プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

I have a question for you.

      2023/06/07

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1つ質問があります。 

会議中によく聞く。

なんの変哲もない質問の仕方。

「 1つ質問があります 」 そのもの。

 

ご質問 1つ

 

特に丁寧でも無礼でもない。

相手の立場は不問で、目上でもよい。

平常に淡々と口にする限り、
嫌味はなく( 後述 )、 中立的な言い回し。

◇  意味と用法は、 以下とほぼ同様

  •  I have a question.
  •  Here is my question for you.
  •  Here is my question.


通常の会議では、 必要以上の丁寧さは不要。

主として情報共有と話し合いの場なので、
参加者の時間を無駄にしないためにも、
手短に越したことはない。

その結果、 上記のような淡白な言い方が飛び交う。

日本の学校で学ぶ、 文法的に正しく丁寧な表現は、
時に、 他人行儀で、 堅苦しく聞こえがち


常用語は、 大半がそっけない。

毎日会う人に、 いちいち愛想など振りまいていられない。

英語に限らず、 日本語でも似たり寄ったりだろう。

「 日常 」 とはそういうもの。

日本の学校教育では 「 英文法 」 を重視するため、
常用表現を教える機会が自ずと少なくなる。

 

◆  人間が 「 本能的に 」 習い覚える第一言語( 母語 )と異なり、

( 真っ当な ) 外国語学習には 「 文法学習 」 が不可欠  

よって、 優先順位 を考慮すれば、 やむを得ないと私は考える。

母語と外語とでは、 習得過程が違う。

このため、 英語ネイティブの児童向けの教材を用いた成人の
英語学習は、 表面的には合理的に思えるものの、 必ずしも
合目的とは言えないと感じる。

ネイティブ児童の発音ルール 「 フォニックス( phonics )」
を取り入れる手法と同根の難点。

母語と外語の習得過程を区別しておらず、 前提がおかしい。

文法学習なしで、4技能 ( 聞く ・ 読む ・ 書く ・ 話す )を万遍なく、
一定水準以上まで会得できるのは、特殊な環境・才能に恵まれた人
を除けば、「 母語に限る 」 と考えられている。

第一言語 ( 母語 ) は、 環境・知能などに問題がなければ、 自然
に習得できるよう  「 人間の本能 」 にプログラムされている。

普通に育った子が、 文法を勉強する前から、 母語となる現地語
を話せるようになる、 主な理由である。

特殊な環境・才能に恵まれた人であっても、 厳密に検証すると、
彼らの一部は、 なんと  「 セミリンガル 」  だったりする。

【参照】  母語が確立できていない 「 セミリンガル 」 の悲惨

◆  複数の言語が飛び交う家庭環境と聞けば、 理想的に感じて、 うらやましくなる。

興奮すると、 別言語が飛び出し、「  かっこいい ~ !  」 などと他人におだてられる。

ところが、 つぶさに検査すると、 どの言語も平均を下回るケースがあふれている。

言語をミックスしない限り、 会話が成り立ちにくいのが真相だったりする。

4技能がまちまちで、 第一言語 ( 母語 ) がどれだか、 なんだかよく分からない。

「 セミリンガル 」、「 ダブル・リミテッド 」 またはそれに準じるものと推測する。

日常会話は 「 ペラペラ 」 なので、 後年に及ぶまで保護者すら気づかないことも。

母語の習い直しは生易しくないのだが、 警戒すべき差し響きは知られていない。

抽象・概念・観念的な思考がぎこちなくなり、 その表現が拙くなるのが典型例。

話は理解できたとしても、 抽象化する能力のせいで、 説明がごたつく。

記述式の作文で試験してみると、 問題点はひときわくっきり浮き出る。

だからこそ、 作文と口頭試問を含めた適切な検査の重要性を私は力説している。

私自身、 学校時代から現在に至るまで、 そうした家庭環境を近くで見てきた上、
「 セミリンガル 」 らしき方々と関わる職場に長らく身を置いて勤務してきた。

一緒に働けば、 不都合を覆い隠しきれず、 直に体験した事例には事欠かない。

conclusive ”  にて、 きめ細かくご紹介した ( 地図入り )。

歴史を振り返りつつ、 世上流布しない正負の側面にも触れた。

 

