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Get under (somebody's) skin

      2022/12/14

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 4 minutes

~ をいらいらさせる、  ~ を怒らせる

get under the skin of somebody

とも言う。

直訳は「(誰々の)皮膚の下に行く」。

何気にエロいが、実はそうでない。

由来は、疥癬(かいせん)の原因である、
疥癬虫(ヒゼンダニ、scabies worm / mite)
が皮
下に寄生する症状との説がある。

 get under skin 

Origin:
Scabies Mites burrowing under one’s skin.
theidioms.com )

※ “origin” = 起源 → 語源

我が許可なく体内に潜り込み、
もぞもぞ、うようよ、にょろにょろ。

不気味にうごめく気色悪さを思えば、エロいどころか、
虫唾が走る。

むしず【虫酸】【虫唾】
胸のむかむかしたときに、口に逆流する
酸っぱい胃液。

虫酸が走る
吐き気がするほど不快でたまらない。

(大辞林 第三版)

「虫酸」もてっきり「虫」の一種かと思っていたが、
まるで無関係だった。

胃内の酸敗液のこと。

とにかく、皮膚の下を何者かが這う不快さを
イメージするとよい。

これから見ていくように、悪さを働くのは人間。
その相手も人間。 これが基本的な使い方である。


◆ 表題の “somebody’s”(誰々の)には所有格を入れる。

人称代名詞は、my、your、his、her、their、our、its。

“get under the skin of somebody” の場合は目的格

人称代名詞は、me、you、him、her、us、them、it。

これらの代名詞に該当する人の皮下を這い回る
のだから、代名詞はいらだつ本人に他ならない。

そして「(誰々の)皮膚の下に行く」者こそ、
いらつきの原因。

図示すると、こんな感じか。


もぞもぞ侵入されて「なんじゃ!」とお怒りなのが、
代名詞のお方。

図中では、怒髪天を衝く雄姿。

これまでのご説明で、

  •  get under (somebody’s) skin
  •  get under the skin of somebody

の大まかな有様を思い描くことができれば幸い。

3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は次の通り。

 “get under somebody’s skin” 

■ informal
if someone gets under your skin, they annoy you,
especially by the way they behave.
(LDOCE6、ロングマン)

■ informal
to annoy somebody.
(OALD9、オックスフォード)

to annoy someone.
(CALD4、ケンブリッジ)

一様に “annoy” がキーワード。

【発音】   ənɔ́i
【音節】 an-noy  (2音節)

自他動詞で、「いらいらさせる」「困らせる」。
語源は、ラテン語「非常に不快な」(inodiāre)。

加えて、英語ネイティブ向け辞書では、

■ informal
to irritate one.
Collins English Dictionary, 12th Edition

■ informal
to anger or irritate someone.
Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition

※ 下線は引用者

先のEFL辞典にも増して、シンプルである。

“annoy” の代わりに “irritate”。

【発音】   íritèit
【音節】   ir-ri-tate  (3音節)

自他動詞で、「いらいらさせる」「いらいらする」。
語源は、ラテン語「興奮させた」(irrītātus)。

“annoy” の代表的な同義語である(後述)。
したがって、英英5点の語釈は同然である。

和訳もそのまま「いらいらさせる」「いらつかせる」。
ひいては「怒らせる」。

ネガティブ一辺倒である。

  いらいら【苛苛】
1. 刺(とげ)などが触れるような不快な感触があるさま。
ちくちく。
2. ものごとが思うようにならず、腹立たしくて
神経がたかぶること。そのようなさま。

(広辞苑 第七版)

また、CALD4を除く4点に “informal” 表示がある。
くだけた表現または非正式な表現であることを示す。

◆ 次に、単語と文法を逐一見ていく。

get には、他動詞・自動詞・名詞がある。
語源は、古ノルド語「手に入れる」(geta)。

ここでは、自動詞「行く」「着く」。

・”get to Tokyo”(東京に到着する)
・”get to a certain stage”(ある段階に達する)
・”get home late”(遅く帰宅する)

これらと重なる用法である。

動詞 “get” は、語源に忠実な「他動詞」用法が主。

一方「自動詞」用法の本義は「ある状態に達する」。
これは、表題にも通じる。

ここでは自動詞。

under には、前置詞・副詞・形容詞がある。
語源は、古英語「~の下に」(under)。

ここでも語源そのものの前置詞「~の下に」。

somebody’s については、人称代名詞の所有格
として既述した。

辞書によっては、代表形の “someone’s” または “one’s” で
項目立てしている。

“one” は 不定代名詞(an indefinite pronoun)。
“somebody” と “someone” は、その複合語。

< somebody と someone >

(1)somebody は someone より口語的で、
呼びかけなどの場合に好まれる。

(2)話し手と親密な関係にある特定の人を
念頭に置いている場合は someone が好まれる。
somebody はだれでもいい、とにかくだれか、
という気持を含む。

(3)堅い書き言葉には通例 somebody は
用いない。

(『ジーニアス英和大辞典』 “somebody” の「語法」より)

