Demanding
2024/11/18
大変な、 きつい、 自分勝手な
「 要求の多い 」 状態を表す形容詞。
【発音】 dɪˈmæn.dɪŋ
【音節】 de-mand-ing (3音節)
動詞 ” demand “( 要求する ) の現在分詞 ” demanding ” が、
形容詞 ( 過度に要求する ) になったもの。
–
◆ 仕事関連の ” demanding ” であれば、 この3つ。
辞書の文例を飾る代表格。
–
-
a demanding job
( 大変な仕事 ) -
a demanding customer
( 注文の多い顧客 ) -
a demanding boss
( 要求の高い上司 )
–
苦慮して対応する側にしてみれば、 それぞれ本音は
「 きつい仕事 」 「 面倒な客 」 「 うるさい上司 」
など。
上司やお客様とはいえ、 無茶な要求が続くと、 悪態を
つきたくもなる。
だが 、社内であっても、 基本的に悪口はご法度。
プロとしての自分の価値・品位を守るためでもある。
その代わりに活用すべきが ” demanding “。
–
◇ 形容詞 “ demanding ” は、
ネガティブな響きを 覆い隠し つつ、
「 要求が高すぎる 」 ことへの不満を表す
–
こんな効果がある。
【発音】 dɪˈmæn.dɪŋ
【音節】 de-mand-ing (3音節)
※ 例外は後述
–
とりわけ、 どこか 自分勝手でわがままな困った相手
を体よく表現するのに重宝する。
相手に反撃を食らわせたいところ、 立場上そこは我慢。
鬱積した感情のはけ口として、 自分の品性を保ちながら
取り扱うのに、 形容詞 ” demanding ” は便利である。
–
◆ 職場に限らず、 家庭内での不満にも使える。
–
-
demanding chores
( 大変な家事 ) -
a demanding husband
( 要求しすぎる夫 ) -
demanding children
( 手のかかる子どもたち )
–
すべてを差し置いて、 相手の要求に応じなければならない。
体調が悪い時などは、 かなりしんどく、 煩わしい。
それを察して、 気遣い、 自制してくれる相手ならば、
” demanding ” になりにくい。
とすれば、 ” demanding ” は身勝手で一方的に近い。
特に、 大人に対して、 この形容詞を用いる場合は、
反発心の表れ であることが少なくない。
–
–
◆ 冒頭の通り、” demanding ” は、動詞 ” demand ”
の現在分詞 ” demanding ” が形容詞になったもの。
” demand ” の語源は、 ラテン語 ” dēmandāre “。
- 接頭辞 ” dē “( 強意 )
- 動詞 ” mandāre “( 命じる )
で、 「 強く命じる 」。
< 動詞の類語比較 >
–
■ ” demand ”
権威をもって ( 時に、高圧的に ) 強く要求する■ ” claim ”
所有・請求などの権利を主張して要求する■ ” require ”
公の決まりなどによって■ ” exact ”
強要する『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』
小学館、 1993年刊 ( 物書堂 アプリ版 )
… ” demand ” の語釈より–
–
※ 4語とも、 自他動詞だが、 いずれも 他動詞 中心に使われる
※ ” require ” → 名詞 ” requirement ”
( 要求されるもの、要件 )
このように、 ” demand ” の語源からして、
威圧的で、 高飛車な態度を含んでいる。
これぞ ” demanding ” の本質であることが分かる。
とにかく うざく厄介な対象 に使う場面が目立つ。
–
◆ その対象を、 無生物 と 生物 に分けて説明する辞書が多い。
今回調べた9点の英英辞典のうち、 二分していたのは5点。
日本人に人気の高い「 4大学習英英辞典 」( EFL辞典 )では、
LDOCE6、 OALD9、 COBUILD9 が該当する。
以下、 語釈の 1. が無生物、 2. が生物。
生物は一般的に人間を指すが、 ペットなどでもよい。
–
” demanding “
■ LDOCE6 ( ロングマン )
1. needing a lot of ability, effort, or skill.
2. expecting a lot of attention or expecting
to have things exactly the way you want them,
especially in a way that is not fair.
■ OALD9 ( オックスフォード )
1. (of a piece of work) needing a lot of skill,
patience, effort, etc.
2. (of a person) expecting a lot of work or
attention from others; not easily satisfied.
■ COBUILD9 ( コウビルド )
1. A demanding job or task requires a lot of
your time, energy, or attention.
2. People who are demanding are not easily
satisfied or pleased.
※ 下線、 ハイライトは引用者
唯一、CALD4は1つにまとめて説明
■ CALD4 ( ケンブリッジ )
needing a lot of time, attention, or energy.