◆  要するに、 外語としての「 4技能 」を確実に身につけるには、
文法を避けては通れない。

この点、 しっかり認識しておきたい。

【参照】  詐欺教材大国の日本、 

  •  日本語の4技能 ( 聞く ・ 読む ・ 書く ・ 話す )のうち、
    最も難易度が高いとされているのは 「 書く 」。
  •  アニメ・映画・ドラマを観まくって、 日本語が堪能になる
    外国人もいるが、 同程度の日本語が書ける人は皆無な印象。
    このタイプは 「 聞く・話す 」 特化型 が中心を占める。
  •  日本語ペラペラの YouTubers の動画を観ていると、
    ネット検索かける際に、 日本語ではなく母語の英語
    を使っている姿を見かける。

    日本関連の調査をするには、 日本語で検索する方が
    桁違いに効率的にもかかわらずである。

    どうやら 「 書く 」 のは不得意なのか。

      しげしげと注意深く観察すれば、 察知可能
    →  川端・芥川・三島が読めても、 ほとんど書けない人も多い

    日本語の 「 ローマ字入力 」 自体に手間取る諸氏も数多い。
  •  日本語ペラペラの外国人が用いる日本語の講演原稿・台本・
    台詞・カンニングペーパーが、 ローマ字表記で構成される
    場面は珍しくない。

    ひらがな・カタカナ・漢字では、 充分読めないらしく、
    和文原稿をローマ字変換する作業を私は何度も担当した。

まさか、 ローマ字原稿だなんて、 視聴者には思いもつかない。

初めて目にすると、 息が止まるほど、 びっくり仰天する原稿。

舞台裏 のすっぱ抜き話でなく、 ざらにありふれた手順なのだ。

口上はうまく、 いささかのよどみもないのだから、 さすが。

しかし、 「 日本語の達人 」 と称するには、 まあまあ微妙。

中級以上の英語に熟達している日本語母語話者の英文原稿は、
ほぼ例外なく原文の英語のままであり、 著しく対照的である。

中級者は、 ちゃんと英語で読める。

表音のみで表意文字を持たない英語と、
表音・表意を併用する日本語の特異性。

語学上、 看過できない懸隔である。

脳内で 「 表意文字 」 を同時処理しきれないからだと考えられる。

【原文】 日本語 ( 表音・表意 )  →  【変換】 ローマ字 ( 表音 )

こういった実情は明るみに出ない。

語学力を判定するには、 「 4技能 」 を万遍なく精査すること
が望ましい。

 

◆  日本語が母国語でない人に向けた 「 日本語能力試験 」
JLPT ) は、 世界最大の日本語能力の認定試験である。

「 言語コミュニケーション能力 」 を 「 マークシート方式 」
で測定する形式で、 試験を構成する3要素  は、 次の通り。

言語知識 ( 文字・語彙・文法 )・ 読解 ・ 聴解

最難関の 「 N1 」 でさえ、 作文が含まれていないのは、
語学力の試験としては、 望ましくないとつくづく思い知る。

私の経験上、 日本語・英語の真の運用能力は 「 話す 」
以上に、 「 書く 」  に表れやすい。

  •  「 書く 」 と 「 話す 」  →   産出能力  output skills
  •  「 聞く 」 と 「 読む 」  →   受容能力  receptive skills

マークシートで測るとなれば、 産出能力は確認しかねる。

基礎文法を体得していないと、 外語はまともに書けない。

難しい日本語が読めても、 書けない人がごまんといる点は前記した。

「 ペラペラ 」 はすごいが、 あまり惑わされない方がよいと感じる。

▲  作文・口述抜きで、 こうして評価するのは、 へんちきりん

【参照】  Please be aware that – 

 


