I have a question for you.
2020/11/18
1つ質問があります。
会議中によく聞く。
何の変哲もない質問の仕方。
「1つ質問があります」そのもの。
特に丁寧でも無礼でもない。
相手の立場は不問で、目上でもよい。
平常に淡々と口にする限り、
嫌味はなく(後述)、中立的な言い回し。
◇ 意味と用法は以下と同様
- I have a question.
- Here is my question for you.
- Here is my question.
通常の会議では、必要以上の丁寧さは不要。
主として情報共有と話し合いの場なので、
参加者の時間を無駄にしないためにも、
手短に越したことはない。
その結果、上記のような淡白な言い方が飛び交う。
日本の学校で学ぶ、文法的に正しく丁寧な表現は、
他人行儀で堅苦しく聞こえる場面が少なくない。
常用語は、大半がそっけなかったりする。
毎日会う人に、いちいち愛想など振りまいてられない。
英語に限らず、日本語でも似たり寄ったりだろう。
「日常」とはそういうもの。
日本の学校教育では、英文法を重視するため、
常用表現を教える機会が自ずと少なくなる。
母国語と異なり、外国語学習では「文法」が不可欠な
ため、優先順位を考慮すればやむを得ないと私は考える。
学校教育の<限界>を理解するからこそ、実用的な
頻出英語をお伝えしようと弊サイトでは試みている。
ー
◆ 表題は、文法的にも非常に簡単である。
<基本中の基本>のレベル。
“I have a question for you”
- 主格の代名詞 “I“(私は)
- 他動詞 “have“(持つ)
- 単数のための不定冠詞 “a“
- 可算名詞 “question“(質問)
- 対象の前置詞 “for“(のための)
- 目的格の代名詞 “you“(あなた)
直訳は「私はあなたのための1つ質問を持つ」。
ならして「1つ質問があります」。
◆ “Here is my question for you.” では、
- 副詞 “Here“(ここに)
- be動詞の三人称単数の現在形 “is“(ある)
… 以下同様 …
直訳は「ここにあなたのための質問が1つある」。
同じく「1つ質問があります」と換言できる。
ー
◆ “for you” は「あなたのための」または
「あなたのために」を意味する頻出フレーズ。
英語ではごく自然で、一般的に他意はない。
ところが、そのまま日本語に訳すと、一転して
恩着せがましく聞こえる場合が少なくない。
主語・主格や目的語・目的格を省略しても普通に通じる
ことの多い日本語では、くどくて嫌みを帯びがち
なフレーズの代表格である。
そのため、”for you” は訳出しないケースが多い。
原文にない、皮肉めいたニュアンスが加わると
困るからである。
ー
◆ “for you” は、日本語と英語の違いが
如実に出ている例なので、ここで考察してみる。
【参照】 日英の言語ルーツは大きく異なる
日本語の特徴の1つは、非言語のコミュニケーション
が多い点である。
調和や協調を重視する密接な人間関係に基いて
発達したため、相手側の状況判断と相まって、
言葉に表さなくても会話が成立してしまう。
人口密度が高く、体験を共有している濃い関係。
言葉以外の「場の雰囲気」「あうんの呼吸」
を自ら察知して、すんなり理解できる。
そのため、あいまいな表現が多く、他の言語で通常
不可欠な主語を略しても、普通に通じたりする。
日本語の持ち味である。
一方、英語は個人主義的な文化から生まれた言語で、
個性重視の主体性がある。
とかく、自我が強い。
人口密度が低めで、事前に共有している情報が少ない。
同質的でないため、言語化しないとお互い分かりえない。
日本語が相手側の状況判断にかなり依存する言語に対し、
英語は伝達情報を言語にはっきり表す姿勢を基本とする。
同質社会でなく、共有体験が少ないため、日本人のように
「場の雰囲気」「あうんの呼吸」にゆだねるのは困難。
ゆえに、きちんと言葉で示さなければ通じない。
言語化しない内容は「存在しない」ようなもの
↑↑↑↑↑ これぞ、英語の大原則 ↑↑↑↑↑
–
【参照】 ※ 外部サイト、和文
■ 高コンテクスト文化と低コンテクスト文化
–↑ 文化人類学者 E.T.ホール の賛否両論ある学説 ↓
■ High-context and low-context cultures (英文)
–
このような文化・言語の違いがあるため、
非言語コミュニケーションを基盤とする日本語に
訳出すると、くどくどしくなったり、皮肉を帯びる
英語が多発する。
【参照】 ※ 外部サイト、英文
“Aimai: A Dynamic Intertwined in Japanese Culture and Language”
英語ネイティブの日本語学習者による「あいまいさ」の考察。
学者による論文より読みやすく、的を射た指摘の数々がすばらしい。
主語なしで通じる不思議についても言及する。
Japanese is an implicit language while
English is an explicit language.
Since often times a clear definition of the
subject is not known, translating from
implicit to explicit requires the ability to
infer meaning and insert the appropriate
words/phrase into the explicit.
“Aimai: A Dynamic Intertwined in Japanese Culture and Language”
by Kyle Von Lanken
2015年1月30日付
中級学習者の実力があれば、一読して把握できるはず。
–
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◆ “for you” のネガティブ作用は、”do a little math”
にて、以下の通り説明した。
Let me do a quick math for you.
(あなたのために、ちょっと計算してみますね。)
一見何でもないが、危うい場面での本音は、
- 「お前、なにほざいてんの。
お前のために、さっさと計算してやるから、よく見とけ。」
“for you”(あなたのために) が、特に皮肉を帯びる。
この場合、”little“、”bit of“、”minor“、”quick“、
“small”、”simple” には、
相手を見くびるニュアンスが加わったりする。
どこか威圧的で、小馬鹿にした感じ。
- 「こんな簡単な計算なのに、お前のオツム空っぽかよ。」
平時であれば、親切心を示す無難な表現のはず。
人間のコミュニケーションは単純でない。
冒頭で触れたように、平時に普通の口調で述べれば、
“for you” の有無に関わらず、いずれも中立的な口調となる。
すなわち、他意はなく無難な話し振り。
ー
◆ とにかく、筆舌も相手も問わない基本的な質問表現
として、先の4つを押さえておこう。
「1つ質問があります。」
- I have a question for you.
- I have a question.
- Here is my question for you.
- Here is my question.