書店HP>
ー
【「 死 」関連表現 】
- “ passed away ”
https://mickeyweb.info/archives/347
( 亡くなりました )
– - “ with regret ”
https://mickeyweb.info/archives/318
( 残念ですが )
– - “ declared dead ”
“ Pronounced dead ”
https://mickeyweb.info/archives/1636
( 死亡宣告された、 死亡した )
– - “ Confirmed dead ”
https://mickeyweb.info/archives/2131
( 1. 死亡が確認された 2. 確認された死者 )
– - “ took his / her own life ”
https://mickeyweb.info/archives/4466
( 自殺した )
– - “ do away with oneself ”
https://mickeyweb.info/archives/15503
( 自殺する )
– - “ a moment of silence ”
https://mickeyweb.info/archives/3513
( 黙祷 )
– - “ My prayers are with -. ”
“ My thoughts and prayers are with – . ”
https://mickeyweb.info/archives/3471
( ~ のために心からお祈りいたします。)
– - “ the beyond ”
https://mickeyweb.info/archives/29487
( あの世 )
– - “ final resting place ”
https://mickeyweb.info/archives/28844
( 墓、 埋葬地 )
– - “ terminally ill ”
https://mickeyweb.info/archives/29801
( 末期症状の )