プロ翻訳者の単語帳

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Try to –

      2018/03/23

~するようにしてみてください。 

“try” という動詞には、数多くのニュアンスを伴う。
主要用法はきちんと英和辞典に紹介されている。
しかし、それでも物足りない部分があると
常々感じているため、ここで取り上げてみたい。

結論から言えば、

ソフトな依頼・命令の “try to”。

「~しろ」「~して」ではなく、
「~するようにしてみて」との柔らかい語感。

日常的には、かなり使う用法である。

我が子、教え子、部下の場合は、上下関係
が明らかであり、その分、命令しやすい。
通常は義務も権利も伴うから、当然である。

ところが、普段接する相手には、このような
明確な地位の差異が見られないことも多い。
具体的には、友人、同僚、隣人、他人の子ども
などは、上下関係にそぐわない間柄である。

そんな相手に何かをお願いしなければならない
機会は、決して珍しくない。その際に使うとよい。

依頼・命令時の言葉遣いは大切。
言葉のセンスのみならず、人間心理への理解度
が如実に出るのが、自分が依頼側にある場面。

下手な言い方をすると、相手の反発を食らい、
思わぬ結果を招いたりする。

言い方を間違ったがゆえに、自分の望む結果を
得られないことは、実に残念なことである。
気を遣っておけば、まったく違う結果となったかも
しれないのだ。

こう考えると、言葉遣いの巧拙で、人生が
変わってくると言っても過言ではないだろう。
少し意識するだけでも、相手の対応が変化する。
それほど<即効性>のあるのが、言葉遣いと考える。
【参照】 “It’s a long story.“(いろいろあって。)

◆ “try” には、他動詞・自動詞・名詞がある。
語源は、古フランス語「ふるいにかけて選ぶ」
(trier)。

– 他動詞「試みる」「努力する」「心がける」
– 自動詞「試みる」「努力する」
– 名詞「試み」「努力」「トライ」

以上が基本的意味。
中級学習者であれば、既習の内容。
特別に難しい点はない。

だが現実の使用では、そう単純でない。
冒頭で述べた通り、様々なニュアンスを表せる
のが “try” の特色。

手始めに、次の2文をご覧いただきたい。
違いが分かるだろうか。

  1. “She tried kicking him out.”
    (彼女は彼を追い出してみた。)
  2. “She tried to kick him out.”
    (彼女は彼を追い出そうと努力した。)

1.は実際に追い出しにかかっている様子。
それに対し、2.は単に努力しただけ。

一見大差はないが、もし当事者であれば、
看過できない違いを感じるはず。

この種のニュアンスの差が生じがちな “try” は、
なかなか厄介な動詞なのである。
英和辞書を精読しても、見えてこない機微である。

◆ さて、本題に入る。

口頭依頼時の “try” で、相手あっての用法について。

例えば、「遅れないように来なさい。」
と目下の相手に命じる際、一般的には、

  • Make sure to come on time.
  • Be sure to come on time.
  • Don’t forget to come on time.
    など。

他動詞 “try” を用いると、

  1. Try to come on time.
  2. Try and come on time.

1と2のどちらが、きつく聞こえるか。
答えは2。微差ではあるが、ニュアンスは異なる。
和訳すると、こんな感じ。

  1. 遅れないようにして来てください。
  2. 遅れないように来なさい。

2. の方が緊迫性を感じるだろう。
換言すれば、命令の度合いが強い。
以下同様。

  1. Try to be quiet.
    (静かにするようにしてみてください。)
  2. Try and be quiet.
    (静かにしてください。)
  1. Try to finish quickly.
    (急いで終わらすようにしてみてください。)
  2. Try and finish quickly.
    (急いで終わらせてください。)
  1. Try to remember this.
    (覚えるようにしてみてください。)
  2. Try and remember this.
    (覚えておいてください。)

英語学習者に馴染み深い言い回しが、

  1. Try to speak in English.
    (英語で話すようにしてみてください。)
  2. Try and speak in English.
    (英語で話してください。)
  3. Speak in English.
    (英語で話して。)
  4. Speak English.
    (英語を話せ。)
    → 「あなたの英語は理解不能」
    の意もある

言わんとしていることは一緒。
しかし、1と4 では印象がかなり異なる。
違いがピンとくれば、各ニュアンスを
把握できていると考えられる。

例えてみると、こんな状況。
英語ネイティブだらけの会場で、日本人は自分一人。
そんなアウェイな場で、直接このように声を
かけられたらどう感じるか、ということ。

いきなり4を浴びさせられた時には、逃げ出した
くもなるだろう。

◆ 初学者の場合、区別はよく分からない。
大意をつかむことで精一杯なので、威圧的
ニュアンスが含まれても、まるで気づかない。
どうにか相手の話が分かって、ほっと一安心する。

ところが、学習が進んでくると、知覚できる対象が
徐々に増えてくる。

相手の放つ人種差別的なニュアンスまで把握できる
ようになってくると、外国人嫌いになったり、自信
と意欲が削がれる打撃も思い知るようになる。

時に、体内が火照る屈辱をかみしめることもある。

ぜひ覚えておいていただきたいことは、頑張って
学習を継続し、英語ができるようになった日本人は、
皆そういう経験を経てきているということ。

不快な経験には違いないが、自らこういう経験を
味わわないと、使える英語は身につかないし、
人種差別問題の根深さに触れるよしもない。

他言語や他文化に触れることとは、成長の喜びだけでは
済まされない。憂き目に遭遇する機会も確実に増える。
グローバル社会にもまれるとは、きっとそういうこと。

否応なくそんな時代に移行しつつあるのだから、
早いうちに慣れてしまう方がよいと私は考えている。
そして、願わくば、がつんとユーモアで反撃してやる
くらいの英語力と人間性を身につけたいものである。

【参照】
“What’s so funny – ? ”
https://mickeyweb.info/archives/17757
(何がそんなにおかしい ?)

 

 

 

 

 

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