上掲の “theidioms.com” のように、項目上は省略
しているオンライン辞書もあるが、所有格が入るのが基本。

この辞書とて、例文では所有格を省いていない。

skin には、名詞・他動詞・自動詞がある。

【発音】   skín  (1音節)

語源は、古ノルド語「皮」(skinn)。

表題では、名詞「皮膚」。

最も基本的な語義だが、可算と不可算を兼ねるのが特色。

名詞 “skin” については、以下の稿で詳説している。

comfortable in one’s own skin

<上稿の見所>

  •  日常英語での “skin” は避妊具の別称にならない
  •  「スキンシップ」は和製語
  •  世界の「ゴム」の呼び方    ※ 外部サイト
    2019年11月9日付

上記表現と同様に、表題の “skin” も単数となる。

以上の単語を合わせた直訳が「(誰々の)皮膚の下に行く」。

  • 自動詞 “get”(行く)
  • 前置詞 “under”(~の下に)
  • 所有格(誰々の)
  • 名詞 “skin”(皮膚)

5点の英英辞典で確認したように、重点は
annoy” または “irritate” で「いらいらさせる」。

すなわち「(誰々を)いらいらさせる」、
(誰々を)怒らせる」など。
見方を転じると「(誰々の)神経に障る」。

所有格が “my”(私の) ならば、同一用法の自動詞 “get”
を用いた “get on my nerves” とほぼ同義である。

要は「むかつく」ということ。

「むかつく」
1. 吐き気がする。むかむかする。
2. 腹が立つ。しゃくにさわる。

(明鏡国語辞典 第二版)

上述の黄ハイライトは、好んで和訳に採用されるので、
定訳扱いされていると考えられる。

この表現の意味が単純なのは、繰り返し触れてきた英英辞典
の語釈からも分かる。

◆  最後に、マイナー用法を記しておきたい。

“get under someone’s skin”

2. if someone gets under your skin, you are very
attracted to them, especially in a sexual way.
Macmillan Dictionary)

2. to affect someone positively even though he 
or she does not want to expect to be affected 
that way: grow to like something.
Merriam-Webster

“get under someone’s skin”

informal
to be extremely attracted to somebody.
(OALD9、オックスフォード)

※ 下線は引用者

“annoy” 及び “irritate” をキーワードとした主流の意味
と打って変わって、概してポジティブな流れである。

下線の “attract”(魅力を感じる)と “affect – positively”
(好意を感じる)がそれを示す。

前者には、比較の副詞 “very” と “extremely” がついて
いるので、大変魅了されている模様。

とりことなった状態。

とりこ【虜】に[と]なる
2. あることに熱中する。心を奪われる。

(精選版 日本国語大辞典)

しかしながら、筆頭の Macmillan は、文末に「特に性的に」
と付記する(下線)。

概してポジティブとはいえ、このように少々癖のある中身。
これがマイナー用法にとどまる一因と推測できる。

いずれにせよ、こちらは主たる使い道ではないので、軽く
押さえておけばよい。

◆ それでは、よく見聞きするパターンを挙げる。

壁に耳ありなので、ぼやく際はTPO(和製語)にご注意。

“My boss is getting under my skin.”
(上司がうざい。)※ 継続的

“Don’t get under your boss’s skin.”
(上司を怒らせてはいけない。)

“Don’t let your boss get under your skin.”
(上司にあなたを邪魔させるな。)

“My boss really got under my skin.”
(上司にはすごく頭にきた。)

“I think I am getting under his skin.”
(彼をいらいらさせている気がする。)

“His comments were beginning to get under my skin.”
(彼のコメントが神経に障りはじめていた。)

“Her attitude really gets under my skin.”
(彼女の態度が癇に障る。)

◆ 上掲  “Collins English Dictionary, 12th Edition” の列記する
“get under your skin” の同義語(synonym)を一挙ご紹介。

  1.  annoy
  2.  irritate
  3.  aggravate  ( informal )
  4.  needle  ( informal )
  5.  nettle
  6.  irk
  7.  grate on
  8.  get on your nerves  ( informal )
  9.  piss you off  ( taboo, slang )
  10.  get in your hair  ( informal )
  11.  rub you up the wrong way
  12.  hack you off  ( informal )

英語ネイティブ向けの辞書なので、なかなか難しい。
中級学習者ならば、太字の同義語は知っておきたい。

【類似表現】

make my skin crawl
(身の毛がよだつ)

所有格 “my” でなくてもよいが、
内容的に自分(my)に多用される。

“make your skin crawl”

to make you feel afraid or full of disgust.
(OALD9、オックスフォード)

“crawl” には、自動詞・他動詞・名詞があり、多義。

ここでの “crawl” は、自動詞「這う」。

自動詞 “crawl” は、「クロールで泳ぐ」、
「(赤ちゃんが)ハイハイする」も意味する。

【発音】   krɔ́ːl  (1音節)  

語源は、古ノルド語「かき分けて進む」(krafla)。

爪 “claw” と同根。

 

 

 

 

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