蔵書の「自炊」記録(6)
2021/04/01
2015年12月以来、蔵書の「自炊」を継続している。
—【参照】 蔵書の「自炊」記録 (1)~(5)
毎月10冊から20冊ずつなので、緩慢なペースである。
「自炊」とはいえ、現在は専門業者2社に任せきり。
—【参照】 その後の進捗状況
◆ 何年間も懸念した、法律面の不安は杞憂であった。
—【参照】 「自炊代行」訴訟の行方
2016年3月の最高裁判決( ≒ 自炊代行は著作権侵害 )後も、
2社が提供するスキャンサービスに変化は感じられなかった。
ユーザーとしては、うれしい限りである。
◆ この1年余りで、本の山がいくつか消えた。
部屋が広くなり、とてもうれしい。
「自炊」の結果は目に見えるので、達成感がある。
一方で、
「 本を電子化しても、再び読む機会は少ない 」
との批判をよく耳にする。
◆ 我が蔵書は 4,000冊以上。 –
増加の一途をたどる。
残された人生で、再び全冊に目を通すことはあるまい。
果たして「自炊」は、推定200万円 の投資に値するか。
約2,980冊の自炊を経た今(2021年4月 現在)、
その効用を考察してみる。
–
1) 本を手元に置く「安心感」は予想以上
普段は使わなくても、「読みたい時に絶対読める」
との安心は「保険」に等しい。
欲しい本が、必ず手元にある
この状況は、筆舌に尽くし難い安心感をもたしてくれた。
2) 即刻入手できる「便利さ」も予想以上
私にとって大事なことは、短時間で確実に入手できること。
そのため、必要資料は自己管理が望ましい。
しかし、将来必要なものは見当が付きにくい。
この判断の迷いを、端的に払拭する手段が、
丸ごと 「 自炊 」
である。
–
◆ 全国の図書館や国会図書館から取り寄せてもらえば、
大半の和書が入手できる。
自治体間の「 相互貸借 」( inter-library loan requests )
は、通常業務として行われている。
利用代金は、原則無料。
【参考】
図書館の本、スマホで閲覧可能に 文化審議会が報告書
2020年11月付
著作権のうち、
作家らが作品のネット送信をコントロールできる
権利である「公衆送信権」を弱め、 図書館が許可を取らずに
データを送れるようにする。(中略)
国会図書館はデジタル化した資料のうち、
著作権の保護期間が
切れた約55万点はネットで公開している。だが、著作権が
切れていない絶版本など約150万点は著作権法の規定で
各地の図書館の端末までしか送信できない。
法改正が実現すれば、 これらも利用者の端末で見られるようになる。 (中略)
図書館の蔵書をネット経由で気軽に読める「電子図書館」
に向けた大きな一歩と言える。
【出典】 https://www.asahi.com/articles/ASNC96CZBNC9UTIL018.html
図書館の本、データをスマホに送信 文化審議会が報告書
2020年11月9日付
–
【出典】 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20201106003034.html
図書館の本、スマホで閲覧可能に 文化庁が法改正検討
2020年11月6日付
手元にあることの利便性は高い。
なによりも、
その場で入手できれば、意欲を失わずに済む。
読みたい本が目の前にあれば、誰しも手に取るだろう。
もし数ヶ月待ちであれば、 時間との兼ね合いもあり、
「もういいや」となりがち。
◆ このような機会損失を、私は非常に恐れてきた。
「もういいや」と諦めた途端、失うものは大きい。
得られたかもしれない知識と楽しみの自己放棄。
自ら成長の好機を捨てるに忍びない。
さらに、急に頭をもたげた(a sudden urge)、
「この本を読みたい!」
の欲求裏には、重大な意味が込められているかもしれない。
目当ての本に、自分の人生を変える、なにかが潜むのではないか …
読書好きの方なら、きっとご存知の直観であろう。
これぞ自炊実行の動機のひとつだった。
すぐ手に取れるのが自炊本の強みである。
◇ 他者を一切煩わせることなく、
– が読みたい本がその場で読める
自炊本の即効性を何度も享受してからは、
投資価値を素直に認められるようになった。
そして、推定コスト200万円の捻出を決意したのである。
◆ 自炊本のPDFデータは、先述の自炊業者の専用ページに加えて、
ノートパソコン本体、有料のクラウドサービス 及び
ポータブルHDD( 2台、各5TB )に保存中。
合計5ヶ所に分散し、消滅リスクを回避している。
外出先で読む場合は、PDFをタブレット(iPad mini)にコピーする。
◇ 使用 ipad mini → 写真 ( 辞書の「自炊」と辞書アプリ )
Wi-Fi を用いて、クラウドから直接ダウンロードする場合が多い。
300ページ程度の菊判(ほぼA5サイズ)の活字和書なら、
1冊70MB前後。
5秒~30秒でダウンロード でき、至って簡単。
※ Wi-Fi の電波状況により、所要時間に差がつく
自分に合った方法を見つければ、データ管理は楽しくなる。
—【参照】 「Gmail」で作る単語帳
慣れれば、手間なしである。
現時点( 2021年4月 )の結論として、
「自炊」導入は正しかったと考える。
不便は感じないので、今後も続けていきたい。