【発音】 dɪˈmæn.dɪŋ
【音節】 de-mand-ing (3音節)
–
語釈 2. ( 生物 ) の下線部を読むと、 自己本位な気難しさが漂う。
大変な点は、 語釈 1.( 無生物 )と、 そう変わらない。
” need ” ( ハイライト部分 ) の語感と注意点については、
” no need ” で事細かに取り上げた。
” need ” は、 重要かつ頻出なのに、 注意を要する基礎単語。
【発音】 níːd (1音節)
◆ 以下、 ” no need ” より再掲。
” need ” は、日本語の「 必要 」に比べ、
–
「 感情 」に強く訴えかける単語
–
切羽詰まった「 神経質 」な響き
–
( 中略 )
–
◆ あえて大胆な言い方をすれば、
–
限界状態に身をよじり、 もう 我慢できず、
ギャー ギャー 騒ぎ立てる有様 が ” need “
–
ヒステリックな気配で、 押しが強い。
日本語の 「 必要 」 「 要求 」 「 需要 」 「 求め 」
が備える、 品よく、 しっとりした落ち着きには乏しい。
どこまでも自分側の意思通りに、 無理無体に事を運ぼうとする
強引さ。
–
とにかく、 余裕がない。
▲▲ 再掲終わり ▲▲
–
–
◆ 先ほど、 引用した「 4大学習英英辞典 」の語釈には、
” needing ” が3つ入っている。
動詞 ” need ” の 現在分詞形 ( present participle ) である。
こんな強烈な単語を、 複数のEFL辞典が起用している
ことからも、 ” demanding ” の性質が理解でいるはず。
こうして見てくると、基本的にはネガティブ な形容詞
であると考えられる。
–
◆ その一方で、 類語辞典で筆頭格に挙げられている のが、
同じく形容詞の ” challenging “。
「 やりがいのある 」 と 「 大変な 」 の両方の意味が単語。
” challenging ”
difficult in an interesting way that tests your ability.
( OALD9 )
【発音】 ˈtʃæl.ɪn.dʒɪŋ
【音節】 chal-leng-ing (3音節)
–
◆ ” demanding ” にも、 例外的にポジティブな捉え方がある。
先の赤枠に記した、
「 ネガティブな響きを 覆い隠す 」 意図ばかりとは限らない。
つまり、 ” challenging ” のように、
「 大変だが、 取り組む値打ちのある 」 対象にも、
” demanding ” は使われる。
もっとも、 同義語扱いされる ” challenging ” に比べると、
ネガティブな文脈で使われる場合が多めな印象。
同義語の間でも、 ネガポジの比率 に差があるのが普通。
” demanding ” と “challenging” は 「 僅差 」 ではない。
–
◇ 日常用途の意味合いは、
- “ challenging “
ポジ 「 やりがいのある 」 >> ネガ 「 大変な 」
– - ” demanding ”
ネガ 「 大変な 」 >>>> ポジ 「 やりがいのある 」
※ 露骨さ回避の 「 婉曲 」 用途は、 ここでは「 ポジティブ 」 に算入
–
◆ 「 大変な仕事 」というのは、 往々にして「 やりがいのある仕事 」。
「 きつい 」 と文句垂れつつ、 まんざらでもないのか、
どこか楽しげに、 仕事に熱中する人は珍しくない。
ベテラン社会人には、 言わずもがなの見慣れた光景であろう。
この点、 日本語も英語も似通っている。
- きつい仕事
- 大変な仕事
- a demanding job
- a challenging job
これらを誇らかに思う人も大勢いる。
人の 「 本音 」 を読み取るのは容易ではない。
矛盾する感情となるため、 翻訳でも思い巡らす。
–
◆ 次の例文の ” demanding ” を ” challenging ” に置き換え
た場合、 どれほど雰囲気が変わるか検討してみよう。
- “My job is physically demanding.”
(私の仕事は肉体的にきつい。)
– - “I have to deal with demanding customers.”
(注文の多いお客様に対応しなければならない。)
– - “Her baby is so demanding.”
(彼女の赤ちゃんは、やたらと手がかかる。)
– - “He asked me in a demanding manner.”
(彼はきつい口調で頼んできた。)
– - “My teenage daughter is extremely demanding.”
(10代の娘が極端に自分勝手なのです。)
– - “Do your most demanding tasks first.”
(最も大変な仕事を最初にやりなさい。)
– - “My professor could be demanding sometimes.”
(私の教授は時々うるさくなる。)
– - “This work is technically demanding.”
(この作業には高度な技術が必要です。)
– - “I had a demanding schedule back then.”
(当時のスケジュールはきつかったです。)
– - “Avoid taking very demanding courses.”
(超大変な講義は受けるな。)
– - “My boss was so demanding, but she
demanded even more from herself.”
(私の上司はとても厳しかったが、
ご自分自身にはもっと厳しかった。)
– - ” He pushed through the demanding nature of the role.”
( 彼は、難しい役柄を最後まで演じ切った。)