「 英語は簡単 」 などと、 気安くほざく人間 ( 国籍不問 ) は、

日本語と英語の 「 全体像 」 をまるで理解していない勉強不足の不届き者、

または、 飛び抜けて俊逸な才覚の持ち主のいずれか。

日英の 「 4技能 」 を  厳密に試験 すれば判明する。

日本語と英語、 両方の 「 4技能 」 すべてが大事。

殊に、 産能力 ( 書く・話す ) をしっかり検査。

言語の真の運用能力は、 「 書く 」 に表れやすい。

その場  課題を出し、 実力を確認するとよい。

 

詐欺師かどうか、 すぐ分かる。

残念ながら、 詐欺師だらけ

 

外語の場合、  基礎文法を知らないと、 まともに書けない。

「 4技能 」 のうち、 「 書く力 」 はごまかしにくい。

したがって、 日頃の学習量と取り組み姿勢を反映する。

今は機械翻訳 ( AI ) が身近にあり、 見抜きづらい。

 

日本語ペラペラの 英語教育系 YouTubers の一部に、 要注意。

参考にはなるものの、 学術的な裏付けに欠けた感覚的理解

に基づく生半可な知識をまき散らしている諸賢がのさばる。


ペラペラでも、 両言語をその場で書かせれば、 正体はバレる。

地味で地道な長期的研鑽を要するのが、 「 書く力 」。


日本語と英語の違い  より


さらなる裏話は、 ” conclusive ”  に記した。

学校教育の 「 限界 」 を理解するからこそ、 実用的な
頻出英語をお伝えしようと弊サイトでは試みている。

◆  表題は、 文法的にも簡単である。

< 基本中の基本 >  のレベル。

” I have a question for you ” 

  • 主格の人称代名詞  I( 私は )
  • 他動詞 have( 持つ )
  • 単数のための不定冠詞  ” a
  • 可算名詞  question( 質問 )
  • 対象の前置詞  ” for( のための )
  • 目的格の代名詞  you( あなた )


直訳は「 私はあなたのための1つ質問を持つ 」。

ならして「 1つ質問があります 」。

 

