Miscommunicate / Miscommunication
2024/02/14
動詞
名詞
-
miscommunication
( 可算名詞・不可算名詞 )
–
誤った伝達、 不十分な伝達、
伝達ミス、 連絡ミス
–
【発音】 mìskə̀mjuːnikéiʃən
【音節】 mis-com-mu-ni-ca-tion (6音節)
–
◆ 職場 でトラブル原因を問われた際、
よく出てくる言い開きがこちら。
–
–
There must have been
some miscommunication.( なんらかの伝達ミスが生じたに違いありません。)
–
要は、コミュニケーションがうまくいかなかったということ。
助動詞 ( auxiliary verb ) と 現在完了形 ( past perfect )
の “ must have been ” ( ~ だったに違いない )
で、 懸命に弁解する様子がうかがえる。
相手に責任をなすりつけたい場合は、 こんな感じ。
–
–
You seem to have a miscommunication
with Mr. X.( Xさんとの間に、伝達ミスが生じているようですね。)
( Xさんとの間に、伝達ミスが生じている模様ですね。)
–
自動詞 ( intransitive verb ) ” seem ” に、
他動詞 ( transitive verb ) ” have “。
こっちの ” have ” は、 助動詞ではないため、 完了形にならない。
使い手には応分の自信があり、 自身の主観的な憶測に基づき、
きつめに指摘している。
–
◆ 近年、カタカナでも耳にするようになってきた
名詞 「 ミスコミュニケーション 」。
その動詞は 「 ミスコミュニケート 」。
定訳は存在しないに等しい。
意味の推測は難しくないだろう。それぞれ、
- 接頭辞 ” mis ” + 名詞 ” communication “
- 接頭辞 ” mis ” + 動詞 ” communicate “
–
◆ 接頭辞 ” mis- ” は、「 誤って 」「 悪い 」。
” mis- “
bad or wrong; badly or wrongly.
( オックスフォード、OALD9 )
–
これらは日本でも普及している。
- 「 ミスプリント 」 ( misprint )
- 「 ミスキャスト 」 ( miscast )
さらに「 ミスする 」は、「 失敗すること 」
の意で常用されている。
実のところ、「 ミスする 」はカタカナ語に近く、
英語では ” miss ” よりも、 ” mistake ” が適切 (※)。
両方とも、名詞・他動詞・自動詞がある。
(※) 詳細は、” miss out “( 逃す、~ し損なう )
妥当性は微妙だが、「 ミス 」 = 「 誤り 」
の意味合いで、 日本で根づいているのは確か。
そのため、「 ミスコミュニケーション 」と
「 ミスコミュニケート 」の意味は比較的容易に
推し量ることができる。
ー
◆ ” communicate ” には、他動詞と自動詞がある。
【発音】 kəmjúːnikèit
【音節】 com-mu-ni-cate (4音節)
語源は、ラテン語「 伝える 」( commūnicātus )。
基本的意味は語源通りで、 日常使用の中心。
その名詞 ” communication ” は、もっと馴染み深い。
同じく、語源はラテン語「 伝達 」( commūnicātiō )。
【発音】 kəmjùːnikéiʃən
【音節】 com-mu-ni-ca-tion (5音節)
可算と不可算を兼ねる。
■ 接頭辞 ” mis ” を加えた動詞
miscommunicate
–
「 誤って伝える 」 「 不十分に伝える 」
” communicate ” 同様、 他動詞 と 自動詞 がある。
【発音】 mɪskəˈmjuːnɪkeɪt
【音節】 mis-com-mu-ni-cate (5音節)
–
–
■ 名詞形
miscommunication
–
「 誤った伝達 」 「 不十分な伝達 」
” communication ” 同様、可算 と 不可算 名詞がある。
【発音】 mìskə̀mjuːnikéiʃən
【音節】 mis-com-mu-ni-ca-tion (6音節)
伝達ミス
ー
◆ 不思議なことだが、動詞 ” miscommunicate ” は、
3大学習英英辞典 ( EFL辞典 )に一切載っていない。
いずれにも、項目立てされていないのだ。
ー
無論、3辞典とも最新版 ( 2017年12月11日初稿現在 )。
ー
とすれば、” miscommunicate ” は単語として
認められていないのだろうか。
申し開きとして重宝される以上、れっきとした
単語であるはず。
主要な英和辞典を調べてみた。
これらには ” miscommunicate ” 及び ” miscommunication ”
の項目が設けられている。
唯一、 最後の 『 研究社 新英和大辞典 第6版 』 には、
名詞 ” miscommunication ” のみ、 掲載されている。
–
miscommunicate
- 【自】 【他】 (~を)誤って[ 不正に ] 伝達[ 連絡 ]する
–
[派] 【名】 miscommunication
( ジーニアス英和大辞典 )
–
–
- 【自】 【他】 誤って伝達する、 間違った伝達をする
( リーダーズプラス )
–
miscommunication
【名】 誤った伝達[連絡]、 伝達[連絡]不良
( リーダーズ英和辞典 第3版 )
–
– - 【自】 【他】 誤って[不十分に、あいまいに]伝達する
–
