Taken aback
2021/09/08
不意を衝かれる、 面食らう
「 不意を衝かれる 」といったら、” taken aback ” が
決まり表現のひとつ。
–ふい【 不意 】
- 思いもよらないこと。 思いがけないこと。 意外。
- 突然。 だしぬけ。
–不意を衝く ふいをつく–
相手に対し、 だしぬけに事を行う。
敵をだしぬけに襲う。 不意を討つ。
( 広辞苑 第七版 )
–
※ 「 不意を突く 」と書く英和辞典が多いが、
『 広辞苑 』では「 衝く 」を採用。
実際は、「 突く 」「 衝く 」「 撞く 」のいずれも
間違いではなく、ひらがな「 つく 」も目立つ。
「 不意をつかれる 」の定訳に近いにも
かかわらず、頻出には至らない。
その理由は、日常で「思いがけないこと」
などめったに生じず、相対的に出番が少ない
ためと考えられる。
だが、いざ自分が不意打を食らった際、他者に
” taken aback ” と説明すれば、状況の大筋
は一瞬で分かってもらえる。
どんなに気が動転していても、確実に伝わるほど、
確立された言い回しなのである。
使い方は、非常にシンプル。
自衛のために、ぜひとも身につけておきたい。
–
◆ ” aback ” には、副詞と形容詞がある。
語源は、古英語「 後方に 」(on bæc)。
【発音】 əbǽk
【音節】 a-back (2音節)
日常使用では、” aback ” 単独で使われることはほぼない。
” taken aback ” の < 2語ワンセット> ばかりで、
受動態が原則。
これぞまさしく、” aback ” の大きな特色。
–
◆ ” aback ” 単独としては、副詞・形容詞ともに、
海事( 海上の事柄 )の専門用語 に用いる。
– 副詞 「 逆帆 に 」
– 形容詞 「 逆帆 の 」
さかほ 【 逆帆 】
浦帆( うらほ )に同じ。
うらほ 【 裏帆 】
帆にあたる風が正常とは反対に裏側にあたる
状態になった帆。 浦帆( うらほ )。
( 大辞林 第四版 )
こんな意味なので、普段出てくるわけない。
” aback ” 1語では、形容詞は無視してよい印象。
3大EFL辞典( LDOCE6、OALD9、CALD4 )
のすべてに形容詞の表示はなく、” aback ” は
副詞のみ である。
–
◆ ここで、 研究社『 新和英大辞典 』 のお出まし。
” Green Goddess ” の異名を誇り、 2018年に刊行100年を
迎えた、日本最大とされる和英辞典である。
” taken aback ” の由来を端的に明らかにする。
「 逆帆 」( さかほ )
( 船が )逆帆を食う
” be taken aback ”
( 新和英大辞典 第5版 )
いわば、
風が帆の裏面に吹きつけ、 意表を突かれて、
バタバタしている船
こうした様子を、「 驚き慌てた人間 」に置き換えた感じ。
初出は、1690年代。–
【出典】 https://www.facebook.com/maritimesuper
–
※ 下線は引用者
–
◆ 上掲『 新英和大辞典 』にあるように、” taken aback ” は、
「 be動詞 」に続くのが基本となる。
なぜなら、<2語ワンセット>で、「状態」を表す「形容詞」の役割を担うから。
※ 「 be動詞 」 = be、am、was、been、will be、is、were、are
なぜ、形容詞だと「 be動詞 」に続くのかは、” aware ”、” vocal about ”
で詳述した。
英文法の基本であるので、ぴんとくる ことがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。
–
◆ 以下の 3大EFL辞典 でも、単語 ” aback ” の解説は、一切省略している。
お互いに酷似している語釈である。
- ” be taken aback ”
to be very shocked or surprised.
( ケンブリッジ、CALD4 )
– - ” be taken aback
( by something ) ”
to be very surprised or shocked by something.
( ロングマン、LDOCE6 )
– - ” to taken aback
( by somebody / something ) ”
to be shocked or surprised by
somebody / something.
( オックスフォード、OALD9 )
※ 下線は引用者
ここでの ” take ” は、他動詞「(突然)襲われる」。
「 病気にかかる 」と似た用法の ” be taken ” である。
- “He was taken with an attack.”
(彼は発作に襲われた。)
– - “She was taken with a fit of sneezing.”
(彼女はくしゃみの発作に襲われた。)
「使い方は、非常にシンプル」と先述したが、
以上の説明で本当だと分かるだろう。
◇ ” aback” の2つの基本
- 用法: be動詞に続く ” taken aback ”
→ 日常使用では、< 2語ワンセット >
– - 意味: ” shocked or surprised ”
→ とにかく、びっくりしている
◇ 海事用語「 逆帆 」
–
面食らった
- “I was taken aback, but deep down I felt silly.”
(私は驚いたが、内心バカげていると思った。)
– - “He was taken aback by her beauty.”
(彼は彼女の美しさにびっくりした。)
– - “He was completely taken aback with her response.”
(彼女の返事に、彼は完全に面食らった。)
– - “I was taken aback that she won the game.”
(彼女がその試合に勝ったことに驚いた。)
– - “She was taken aback by his racial slur.”
(彼の人種差別的な言葉に驚いた。)
– - “I was taken aback at his offensive comments
about women.”
(女性に対する彼の侮辱的なコメントに驚いた。)
【類似表現】
“catch – off guard”
https://mickeyweb.info/archives/1860
(~の不意をつく)
“baffled” ※ 形容詞
https://mickeyweb.info/archives/2412
(戸惑わせる)
“startled” ※ 形容詞
びっくりした、びくっとした
“astound” ※ 他動詞・自動詞
びっくりさせる
“blow one’s mind”
https://mickeyweb.info/archives/16361
(ぶったまげる、ひどく驚く )
“stunning” ※ 形容詞
https://mickeyweb.info/archives/16613
(衝撃的な、見事な、美しい)
“blindside” ※ 他動詞
(不意を突く)
“caught with one’s pants down” ※ 少々下品
(不意打ちを食らう)
※ 通常、be動詞に続ける
” one’s ” の部分には、 人称代名詞の所有格、
his / her / my / our / their / your / its