蔵書の「自炊」記録(6)
2022/08/01
2015年12月以来、蔵書の「 自炊 」を継続している。
—【参照】 蔵書の「 自炊 」記録 (1)~(5)
毎月10冊から20冊ずつなので、緩慢なペースである。
—【参照】 その後の進捗状況
「 自炊 」とはいえ、 今や全工程を、 大手専門業者2社に任せきり。
依頼先は、「 一般書 」及び「 辞書・専門書 」で分けている。
よって、自分でスキャンする、本来の「 自炊 」ではない。
しかし、弊サイトの共通定義「 紙をスキャンして電子化 」
に従い、外注分も「 自炊 」に含めている。
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◇ 紙が極薄な辞書にも対応できる専門業者はまれ
【 辞書の自炊の詳細 】 → 辞書の「 自炊 」と辞書アプリ
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◆ 何年間も懸念した、 法律面の不安は杞憂であった。
—【参考】 「 自炊代行 」訴訟の行方
2016年3月の最高裁判決( ≒ 自炊代行は著作権侵害 )後も、
2社が提供するスキャンサービスに変化は感じられなかった。
ユーザーとしては、うれしい限りである。
◆ この1年余りで、本の山がいくつも消えた。
部屋が広くなり、とてもうれしい。
「 自炊 」の結果は目に見えるので、達成感がある。
一方で、
「 本を電子化しても、再び読む機会は少ない 」
との批判をよく耳にする。
◆ 我が蔵書は 4,000冊以上。 –
増加の一途をたどる。
残された人生で、再び全冊に目を通すことはあるまい。
果たして「 自炊 」は、推定200万円 の投資に値するか。
約 3,185冊の自炊を経た今( 2022年8月 現在 )、
その効用を考察してみる。
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1) 本を手元に置く「 安心感 」は予想以上
普段は使わなくても、 「 読みたくなった時、 絶対読める 」。
この安心感は、 「 保険 」に等しい。
欲しい本が、 必ず手元にある
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この状況は、 えも言われぬ安心感をもたしてくれた。
2) 即刻入手できる「 便利さ 」も予想以上
私にとって大事なことは、 短時間で確実に入手できること。
そのため、 必要資料は自己管理が望ましい。
けれども、 将来必要なものは見当が付きにくい。
この判断の迷いを、 端的に払拭する手段が、
丸ごと 「 自炊 」
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◆ 全国の図書館や 国会図書館 から取り寄せてもらえば、
大半の和書は閲覧できる。
自治体間の「 相互貸借 」( inter-library loan requests )
は、 通常業務として行われている。
利用代金は、原則無料。
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【参考】 ※ 外部サイト
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図書館の本、スマホで閲覧可能に 文化審議会が報告書
2020年11月付
著作権のうち、
作家らが作品のネット送信をコントロールできる
権利である「公衆送信権 」を弱め、 図書館が許可を取らずに
データを送れるようにする。( 中略 )
国会図書館はデジタル化した資料のうち、
著作権の保護期間が
切れた約55万点はネットで公開している。だが、著作権が
切れていない 絶版本 など約150万点は 著作権法 の規定で
各地の図書館の端末までしか送信できない。法改正が実現すれば、
これらも利用者の端末で見られるようになる。 ( 中略 )
図書館の蔵書をネット経由で気軽に読める「 電子図書館 」
に向けた大きな一歩と言える。
【出典】 https://www.asahi.com/articles/ASNC96CZBNC9UTIL018.html
図書館の本、データをスマホに送信 文化審議会が報告書
2020年11月9日付
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【出典】 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20201106003034.html
図書館の本、スマホで閲覧可能に 文化庁が法改正検討
2020年11月6日付
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◆ 国会図書館 の提供サービスも活用したい。
- 国会図書館 の個人向けデジタル化資料送信サービス ( 個人送信 )
https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html
※ 2022年5月開始
– - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/
◆ 手持ちの利便性は、 際立って高い。
なによりも、
その場で入手できれば、意欲を失わずに済む。
読みたい本が 目の前にあれば、 誰しも手に取る だろう。
もし 数ヶ月待ち であれば、 時間との兼ね合いもあり、
「 もういいや 」となりがち。
◆ このような機会損失を、 私は非常に恐れてきた。
「 もういいや 」と諦めた途端、失うものは少なくない。
得られたかもしれない知識と楽しみの自己放棄。
自ら成長の好機を捨てるに忍びない。
さらに、急に頭をもたげた( a sudden urge )、
「 この本を読みたい!」
の欲求裏には、重大な意味が込められているかもしれない。
目当ての本に、自分の人生を変える、なにかが潜むのではないか …
読書好きの方なら、きっとご存知の直観であろう。
これぞ自炊実行の動機のひとつだった。
すぐ手に取れるのが自炊本の強みである。
◇ 他者を一切煩わせることなく、
– が読みたい本がその場で読める
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自炊本の即効性を何度も享受してからは、
投資価値を素直に認められるようになった。
そして、推定コスト200万円の捻出を決意したのである。
◆ 自炊本のPDFデータは、 先述の自炊業者の専用ページに加えて、
パソコン本体、 有料の クラウド サービス 及び
ポータブルHDD ( 2台、各5TB )に保存中。
合計5ヶ所に分散し、 消滅リスクを回避している。
外出先で読む場合は、 PDFをタブレット( iPad mini )にコピーする。
◇ 使用 ipad mini → 写真 ( 辞書の「 自炊 」と辞書アプリ )
Wi-Fi を用いて、 クラウドから直接ダウンロードする場合が多い。
300ページ程度の菊判( ほぼA5サイズ )の活字和書なら、
1冊70MB前後。
5秒~30秒でダウンロード でき、 至って簡単。
※ Wi-Fi の電波状況により、 所要時間に差がつく
自分に合った方法を見つければ、 データ管理は楽しい。
【参照】 「 Gmail 」で作る単語帳
慣れれば、 手間なしである。
現時点( 2022年8月 )の結論として、
「 自炊 」導入は正しかったと考える。
今後も続けていきたい。
【参考】 ※ 外部サイト
- メタバース時代の書店を先取り
リアルとネットの断層をなくす
https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/nextculture/00013/
2022年2月22日付