◆  ” Here is my question for you.” では、

  • 副詞  ” Here “(ここに)
  • be動詞の三人称単数の現在形  ” is “(ある)
    …   以下同様   …

直訳は 「 ここにあなたのための質問が1つある 」。

同じく 「 1つ質問があります 」と換言できる。

◆  ” for you ” は 「 あなたのための 」 または
「 あなたのために 」 を 意味する頻出フレーズ。

英語ではごく自然で、 一般的に他意はない。

けれども、 そのまま日本語に訳すと、一転して
恩着せがましく聞こえる  場合が少なくない。

主語・主格や目的語・目的格を省略しても、
通じることが普通にある。


こういう特色のある日本語では、

くどくて「 嫌み 」を帯びかねない

フレーズの代表格である。

そのため、” for you ” は訳出しないケースが多い。

原文にない、皮肉めいた ニュアンス が加わると
悪印象を与え、困るからである。

【参照】  日英の言語ルーツは大きく異なる

◆  ” for you ” は、日本語と英語の違いが
如実に出ている例なので、ここで考察してみる。

日本語の特徴の1つは、
非言語のコミュニケーションが多い


調和や協調を重視する密接な人間関係
に基いて

発達したため、 相手側の状況判断と相まって
言葉に表さなくても   会話が成立してしまう。

人口密度が高く、体験を共有している濃い関係。

言葉以外の「 場の雰囲気 」「 あうんの呼吸
を自ら察知して、すんなり理解できる。


あいまいな表現がやたらと多く、他の言語では
通常
不可欠な  主語を略しても、難なく通じたりする。

日本語の持ち味である。

それゆえに、AI( 人工知能 )による和訳はそう容易ではない。

主語・目的語の省略がもたらす支障は、” vocal about –
にて事細かに記した。

◇  一方、英語は 個人主義的な文化から生まれた言語 で、
個性重視の主体性 がある。

とかく、自我が強い

人口密度が低めで、事前に共有している情報が少ない。

同質的でないため、言語化しないとお互い分かり合えない


日本語が 相手側の状況判断にかなり依存する言語 に対し、

英語は 伝達情報を言語にはっきり表す 姿勢を基本とする。

同質社会でなく、共有体験が少ないため、日本人のように
場の雰囲気 」「 あうんの呼吸 」に委ねるのは困難。

ゆえに、きちんと言葉で示さなければ通じない。

日本語は「 寡黙の表現 」で、 表白抜きでも含蓄に富むのに対し、
英語は「 饒舌の表現 」と呼ばれたりする。

  言語化しない内容は「 存在しない 」ようなもの  

↑↑↑↑↑   これぞ、 英語の大原則   ↑↑↑↑↑


【参考】    ※  外部サイト、和文

  高コンテクスト文化と低コンテクスト文化
↑  文化人類学者 E.T.ホール の賛否両論ある学説 

  High-context and low-context cultures (英文)

◇  このような 文化・言語の違い があるため、

非言語コミュニケーションを基盤とする日本語

訳出すると、くどくどしくなったり、皮肉を帯びる

英語が多発 する。

 

【参考】    ※  外部サイト、英文

“Aimai: A Dynamic Intertwined in Japanese Culture and Language”

英語ネイティブの日本語学習者による 「 あいまいさ 」 の考察。

学者による論文より読みやすく、 的を射た指摘の数々がすばらしい。

主語なしで通じる不思議についても言及する。


Japanese is an  implicit language  while
English is an  explicit language.

Since often times a clear definition of the
subject is not known
,  translating from
implicit to explicit   requires the ability to
infer meaning and insert the appropriate
words/phrase into the explicit.


Aimai: A Dynamic Intertwined in Japanese Culture and Language
by  Kyle Von Lanken

2015年1月30日付

※  ハイライト・色字は引用者


中級学習者 の実力があれば、 一読して把握できるはず。


◆  ” for you ” のネガティブ作用は、 ” do a little math
にて、以下の通り説明した。


Let me do a quick math for you.

あなたのために、ちょっと計算してみますね。 )


一見なんでもないが、危うい場面での本音は、

  • 「 お前、なにほざいてんの。
    お前のために
    さっさと計算してやるから、よく見とけ。」

” for you “( あなたのために ) が、特に皮肉を帯びる。


この場合、 ” little “、” bit of “、” minor “、” quick “、
small “、” simple
には、

相手を見くびる  ニュアンス  が加わったりする。

どこか 威圧的 で、小馬鹿にした感じ。

  • 「 こんな簡単な計算なのに、お前のオツム空っぽかよ。」

平時であれば、親切心を示す無難な表現のはず。

人間のコミュニケーションは単純でない。


冒頭で取り上げたように、平時に普通の口調で述べれば、

for you ” の有無とは関係なく、 中立的な口調となる。

すなわち、 意地悪ではなく無難な話し振り。

◆  とにかく、 筆舌も相手も問わない基本的な質問表現
として、 先の4つを押さえておこう。

「 1つ質問があります。」

  •  I have a question for you.
  •  I have a question.
  •  Here is my question for you.
  •  Here is my question.

 

 

【参考】    ※  外部サイト

◇  英語母語話者 ( 英語ネイティブ ) 対象の 「 言語習得難易度表 」

米国務省の外務職員局 ( FSI : Foreign Service Institute ) 発表

日本語は最難関 ( 4段階中、最高位 )

超難しい


Super-hard

exceptionally difficult for native English speakers

https://www.state.gov/foreign-language-training/


割かし頻繁に引用される資料なので、 信用に値すると考えられる。

70 years of experience in teaching languages to U.S. diplomats

米外交官に、 70年間、 外国語教育を施した実績が叩き出したランキング。

英語ネイティブにとって、 日本語がかなり難しいのは、 確かであろう。

要は、 我ら双方にとって大変であり、 まったくもって、 お互い様。

integrity ” にて、「 音声 」 「 音節 」 の日英比較を深掘りしている
( 図入り )。

 

 

 

 

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