miscommunication
【名】 伝達不十分、誤った伝達
( ランダムハウス英和大辞典 第2版 )
- 【自】 誤って伝達をする
【他】 〔~を〕誤って伝達する
–
miscommunication【名】 誤った [間違った] 伝達、 誤解、 聞き違い( 英辞郎 on the WEB PRO )
※ 2021年3月1日 アクセス
- miscommunication
【名】 誤った伝達[連絡], 伝達[連絡]不備[不十分].
〔1964〕
( 研究社 新英和大辞典 第6版 )
【発音】 mɪskəˈmjuːnɪkeɪt
【音節】 mis-com-mu-ni-cate (5音節)
–
【発音】 mìskə̀mjuːnikéiʃən
【音節】 mis-com-mu-ni-ca-tion (6音節)
–
◆ 有名どころのオンライン英英辞典でも、
動詞 ” miscommunicate ” を見つけるのは大変。
辛うじて、見つけたものが、下記2つ。
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https://www.lexico.com/definition/miscommunicate
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/miscommunicate
※ 2021年3月1日 アクセス 2023年4月27日 再確認
–
前者に、動詞 ” miscommunicate ” の起源は「 20世紀初頭 」とある。
単語の初出年としては、比較的最近と言える。
以下の有力語源サイトの見出しは、 動詞 ” miscommunicate ”
ではなく、 名詞 ” miscommunication ” 。
名詞の初出は、「 1959年 」とある。
動詞より遅い。
–
https://www.etymonline.com/search?q=miscommunication
https://www.etymonline.com/search?q=miscommunicate※ 2021年3月1日 アクセス 2023年4月27日 再確認
–
◆ 別サイトでは、質問スレッドが立てられていた。
2003年付だから、随分以前である。
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Q) Is ” miscommunicate ” a valid word ?
A) The editors of the Oxford English Dictionary
decided last year to add ” miscommunicate ”
( as well as ” miscommunication “) to the dictionary.http://answers.google.com/answers/threadview?id=216515
2003年6月12日付
–【 参考和訳 】
質問)” miscommunicate ” は単語として正当か。
回答) 昨年(訳注:2002年)、OEDの編者たちは
OEDに ” miscommunicate “(及び ” miscommunication ” )
を追加することを決定した。
–
天下のOEDですら、この有様。
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–
◆ “ OED “ ( オーイーディー )とは、
“ The Oxford English Dictionary ” の略称。
邦題 『 オックスフォード英語辞典 』 。
[ 公式サイト ] → http://www.oed.com/
1884年にイギリスで刊行が始まり、
全20巻、2万1730頁、29万1500の見出し語、
世界最大の英語辞典である。
語義の配列は、頻出順ではなく、発生順の「 歴史主義 」。
成り立ちを、系統的にたどれる利点がある。
“OED” 編集主幹の James Murray 博士 (1837-1915)
については、” in place ” で触れている( 写真入り )。
▼ 「 縮刷版 」及び「 CD-ROM版 」も発売されている ▼
–[ 両方入手済み ] → 辞書の「自炊」と辞書アプリ
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◆ この質問主が加えた下記内容は、本稿の疑問と重なる。
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–
No dictionary listings can be found, however,
the word ” miscommunication ” is found.How can you have miscommunication
without the ability to miscommunicate?http://answers.google.com/answers/threadview?id=216515
2003年6月12日付
–【 参考和訳 】
” miscommnicate ” は、どの辞書
( 訳注:英語ネイティブ用の英英辞典と思われる )
にも載っていないものの、” miscommunication ”
は見つかった。しかし、” miscommunicate ” することができなければ、
” miscommunication ” の発生はあり得ないのでは。
–
もっともなご意見である。–
「 動詞 」から派生し、「 名詞 」になる流れが英単語の主流
だが、” miscommunication ” について該当しないのだろうか。
初出年は、既に記したように、
- 動詞 ” miscommunicate ” 20世紀初頭
- 名詞 ” miscommunication ” 1959年
なんだか、よく分からなくなってきた。
本当にどの辞書でも、先発の動詞 ” miscommunicate ” を
差し置いて、名詞 ” miscommunication ” ばかりが目立つ。
–
◆ 参考までに、「 親 」同士を比べてみる。
<頻出度>
communication > communicate
■ communication :
– 話し言葉 :上位 1,001〜2,000語
– 書き言葉 :上位 1,000語以内
■ communicate :
– 話し言葉 :上位 2,001~3,000語
– 書き言葉 :上位 2,001~3,000語
–
<重要度>
communication = communicate
ともに 「上位 3,000語以内」。
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
–
” miscommunication ” については、
OALD9とCALD4には明記されている。
–
” miscommunication “
■ failure to make information or your ideas
and feelings clear to somebody, or to
understand what somebody says to you.
( オックスフォード、OALD9 )
■ failure to communicate ideas or
intentions successfully.
( ケンブリッジ、CALD4 )
【発音】 mìskə̀mjuːnikéiʃən
【音節】 mis-com-mu-ni-ca-tion (6音節)
–
LDOCE6 に至っては、” miscommunication ” すら欠けている。
オンライン英英辞典では、
にも、名詞 ” miscommunication ” の項目がある。
※ 2021年3月1日 アクセス
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◆ 前出 OALD9( 2015年刊 )の新版 OALD10 ( 2020年刊 )
はこちら。
◇ OALD10 → 写真入り短評
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” OALD10 ”
(アプリ版) より転載▼ オンライン版 ▼
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/miscommunication?q=miscommunication
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名詞 ” miscommunication ” の語釈は変わっていない。
そして依然として、動詞 ” miscommunicate ” の項目立てはない。
同じく、動詞 ” miscommunicate ” はなくても、
名詞はコリンズ系の英英2点には載っている。
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” COBUILD Advanced Learner’s Dictionary, 9th edition ”
(アプリ版) より転載
” Collins English Dictionary, 12th Edition ”
(アプリ版) より転載▼ オンライン版 ▼
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/miscommunication
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実務的には、「 伝達ミス 」 または 「 連絡ミス 」
くらいが穏当な和訳。
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◆ 冒頭で述べた通り、両者の意味合いは難しくない。
ー
きっと、「 ミスリーディング 」( misleading )に似た
立ち位置で、カタカナでも定着する方向に向かうだろう。
用法は、” communication ” と ” communicate ” に準じる。
- “There was miscommunication between them.”
(彼らの間では伝達ミスがあったようだ。)
–
- “We fell apart due to a simple miscommunication.”
(コミュニケーションの些細な失敗によって、私たちは別れた。)
–
- “I think they deliberately miscommunicate users.”
(彼らはわざとユーザーに不十分に伝えているのだと思う。)
–
- “I want to avoid miscommunicating my intention.”
(自分の意図を間違って伝えたくないのです。)
【関連表現】
- “ misinformation ” ( 誤報 )( 誤情報 )
【発音】 mìsinfəméiʃən
【音節】 mis-in-for-ma-tion (5音節)
- “ disinformation ” ( 虚報 )( ガセネタ )
【発音】 dìsinfəméiʃən
【音節】 dis-in-for-ma-tion (5音節)